明治民法(明治29・31年)

法典調査会 民法整理会 第24回 議事速記録

参考原資料

第二十四回民法整理會議事速記録
出席員
淸浦奎吾君
土方寧君
村田保君
阿部泰藏君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
横田國臣君
富谷鉎太郞君
河村讓三郎君
寺尾亨君
都筑馨六君
穗積陳重君
梅謙次郎君
長谷川喬君
金子堅太郎君
尾崎三良君
三浦安君
岡野敬次郎君
議長(淸浦奎吾君)
民法ノ再整理案ノ卽チ此十二月十六日配付ト云フノガゴザイマスガ是ハ法例ノ規定其他ノ點カラ再整理ニナツタノデアリマスガ格別變更モナイヤウデアリマスケレドモ一寸議事ニ掛ケル積リデアリマス
(書記朗讀)
第七百九十三條(舊七百九十六條)ノ次ニ左ノ一條ヲ加フ
第七百九十四條 外國人カ夫ノ本國ノ法定財產制ニ異ナリタル契約ヲ爲シタル場合ニ於テ婚姻ノ後日本ノ國籍ヲ取得シ又ハ日本ニ住所ヲ定メタルトキハ一年內ニ其契約ヲ登記スルニ非サレハ日本ニ於テハ之ヲ以テ夫婦ノ承繼人及ヒ第三者ニ對抗スルコトヲ得ス
第八百十二條(舊八百十四條)ヲ左ノ如ク改ム
 夫婦ノ一方ハ左ノ場合ニ限リ離婚ノ訴ヲ提起スルコトヲ得
 一 配偶者カ重婚ヲ爲シタルトキ
 二 妻カ姦通ヲ爲シタルトキ
 三 夫カ姦淫罪ニ因リテ刑ニ處セラレタルトキ
 四 配偶者カ重禁錮一年以上ノ刑ニ處セラレタルトキ
 五 配偶者ヨリ同居ニ堪ヘサル虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
 六 配偶者ヨリ惡意ヲ以テ遺棄セラレタルトキ
 七 配偶者ノ直系尊屬ヨリ虐待又ハ重大ナル侮辱ヲ受ケタルトキ
 八 配偶者カ自己ノ直系尊屬ニ對シテ虐待ヲ爲シ又ハ之ニ重大ナル侮辱ヲ加ヘタルトキ
 九 配偶者ノ生死カ三年以上分明ナラサルトキ
 十 壻養子緣組ニ於テ離緣アリタルトキ又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ爲シタル場合ニ於テ離緣アリタル若クハ緣組ノ取消アリタルトキ
梅謙次郎君
此初メニ加ヘマシタ箇條ハ法例ノ議事ノ際ニ河村君カラ注意ガアリマシテ如何ニモ其必要ナルコトヲ感ジマシタノデ加ヘルコトニ致シマシタ法例ノ案ニ依テモサウナツテ居リマスルシソレカラ舊トノ民法ノ規定デモサウナツテ居ツタノデス唯ダ文章ハ法例ノ方ガ整フテ居ル外國人ガ婚姻ヲ致シマスルト夫ノ本國ノ法定財產制ニ依ルノガ普通、其外色々ノ契約ガ出來ル、所デ本國ノ法定財產制ニ依リマスルトキニハ是ハモウ造作モナイ法例ニサウ云フ規定ガアル以上ハ苟モ外國人ト取引ヲ爲ス人ハ則チ夫ノ本國ノ法定財產制ト云フモノヲ知ラナケレバ出來ナイソレヲ登記サスト云フコトハ無理ナ話デアリマス恰モ特別ノ契約ヲ結バヌノデコソ法定財產制ニ依ルソレヲ、シナイ契約ヲ登記ヲシロト云フコトハ無理デアリマスカラソレハ命ズルコトハ出來ナイ、ケレドモ法定財產制ト異ナツタ契約ヲ爲シテ居ツタナラバ本國ニハ契約ノ登記ハアルケレドモ日本ニハナイサウスルト日本人ガ之レト取引ヲ爲スニ當ツテハ其人ノ財產ノ情態ハ知リヤウガナイ、シテ見ルト毎度意外ノ損失ヲ招クヤウナコトガ出來致シマスカラソレデ此場合ニ於テハ矢張リ日本ニ於テ登記ヲサセルト云フコトニシナケレバイカヌ、所デ其登記ト云フモノハ普通ノ場合ニ於テハ婚姻前ニ登記ヲシナケレバナラヌトアル是ハ婚姻前ト云フ譯ニハイカヌソレカラモウ一ツニハ婚姻前ニ登記ヲシナケレバナラヌトナツテ居レバ登記ノナイ契約ト云フモノハ丸デ誰ニモ對抗ガ出來ヌト云フノデ宜シイノデスケレドモ本國ニ於テハ其國ノ法律ニ從テ正當ノ契約ヲ結ンデ登記ヲシテ居ルソレガ日本ニ來ルト丸デ契約ヲシナイモノト見ラルルト云フコトニナツテハ大變ニ其者ガ困ルソレデ幾分カノ猶豫ヲ與ヘヤウ卽チ一年位ノ猶豫ヲ與ヘルソレモ日本ニ一時來テ居ル者ニサセルト云フノハ無理デアリマスカラソレハシナイ、ケレドモ其者ガ日本人ニナツテモ婚姻當時ノ夫ノ本國法トナツテ居リマスカラ財產制ハ變ハラヌソレデ其本國デ若シ法定財產制以外ノ契約ヲ結ンデ居ツタナラバ日本ニ來テ一年内ニ登記ヲスル日本人トナツテカラ一年内、又日本人トナラズトモ日本ニ住所ヲ定メテ居ル者ナラバ矢張リ同樣ノ規定ヲ當嵌メテ宜カラウト云フノデ斯樣ニ規定致シマシタソレカラ次ノ條ハ分リ易イヤウニ全文ヲ此處ニ掲ゲ出シマシタケレドモ改メマシタ點ハソンナニ多クハナイノデス第一ニ改メマシタル點ハ第四號デアリマス黒字デハ第三號ニナツテ居ツタ點デアリマスガ整理ノ時ニ第四號ニナツタ此四號ニハ「配偶者カ重禁錮三年以上ノ刑ニ處セラレタルトキ」ト云フコトニナツテ居ツタノデス是ハ此處デサウ云フ風ニ極マツタノデス、所ガ先キノ養子ノ離縁ノ所ニ矢張リ同ジ規定ガアルソコハ一年ト云フコトニナツテ居ル是ハ當時カラ御斷リヲ致シテ置キマシタ通リ何レ整理問題デアルト申上ゲテ置キマシタ何レニシテモ揃ヘナケレバ可笑シイどツちニ揃ヘルカト云フト當時ノ議場ノ多數ハ蓋シ一年ノ方ヲ望ンデ居ツタラウト考ヘマスソレカラモウ一ツ改メマシタ點ハ最後ノ第十號ノ所デアリマス舊トノ整理案ニハ「壻養子縁組ノ場合又ハ養子カ家女ト婚姻ヲ爲シタル場合ニ於テ離縁アリタルトキ」斯ウ致シテ置イタノデアリマス其後退イテ考ヘテ見マスルトドウモ之レデハマダ不足デアル養子縁組ノトキハ之レデ宜シイノデスケレドモ養子ガ家女ト婚姻ヲ爲シマスル場合デアリマスルト縁組ノ取消ト云フモノガアル縁組ノ取消ト云フモノハ婚姻ノ取消ニ同ジク其效力ハ旣往ニ遡ラヌノデアリマスカラソレ迄ハ矢張リ養子ノ關係ガアツタモノト見ラレルサウスルト實際ハ離縁ト變ハルコトハナイ此場合ニ於テ矢張リ離婚ノ原因トナリマセヌケレバ養子ガ家女ヲ連レテ實家ニ歸ルヤウニナル恰モソレヲ避ケルガ爲メニ第十號ノ規定ガ置テアルソレデ縁組ノ取消ト云フモノガ這入ラナケレバナラヌ何故壻養子縁組ノ方ニハサウ云フ事ガ要ラヌカト云フト壻養子縁組ト云フモノハ婚姻ト縁組トノ結ビ着イタ一ツノ行爲デアル故ニ養子縁組ガ取消サレレバソレニ依テ矢張リ婚姻モ取消スコトヲ得ルト云フコトガ前ノ七百八十五條ニアルソレデアルカラ宜シイソレ故ニ其點ヲ改メマシタノデ是ハほんノ整理ト心得マスケレドモ唯ダ吾々二人デ相談ヲシテ極メマシタコトデアリマスカラ念ノ爲メニ此處ヘ提出致シタノデアリマス
尾崎三良君
此第四號ノ所ニ「配偶者カ重禁錮三年以上」トアツタノヲ一年ト舊トニ御復シニナツタヤウデアリマスガ是ハ今モ御述ベニナツタ通リ議場デ多數デ三年ニ極マツタソレヲ復タ舊トノ通リニ御直シニナツタト云フノハ今承ハレバ養子ノ離縁ノ所ト同ジヤウニシタト云フヤウナ御說デアリマシタガ吾々ノ考ヘデハ養子ノ離縁ヨリモ婚姻ノ離婚ノ方ガ重イ、重大ナモノデアルカラ婚姻ノ離婚ト云フモノハよくよく重イ事デナケレバサセヌト云フ側ノ方ガ宜カラウト云フ所デ養子ノ離縁ハ一年デモ離縁ニナルト云フコトニ致シテ婚姻ノ方ハ三年トシタガ宜カラウ斯ウ云フ所カラ私共ハ此方ニ贊成ヲシタノデアリマスガ強テ議論ヲ致シマセヌガ矢張リサウ云フコトニナルコトヲ希望致シマス幸ニ贊成者ガアレバ舊トニ復シタイト思ヒマス
三浦安君
贊成
議長(淸浦奎吾君)
大概理由ハ盡キテ居リマスカラ直チニ決ヲ採リマス「配偶者カ重禁錮三年」ト云フ修正案ニ贊成ノ方ハ起立
起立者多數
議長(淸浦奎吾君)
多數、ソレデハ一年ガ三年ト云フコトニナリマス
梅謙次郎君
一寸伺ツテ置キマスガ唯今御立チニナツタ御方ハ離縁ノ方ハ一年ト云フコトデ宜シイノデアリマスカ
議長(淸浦奎吾君)
無論サウデセウ、他ニ御發議ガナクバ次ニ移リマス
(書記朗讀)
第八百八十三條(舊八百八十六條)ヲ左ノ如ク改ム
 親權ヲ行フ母カ未成年ノ子ニ代ハリテ左ニ掲ケタル行爲ヲ爲シ又ハ子ノ之ヲ爲スコトニ同意スルニハ親族會ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
 一 營業ヲ爲スコト
 二 借財又ハ保證ヲ爲スコト
 三 不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル權利ノ喪失ヲ目的トスル行爲ヲ爲スコト
 四 不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル和解又ハ仲裁契約ヲ爲スコト
 五 相續ヲ抛棄スルコト
 六 贈與又ハ遺贈ヲ拒絕スルコト
第八百九十一條(舊八百九十四條)第一項中「父又ハ母」ヲ「父若クハ母又ハ親族會員」ト改ム
第九百六條(舊九百九條)ヲ左ノ如ク改ム
 前七條ノ規定ハ保佐人ニ之ヲ準用ス
 保佐人又ハ其代表スル者ト準禁治產者トノ利益相反スル行爲ニ付テハ保佐人ハ臨時保佐人ノ選任ヲ親族會ニ請求スルコトヲ要ス
梅謙次郎君
此第八百八十三條ヲ改メマシタノハ是ハ商法ノ規定カラドウモ斯ウ云フ風ニ改メヌトイカヌヤウニナツタ商法ノ方デハ此親權ニ付テハ特別ノ規定ハナイ、ケレドモ後見ニ付テハ後見人ガ商業ヲ營ム場合ニハ特ニ親族會ノ同意ヲ得テソレヲ登記スル斯ウ云フ事ニ一體ナツテ居ルノデス、所ガ民法ニハ其事ハ何處ニモ見エテ居ラヌ私共ノ當時ノ考ヘデハ商業ヲ營ムト云フコトデアレバ尙更ラノコト、他ノ營業デモ營業ヲ爲スト言ヘバ動產、不動產ノ得喪ヲ目的トスル行爲ヲシナケレバナラヌソレ故ニ親族會ノ同意ヲ得テ置カヌケレバ一切營業ハ出來ヌ故ニ法律ノ方カラハ不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル權利ノ得喪ヲ目的トスル行爲ニ付テ親族會ノ同意ヲ得ルコトヲ要スルトナツテ居ラヌデモ實際營業ヲヤラウト云フ時ニハ特ニ親族會ノ同意ヲ得テヤルコトニナラウト考ヘテ民法ノ方ニハ默ツテ置イタ、ケレドモ能ク考ヘテ見ルトソレデハ商法ト合ハヌ商法ノ方ハ矢張リ商業ヲ營ムニ付テ親族會ノ同意ヲ要スルトアル民法ノ方デハ商業ヲ營ムニ付テ同意ヲ得ナイデモ一ツ一ツノ行爲ニ付テ同意ヲ得レバ矢張リ出來ルト云フコトニナルドウモ工合ガ惡ルイサウスルト同ジ商業ヲ營ム後見人ニシテ特ニ親族會ノ同意ヲ得タモノハ登記スルガ否ラザルモノハ登記シナイト云フコトデアレバ尙更ラ困ル親族會ノ同意ヲ得ナイモノガどしどし登記シテハ又困ル到底兩立シナイ後見ニ付テサウ云フ規定ヲ必要トスルナラバ親權ニ付テモ今度ハ母丈ケニ付テデアリマスガ例ノ不動產若クハ動產ニ關スル權利ノ喪失ヲ目的トスル行爲ニ付テハ矢張リ親族會ノ同意ヲ要スルコトニナツテ居ル此點ニ付テ後見人ト母ト區別スル理由ハナイ今日ハ御承知ノ通リ母モ後見人トナレルサウスルト親權ノ方モ矢張リ營業ヲ爲スニ付テ親族會ノ同意ヲ得ルコトヲ要スルト云フコトヲ書カヌト穩カデナイソレデ此處ヘ「營業ヲ爲スコト」ト云フ文字ヲ入レマシタソレカラ是ハ文字ノコトデアリマスケレドモ此第三號ニ舊トハ矢張リ「目的トスル行爲ヲ爲スコト」トアツタ所ガ高木君其他カラ御論ガアツテ「目的トスル」ト云フト左モ權利ヲ失フト云フヤウニ見エル是ハサウ云フ譯デハナイ權利ノ喪失ヲ來タスト云フ方デアルカラ來タスト云フ方ガ宜イト云フノデサウ云フコトニナツタ、所デ吾吾ガ能ク考ヘテ見ルト文字ハ其方ガ宜イヤウダケレドモ奈何セン旣ニ法律トナツタ所ノ第十二條ニ「不動產又ハ重要ナル動產ニ關スル權利ノ得喪ヲ目的トスル行爲」トナツテ居ルソレデこちらヲ「來タス」ト文字ヲ直スト向フトハ意味ガ違ツテ來ル向フデハ態態得ヤウ態々失フト云フコトニナツテこちらハ行爲ノ結果トシテ喪失ヲ來タスベキ行爲ガアルヤウニ見ニテ可笑シイノデ矢張リ是ハ文字ハ宜イガ總則編ト揃ヘル爲メニ舊トノ通リ「目的」トシテ置テ戴キタイト思ヒマスソレ丈ケガ改メマシタ點デアリマスソレカラ八百九十一條ハ「父又ハ母」ト云フノヲ「父若クハ母又ハ親族會員」ト改メマシタ是ハ全ク手落チデアツタノデ親權ニ付テハ滅多ニ親族會ヲ開カヌガ唯今申シタ八百八十三條ノ場合其他稀レナル場合ニハ矢張リ親族會ヲ開クサウスルト親族會ヲ開イテ其親族會ガ不注意デ許スベカラザルコトヲ許シタトカ甚シキハ繼父繼母抔ト一緒ニナツテ態々子ノ不利益ナル事ヲ決議スル繼父繼母ハ後見ノ規定ガ準用サレマスカラ此處ニハナクテモ宜イガ嫡母抔ガアル嫡母デモ怪シカラヌ者ガアルサウ云フ事ガアツタ時ニハ親族會ガ責任ヲ負ハナケレバナラヌ其責任ハ何時解ケルカ、規定ガナイノデスカラ是ハ普通ノ時效ニ因ルコトニナルサウスルト大變ニ長イ、惡ルイ事ヲシタ時ハ長クテモ宜イカモ知レマセヌケレドモ父、母本人ノ方ハ責ヲ免カレテ居ルノニソレニ携ツタ親族食員ハ責ヲ免カレヌト言フノハ困ル父又ハ母ガ時效ニ因テ義務ヲ免カルルトキニハ親族會員モ矢張リ義務ヲ免カレヌト困リマスカラソレデ此處ニ親族會員ト云フコトヲ入レマシタソレカラ次ノ九百六條デアリマス是ハ舊トハ「前七條ノ規定」トハナクテ箇條ガ擧ゲテアツタノデアリマス其擧ゲテアル箇條ト云フモノハ卽チ前七條ノ内一箇條ヲ除イタモノデアル其一ケ條ハ何ンデアルカト云フト黒字ノ九百十二條デアリマス是ハ「後見人ハ一人タルコトヲ要ス」ト云フ規定デアル之レ丈ケ除イテアル之ヲ除イタ理由ト云フモノハドウモナイノデス何故ナイカト申スト後見人デサヘモ一人タルコトヲ要スルノナラバ保佐人ハ尙更ラ一人タルコトヲ要スルデ宜イ譯デアル原トハ此規定ハ御承知ノ通リニ大變ニ細カクナツテ居ツテ或場合ニハ幾人デモ宜シイト云フコトニナツテ居ツタソレハ保佐人ニハ要シナイ話デアルカラト云フノデ除カレテアツタノデアリマスケレドモ委員諸君ノ多數デ以テ吾々ガ抗議シタルニ拘ハラズ一人ト云フコトニ決セラレタソレデ今度ハ之ヲ當嵌メテ宜イコトニナリマシタカラ「前七條」ト致シマシタソレカラ此第二項ヲ加ヘマシタノハ前ニ缺點ガアツタノデ多少心付イテハ居リマシタガドウモ後見ノ所ニ持ツテ來テ保佐人ノ規定ヲ置クノハ穩當デナカツタカラ見合セテ置キマシタガ此場合ニ付テハ打捨ツテ置ク譯ニハイカナイ此保佐人ト準禁治產者トノ利益ガ相反スルト云フ場合ニ保佐人ハ矢張リソレデモ保佐ガ出來ルト云フコトデハ困ル、所ガ保佐人ハ代理人デナイカラ民法ノ代理ノ規定モ嵌マリマセヌサウスルト矢張リ保佐ガ出來ル利益相反スル行爲ニ付テモ保佐人ガヤル例ヘバ保佐人ガ準禁治產者ノ財產ヲ買ウト云フ、ソレハ保佐人ノ同意サヘ得レバどんどん買ヘルノデアルカラ極端ヲ言ヘバ自分ガ自分ノ利益ニナル爲メニ高イ品物ヲ安ク賣ラセテ仕舞フコトモ出來ルソレデハ困リマスカラサウ云フ場合ニハ臨時保佐人ノ選任ヲ親族會ニ請求スルコトヲ要スルト致シタ後見人ニ付テハ後見監督人ト云フ者ガアツテ之ガサウ云フ場合ニハ代理ヲスルカラ臨時代理人ヲ澤ブ必要ガナイ此外ニ前ノ八百八十三條ノ修正ガ通レバ當然ノ結果ト考ヘマスカラ後見ノ所ニモ營業ヲ爲スト云フ文字ヲ入レマス若シ八百八十三條ノ修正ガ否決セラレマスレバ無論向フニモサウ云フ文字ハ加ヘラレマセヌガ此處デ可決スレバ加ヘルコトニ致シマスカラ御承知ヲ願ヒタイ尙ホ一ツ御斷リシテ置キタイノハ是ハ親族編丈ケデアリマス相續編ハ此間カラ商法ノ整理ニ掛ツテ居リマス爲メニマダ再整理ヲスル遑ハゴザイマセヌガ察スルニ實質ヲ變更スルヤウナ所ハアルマイト考ヘマス併シほんノ純然タル整理デアツテモ矢張リ此處ノ議事ヲ開イテ戴クベキモノデアルカドウデアルカト云フコトヲ今日極メテ戴キタイ
議長(淸浦奎吾君)
モウ相續編ニ付テハ格別實質變更ト云フコトガアリマセヌケレバ別段議事ニ付スルヲ要セヌト考ヘマスガドウデスカ別ニ御異論モゴザイマスマイ
尾崎三良君
實質ノ變更サヘナケレバ宜シウゴザイマス
議長(淸浦奎吾君)
如何デスカ整理案ニ付テ御議論ハゴザイマセヌカ―御論ガナクバ是レデ決シテ次ハ法例ノ整理案ニ移リマス