明治民法(明治29・31年)

法典調査会 民法整理会 第5回 議事速記録

参考原資料

第五回民法整理會議事速記録
出席員
箕作麟祥君
本野一郎君
土方寧君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
三崎亀之助君
穗積陳重君
富井政章君
梅謙次郎君
横田國臣君
重岡薫五郎君
長谷川喬君
南部甕男君
尾崎三良君
中村元嘉君
西源四郎君
岡野敬次郎君
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ會議ヲ開キマス此第三十三條マデ濟ミマシタカラ今日ハ「第二章法人」ノ所カラ始メマス修正ノ第三十五條之ハ「學問」ト云フノガ「學術」ニ「若クハ」ガ「又ハ」ニ爲リマシタ之ハ別段證明ヲ煩ハス程ノコトモアルマイト思ヒマス夫レカラ修正ノ第三十六條二項ノ「適用」ガ「準用」ニ直ツテ居ル丈ケ次ハ修正ノ第三十八條之ハ大分削ツタリシテアリマスカラ是丈ケハ簡單ニ御說明ヲ願ヒマス
穗積八束君
第三十四條ノ「法律」ヲ「法令」ト改メルト云フ說ヲ出シテモ宜シウゴザイマスカ
議長(箕作麟祥君)
宜シウゴザイマス
(左ノ箇條ハ朗讀ヲ經ザルモ議論出デシ以テ參照ノ爲メ茲ニ之ヲ載録ス)
第三十四條 法人ハ本法其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス
穗積八束君
ドウセ潰レマセウカラ態々發議シテ御討論ヲ煩ハス程ノコトモゴザイマセヌガ唯ダ一言申シマスガドウカ此「其他ノ法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス」トアル此「法律」ト云フノヲ「法令」ト御改メニ爲ツテハ如何デゴザイマセウカ夫レハ格別辯明スル程ノコトモナイ此法人ノ設立ニ付テハ次ノ條ニ「祭祀、宗教、慈善、學術、技藝其他公益ニ關スル社團又ハ財團ニシテ營利ヲ目的トセサルモノハ主務官廳ノ許可ヲ得テ之ヲ法人ト爲スコトヲ得」トアリマス實際ハ主務官廳ノ許可ヲ得テスル主務官廳デ以テ之ヲ認メテ法人トスルト云フコトデアリマスカラ行政權ノ認可權ノ一部ニアルコトデ何モ強ヒテ差支ナイヤウデハアリマスケレドモ色々此行政上ノ必要カラシテ水利組合會ヲ設ケシムルコトガアリマス其組合會ヲ設ケシムル場合ニ於テ啻ニ之ヲ法人ニスルカシナイカト云フ認可計リデナクシテ其設立ノ條件卽チ此法律ニ規定致シタモノノ外ニ外ノ異ツタル規定ヲ設ケテ組合會ヲ設ケルコトガ屡々行ハルコトト思ヒマス是カラ先キ益々行レルコトト思ヒマス夫レニドウカ勅令ナリ省令ナリデ以テ法人設立ノ條件ヲ規定スルコトガ出來テサウシテ夫レガ矢張リ有效ニ適用サルベキモノデハナイカト思フノデアリマス例ヘバ營業ノ組合ノヤウナモノトカ又現在茶業組合ノ如キモノガアル夫レ夫レ皆命令デ設立ノ條件カラ何カラ色々ナ事ガ極メテアリマス其方ガ能ク行ハレテ居ルノデアリマスカラドウカ之ハ「法律」ヲ「法令」ニ改メテ貰ヒタイト思ヒマス
横田國臣君
一寸今ノ何ニ御尋ネシマスガ此第三十五條トカ第三十六條トカ之ニ籠ラナイヤウナモノデサウシテ夫レヲ法人トセネバナラヌ夫レハ行政官デスベキモノデアルト云フヤウナモノガ何カ澤山ゴザイマスカ
穗積八束君
サウ云フ意見デハアリマセヌ私ハ此第三十五條ト第三十六條トテ殆ンド總テノ社團ヲ含ンデ居ル財團ヲ含ンデ居ルモノト思ツテ居リマス公益ニ關スル社團又ハ營利ヲ目的トスル社團デアリマスカラ夫レヨリ他ニハ格別アルマイト思ヒマスガ尤モ此祭祀、宗教、慈善ハほんノヽヽヽヽサレタモノデアリマスカラ其外ニ澤山アリマセウ私ガ此外ニアルカラ其說ヲ提出スルノデナクシテ此規定ノ例ヘバ學術ヲ目的トスル社團ニシマシテモ之ヲ法人トスルニハ主務官廳ノ認可―夫レヲ法人トスルコトヲ認可スルカ認可シナイカノヽヽヽヽヽ夫レニ對シテ特別ナル此法律ニ定メタル條件ノ外ニ異ツタル手續ヲ要スルトカ云フヤウナコトハ是レ斗リデハ出來ナイト思ヒマス夫レデ夫レガ出來ナイデハ或ハ不都合デハアルマイカト思ヒマス例ヘバ水利ノ組合抔之ハ幾ラカ法律ノ形チヲシテ居リマスガヽヽヽヽヽ其他ノ目的ノ爲メニ營業ノ組合ト云フモノガアリマス固ヨリ之ハ法人ノ設立ニ必要ハナイカモ知レマセヌガ現在茶業組合抔デモ省令ガ出テ居ツテ其規則抔ヲ見ルト是トハ違ツテ居ルヤウデアリマスあれハ法律デモ何ンデモナイガサウ云フヤウナ規定ハ矢張リ新法ニ適用サレナイト不都合デハナイカト云フ意味デアリマス
横田國臣君
私モサウ云フヤウナ事ガアルヤウニ思ハレドウモぼんやリトシテ心ニ志ツかりト分ラヌノデアリマスガ是デモ大概ノ事ハ出來ヤウト思フ、ケレドモ斯ウ云フ所ガドウモ此法律ニ從ツテハ惡ルイトカ或ハ斯ウ云フヤウナ事モ行政上デ許サレルカラ夫レガ成立ノ必要條件ノ方デアルカラ別段ノ事ヲ成立條件ニシナケレバナラヌト云フコトヲ志ツかり會得スレバ御同意シヤウト思ヒマスガぼんやりシテ居ルカラドウモ
穗積八束君
夫レデハ例ヲ一寸申シマスガ水利組合會ヲ見タヤウナモノ此法律デ見ルト云フト總會ノ決議ナラバ解散ガ出來ルト云フコトガアリマスカラ裁判所ニ持ツテ往ツタラ總會ガ決議ヲスレバ必ズ出來ルト斯ウ見ナケレバ往ケマスマイガ公益ヲ目的トシテ定メタ所ノ組合抔ハ卽チ水利組合會抔ハ其目的ヲ逹スルト云フニハ必ズ法律ニ對シテ唯ダ自分ノ決議デハ許サヌ必ズ夫レヲ設立シナケレバ徃ケナイ又水田ヲ所有シテ居ル者ハ水害ヲ豫防スルニハ必ズ其組合ニ這入ツタ以上ハ其目的ヲ逹セシメナケレバナラヌ夫レヲ逹セズシテ解散スルコトハ出來ナイトカサウ云フコトガ水利土工ノ方ニ定メテアリマスガ矢張リ同ジヤウナ條件ヲ茶業トカ其他營業ノ種類ニ依ツテ其地方ニ訓令ヤラ或ハ命令抔デ極メテアリマス此法律ニ定メタル條件ト違ツタ條件ヲ以テ定メタモノガアリマス夫レハ組合員ノ規約デアリマスレバ固ヨリ法人ニ適ツテ居レバ這入ルカモ知レマセヌガ規約デナク勅令トカ命令トカ云フモノデ極ツテ居リマス
高木豐三君
私ノ考デハ此第三十四條ノ規定ハ必ズ法律ヲ以テ一ツノ標準ヲ定メルト云フコト斗リデナシニ法律ニ規定ガアル卽チ民法ナラバ民法又他ノ法律ニ規定ガアレバ其條件ニ從フト云フコトガ示シテアル夫レニ據ツテ立テタモノヲ法人トスルト云フ趣意デアラウト思ヒマス、サウスルト私ノ考デハ單ニ勅令若クハ其他ノ行政命令ヲ以テ法人ヲ拵ヘルト云フヤウナサウ云フ規則ヲ設ケルト云フコトハ恐ラクアルマイ例ヘバ今ノ水利土工會トカ或ハ五二會トカ云フモノヲ一ノ法人トスルサウスルト之ハ矢張リ農商務省ノ許可ヲ經テアル縱令ヒ夫レハ官省ガ目論ンデモ矢張リ法律ノ規定ニ從ツテ法人ニスルト云フコトニ爲ル普通農商務省ガ直チニ命令ヲ發シテ法人ヲ拵ヘルト云フコトニハ爲ルマイト思ヒマス或ハ水利土工會トカ公ケノ何ンニ關スルモノ夫レハ矢張リ特別ノ法律ニ依ツテ夫レヲ法人トスルト云フコトニスルカ然ラザレバ矢張リ此規定ニ從ツテヤル然ラザレバ内務省デ自分ガ許可ヲスルコトガ出來ルカモ知レヌ併シ夫レニシテモ別段ニ之ヲ「法令」ト改メヌデモ事ガ辨ズルシ夫レノミナラズ之ヲ「法令」トスルト云フト勅令抔デ以テモ法人ヲ設ケルコトガ出來ルト云フヤウナコトニ見ヘテ或ハ少シ呵シクハアルマイカト思ヒマス
議長(箕作麟祥君)
ドウデスカ「法令」ト云フ八束君ノ御說モアリマスガ贊成モナイヤウデスガ
梅謙次郎君
夫レ所デナイ之ハ十分論ジタノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ折角御發議デアリマスガ贊成者ガ無イヤウデアリマスカラ修正ノ第三十八條ノ御說明ヲ願ヒマス
(左ノ修正案ハ朗讀ヲ經ザルモ參照ノ爲メ茲ニ載録ス以下掲載ノ箇條皆同ジ)
第三十八條 社團法人ノ設立者ハ定款ヲ作リ之ニ左ノ事項ヲ記載スルコトヲ要ス
一 目的
二 名稱
三 事務所
四 資產ニ關スル規定
五 理事ノ任免ニ關スル規定
六 社員タル資格ノ得喪ニ關スル規定
穗積陳重君
簡單ニ此處ヲ變ヘマシタ理由ヲ申シマス第一項ニ「設立者」ト云フ文字ヲ加ヘマシタノハ初メ定款ト云フモノハ法人設立ノ際ニ少ナクモ出テ來ル定款實質ノ規則ハ前カラ出來テ認可ヲ請フ兎ニ角「社團法人ハ定款ヲ作リ」ト申シマスルト云フト夫レト同時ニ出來マスルモノデ餘程漠然タルモノガ定款ニ出ルヤウニ見ヘマス固ヨリ其設立者ガ作ルト云フノデアリマスカラ其實際ノ意味ガ分ルヤウニ此處ニ書キ顯ハシタ丈ケデアリマス定款ノ必要項目ヲ變ヘマシタ理由ハ此必要項目ノ中デ第一ニ「理事ノ職務ニ關スル規定」ガアリマス之ハ本案ニ於テ「法人ノ管理」ト云フ所ニ理事ノ職務ニシテドウシテモ定マラナケレバ往カヌ事、定款ニ定マツテ居ラナケレバ斯ウ爲ルト云フコトガ「法人ノ管理」ノ方ニ定ツテ居リマス其他「總會ノ決議ノ方法」等モ同ジコトデアリマス夫レカラ「存立時期ト云フモノノ定マツテ居リマスル場合」又「定ツテ居ラナイ場合」ト別ニ後ニ明文ガ出テ參リマス「解散ノ場合ニ於テ財產ノ歸屬スベキ者ハドウ云フ者デアルカ」又「歸屬スベキ者カ定メテナイトキハドウ爲ルカ」ト云フコトハ後トニ定メテアリマス畢竟原案ニ定メテアルモノハ定款ガアリマスレバ通常書キ顯ハスモノデアリマスガ此處ニ書キ擧ゲマシタ項目ト云フモノハ是非トモ是丈ケノモノガナケレバ認可ノ標準ニスルコトガ出來ナイモノ必要ナモノデ是ガナケレバドウシテモ認可ノ標準ガナイト云フモノ丈ケ此處ニ存シマシタ譯デアリマス乍併斯ウ云フ事ハ第三者ニ對シマシテハ慥ニ定マツテ居ルコトヲ知ラセルノガ必要デアリマス夫故ニ特ニ必要項目ト爲ツテ居ルモノハ幾ラモ此中ニアリマスガ定款ニ是非トモ是丈ケガナケレバ認可スルトカ認可シナイトカ云フ標準ガ定マラヌト云フコトハアリマセヌカラ夫故ニ此朱デ消シマシタ分丈ケヲ除キマシタ又順序ヲ變ヘマシタノハ全ク此後ノ四十條トノ關係ヨリ生ジマシタノデアリマス第四十條ヲ御覽ノ如ク書キ改メマシタ財團法人ニ於テモ「目的、名稱、事務所、資產ニ關スル規定、理事ノ任免ニ關スル規定」トカ斯ウ云フモノハ初メカラ定マツテ居ラナケレバ往カナイモノデアリマス唯ダ財團法人ト云フモノハ社員ト云フモノガアリマセヌカラシテ此社員ニ關スル事項ヲ一番終リニ廻ハシテ置キマスルト云フト第四十條ニ至ツテ第三十八條第一號ヨリ第五號ニ至ルマデトシテあそこデ略スコトガ出來マス勞々便利デアリマスカラ社員ノ事ヲ一番後トニ廻ハシマシタ
議長(箕作麟祥君)
是モ實質變更デモ何ンデモナイ唯ダ體裁ガ變ツタ丈ケデアリマス
本野一郎君
議長ニ御願ヒ申シタイ事ハ私ハ前條ノ第三十七條ニ付テ少シ起草委員方ノ御意見ヲ承リタイト思ヒマスガ
議長(箕作麟祥君)
宜シウゴザイマス
第三十七條 外國法人ハ國、國ノ行政區劃及ヒ商事會社ヲ除ク外其成立ヲ認許セス但法律又ハ條約ニ依リテ認許セラレタルモノハ此限ニ在ラス
前項ノ規定ニ依リテ認許セラレタル外國法人ハ日本ニ成立スル同種ノ者ト同一ノ私權ヲ有ス但外國人カ享有スルコトヲ得サル權利及ヒ法律又ハ條約中ニ特別ノ規定アルモノハ此限ニ在ラス
本野一郎君
此處ニ直接ノ關係ヲ持ツテ居ナイ事デハアリマスガ夫レハ外國人ノ土地所有權ノコトデ一寸起草委員ノ御方竝ニ他ノ諸君ノ御意見ヲ承リタイ夫レハ御承知デモゴザイマセウガ此日英條約ニハ―――今度新タニ締結ニ爲リマシタ日英條約ノ中ニ外國人ニハ日本ノ土地ノ所有權ヲ許サヌト云フコトハ書テナイ外國人ハ斯ウ斯ウスル權利ヲ有スルト書テアリマス夫レデ民法ノ大體ノ外國人ノ權利ニ關スル所ニハ法令又ハ條約デ禁止セザルモノハ外國人ト難モ權利ヲ有スルト爲ツテ居リマス其處デ今迄規定ニ爲ツタ丈ケノ個條デハ外國人ハ土地所有權ト云フモノハ解釋上カラ持チ得ハシナイカト斯ウ思バレルノデアリマス其處デ今日ノ所デハ慥カ書入質カ何カデ何カ外國人ニハ土地所有權ガ間接ニ無イヤウニ爲ツテ居ルト記憶シテ居リマス夫レデ苟モ此民法ガ公布ニ爲リマスル曉ニハ矢張リあの規則ニ依ツテ外國人ハ土地所有權ヲ持タヌト云フコトニ解釋スルコトガ出來ルデゴザイマセウカドウデゴザイマセウカ
穗積陳重君
此前ノ整理案ノトキニモ矢張リあなたカラ同ジ御注意ガアリマシタコトヲ記憶シテ居リマス夫故ニ此前ニ「外國人カ享有スルコトヲ得サル權利」ト云フコトガ整理ノ際ニ加ハリマシタ夫レデ是迄外國人ガ土地ヲ所有スルコトガ出來ナイト云フノハ日本ノ法律デ書入規則デゴザイマシタカ(此時梅委員「讓渡規則ト書入質入規則ト兩方ニアリマス」ト呼ブ)夫レ等ノ精神ト云フモノハ丸デ皆廢シテ仕舞ヒマスレバ何カ法例ニデモ入レナケレバ往ケマイト思ヒマスガ兎ニ角廢サヌ以上ハ此處ニ謂フ所ノ「外國人カ享有スルコトヲ得サル權利」ト云フ中ニ這入ル積リデアリマス併シソンナモノノ全部ヲ廢スルヤウニ爲ツタラ矢張リ法例ニテモ明文ヲ書カナケレバ往ケマイト思ヒマス
本野一郎君
サウスルト何レあれ抔ハ廢止ニ爲ルモノデハアリマセヌカ例ヘバ登記法トカ何カ出來マシタ曉ニハ
穗積陳重君
私ハ讓渡規則、書入、質入規則抔ノコトハ存ジマセヌガ同一ノモノガ此處ニ出來マスカラ多分廢セラレルデアラウト思ヒマスガ廢セラレルト法例ニ明文ガ出來ヤウト思ヒマス出來ヌデモ今ノ有樣デ條約ガ出來テ居レバ條約ノ解釋デ今ノ法律ヲ見テヤツタ其持テナイトキノ有樣ヲ見テ出來タノデアツテ其時丈ケノ權利ヲ持ツテ居ル新タニ外國人ニ土地所有權ヲ許スト云フコトガ法例ノ方カ何カニ依ツテ慥カニ分ルマデト云フモノハ今ノ條約ノ中ニ這入ツテ居ルジヤラウト思ヒマス今度法例ニ書入レテモ條約ヨリ多イ制限ヲ新タニ加ヘタト云フ解釋ニハ爲ルマイト思ヒマス
梅謙次郎君
私モ略ボ同ジ考デアリマスガ土地讓渡規則、書入質入規則ト云フモノハ特ニ何年何月何號布告ハ廢スルト云フコトヲ書ケバ格別デアリマスガ打擲ツテ置ケバ民法ノ規則ト牴觸スル範圍内ハ當然廢セラレマシテ其他ノモノハ存スル丁度外國人ガ土地所有權ヲ得ナイトカ外國人ニ書入質入ヲ爲スコトハ民法ト牴觸スルコトハアリマセヌ「法令ニ別段ノ定アルモノハ此限ニ在ラス」トアリマスカラ夫レハ當然生キテ居ルト思ヒマス其方ノ廢止ヲシナケレバ生キテ居ルト云フコトニ爲ラント往ケヌト思ヒマスカラ今ノ御心配ハ要ルマイト思ヒマス乍併條約改正ガアツテあの規則ヲ丸デ廢止スルト云フコトニ爲レバ默ツテ居ツテ英國人ト雖モ其權利ヲ得ルト思ヒマス
富井政章君
私モ同ジ考デアリマス民法施行條例ニ於テ民法ト牴觸スル規定ハ援スルト云フコトヲ書カナケレバナラヌ其規則ハ今迄ノ法律規則デ澤山アラウト思ヒマス或ハ土地書入質入規則トカ讓渡規則トカ云フヤウナ其規定ノ大部分ハ或ハサウ爲ラヌカモ知レヌ乍併民法施行條例ニ於テ「何年何月ノ法律ハ廢止ス」ト云フコトニハ書ケマイト思ヒマス「何年何月ノ法律」ト並ベテ「本法ト牴觸スル規定ハ」トカ何ントカ云フサウ云フ方ノ制限ハ付クダラウト思ヒマスドウモ夫レハ必要デアラウト思ヒマス牴觸シテ兩立スルコトノ出來ナイモノハ廢止セラレルト云フヤウナ風ニ書カレルダラウト思ヒマスサウスレバ大丈夫ダラウト思ヒマスサウスレバ第二條ニ依ツテ「法令」ト云フモノガ適用ヲ持ツ
本野一郎君
夫レカラモウ一ツ承リタイ之ハ商法トモ關係ヲ持ツ矢張リ今度ノ條約デハ斯ウ云フコトニ爲ツテ居リマス外國人ハ日本人ト一諸ニ爲ツテ商賣ヲスルコトガ出來ルト云フコトニ爲ツテ居ル夫レデ商法ノ方ノ規定ニ據ルトサウ云フ場合ニハ會社ハ合名會社デモ何ンデモ會社ハ不動產ヲ所有スルコトガ出來ルトカ云フコトニ爲ツテ居リマス其處デ日本人ト外國人ト組合ツテ一ノ會社ヲ拵ヘタ其場合ニハドウ云フコトニ爲リマセウカ商法ノ規定ニ據レバ夫レハ外國法人デハナイ卽チ日本ノ法人デアル其中ノ一部分ガ外國人デアルサウ云フトキニハ外國人ガ這入ツテ居ツテモ矢張リ土地ノ不動產ノ所有權ハ持テルト云フコトニ解釋ガ出來マセウカドウデゴザイマセウカ
穗積陳重君
是ハ重イ問題デ隨分吾々ノ中デ意見ガ異ナルカモ知レマセヌガ私ノ考ヘテ居ル所丈ケヲ申シマス元ト社員ハ申スマデモナク社員ガ法人デハナイ法人ニ對シテハ唯ダ法律ノ表テカラ見マスレバ債權者タル位置ヲ持ツテ居ルノデ日本法人ガ土地所有權ヲ有スルト云フコトニ付テハ私ハ少シモ差支アルマイト思ヒマス結果ガ―――又或ハ外國人ガ土地ヲ所有スルヤウニ爲リハシナイカト云フコトガアリマシタケレドモ土地ヲ所有スル結果ガ出來ナイト云ヒマストキハ例ヘバ法人解散等ノ場合ニ於テ社員ニ其遺留財產ヲ分配スルニ付キマシテモ其實物分配ニ爲ツテモ多クハ實物分配デハナイ法律ニ適フヤウナ正當ノ方法ガ出來ルコトデアリマスカラ私ハ條約ニサウ云フ明文ガアル以上ハ別シテ外國人ガ日本人ト組合ヒ或ハ日本法人ノ社員ト爲ル場合ニ於テ其法人ガ土地ヲ持ツト云フコトハ少シモ差支アルマイ唯ダ外國人ガ日本人ト共有者ニ爲ツテ持ツト云フコトハ往ケマセヌ
富井政章君
私モ略ボ同ジ意見ヲ持ツテ居リマス今本野君ノ言ハレタ團體ト云フモノガ若シ法人デアレバ社員等ハ人ノ權利ノ主體デアル不動產ヲ持ツテモ社員ガ共有者ト爲ルノデナイ社員ガ所有權ヲ持ツト云フコトデナイ夫レハ少シモ差支ナイコトデ所有權デナイ權利ヲ持ツノデアルカラ差支ナイ、ケレドモ之ハ其適用ガ少ナイ商事會社ハ大抵法人ニナルデセウカ法人デナイ通常ノ會社契約デヤツタ場合ニハ共有ニナリマス夫レハ恰モ一人デ不動產ノ所有權ヲ持ツコトガ出來ルノト同ジデアリマス共有モ一ツノ矢張リ所有者デアリマスサウ云フ考ヘデアリマス
本野一郎君
サウスルト何レ適用ノ多イ場合ハ商事會社デアラウト思ヒマス其處デ商事會社ノ場合ニ實際ハ例ヘバ或ル合名會社ガ或ル一ツノ不動產ヲ買フト云フ場合サウスルト其不動產ト云フモノハ會社員各社員ノ名前ノ下ニ登記ヲスルトカ何ントカスルモノデゴザイマセウカ或ハ何々合名會社ト云フモノノ名ニ爲ルノデゴザイマセウカ
穗積陳重君
會社デゴザイマセウネ能クハ知リマセヌガ
本野一郎君
實際ノ手續ハドウ爲ツテ居リマスカ
梅謙次郎君
サウデアラウト思ヒマス尤モ登記ノ手續ニ付テ例ヘバ業務擔當者ノ名前ヲ以テシナケレバナラヌトカ或ハ會社ノ名丈ケデ宜シイトカ云フコトニ付テ曾テ問題ガ起ツテ來タコトモゴザイマスガ夫レハ業務措當者ガ會社ヲ代表シテ名前ヲ出サナケレバナラヌカ或ハ會社ノ名丈ケデ宜シイカト云フコトデアツテ畢竟社員ガシナケレバナラヌト云フノデナイ無形ナル法人ガスルノデ社員ハ法人ニ對シテハ唯ダ、債權ヲ有シテ居ルノデアリマスカラ其點ハ宜シイト思ヒマスガ唯ダ債權ガ法人デナイト云フコトニ爲ルカモ知レマセヌガ其時ハ富井君ノ言ハレタ通リニ爲ルト思ヒマス商法デモ組合デアルト法人トハ爲ラヌト思ヒマスガ法人ニハ此處ノ規定デ法人トスレバ格別、商事會社ト云フ名ヲ存スレバヽヽヽ組合ト云フ名ヲ存シテ居ル以上ハ法人デナイト思ヒマス其場合ハ矢張リ不動產ヲ以テ其會社ノ財產ニスルコトハ出來ヌダラウト思ヒマス外國人ガ這入ツテ居レバ、サウスレバ會社財產デナイ各組合員ノ共有物ニナルノデアリマス
富井政章君
合名會社ガ法人ト爲ラヌト假定シテ又サウ云フ規則ニ爲ルカモ知レマセヌガ、所デ合名會社ハ少ナクモ一人ノ名ヲ付ケナケレバナラヌ、サウ云フ場合ニ外國人ガ這入ツテ居ルト其外國人ノ名ヲ夫レニ付ケタ所ガ夫レハ少シモ構ハヌ夫レハ唯ダ形式丈ケノコトデアル兎ニ角自分ト違ツタ者ガ所有權ヲ持ツノデアリマスカラ少シモ差支ナイト思ヒマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ修正ノ三十八條ハ穗積君カラ御說明ガアリマシタガ別ニ御異議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス夫レカラ次ニ朱書ノ第三十九條ハ「定款中ニ別段ノ定メナキトキハ」ト云フノヲ削ツテ之ヲ但書トシテ「但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス」ト爲ツタ丈ケデほんノ字句ノ修正丈ケデアリマスカラ別ニ說明ヲ要スルコトモアルマイト思ヒマス御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス其次ニハ修正ノ第四十條デアリマスガ之ハ旣ニ第三十八條ノトキニ御說明ガアリマシタカラ
富井政章君
同ジコトデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ第四十條ハ別ニ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ朱書ノ新規ニ這入ツタ第四十一條之ハドウデスカ
第四十一條 財團法人ノ設立者カ其名稱、事務所又ハ理事任免ノ方法ヲ定メスシテ死亡シタルトキハ裁判所ハ利害關係人又ハ檢事ノ請求ニ因リ之ヲ定ムルコトヲ要ス
穗積陳重君
之ハ一寸說明シテ置キマス財團法人ノ設立ニハ其必要條件ハ可成少ナクシテ置クト云フ精神デ前ニモ說明致シマシタ通リ「寄附ノ目的」ト「寄附スヘキ財產」ト「理事任免ノ方法」トアレバ成立チ得ルモノデアリマスカラ或ハ遺言等ヲ以テ素人ガ拵ヘル場合ガ多イカラたツた三ツ計リニシテ置キマシタ然ルニ第三十八條トノ釣合ヲ保ツ爲メニ尙ホ「目的、名稱、事務所」抔モ這入ツテ居ル方ガ宜シイト云フ考デ入レマシタガ併シ前ノ精神ヲ貫クト夫レガ這入ツテ居ナイト認可サレナイト云フコトガアツテハ困リマスカラ矢張リ初メニ議決ニ爲リマシタ精神ヲ保チマスルヤウニ此名稱トカ事務所トカ云フヤウナモノハ設立者ガ前カラ定メテ置カヌデモ斯ウ云フ目的ヲ以テ例ヘバ貧窮者救笹ノ目的ヲ以テ是丈ケノ財產ヲ遺コス斯ウサヘ言ツテ置ケバ跡ハ利害關係人若クハ檢事ノ請求ニ因ツテ後トカラ定メルコトニ致シマシタ之ハ酷ドク事柄ヲ變ヘタノデハアリマセヌ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ新規ノ第四十一條ハ今穗積君ノ御說明通リデ別ニ御發議ガナケレバ甘バ通リニ決シマスガ
横田國臣君
一寸此主務官廳ノ許可ヲ得テ法人トスルコトガ出來ルト爲ツテ居リマスガ此財團法人ノ設立者ガ其名稱、事務所等ヲ定メズシテ死亡シタトキ夫レデ其官廳ノこんナモノヲ定メズシテ許可ヲ得テ置クコトガ出來ルノデスカ主務官廳ノ許可ヲ得テ法人ガ成立ツノデアラウト思ヒマス其時分ニ必ズ許可ヲ得ルニハ斯ウ云フ事ヲセズバナルマイト思ヒマス此主務官廳ノ許可ト云フモノハ法人ノ成立チニ關シナイト言ヘバ格別デアリマスガドウ云フ風ニ爲リマスカ
穗積陳重君
成程今度「設立者」ト云フ字ヲ加ヘマシタカラサウ云フ御疑ヒガ出ルノデゴザイマセウガ實ハ財團法人ノ寄附者ト云フ積リデアツタノデ寄附者ガ例ヘバ百萬圓ヲ貧窮者救恤ノ爲メニ遺コス斯ウ事ヲ言フテ置キマシタトキニハ其遺族カラ許可ヲ請ヒマス或ハ其他ノ利害關係人カラ許可ヲ請ヒマスル際ニ當ツテ其名稱、事務所抔ト云フモノハドウシテモ定メテ許可ヲ請ハナケレバ往カヌ夫故ニ其許可ヲ請ヒマスル者ガ斯ウ云フ事ヲ請求シテ裁判所デ定メテ貰ウコトガ出來マス乍併設立申請ノ財團法人設立者ガ寄附行爲ヲ爲スノデアリマスカラ夫故ニ此財團法人ノ出來マセヌ中ニ別シテ遺言抔ノ場合ニハ死ンデ仕舞ツテ居ルコトガ多イノデアリマス
横田國臣君
私ノ述ベマシタノハ斯ウ云フノデアリマス此通リナモノハ恐ラクハマダ法人ガ成立タヌ前ノ所作デハナイカ(此時穗積委員(陳重君)「サウデス」ト呼ブ)サウスルト其意デ書カナクテハ呵シクハアリマセヌカ、サウスルト「財團法人ヲ設立セントスル者カ」ト云フヤウナ意味デゴザイマセウガ
穗積陳重君
此處ハ「設立者カ」ト云フノハ寄附者ガ定メナカツタラト云フノデ設立ノ手續ヲ爲ス者ハ他ニアル
梅謙次郎君
委シク言ヘバ設立セントスル者
横田國臣君
夫レデアリマスカラ法人ノ成立ツハ是ヨリ後トニ爲ルノデゴザイマセウ
梅謙次郎君
實際ハサウ爲ルノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
宜シウゴザイマスカ宜シケレバ朱書ノ通リニ決シテ次ハ修正ノ第四十四條
第四十四條 法人ハ法令ノ規定ニ從ヒ定款又ハ寄附行爲ニ因リテ定マリタル目的ノ範圍内ニ於テ權利ヲ有シ義務ヲ負フ
議長(箕作麟祥君)
是ハ上ノ方ガ「法令ノ規定ニ從ヒ」ト爲ツテ居リマスガ是モ別ニ意味ハ變ツテ居ルノデハナイト思ヒマスカラ別ニ說明モ要スマイト思ヒマスガ
穗積八束君
此「法令ノ規定ニ從ヒ」ト云フノガ目的ニ爲ルノデスカ「權利ヲ有シ義務ヲ負フ」ト云フヽヽヽヽヽヽ
穗積陳重君
「法令ノ規定ニ從ヒ權利ヲ有シ義務ヲ負フ」ト云フコトニ指シマスルガ少シ前ノ言葉デハ「法令ニ因リテ定マリタル目的ノ範圍内ニ於テ」斯ウ見ヘルト思ヒマス各種ノ法人ハ法令ニ依ツテ例ヘバ成立條件トカ或ハ許可ノ條件トカ云フモノハ法律命令ニ依ツテ定マル夫レニ因ツテ目的ノ範圍ガ定マルト云フノデナイ少シ分リ惡クイト思フテ文章ヲ變ヘタノデアリマス
穗積八束君
夫レハ「法令ノ規定ニ從ヒ權利ヲ有シ義務ヲ負フ」ト云フコトニ書カレタト思ヒマスガ此處ニ「法令」トアルノハ之ハ設立ノ條件抔ハ法律ニハアリマス、ケレドモ命令ノ規定ニ從ヒト云フコトハ出來ナイヤウニ爲リマシタガ旣ニ「法律ノ規定ニ依ルニ非サレハ成立スルコトヲ得ス」トアリマスカラ設立ノ條件ハ法律デナケレバ出來ナイサウスルト此場合ニ於テ命令ニスル場合ハドンナ場合デゴザイマセウカ法人ノ權利義務ヲ有スル程度ト云フモノヲ此法律ノ規定ヲ顯ハスヤウナ譯デナイト私ハ前ノ趣意ニ適ツテ居ラナイト思ヒマス法人ヲ設立スル條件ハ法律デナケレバ立テラレナイ命令デハ立テラレナイト云フコトニ爲ラヌト不釣合ト思ヒマスガ其御說明ヲ願ヒマス
穗積陳重君
是モ矢張リ前ニ出マシタ議論デアツテ法人ノ設立丈ケハ法律デナケレバ往カヌト云フ事柄ハ一體是ハ大變重モイ事デアリマスルシ又憲法第二條抔ノ精神ヲ酌ンデ見マスルト如斯重モイ事ハ大概法律デナケレバナラヌ兎ニ角獨リノ人ガ出來ル夫レガ最モ社會ニ大ヒナル關係ヲ有シテ居ル社會ノ利害ニ大ヒナル關係ヲ有シテ居ル所ノ權利ノ主體ヲ作ル法人ノ成立ハ法律デナケレバ勿論往カヌ成立シテ居レバ先ヅ其權利ノ有シ方義務ノ負ヒ方ニ付テハ矢張リ命令デ或ル特種ノ事柄例ヘバ彼ノ茶業組合トカ云フモノ此茶業組合トカ云フモノガ斯ウ云フ工合ノ事ヲスルト云フコトヲ言フテ願ヒ出タサウスルト云フト其許可ノ條件ニ違ハヌヤウニ權利ヲ定メナケレバ往カヌ其許可ノ條件ノ精神ニ從ウヤウニ矢張リ義務ヲ負フヤウニシナケレバ往カヌ夫レデナケレバ許可ノ取消ト云フコトガアリ得ル斯ウ云フコトデ權利ノ有シ方義務ノ負ヒ方ト云フモノハ法律デモ命令デモ別シテ命令デ幅抔ガ極マルコトガアラウト思ヒマスカラ夫故ニ此前モ議論ガアリマシタガ此處ハ「法令」ト爲ツテ居リマス
議長(箕作麟祥君)
八束さん宜シウゴザイマスカ
穗積八束君
餘リ感服ハシマセヌガ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ四十四條ハ朱書ノ通リニ決シテ四十五條之ハ「其」ガ這入ツタリ「際シテ」ガ「付キ」ト爲ツタリ二項ノ終リガ「代理人連帶シテ其賠償ノ責ニ任ス」ト爲ツタ丈ケデ意味ガ違ツタ譯デモアリマスマイカラ別ニ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シテ次ハ黒字ノ四十七條ガ削レタノハ御說明ガ要ラウト思ヒマス
第四十七條 削除
穗積陳重君
之ハ一言デ濟ミマス第一項ヲ削リマシタノハ名稱ト云フモノハ定款ノ必要條件ニ爲ツテ居リマスカラサウスレバ最早名稱ヲ定メナケレバナラヌ又事務所モサウデアリマス此處デ事務所ヲ設ケ名稱ヲ定メルト云フコトハ言ハヌデモ分ツテ居リマス重複ニ渉リマスカラ削除致シマシタ第二項ハ後ニ讓ツテアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ此削除ニ御異議ガナケレバサウ決シマス第四十六條ハ一項ガ「設立ノ日ヨリ二週間内ニ各事務所ノ所在地ニ於テ」ト爲リ二項ガ「事務所」ノ下ニ「ノ」ガ這入リ終リガ「之ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス」ト爲ツテ居リマス之モ一向意味ハ變ハツテ居ラヌヤウデアリマス御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シテ次ハ黒字ノ五十條今度ノ四十七條デアリマス之ハ一項デ少シ號ノ順序ガ變ハツテ居ル丈ケデ二項ノ終リガ「其變更ヲ以テ他人ニ對抗スルコトヲ得ス」ト云フノモ別ニ說明ハ要リマスマイ
穗積陳重君
唯ダ文章ヲ拵ヘル爲メデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ朱書ノ通リニ決シマス次ハ舊五十一條今度ノ四十八條之モ別ニ意味ハ變ハラヌヤウデアリマスカラ其通リニ決シテ今度ハ前ニ戻ツテ黒字ノ四十九條今度モ四十九條
第四十九條 法人カ其事務所ヲ移轉シタルトキハ舊所在地ニ於テハ一週間内ニ移轉ノ登記ヲ爲シ新所在地ニ於テハ同期間内ニ第四十七條第一項ニ定メタル登記ヲ爲スコトヲ要ス同一ノ登記所ノ管轄區域内ニ於テ事務所ヲ移轉シタルトキハ其移轉ノミノ登記ヲ爲スコトヲ要ス
穗積陳重君
之ハ此前大分議論ガ出マシタガ能ク考ヘマシタガ成程少シ舊五十條ノ法人設立ノ必要條件ト云フコトガ十分ニ分ツテ居リマセヌカラ今度ハ明カニ其箇條ヲ示シマシタ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ之モ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ黒字ノ五十二條修正ノ五十條之ハ「其通知ヲ受ケタル」ガ「其通知ノ到逹シタル」ト直ホリ二項ノ終リガ「他人ニ對シテ法人タル效ナシ」ガ「他人ハ其法人ノ成立ヲ否認スルコトヲ得」ト云フコトニ爲ツテ居リマス
第五十條 第四十六條第三項、第四十七條及ヒ前條ノ規定ハ外國法人カ日本ニ事務所ヲ設クル場合ニモ亦之ヲ適用ス但外國ニ於テ生シタル事項ニ付テハ其通知ノ到逹シタル時ヨリ登記ノ期間ヲ起算ス
外國法人カ始メテ日本ニ事務所ヲ設ケタルトキハ其事務所ノ所在地ニ於テ登記ヲ爲スマテハ他人ハ其法人ノ成立ヲ否認スルコトヲ得
梅謙次郎君
此「效ナシ」ト云フノハ其時ニ非常ニ議論ガアツタノデアリマス速記録ニ胎ツテ居リマセウガ精神ニ於テハ前條前々條ト同ジコトデアリマス
穗積八束君
之ハ「否認スルコトヲ得」ト言フトヽヽヽヽヽ
梅謙次郎君
元トカラサウデアツタ其事ハ吾々カラ說明致シマシタガ「效ナシ」ト言フトサウ云フヤウニハ見惡クイカラ夫レデ此通リニ改メマシタ
議長(箕作麟祥君)
他ニ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ新規ノ五十一條之ハ前ニ削除ニ爲ツタ黒字ノ第四十七條第二項ガ其儘此處ニ這入ツタノデアリマスカラ別ニ御說明ハ要リマスマイカラ決シマス次ハ修正ノ五十二條之ハ一項ニ「事務所ヲ」ガ這入ツテ明瞭ニ爲ツタ丈ケデアリマスカラ御發議ガナケレバ此通リニ決シマス次ハ修正ノ第五十三條一項ニ「一人又ハ數人ノ」ガ這入ツテ居リマスガ別ニ變ハツタコトモアリマスマイ
穗積陳重君
之ハ監事ノ方ト文章ヲ揃ヘル爲メデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レカラ二項ノ終リガ「法人ノ事務ハ理事ノ過半數ヲ以テ之ヲ決ス」ト爲リマシタガ
梅謙次郎君
「多數」ト云フト比較多數デモ宜シイコトニ爲ル
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ朱書ノ通リニ決シマス次ハ修正ノ五十五條之ハ何時モノ文例ニ倣ツタニ過ギヌト思ヒマス別ニ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ修正ノ五十六條後半ガ「トキニ限リ特定ノ行爲ノ代理ヲ他人ニ委任スルコトヲ得」ト云フノハ
梅謙次郎君
意味ハ明カニシタ丈ケデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ朱書ノ通リニ決シテ次ハ修正ノ五十七條「爲メニ」ノ「ニ」ヲ削リ「選任スヘシ」ノ「ヘシ」ヲ削ル次ハ修正ノ五十八條ハ「間ニ」ヲ削リ終リガ「選任スルコトヲ要ス」ト爲ツテ居ル之モ文例ニ倣ツタノデ次ハ修正ノ六十條ノ二號ノ「施行」ガ「執行」ニ三號ガ四號ト二ツニ爲ツテ三號ガ「執行ニ付キ不整ノ廉アルコトヲ發見シタルトキハ」云々ト爲ツテ舊トノ但書以下ガ四號ニ爲ツテ居ルヤウデアリマスガ之ハ少シ御說明ヲ
第六十條 監事ノ職務左ノ如シ
一 法人ノ財產ノ狀況ヲ監査スルコト
二 理事ノ業務執行ノ狀況ヲ監査スルコト
三 財產ノ狀況又ハ業務ノ執行ニ付キ不整ノ廉アルコトヲ發見シタルトキハ之ヲ總會又ハ主務官廰ニ報告スルコト
四 前號ノ報告ヲ爲ス爲メ必要アルトキハ總會ヲ招集スルコト
穗積陳重君
之ハ格別ノコトモアリマセヌ前ノデハ不十分デアツタノデアリマス本條デハ監事ノ職務ノコトヲ書テ置キマシタガ「報告ヲ爲善ス爲善メ特ニ總會ヲ招集スルコトヲ得」ト書テ置クト報告ヲ爲ス必要ガアツテモ一向默ツテ居ルコトガ出來ル招集ヲセヌデモ宜シイト云フヤウニ見ヘマス夫故ニ本案ノヤウニ是非トモ招集シナケレバナラヌト云フコトニシマシタ前ノ文章モ其積リデアリマシタガ能ク其意味ヲ顯ハシテ居ラナカツタノデ其意味ヲ明カニスル爲メニ斯ウ改メタノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
本條モ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス夫レカラ修正ノ六十二條之モ赤イ字ハ大分這入ツテ居リマスガ唯ダほんノ字句ノ修正ト思ヒマス
梅謙次郎君
全クサウデアリマス次ノ條ト揃ヘル爲メニ此前ノデハ揃フテ居ラヌデアリマシタ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ此六十二條モ朱書ノ通リニ決シマス其次ノ六十三條之ハ但書ガ削ツテアリマスガ
第六十三條 總會ノ招集ハ少クトモ五日前ニ其會議ノ目的タル事項ヲ示シ定款ニ定メタル方法ニ從ヒテ之ヲ爲スコトヲ要ス
穗積陳重君
此但書ハ後ニ送ツテアリマス新規ノ第六十五條デアリマス之ヲ送リマシタ理由ハ本條ハ招集ノコトガアリマス其但書ニ議事ノコトガ書テアルノハ不都合デアリマスカラ夫故ニ送リマシタ
議長(箕作麟祥君)
御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ修正ノ六十四條ハ二項ガ削レテ居リマスガ
第六十四條 社團法人ノ事務ハ定款ヲ以テ理事其他ノ役員ニ委任シタルモノヲ除ク外總テ總會ノ決議ニ依リテ之ヲ行フ
穗積陳重君
之ハ六十六條ニ送リマシタ之ハ表決ノコトデアリマスカラ表決ノ所ニ一諸ニ纏メマシタ
議長(箕作麟祥君)
夫レカラ新規ニ六十五條ガ這入ツテ居リマスガ之ハ一應
第六十五條 總會ニ於テハ第六十三條ノ規定ニ依リテ豫メ通知ヲ爲シタル事項ニ付テノミ決議ヲ爲スコトヲ得但定款ニ別段ノ定アルトキハ此限ニ在ラス
穗積陳重君
之ハ前ニ申シマシタ通リ議事ニ關シテ頗ブル疑ノ多ウカツタ箇條デアリマス舊トモサウ云フ意味デ這入ツテ居リマシタガ黒字ノ六十四條ト云フモノハ招集スルニハ必ズ目的タル事項ヲ示サナケレバナラヌ總會ガアルト其時ニ突然他ノ議題ヲ出ス樣子ガ宜シイト突然出スト云フヤウナコトニナルト社員ノ利害ニ關スルコトデアリマスカラ其目的ヲ示ス其結果トシテ通知ヲシナイコトニ付テハ議決スルコトハ出來ナイト云フコトガ出テ參リマス併シ夫レ斗リデハ大變不都合ナコトモアリマスカラ能ク諸國ノ例ニモアリマス如ク或ル利害ノ重大ナラザルモノニ付テハ定款ヲ是丈ケノモノハ其時ニ發議シテモ宜シイト云フヤウナコトガ定メテアルトキハ夫レハ宜シイ事柄ハ少シモ變ハツテ居リマセヌ
議長(箕作麟祥君)
只今穗積委員ノ御說明通リデ別ニ御發議ガナケレバ此通リニ決シマス次ハ黒字ノ六十六條ノ二項ハ前ノ黒字ノ六十五條ノ二項ヲ此處ニ送ツタノデアル三項ノ「前二項ノ規定」云云ハ之モ前ニアツタノデアリマス
第六十六條 各社員ノ表決權ハ平等ナルモノトス
總會ニ出席セサル社員ハ書面ヲ以テ表決ヲ爲シ又ハ代理人ヲ出スコトヲ得前二項ノ規定ハ定款ニ別段ノ定アル場合ニハ之ヲ適用セス
穗積陳重君
此處デ一寸一言シテ置キマス此第二項前半ハ舊トノ第六十五條ノ第二項ヲ其儘持ツテ來マシタ卽チ表決ニ關スル箇條デアリマスカラ此處ニ持ツテ來マシタ「又ハ代理人ヲ出タスコトヲ得」ト云フノハ之ハ實質ヲ改メタノデアリマセヌガ元ト法人ノ會議等ニ付キマシテハ代理人ヲ出スコトガ出來ルカ出來ヌカト云フコトモ或ハ疑ノアルコトデアリマス又隨分實際ハ代理人ヲ出スコトヲ定款ヲ以テ限ツテアル例モ多クアリマス社員ノ中デナケレバ委任スルコトハ出來ヌトカ或ハ限ツテアリマセヌト云フト壯士ノヤウナ者ヲ代理人ニ出シテ其議場ヲ騒ガスト云フヤウナコトモアリマス兎ニ角疑ヒノアルコトデアリマスカラ「代理人ヲ出スコトヲ得」トシマシタ固ヨリ前ノ議決ノ精神モサウデアツタト思ヒマス又法人ト云フモノハ公益ニ關スルヤウナモノガ多イノデ本人デナクテハ招集ノ議事ニ與カルコトハ出來ナイト云フヤウナコトモアリマセウ夫レハ書面ヲ以テ意見ヲ出スコトモ出來ルト云フコトデ代人ヲ以テスルコトモ出來ルト云フコトヲ本則ニ置キマシタ若シ夫レガ不都合ナラバ定款ニ定メテ置ク斯ウ云フコトニ致シマシタ
議長(箕作麟祥君)
本條ニ付テ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ハ黒字ノ六十八條是ハ二項ニ分ケテアリマシテ「主務官廰」ガ下ノ方ニ爲リマシタ
第六十八條 法人ノ業務ハ主務官廰ノ監督ニ屬ス
主務官廰ハ何時ニテモ職權ヲ以テ法人ノ業務及ヒ財產ノ狀況ヲ檢査スルコトヲ得
穗積陳重君
前ノ文章デハ「之ヲ監督スルコトヲ得」ト云フヤウニ見ヘマスカラ
議長(箕作麟祥君)
此條モ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス六十九條ハ二項ガ「社團法人ハ前項ニ掲ケタル」ト直ツタ丈ケデアリマス七十條ハ「四分三以上ノ」ト直ホリ又但書ノ這入ツタノハ上文ニアツタモノヲ但書ニシタ丈ケデほんノ字句ノ修正ノヤウニ思ヒマス次ハ七十三條ノ一項ノ「歸屬權利者」ト云フコトハ文章ガまづいト云フノデ「指定シタル」ト直ツタノデゴザイマセウ
梅謙次郎君
サウデス
議長(箕作麟祥君)
其次ノ項ハ「定メサルトキハ」ト云フノガ「定メサリシトキハ」ト直ホリ「目的ト」ガ「ニ」ニ直ツタ丈ケデ別ニ御發議ガナケレバ其通リニ決シマス夫レカラ七十五條
第七十五條 法人カ解散シタルトキハ破產ノ場合ヲ除ク外理事其淸算人ト爲ル但定款若クハ寄附行爲ニ別段ノ定アルトキ又ハ總會ニ於テ他人ヲ選任シタルトキハ此限ニ在ラス
穗積陳重君
之モ舊トノ通リノ意味デアリマス
梅謙次郎君
意味ハ少シモ變ハリマセヌガ文章ガまつかつたカラ直ホシマシタ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ七十五條モ朱書ノ通リニ決シマス次ハ七十六條ハ「カ」ガ削レ「生スヘキ」ガ「生スル」ト直ツタ丈ケデ次ハ七十七條ハ但書ガ削レマシタガ之ハドウデスカ
第七十七條 重要ナル事由アルトキハ裁判所ハ利害關係人若クハ檢事ノ請求ニ因リ又ハ職權ヲ以テ淸算人ヲ解任スルコトヲ得
穗積陳重君
此但書ヲ削リマシタノハ是迄議決ニナリマシタ例ニ依リマシテ此手續法ハ本案カラハ可成省クト云フ理由ニ依ツテ之ヲ削リマシタノデ此事柄ヲ止メテ仕舞ウト云フ譯デハアリマセヌ尤モ抗告ノコトハ只今ノ非訟事件手續法ト云フモノハ斯ウ云フ場合ニハ當ルマイト思ヒマスガ乍併何レあれモ非訟事件手續法デアリマスあれハ認可ノ申請ノ決定ニ對シテハ民事訴訟法ノ規定ニ從ヒ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得ルト云フノデ斯ウ云フ場合ガ外ノ場合ニモ色々出ルト思ヒマス兎ニ角非訟事件手續法デ斯ウ云フ事ハ含ムヤウニ爲ルト思ヒマスカラ「但其命令ニ對シ卽時抗告ヲ爲スコトヲ得」ト云フコトハ本條デ削ルコトニ爲リマシタノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
只今ノ但書削除ハ別ニ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマス次ノ七十八條之ハ「之ヲ主務官廰ニ」ト順序ガ違ツタ丈ケデ又ハ「淸算中」ノ下ニ「ニ」ガ這入リ「爲シ」ノ下ニ「且」ガ這入ツタ丈ケデ別ニ御發議ガナケレバ此通リニ決シマス夫レカラ八十條ノ二項ノ「然レトモ」ガ「但」ト爲ツタ丈ケデ之モ朱書ノ通リニ決シマス八十一條ノ「債務ヲ濟了シタル」ガ「債務完濟ノ」ト直オリマシタ之モ一向意味ガ變ツタノデアリマセヌ八十二條ノ「法人ノ財產ヲ以テ」ガ「法人ノ財產カ」ト直ホリ「完濟スル能ハサルコト」ガ「完濟スルニ不足ナルコト」ト直ツタ丈ケデ意味ガ變ツタノデアリマセヌカラ御發議ガナケレバ其通リニ決シマス八十三條ノ削除之ハ如何デスカ
第八十三條 削除
穗積陳重君
之ハ先取特權ノ規定ノトキニ申シテ置キマシタガ先取特權ノ所ノ訟事費用ト云フモノノ中ニ淸算ノ費用抔モ皆籠ツテ居リマス此處ニ擧ゲマシタ場合ニハマダ先取特權ノ所ガ議決ニナツテ居リマセヌ中ニ案ヲ出シマシタノデアリマス先取特權ノ一般ノ規定ガ出來マシタ以上ハ之ハ重複ニ屬スルト思ヒマスカラ削ツテ置キマシタ
議長(箕作麟祥君)
只今穗積委員ノ御說明ノ通リ重複デ削ツタト云フコトデアリマスカラ御發議ガナケレバ削除ニ決シマス次ノ修正八十三條之ハ大層赤イ字ガ這入ツテ居リマスガ少シ變ツタ丈ケデ一向實際ノ變更デハナイト思ヒマスガ
第八十三條 法人ノ解散及ヒ淸算ハ裁判所ノ監督ニ屬ス
裁判所ハ何時ニテモ職權ヲ以テ前項ノ監督ニ必要ナル檢査ヲ爲スコトヲ得
穗積陳重君
之モ六十八條ト同ジコトデアリマス
議長(箕作麟祥君)
之モ御發議ガナケレバ朱書ノ通リニ決シマスソレカラ八十五條ノ三號ニ「主務官廰又ハ裁判所ノ」ト這入リマシタガ之ハ唯ダ明白ニ爲ツタ丈ケデゴザイマセウ
穗積陳重君
サウデス
議長(箕作麟祥君)
之モ御發議ガナケレバサウ決シマス八十七條ガ削除ニ爲ツタノハ
第八十七條 削ル
穗積陳重君
之モ前ノ七十七條但書ヲ削ツタノト同樣デ如何ニモ民法ノ中ニ「裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ科ス」ト云フコトヲ入レルノハつらいコトデアリマスカラ之ハ矢張リ非訟事件ノ手續法ニ讓ル方ガ宜シイト思ヒマス又聞ク所ニ依レバ矢張リ斯ウ云フ事ガ商法ノ方ニモ同ジヤウニ澤山ニ出テ來ルト云フコトデアリマスサウスルト夫レ等ノモノト手續法ノ方ニ讓ツタ方ガドウモ釣合ヒガ宜カラウト云フ考ヘデ本條モ事柄ヲ無クスルト云フ積リデナクシテ之ヲ削ツタノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ之モ御發議ガナケレバ削除ニ決シマスガ
穗積八束君
今法人ノ所ガ濟ミマシタカラ一寸大體ノコトニ付テ承ツテ置キマスガ法人ハ此法律ノ規定デナケレバ出來ナイ此法律カ又ハ他ノ法律デナケレバ出來ナイト云フコトニ爲ツテ民法デハ仕方ガナイト云フコトニ爲ツテ居リマス又商事會社ハ商法抔デ極マルデゴザイマセウガ商事會社デナイモノハヽヽヽヽヽ認可スルト云フコトニ爲ツテ居リマスガ一體國ガ法人デアルトカ行政區書ガ法人デアルトカ云フヽヽヽヽヽ表題ノヤウナ所ニヽヽヽヽヽ民法ノ上デハヽヽヽヽヽヽヽヽ
穗積陳重君
國ガ法人デアルト云フコトハ是迄ノ民事訴訟法又ハ民事訴訟法ノ附屬法抔ニ依ツテ兎ニ角少ナクモ法人トシテノ訴訟能力ト云フモノヲ持ツテ居ルト云フコトハヽヽヽヽヽ而シテ其方ハ矢張リ法律ニ依ツテ是迄認メラレテ居リマスルモノデ特別ニ廢サレヌ以上ハ是迄法人タル資格ヲ得テ居リマス行政區劃ニ對シテ自治制ニ關シテモ法律ニ依ツテ法人ト云フコトニ認メラレテ居リマスカラ夫故ニ矢張リ本法第三十四條ノ規定ト精神ヲ同フシテ居リマスルモノト思ヒマス是ラバ皆成立ガ法律デ認メタモノト思フノデアリマス
穗積八束君
此三十四條ノ意味デハ法人ハ此法律ニ依ツテ主務官廰ノ許可ヲ得テ成立スルカ又ハ他ノ法律ニ依ツテ例ヘバ市町村制抔デ――――法人トシテ一個人ト同ジキ權利義務ヲ有スルト云フコトガ法律ニ書テアルトカ又ハ主務官廰デ許可ヲ受ケルニ付テハ法人ト爲ルト云フコトガヽヽヽヽアリマス法律ノ解釋ノ結果デ夫レガ法人ト爲ルト云フヤウナコトヲ此三十四條デ書テ置クノデハアルマイト思ヒマス行政區劃ノヽヽヽヽ其他ノ法律デモ成程間接ニハ法人デアルト云フコトガ見ヘルカモ知レマセヌガ市町村制ノ外ニハ府縣制デアルトカ郡制デアルトカ郡ガ法人デアルトカ法人デナイトカヽヽヽヽ併シ之ハ財產ヲ持ツテ居ルト云フ所カラ見レバ法人カモ知レマセヌガ何ンダカ此法律ガヽヽヽヽ法律ノ明文デ法人デアルト斯ウ明言シタモノカ又ハ此手續ニ依ツテ主務官廰ノ許可ヲ得タルモノデアルカラ法人デアル其他ノモノハドウモ法人トシテ民法ノヽヽヽヽモノデアルカラ法人デナイト云フコトニ爲ツテ或ハヽヽヽヽ強ヒテ御說明ヲ煩ハスノデハアリマセヌガドウモ私ノ考デハヽヽヽヽヽヽヽ
穗積陳重君
夫レハ古ルイ議論デ此議場ニ矢張リ一番初メニ出マシタ議論デアリマス吾々モ其時ニ說明シマシタノガ慥カ斯ウ云フコトデアツタト記憶シマス法律ヲ作ツテ其法律ガ之ヲ例ヘバヽヽヽ法人デアルゾ或ハ日本民法ハ法人デアルゾ斯ウ明言ヲセヌデモ法律デ資格ヲ與ヘレバ勿論夫レハ法人デアル夫故ニ法律ノ規定ニ依ツテ法人ヲ成立スルコトガ出來ル本法ニ依レバ―――此個條ニ依ツテ行政官廰ノ許可ヲ得ルノデ此規定ニ依ルニ非ザレバ―――此規定デ之ハ法人トスルト云フコトヲ明言シナクテモ―――直接ニ明言シナクテモ凡テ法人タル資格ヲ與ヘタトキニハ矢張リ夫レハ法律ノ規定ニ依ツテ成立スルノデアル斯ウ云フコトヲ慥カ前ニ申シテ置イタト記憶シテ居リマス
議長(箕作麟祥君)
宜シウゴザイマスカ夫レデハ夫レ丈ケノ―――只今ノ所ノ八十七條ハ削除ニ決シマス次ハ「物」ノ所ニ移ルノデアリマスガ之ハ一昨目御出席ニナツタ御方ハ御覽ニ爲ツタラウガ御出席ニナラヌ御方モアツタカラ夫レニ直グ今日議スルト云フコトハ少シドウモ
本野一郎君
始メテデナイカラ
議長(箕作麟祥君)
來ル二十日ニ議スルト云フコトヲ申シテ置キマシタ
土方寧君
私ノ所ニハ二十日ノ通知ハシテナイ
議長(箕作麟祥君)
夫レハ此處デ御出席ニ爲ツタカラ御出席ニ爲ツタ方ハ宜シイガ今日始メテ御出席ニ爲ツタ方此前御出席ニ爲ラヌ方ハ御覽ニ爲ラヌト思ヒマス
高木豐三君
私ハ受取ラヌ一人デアリマスガ乍併之ハ事實ヲ言ヘバ昨日送ツテ研究ニ爲ツタガドウカト云フコトヲ言フト皆さんヤルト云フコトナラバ私ハヽヽヽヽヽヽ
議長(箕作麟祥君)
之ハ二十日ニヤルト云フコトヲ言ツテ置テ今日ヤルト云フコトモ何ンダカ
富井政章君
決ヲ願ヒマス
議長(箕作麟祥君)
決ヲ採リマセウカ、ヤルト云フ方モアリマスカラ
本野一郎君
私ハヤルト云フ建議ヲ致シマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ一ツ採決シマセウ兎ニ角二十日ニヤルト云フコトヲ通知ヲ出シマシタカラ本野君ノ御說ハ修正デアリマス之ニ付テ決ヲ採リマス今日續テ「物」ノ部ノ整理會ヲヤルト云フコトニ贊成ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者正半數
議長(箕作麟祥君)
半數デアリマスカラ私ハ通知ノ通リニ致シマス