明治民法(明治29・31年)

法典調査会 第2回 議事速記録

参考原資料

第二回法典調査會議事速記録
出席委員
箕作麟祥君
本野一郎君
土方寧君
村田保君
山田喜之助君
木下廣次君
田部芳君
高木豐三君
穗積八束君
淸浦奎吾君
都筑馨六君
井上正一君
奧田義人君
三崎亀之助君
横田國臣君
星亨君
元田肇君
長谷川喬君
南部甕男君
磯部四郎君
三浦安君
中村元嘉君
梅謙次郎君
富井政章君
穗積陳重君
箕作委員議長席ニ着ク
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ是ヨリ會議ヲ開キマス、本日ハ總裁副總裁共ニ缺席デアリマスカラ例ニ依リマシテ私ガ代理ヲ致シマス
(書記朗讀)
第百五條 代理權ノ範圍ニ付キ別段ノ定メナキトキハ代理人ハ管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有ス
財產ノ保存、改良又ハ利用ノ爲メニスル行爲ニシテ權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノハ之ヲ管理行爲トス但果實又ハ損敗シ易キ者ヲ有價ニ處分スルハ此限ニ在ラス
(參照)人一九三、一九四、取二三二、代人規則四、佛一九八八、澳一〇〇八、蘭一八三三、伊一七四一、瑞債務法三九、三九四、モンテネグロ四〇〇、西一七一三、白草二〇七〇、二〇七一、獨商四二、印契一八八
富井政章君
本條ハ旣成法典ヲ始トシ佛蘭西伊太利其他ノ國ノ民法ニモアル規定デゴザイマス、此代理權ノ範圍ヲ定ムルト云フコトハ、必竟意思ノ解釋ニナルコトデアリマスケレドモ、代理人ノ爲スベキ事ヲ定メズ漠然ト廣イ委任ヲ爲シタ場合ニ賣ルコトモ出來ル、贈與スルコトモ出來ル、抵當ニ入レルコトモ出來ルト云フコトデアツテハ、本人ノ意思ニ反シ甚ダ危險ノ事デアラウト思ヒマス、夫故ニ然ウ云フ漠然トシタ廣イ委任ヲ爲シタ場合ニハ、代理人ハ管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有スルモノト定メル事ガ實際甚ダ必要デアラウト考ヘマス、夫故ニ第一項ノ規定ニ付テハ永イ說明ハ無用デアラウト思ヒマス、唯如何ナル行爲ガ管理行爲デアルカト云フ事ニ付テハ、凡ソハ學說ト判決例デ極マツテ居リマセウケレドモ、之ヲ法文ニ極メルコトガ甚ダ必要デアルト考ヘタノデアリマス、代理人ノ權限ニ關スルコトデアリマス、代理人ノシタ事ガ有效デアルカ、又ハ無效デアルカト云フ事ハ實際極メテ肝要ナ問題デアリマス、又佛蘭西抔ニ於テモ管理行爲ニ付テハ判決例ガ確カニ定マツテ居ラナイ、吾々ノ考ヘデハ管理行爲ト云フモノハ略ボ本條第二項ニ書イテアルヤウナモノデアラウト思ヒマシテ此規定ヲ設ケタノデアリマス、文章ハ甚ダ宜シクナイ文章デ餘程困ツタノデアリマスケレドモ、文章ノ惡ルイノハ實際ノ必要ノ爲メニハ辛捧ヲセネバナラヌト思ヒマシテ此通リニ書イタノデアリマス
磯部四郎君
私ハ此第二項ノ「改良」ト云フ文字丈ケノ削除說ヲ提出致シマス、ト申シマスルモノハ此「改良」ト云フ文字ハ實ニ漠トシタ文字デ屡々世ノ中ノ事ヲ見マスルニ、改良改良ト云ツテ却テ其結果ハ害惡ニ歸スルコトガ屡々アリマスル、詰リ財產ノ保存トカ或ハ利用トカ云フコトニナリマスルト、惡ルイ事ノ結果ニナル氣遣イハアリマセヌガ、改良ノ結果ト云フモノハ、甲ノ宜イト思フタ事モ乙ノ惡ルイト思フ所ニナルコトモアリマスルシ、殊ニ又此管理行爲中ニ「改良」ト云フ文字ノ這入ツテ居ルカ爲メニ、佛蘭西法典抔デモ實際ニ於テ屡々此「改良」ト云フ文字ノ解釋上ニ付テ餘程困難ヲ生ズル實例モアリマスルカラ、詰リ代理抔ノ事柄ニ付テ其權限ヲ特ニ定メテ場合ニハ、財產保存ノ行爲ノミヲ以テ管理行爲トシテ、其保存ノ行爲中ニ改良ト云フカ如キ權限ガ、場合ニ依テ大ヒニ伸ビタリ縮ンダリスルヤウナ、多少危險ナ恐レノアル文字ヲ入レルノハ宜シクナカラウト思ヒマスルカラ、夫レデ此第二項中ノ「改良」ト云フ文字ハ削除アランコトヲ以テ修正案トシテ提出致シマス
土方寧君
此本條ノ大體ニ付テハ只今起草委員ノ御說明ヲ聞キマシタカラ了解シタ積デアリマス、ケレドモ尙ホ本條ヲ能ク考ヘテ見ルト色々疑ヒヲ起ス點モゴザイマスルカラ質問ヲ致シマス、第一ハ本條ノ參照ノ爲メニ取得編ノ二百三十二條ガ引イテアリマスガ、此條ノ本條ニ當ル所ハ卽チ二項デアラウト考ヘマス、此二百三十二條ニハ總理ノモノモアリ、部理ノモノモアル、總理代理部理代理ト云フ事ガ、此取得編二百三十二條ニアリマス、確カ現行ノ代人規則ニモアルダラウト思ヒマス、ソコデ此代理ニ關スル本案ノ中ニハ、代理ノ部類、卽チ總理代理、部理代理抔ノ區別ガアルト云フコトハ何處ニモ書イテアリマセヌガ、起草委員ノ御考ヘデハ、此代理ノ中ニハ總理代理部理代理ト云フ區別ガアルヤ否ヤト云フ事ヲ御聽キ申シタイ、夫レガ一ツ、モウ一ツハ代理權ノ範圍ハ解釋ノ問題デアルト云フコトハ承リマシタガ、如何ニモ然ウデアラウト思ヒマス、解釋ヲスルニ付テハ取得編二百三十三條ノ如ク、委任シタ事ヲ爲スニ付テ當然爲スコトガ必要デアルト云フヤウナ事ハ、無論包含セラレテ居ルモノト解釋シテ宜シイト思ヒマスガ、如何デゴザイマセウカ、念ノ爲メニ夫レヲ伺ヒマス
梅謙次郎君
第二點ヲもう一遍願ヒマス
土方寧君
其第二點ハ、代理權ノ範圍ハ解釋ノ問題デアル、其解釋ヲスルニ付テハ委任シタ事ヲ爲スニ必要ナル事ハ委任シタモノト看做スト明ニ言ハナクツテモ、明ニスルコトヲ委任シタモノト看做スト云フ解釋ヲスルノデアリマセウカ何ウデアラウカ、然ウデアラウト思ヒマスガ念ノ爲メニ伺ヒマス、夫レカラモウ一ツハ本條ノ參照ニ引イテ御ザイマス人事編ノ百九十四條、又本案ノ十五條デス、本案ノ十五條ト申シマスルノハ、准禁治產者カ保佐人ノ同意ヲ得ナケレバ爲ス事ガ出來ヌ行爲ガ列擧シテアリマス、此人事編ノ百九十四條、又ハ本案ノ十五條ノ如キモノハ、此百五條第二項ノ所謂管理行爲ト云フモノノ反對ヲ示シタモノト見テ、起草委員ノ御考ヘデハ違ヒアリマセヌカ大體ニ付テ伺ヒマス、皆一々然ウダラウト云フコトデハアリマセヌ、十五條前ニ自治產未成年者ニ似寄ツタ箇條ガアツタノデスケレドモ、自治產未成年者ハ省クト云フ旨意ヲ削ツテ仕舞ヒマシタガ、此保佐人ノ同意ヲ得ナケレバ爲スコトガ出來ヌト云フ中ニ列擧シテアル、是ハ管理行爲デナイモノト見タ譯デゴザイマセウカ、卽チ管理行爲ト云フモノデ其反對ノ點カラ見テ御出シニナツタモノト見テ宜シイト云フヤウニ解釋セラルルノデアルガ然ウデアルカナイカ夫レカラモウ一ツハ
富井政章君
まあ其位ニシテ貰ヒタイ
土方寧君
夫レデハ後トカラ續ヒテ問ヒマス、未ダもう二ツ許リアリマス
富井政章君
只今御質問ニナリマシタ三點其第一ノ點ハ、旣成法典ニ謂フ所ノ總理代理ト云フモノハ本案ニ認ムルヤ否ヤ、夫レデ實際總理代理、總理代人トカ云フヤウナ辭ハ、慣習上多分使フコトニナルデセウ、併シ本案ニ於テハ然ウ云フ辭ヲ用ヰズニ濟ムデアラウト思ヒマスルカラ、法文ノ上ニ於テハ用ヰナイコトニナルデアリマセウ、財產ノ事ニ關シテ一切ノ事ヲ任ス、デ然ウ云フ者ヲ總理代人トスルヤ否ヤ、併シ私ノ解スル所デハ、矢張リ第百五條第一項ヲ適用シテ、然ウ云フ淡泊ニ事ヲ委任シタモノハ矢張リ管理行爲シカ持タヌト云フ意見デアリマス、第二點ノ御質問ハ能ク分カラヌデアリマシタガ、察スルニ取得編二百三十三條第一項ノ事デアラウト思ヒマス、「代理ハ總理ナルト部理ナルトヲ問ハス其目的タル行爲ヨリ必然ニ生ス可キ事柄ヲ暗ニ包含ス」トアル、是ハ採用スル積リデアルカナイカト云フ御質問デアツタカト思ヒマス、併シ是ハ法文ニ唄ハズトモ無論ノ事デアラウト思ヒマス、是ハ委任シタ事柄ノ中ニ當然這入ツテ居ルコトト思ヒマシテ、條文ヲ設ケナイノデアリマス、夫レカラ其三ノ點、卽チ人事編ノ第百九十四條、及ビ本案ノ十五條ニ列擧シテアル所ノ行爲ノ外ノモノハ悉ク管理行爲デアルカト云フ御問デアリマシタ
土方寧君
少シ違ヒマス、夫レ程はつきり言ツタノデアリマセヌ、あれハ管理行爲デナイ管理行爲ノ反對ノ方デアルト云フコトヲ示スト云フ工合ノ譯ニナルヤ否ヤト云フコトヲ質問シタ積リデアリマス
富井政章君
其二條ニ書イテアルモノハ殆ド處分行爲デアツテ、此兩條ニ書イテナイモノハ殆ド皆管理行爲デアルト云フコトハ言ヘヤウト思ヒマス、一ツ一ツ細カニ此二個條ニ書イテアル外ニハ處分行爲ハナイ、又此二箇條ニ書イテナイ行爲ハ、悉ク管理行爲デアルト云フコトヲ今茲ニ斷言スルコトハ能クシマセヌケレドモ、書イテアルモノハ大抵皆處分行爲デアツテ、此外ニハ處分行爲ハアルマイ、又此外ノ行爲ハ殆ド皆管理行爲デアラウ、併シ只今モ申シタル通リ極ク一ツモ殘ラズ今ノ標準ニ據ルコトハ出來マイト思フ、ノミナラズ此兩條ニ記載シテアル行爲ノ中ニモ、一ツ管理行爲デアラウト思フコトガアリマス、卽チ第一ニ書イテアル「元本ヲ領收シ又ハ之ヲ利用スルコト」是ハ無論管理行爲ノ方デアラウト思ヒマス
土方寧君
モウ一ツ丈ケデ質問ヲ止メマス、然ウシテ私ハ削除案ヲ出シタイト思ヒマス、此百五條第二項ノ管理行爲ノ定義デゴザイマスガ、是ハ本案ノ三十一條ニモ此定義ヲ適用シテ差支ヘナイト云フ御考ヘデアリマスカ、三十一條失踪者ノ所デアリマス
富井政章君
卽チ三十一條ニ適用シテ無論差支ヘナイ積リデアリマス、此處ニ第二項ヲ置キマシタノハ、文章ハ苦說クアリマスケレドモ甚ダ必要デアラウト思フ譯ハ、此三十一條ノ場合ニモ管理行爲ノミト云フテ置イテ濟ム、後見ノ場合ニモ特ニ條文ヲ設クル必要ガナクナツテ來ル、然ウ云フ風ニ此處ニ管理行爲ノ何タルヲ示シテ置ケバ多クノ所ニ於テ唯管理行爲ト云フテ置ケバ濟ムト云フ便利ガアラウト思ヒマス
土方寧君
色々質問致シテ能ク了解致シマシタ、多ク質問ヲ致シマシタケレドモ其質問ノ點々ニ付テハ別ニ自分ノ豫知スル所ト違ヒアリマセヌカラシテ、本條ノ二項ヲ削除シテ差支ヘアルマイト云フ意見ヲ持テ居リマス、夫レデ二項ヲ削除スルト云フ說ヲ出シマス、成程管理行爲ハ何ウ云フコトヲ言フカト云フコトハ大切ナコトニ相違アリマセヌカラ、若シ分ラナケレバ成ル可ク分ルヤウニシテ置キタイト云フコトハ當然ノ事ノヤウニ見エマスケレドモ併シ之ヲ或ハ法律行爲トカ、財團法人ノ寄附行爲抔ト云フ色々ナ新シイ辭ニ比較シテ考ヘル時ニハ、管理行爲ト云フ辭ハ大變ニ宜イ辭デ、大體ハ辭デ能ク分カルコトデアラウト思ヒマス、之ヲ適用スル上ニ於テモ格別ノ間違ヒモアリマスマイト思ヒマス、然ウカト言ツテ二項ノ如キ定義ヲ掲ゲテ改良利用抔ト云フテ置イテモ、殆ド管理行爲ト云フ辭ト同ジ位ニ範圍ヲ定メルノハ困難デアラウト思ヒマスカラシテ、能ク分カツタヤウニ見エテ實ハ之ヲ事實ニ適用シタナラバ、却テ此改良ト云フノハどれ丈ケノ事ヲ言フカト云フヤウナ問題モ起ツテ、旣ニ先刻磯部君モ此「改良」ト云フ文字ヲ削除スルト云フ說ヲ出サレタ位デアル、夫レデ此前ニ失踪者ノ財產ヲ管理スルト云フ所ノ、三十一條ノ規定ノ管理行爲ノミヲ爲ス權限ガアルト書キ放シニシテ、管理行爲ト云フモノハ何事デアルカ斷ツテナイ、若シ管理行爲ト云フ事ヲ法文ノ中ニ使ツテ、其定義ガナケレバ意味ハ分カラヌカラ必要デアルト云フコトデアリマスレバ、寧ロ法典ノ前ノ方ニ管理行爲ノ定義ヲ下スガ宜カラウト思フ、私ノ考ヘデハ管理行爲ト云フ定義ハ解釋ニ任セテ宜シイト思ヒマスカラ、仕舞ヒノ方ニ於テ卽チ此第二部ノ部分ニ於テ、管理行爲ノ定義ヲ加ヘルヤウナコトハ甚ダ望マシクナイ、夫故ニ管理行爲ト云フノハ定義ヲ下サヌトモ大體ハ分ラウト思ヒマス、又下シタ所ガ能ク分カラナイ、唯自治ノ解釋ニ任セテ置イタラ宜カラウト思ヒマスカラ、夫レデ此二項丈ケハ削ルト云フ旨意デアリマス
井上正一君
私モ疑ヒガアルノデ諸君カラ御質問モ出テ或ハ削除ノ意見ガ出マシタガ、充分起案者ニ質問ヲシタイノデアリマス、夫レハ矢張リ本條ノ第二項デアリマスガ、是ハ管理行爲ノ標準ヲ示サレタ御積リノヤウニ見エマスガ、此「財產ノ保存改良又ハ利用ノ爲メニスル行爲ニシテ權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノハ」ト云フ事ハ、例ヘバ是ハ永小作等ノ契約モ、此代理人ノヤウナ者ガ出來ルモノデゴザイマセウカ、或ハ是ハ標準デアツテ、永小作等ノ事ハ或ハ何トカ制限スル御積リデアリマセウカ、矢張リ此標準デ以テ何處迄モ殆ンド處分ニ近イ所ノモノデモ何ンデモ管理行爲ノ此二項ノ標準ヲ適用セラルルト云フ御考ヘデアリマセウカ夫レガ一ツ、夫レカラ此「保存改良又ハ利用ノ爲メニスル行爲ニシテ」云々トアリマスルガ、此行爲ニ關シテ若シ必要ナ場合、借金デモシナケレバナラヌト云フヤウナ場合ニハ、矢張リ此中ニ含ンデ是ハ利用ノ爲メニスル行爲ニナルデゴザイマセウカ、全ク借金等ハ御禁ジニナル精神デアリマスカ、夫レ丈ケヲ伺ツテ置キタイ
富井政章君
御質問ノ第一點、卽チ永小作ノ如キモノハ、實ハ本條ニハ賃貸借ノコトモ載セヤウカト云フ考ヘモアツタノデスケレドモ如何ニモ錯雜シテ總則ノ條文トシテハ見惡クイト思ヒマシテ賃貸借永小作等ノ事ハ、第二編ノ中卽チ一ツハ第二編、一ツハ第三編、其所ニ於テ規定スルコトニ極メタノデアリマス、其所デ賃貸借ノ如キモ權限ヲ極メレバ半分迄ハ處分行爲、半分迄ハ管理行爲デアルト云フコトモ分カルヤウニナルト云フ積リデアリマス、第二ノ點ハ則チ借財ト雖ドモ必要ト認ムル場合ニハ出來ル精神デアルカ、又ハ何處迄モ出來ナイノデアルカト云フ御質問デアツタト思ヒマス
井上正一君
管理行爲ニ付テノ借金、卽チ保存或ハ利用ノ爲メニスル行爲ト言ヘバ、夫レ等モ這入ルト云フ御積リデゴザイマセウカ
富井政章君
無論然ウデアリマス、夫レデ是ハ權利ノ喪失ト云フモノヲ、實際辭ニ拘泥シテ解釋スルト云フコトハ裁判官ガセマイト思ヒマスシ、又然ウ云フ事ガアツテハナラヌ、例ヘバ人ニ贈物ヲスル、暑寒ニ進物ヲスルトカ云フヤウナ場合デモ、矢張リ權利ヲ喪失スルカラ出來ナイ、菓子箱一ツ贈ルコトモ出來ヌト云フコトニナル、ソコラハ餘程此本條ノ精神ニ付テ解釋ヲシテ往カナケレバナラヌ、何ウシテモ金ガナイ、併シほーツて置クト家ガ崩レル、差當リ借ルヨリ仕方ハナイト云フヤウナ場合ニハ出來ル事デアラウト思ヒマス、併シ濫用ハアツテハナラヌ、原則トシテハ何處迄モ出來ヌノデアリマスケレドモ、併シ夫レハ解釋ノ文面ニ拘泥セラレズシテ精神的解釋デ往ケルコトデアラウト思フ、何ウシテモ斯ウ云フコトハ幾ラ精密ニ書カウトシテモ、何ウシテモ幾分カハ判決例デ應用ハ圖ツテ往カナケレバナラヌト思ヒマス、原則トシテハ出來ヌ、併シ絶對的ニどんナ場合ニモ、どんナ小サイ借金デモ出來ヌト云フコトハ言ヘマイト思ヒマス
議長(箕作麟祥君)
一寸私ハ分カラヌカラ質問シマスガ、第二項ニ前ノ方ニ「管理トス」トアツテ「但果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルハ此限ニ在ラス」ト云フノハ、何ウ云フ譯デアリマスカ誠ニ分カリ惡クツテ困ル
富井政章君
是ハ少シ文章ガ惡ルウゴザイマスガ暫ク經ツテ修正案ヲ出シマス
議長(箕作麟祥君)
夫レナラ夫レデ宜シウゴザイマス
磯部四郎君
私ガ此「改良」ト云フ文字丈ケノ削除說ヲ提出シタ際ニ、土方委員カラノ質問ガアリマシテ、遂立消エニナツタヤウデアリマスガ、私ノ削除案モ餘リ突然ノヤウデアリマスカラ一寸伺ヒマスガ、此「改良」ト云フ事柄ニ付テ一二ノ例ヲ擧ゲテどんナ物ヲ含蓄セシメラルルト云フ御考ヘデゴザイマセウカ、隨分是ハあめりよらツしよんデゴザイマセウガ、是ハどれ位ノコトガあめりよらツしよんノ中ニ這入ルト云フ問題モ屡々アツタヤウデアリマスガ、夫レ丈ケヲ承ツテ置キマス、之デ立消エニナルノハ如何ニモ殘念デアリマスカラ一寸伺ツテ置キマス
富井政章君
何ウモ此改良ト利用トハ判然ト區別スルコトハ六ケ敷イトハ思ヒマスケレドモ少シ其心持ニ於テ違ウト思ヒマス、改良ノ方ハ物ヲ掴マヘテ言フ時ハ例ヘバ修複ヲセズトモ家ガ潰レハシナイ、潰レハシナイケレドモ今手當ヲスレバ長ク持ツ大丈夫ニナル保存ト迄ニハ往カナイ、併シ奢侈ノ目的ヲ以テスルノデハナイ、然ウ云フノガ改良ノ積リ、夫レカラ利用ノ方ハ例ヘバ銀行ニ預ケル或ハ銀行デナクテモ宜シイ人ニ貸ストカ無論利息ガ付テ居ラネバ利用トハ言ヘマセヌ、然ウ云ウ風ノ行爲ヲ言フタモノデ少シ其心持ニ於テ違ハウト思ヒマス
出席三浦委員
磯部四郎君
夫レナラ一寸私ノ考ヘデハ只今起草委員カラ御說明ニナリマシタ事柄デアリマスルト、隨分此保存ノ中ニ包含シヤウト云フ考ヘデアリマス、詰リ改良ト云フ文字ノ危險ナノハ一寸申シマスルト、不毛ノ地ヲ山林ニシタナラバ利益ヲ得ラレルダラウトカ、或ハ茶園ヲ田畑ニスレバ利益ヲ得ラレルダラウトカ云フノデ隨分善意デ改良シヤウト掛カツテ却テ本人ノ爲メニハ漠大ノ損失ヲ釀スヤウナコトモ間々アリマセウシ、又本人ノ爲メノミナラズ本人ガ然ウ云フ考ヘヲ持テヤツテモ屡々失敗アルコトモアリマス、只今家ヲ永ク保存スル爲メニ別段修繕ト云フ程ノ必要ニ至ラズトモ明年ヲ待タバ潰レルカモ知レヌ寧ロ本年ノ中ニ修覆シヤウト云フヤウナコトハ保存ト云フ所爲ノ中ニ充分包含シヤウト思ヒマス、夫レデ「改良」ト云フ文字ハアツテ無益ナルノミナラズ却テアツテ害ニナルコトト考ヘマスルシ、殊ニ又管理行爲ト云フ中ニハ大抵改良ト云フ文字ノ這入ラヌノガ一般デアル、又今日ノ日本ノ裁判例ニ置キマシテモ改良ト云フヤウナ事柄ハ、此管理行爲中ニハ這入ツテ居ルマイト考ヘマスカラ旁々以テ削除說ヲ提出致シマスルカラ、成ル可ク御贊成アランコトヲ國家將來ノ爲メニ希望致シテ置キマス
高木豐三君
私ハ土方君ノ削除說ニ贊成シテ置キマス、私ハ今一歩進ンデ第一項モ削除シタイト云フ考ヘガアリマシタガ、併シ能ク考ヘルト、日本ニハ是迄總理委任ト云フコトガアル、是ハ隨分久シク行ハレタ慣習デアリマスカラシテ矢張リ是ハ行ハレルダラウト考ヘル、其場合ニハ多ク斯ウ云フ解釋法ヲ定メテ置クコトモ或ハ實際ニ宜カラウト考ヘル、純粋ノ學問ノ理窟カラ言ヘバ、元來此委任ハ契約ノ主義ヲ採ル、然ウシテ第百條ニ於テ「代理人カ其權限内ニ於テ」云々トアル、旣ニ契約デ以テ權限ヲ指示スルト云フコトニナリマスレバ、無論其行爲ノ範圍ト云フモノハ定マツテ居ルノガ至當ダラウト思ヒマス、其他ノ場合ニ於テ此契約ノ中ニ何ウ云ウモノガ含ンデ居ルカト云フコトハ詰リ裁判官ノ解釋ニ任セルノガ相當デアラウト思ヒマス、ケレドモ今申ス通リ習慣ノ上ニ於テ或ハ別段ノ定メナクシテ廣イ委任モ爲ス場合モアロウト思ヒマスカラ、暫ク先ヅ第一項丈ケハ存スルコトニシテ第二項ハ全ク必要モナイ、現ニ起草委員自ラモ其範圍ヲ明示スルコトハ出來ヌ、是ハ却テ疑ヒヲ起スノ種ニナル、又是非之ガ必要デアレバ先キノ事務管理ノ所ニデモ往ツテ其大概ハ示スコトモ出來マセウ、此第二節ノ總則ノ所ニ於テ管理行爲ノ解釋ハ其當ヲ得ナイト思ヒマスカラ、兎ニ角第二項ヲ削除スル說ニ贊成シテ置キマス
富井政章君
原案ノ改正ヲ望ミマス、如何ニモ「此限ニ在ラス」ト云フノハ穩カデナイヤウデアリマス、夫レデ「之ヲ管理行爲トス」ノ下ニ在ル「但」ヲ削ツテ「果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スル亦同シ」斯ウ願ヒタイ
梅謙次郎君
先刻富井君カラ此「改良」ト云フ文字ノ說明ガアリマシテ、夫レデもう分カツテ居ルト思ヒマスケレドモ、磯部君ガ夫レニ付テ富井君ノ言ハレタ旨意ニ對シテ少シ違ツタ事ヲ言ハレタヤウデアリマスガ、或ハ未ダ此「改良」ト云フ文字ノ說明ガ足ラヌト思ヒマスカラ、私ガ「改良」ト云フ文字ノ最モ能ク當嵌マツテ外ノ文字ノ當嵌ラナイ場合ヲ一寸申シマス、例ヘバ茲ニ唐紙ガアル、此唐紙ト云フモノガ大變ニきたなくナツテ居ル、きたなくナツテ居ルケレドモ、無論此きたない唐紙ヲ建テ居ルカラト言フテモ別ニ家ノ保存モ出來ヌト言フ事モナイ、きたないカラト言ツテ別ニ張替ヘナケレバナラヌト云フ事ハ保存ノ爲メニハ必要デハナイ、利用ト云ツテモ夫レヲ今何カ外ノモノニ利用スルト云フノデハアリマセヌ、矢張リ元トノ儘ニシテ置クノデアリマス、ケレドモ其唐紙ハきたないニ依テ張替ヘヲスル、然ウ云フノハ何ウモ此保存利用トハ言ハレナイ矢張リ改良デアル、デ改良ト云フコトヲバ固ヨリ廣ク解シマスレバ、先刻磯部君ノ言ハレタ如ク、遂ニ害惡ニ至ル恐レモアリマセウケレドモ、夫レニハ下ノ「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フコトガアリマスカラ夫レデ大抵足リルト思ヒマス、夫レデ「改良」ト云フ文字ハ矢張リ必要デアラウト考ヘル、一寸其事丈ケヲ附ケ加ヘテ置キマス
長谷川喬君
私モ土方君ノ說ヲ贊成シテ置キマス、若シ此管理行爲ト云フモノノ定義ガ必要デアレバ、三十一條ニ於テ旣ニ管理行爲ト云フコトガ云ツテアリマスカラ、ソコニ置クベキモノデアラウト思ヒマス、旣ニ管理行爲ニ付テノ定義ヲ置クコトノ必要デナイト云フ理由ハ、土方君及ビ高木君カラ陳ベラレマシタガ、私ハ一歩退イテ之ヲ置カネバナラヌトシタ所ガ、是ハ此處ニ置クベキ場所デナイト思ヒマスカラ、成ルベク削除スル方ガ宜カラウト思ヒマス
星亨君
一寸質問致シマス、此二項ハ管理行爲ノ說明ト云フノデアリマスカ、又ハ幾分カ一項トハ違ツテ居ルケレドモ此管理行爲ニ準ズルト云フ意味ニナルノデアリマスカ、ソコノ所ガ分カラヌト、今富井君ノ言ハレタ「此限ニ在ラス」ト云フノガ「亦同シ」ト云フコトニナルト、處分迄ガ管理行爲ニ這入ツテ仕舞ウノデアリマスガ、是ハ說明ニ非ズシテ準管理ト云フコトデアリマスレバ「亦同シ」ト云フコトガ能ク分カリマスガ、說明デアルカ又ハ幾分カ違フテ居ルケレドモ、矢張管理行爲ノ中ニ入レルト云フ意味ニナリマスカ夫レガ疑ハシイ
富井政章君
第二項ハ第一項ノ說明ニ違ヒナイ、夫レカラ第二項ノ末段ヲ「亦同シ」ト云フコトニ改メマシタ譯ハ「之ヲ管理行爲トス」ノ上ニ入レルト如何ニモ文章ガ長クナツテ體裁ガ宜クナイノト、又一ツニハ準管理行爲ト云フヤウナコトニ見テモ宜カラウト思ヒマス、其譯ハ本來管理行爲ト云フモノハ處分行爲ニ對スルモノデ處分スルト云フコトガアツテハナラナイ、夫レガ何處迄モ本質デアル、唯果實又ハ損敗シ易キ物ニ限ツテ有償ニ處分スルコトガ出來ルト云フノデアリマスカラ「亦同シ」ト云フ風ニ言ヒ替ヘテ管理行爲トシテモ差支ヘナカラウト思ヒマス
梅謙次郎君
先刻カラ此百五條第二項ノ削除ノ說ガ出マシテ其一ツノ理由トシテ只今長谷川君竝ニ先刻高木君モ少シ其事ヲ述ベラレタ、第一此處ハ場所デナイト云フコトヲ頻ニ言ハレル、デ私共ノ考ヘルニハ若シ此規定ガ必要デアルト云フ以上ハ、場所ハ必ズ此處デナクテハナラヌト思ヒマス、旣ニ此前ノ三十一條デアリマシタカ、失踪ニ關スル規定ニハ管理人ハ管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有スルト云フコトヲ書イテ置キマシタ、あの時ニ私ガ記憶シテ居リマスガ、どなたカ一人リデハナカツタト思ヒマスガ、管理行爲ノ中ニハ何ウ云フモノヲ含マセルカ先キデ何カ此管理行爲ト云フモノノ說明デモ設ケル積リデアルカト云フ質問ガアツタヤウニ記憶シテ居リマスガ、其節ニモ私ハ答辯ヲシタガ、其時ハ私一己ノ考ヘデアリマシタケレドモ、私一己ノ考ヘデハ是ハ必ズ代理ノ所デ掲ゲルコトニナルデアラウ、如何トナレバ先刻高木君ノ言ハレタ如ク契約丈ケニ關スル代理ノミヲ規定スルノデハナイ、法律上ノ代理モ矢張リ此中ニ含マレテ居ルノデアリマス、卽チ裁判所ガ選任スル所ノ管理人或ハ法律ガ直接ニ何ウ云フ人ヲ以テ管理人ニスルト云フ事ヲ書イテアル場合デモ、亦特別ニ其權限ヲ極メテアル場合又極メテナイ場合デモ矢張リ此中ニ這入ルノデアリマス、契約ノ事丈ケナラバ無論契約ノ所ニ入レルト云フ必要モアリマセウガ契約上ノ事斗リデナイ、今一ツハ縱令契約上ノ事柄デアツテモ權限ガどれ丈ケアルト云フコトハ、是ハ契約ヨリ生ズル所ノ卽チ直接ノ委任者ト代理人トノ關係デナクシテ、寧ロ代理人ガ外ニ向ツテ働ク所ノ範圍ニ屬スル、卽チ本人ト第三者トノ關係ヲ示スノデアリマスルカラシテ是ハ此處ニ掲ゲルガ必要デアル、若シ右ノ二ツノ理由ニ依テ此事ヲ規定スルノガ必要デアルト云フコトデアレバ、其場所ハ必ズ此處デナケレバナラヌ、夫故ニ若シモ此處ニ之ヲ置カナケレバナラヌト云フ事デアツタナラバ外ニ置ク所ハナイ、若シああ云フ所ニ置ケバ失踪ノ規定デアツテ代理ノ規定デハナイ、若シモソコニ置クト從ツテ後トニナツテ管理行爲ノ事ガ出テクルト矢張リ何時モ失踪ノ場所ニ送ラナケレバナラヌト云フ事ニナル、此處ハ代理人ノ所デアリマスルカラ送ル必要抔ハ勿論ナクナルニ依テ場所ハ此所デナケレバナラヌ、今一歩ヲ進メテ夫レナラバ一體ニ之ガ必要カ不必要カト云フ議論ニナレバ、私共ハ甚ダ必要デアラウト思ヒマス、富井君モ其事ハ旣ニ再三御說明ニナリマシタガ、尙ホ私ガ附ケ加ヘテ申シマスルト此管理行爲ト云フモノノ中ニハどれ丈ケノモノガ這入ルカト云フコトハ、是ハ西洋ニ於テモ隨分議論ノアルコトデアリマス、而シテ其管理行爲ト云フモノノ性質上どれ丈ケノ行爲ヲ含マナケレバナラヌカト云フコトニ付テハ旣ニ議論モアル、私共ハ此二項ニ書イテアルガ如キコトヲ管理行爲ト見ルノガ一般ノ慣習デアラウト思ヒマスケレドモ、旣ニ磯部君ノ言ハレタヤウニ「改良」ト云フ文字ハ寧ロ除カナケレバナラヌト言フ說モアリマス、然ウ云フ風ニまち々々ニナリマスレバ、實際ノ適用ニ至ツテモ自ラ區々ニ渉ツテ不都合デアラウ、固ヨリ此二項ノ規定ガアツテ之ヲ以テ一切ノ爭ヒヲ絶ツ抔ト云フコトハ申サレヌデゴザイマセウケレドモ是レデモ丸デナイヨリモ宜シイ、是丈ケノ標準デモナイ時ニハ尙ホ一層爭ヒガ起ル、是レ丈ケノ標準ガアレバ實際ニ問題ガ起ツタ時ニ是ハ保存ニ必要デアツテ且權利喪失セシメナイモノデアルカラ管理行爲デアル、或ハ保存ニハ必要デアルケレドモ權利ヲ喪失セシムルカラ管理行爲デナイト云フヤウナ標準ガ定ルカラ裁判ヲスルニ其權衡ヲ失シナイ裁判ガ下サレマスガ、若シ之ガナクバ唯管理行爲、其管理行爲ニ付テハ何處カラモ法律ノ解釋ノ基礎トナルベキ場所ガ出テ來ナイ、然ウスルト各々ノ腦隨又ハ學者ノ說デ勝手次第ニ極メラルル、然ウスルト一層煩雜ニナルカラ然ウ云フコトハ徃ケナイ、夫レデ文章ノ惡ルイ所ハ直ホシテ宜シウゴザイマスケレドモ、第二項ヲ丸デ削除スルト云フコトハ、私共ハ飽迄モ反對セザルヲ得ヌノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
富井君ニ伺ヒマスガ「損敗シ易キ」ト云フコトガ末段ニ出テ居リマスガ危險物ハ何ウ云フモノデゴザイマセウカ、例ヘバだいなまいとト云フガ如キモノハ何ウ云フモノデアリマスカ、矢張リ損敗シ易キ物トナルノデゴザイマセウカ、夫レモ此中ニ這入ルノデゴザイマセウカ
富井政章君
夫レハ無論這入リマセヌ、或ハ手落チデアツタカモ知レマセヌ
磯部四郎君
私ハ先程唐紙ノ講釋ヲ承リマシタガ、唐紙ノ講釋ハ保存ノ方ニナラウト思ヒマス、保存ト云フノハ唯破ハレルノヲ防グノ許リガ保存デハナイ、相當ノ位地ヲ保ツノガ保存デアリマス、元ト請取ツタ時ハ然ウデナクトモ日ガ經ツテ來ルニ從ツテ見ルニ堪ヘヌヤウニきたなくナル、矢張リふいテ奇麗ニスルコトノ出來ルモノハふけバ宜シイ、張替ヘナケレバ奇麗ニスルコトノ出來ヌモノハ張替ヘル、唐紙ハ唐紙ニシテ相當ノ壽命ヲ保ツト云フヤウナ事ハ無論保存ノ中ニ這入ラウト思ヒマス、夫レカラ改良ト云フ事柄ニ付テ縱ヤ其事ガ改良トナルトシテモ夫レハ改良ノ些細ナ一點ノ適用ヲ御示シニナツタ丈ケノ話シデアリマス、成程改良ト云フ文字ガ夫レ丈ケノ事ノミニ適用シテ往クコトノ出來ルコトデアレバ此處ニ差置カレズトモ敢テ差支ヘアルマイ、所ガ改良ト云フ文字ハ餘程廣イ所ニモ用ヰラレル、其廣イ所ニ用ヰラレル所ノ大ヒナル危險ガアラウト云フ考ヘデアリマス、決シテ今ノ唐紙ヲ張替ヘルトカ或ハ疊ノ表替ヘヲスルトカ云フヤウナ些細ナ點丈ケニ付テノ文字デハナイ、廣イ所ニ用ヰラレル危險ガアルト云フコトヲ大ヒニ恐レルノデアリマス、夫レカラ「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ文字ヲ以テちやんト條件ガ極メテアルカラ差支ヘナイト云フ御考ヘノヤウニモ先程承リマシタ、所ガ私ハ此點ニ付テ尙ホ質問ヲ致シタイノハ要スルニ「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ所ニどの位ノ程度ガアルカ、例ヘバ一ノ財產ヲ保存セントシテ修繕所ヲ要スベキ其費用丈ケニ付テノ卽チ權利ト云フモノハ喪失セシムルニ至ル、又何カ有償行爲ヲ以テ第三者ト約束ヲシテ第三者ノ行爲ヲ以テ保存ノ行爲ヲ要スルヤウニ至レバ必ラズ夫レ丈ケノ勞ニ酬ユル所ノ代價カ報酬カヲ差出スカスルト、夫レ丈ケノ權利ヲ喪失セシムルト云フコトニナル、然ウスルト「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ標準其者ガ餘程實際ノ適用上困難デアラウト思ヒマス、夫レナラ此文字ヲ除イテ仕舞ツタナラ何ウカト云フ事ニナルト、改良トカ保存トカ云フ事ノ標準ハ殆ンド程度ガナクナラウト云フ恐レモアラウト思ヒマスガ、此「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フコトハ未ダ說明ヲ承リマセヌデゴザイマスガ、是ハ殆ド改良ナラ改良ニ必要ノ費用、保存ナラ保存ニ必要ノ費用ト云フモノハ、此「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ中ニ這入ルデアラウト思ヒマス、然ウスルト改良其者ニ要スル丈ケノ費用ハ自然其相當ノ費用ニナル、ソコデ又改良ノ適用ヲ廣クスルヤウニナルト、或ハ畑ヲ變ジテ田地ニスルトカ、或ハ水利ナキ所ヲ水利アル所ニシテ漠大ノ費用ヲ要シ却テ利益モナク舊ノ畑ニスルコトモ出來ズ夫レガ爲メニハ遂ニ破產ヲ致スト云フヤウナ恐レノアルコトモ此改良ト云フ文字ノ中ニ包含スルト云フヤウナ危險ガアリマスカラ、兎ニ角管理行爲ノ定義ヲ置カレル以上ハ此所ニ於テ「改良」ト云フヤウナ文字ヲ置カレルニ至ツテハ甚ダ危險ナ事デアラウト思ヒマス、詰リ是ハ先程カラ御說明ニナツタコトハ此保存ト云フ文字ノ中ニ充分含ムト思ヒマス、夫レデ私ハ第二項ヲ削除スルガ如キ勇氣ハ持チマセヌガ、獨リ此「改良」ト云フ文字ハ實ニ殆イ文字デアラウト思ヒマス、何ウカ此「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ標準ニ付テ相成ル可クハ今一應ノ御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
高木豐三君
先刻梅君カラ私ノ申シタ事ニ付テ此代理ノ場合ニ付テハ決シテ私ノ申シタ如キ契約許リデナイ、法律上ノ代理人モ這入ツテ居ルカラ必要デアルト云フ御說明デアリマシタガ、私ノ考ヘデハ成程法律上ノ代理人ノ事モ這入テ居リマセウガ、法律上ノ代理人ノ重モナルモノハ、何ウ云フモノデアルカト云ヘバ、民法上ノ後見人、或ハ商法デハ會社ノ社長トカ其他團體ノ何ントカ云フヤウナモノデアラウト考ヘマス、然ルニ法人デゴザルトカ或ハ後見人デゴザルトカ、若クハ會社ノ社長トカ、總テ法律上ノ代理人ニ付テハ其權限ハ寧ロ法律若クハ特別ノ契約デ少ナクモ定ナケレバナラヌコトニナツテ居ルト考ヘル、此場合ニ於テハ私ハ此管理行爲ト云フコトヲスルコトガ出來ルトカ、管理行爲ニ限ルトカ、別段ノ定ナキトキハ管理行爲ニ限ルト云フノハ寧ロ契約ノ解釋ノ一ツノ必要許リニ設ケタモノデアラウト思ヒマス依テ矢張リ私ハ其理由ヲ以テハ之ヲ存シテ置クノ必要ハナイト考ヘル
出席員木下廣次君
富井政章君
權利ヲ喪失スルト云フコトニ付テハ磯部君カラノ御尋ネガアリマシタカラ極ク簡單ニ御答ヘヲ致シマス、此處デ權利ヲ喪失スルト云フコトヲ言ヒマシタ考ヘハ、上ノ財產ヲ受ケテ其財產ヲナクシテ仕舞ウト云フコトデ、卽チ所有權デアリマスレバ、其所有權ヲナクシテ仕舞ウ、或ハ債權デアレバ其債權ヲナクシテ仕舞ウト云フコトデアリマセウ、保存改良又ハ利用ノ爲メニ或人ト取引ヲ爲ス、失レガ爲メニ、代價又ハ報酬ヲ拂ワナケレバナラヌト云フ場合ハ無論其代價又ハ報酬ト云フモノヲ失フニハ違ヒアリマスマイケレドモ、此處デ云フ權利ハ上ノ財產ヲ受ケタモノ、家ナレバ其家ノ所有權ガ移ルトカ、或ハ記名證劵ノ如キモノデアレバ其債權ヲナクスルトカ、上ノ財產其モノヲ掴マヘテ言フタノデアル
梅謙次郎君
一寸高木君ニ唯一言御注意致シマスガ、私ガ法律上ノ代理人ト申シマシタノハ、高木君ノ言ハレルヤウナ民事訴訟法ノ法律上ノ代理人ト云フガ如キ狹イ意味デハナイ、あれハ御承知ノ通リ後見人トカ會社ノ取締役トカちやんト法律上デモ其者其本人ハ無論無能力デアル、法人抔ノ如キ實際人ノ働キガ出來ナイモノ、其他未成年者ノ如キ充分ニ働クコトノ出來ナイモノニ附ケ加ヘテアルモノヲ指シテアリマス、夫レハ無論法律上ノ代理人ノ最モ重モナルモノニ相違ナイケレトモ、私共ノ見ル所デハ法律ノ規定ニ依テ裁判所ガ選任スル所ノ管理人モ廣ク解スレバ矢張リ法律上ノ代理人デ此中ニ這入ル、私ノ先刻申シタ法律上ノ代理人ト云フモノハ、則チ夫レ迄モ含ンデ居ル積リデアリマス、卽チ旣ニ議定ニナツタ所ノ三十一條ニモ管理人ガアツテ、其權限ハ唯管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有スト云フ事ガ書イテアツテ、其管理行爲ノ權限ノ範圍ハ此處ノ百五條ニ依テ分ル積リデアリマス、然ウ云フ權限モ亦這入ラウト思ヒマス、夫レハ成程其場所場所デ委シイ規定ヲ設ケレバ夫レデモ濟マヌコトモアリマスマイケレドモ然ウスルト大變錯雜ヲ來シマスルカラ、夫レヨリカ此處ニ規定ヲシテ置ケバ、單ニ管理人ト云ヘバ百五條ノ規定、況ンヤ管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有スト書イテ置ケバ此百五條ノ二項ニ依テ明カデアル、其場所場所ニ於テ委イ規定ヲ設クル必要ガナイト云フ便利ガアルト云フコトヲ先刻一寸申シタノデアリマス
土方寧君
私ハ二項削除ノ說ヲ出シテ贊成モアリマシタガ、之ニ對シテ起草委員ノ維持說ヲ承リマシタガ、格別削除說ヲ止メテ仕舞ウト云フ程ノ說明モ伺ハヌヤウデアリマスカラ、モウ重ネテハ申シマセヌガ、全體私ガ考ヘルニハ代理權ノ範圍如何ト云フノハ詰リ解釋問題デアラウト思ヒマス、性質ガ、此本案ノ代理ハ法律上ノ代理ト委任ニ依ル代理ト兩方ニ適用セラルルモノデアリマスガ、一寸法律上ノ代理ト云フ事ニ付テ言ヘバ、其格段ナル代理ノ職權如何ト云フモノハ法律ニ極マツテ居ル、其法律ト云フモノガ解釋ニナル、若シ委任ニ依ル代理デアレバ其代理ノ權限ハ委任契約ノ解釋ニ歸スル、詰リ實際ハ解釋論デアツテ極ク極端ノ論ヲスレバ、本條ハ一項二項共ニ併セテ削ツテ仕舞ツテモ差支ヘナイカモ知レヌ、高木君ノ言ハレタ通リニ、併ナガラ然ウスルト餘リ代理權ノ範圍ヲ定ムルニ付テノ標準ト云フモノガ少シモ法文ニ現ハレナイコトニナル、殊ニ現行ノ代人規則ニハ總理代理部理代理抔ト云フコトモアツテ、先刻起草委員ノ辯明ノ中ニ本案ニ於テハ總理代理部理代理ト云フヤウナモノハ法律上デハ區別ヲ設ケル積リデハナイ、ケレドモ日本ノ慣習トシテ部理代理ハ斯ウ云フモノ、總理代理ハ斯ウ云フモノト云フヤウナコトモアルカラシテ、是等ノ場合ニ於テ委任ニ依ル代理權ノ範圍ガはツきりシナイ、解釋ガ一定シテ居ナイ時分ニハ大ニ不都合ヲ感ズルコトデアルカラ之ニ付テハ何カ規定ヲシテ置クガ宜カラウ、夫レデ一項ハ存シテ置カウト云フ積リデ、別ニ何ントモ言フテナイ場合ニハ管理行爲ヲ標準トシテ解釋ヲスル、其外ニ旣成民法取得編二百三十三條ノ一項ノ如キ「代理ハ總理ナルト部理ナルトヲ問ハス其目的タル行爲ニ必然ニ生ス可キ事柄ハ暗ニ包含ス」ト云フガ如ク取得編ニ規定シテアリマス、先刻說明ヲ承リマスレバ、是ハ法文ヲ待ズシテ明カナコトデアルト云フコトデアリマシタガ、如何ニモ御尤モデアリマス、夫レト同ジヤウナ考ヘデ管理行爲ト云フモノヲ示シテ置ケバ、管理行爲ト云フコトニ就テハ隨分外ノ事ニ較ブレバ分カリ易イ、大體ハ精神デ分カル、總テノ事情ヲ斟酌シテ適用スル上ニ於テハ格別ノ間違ヒモアルマイト思ヒマス、然ルニ管理行爲ト云フコトヲ言フタ丈ケデハ分カリマセヌガ、管理行爲ハ何ンデアルト云フコトヲ上ニ言フテ、夫レカラ又其標準ヲ定メナケレバナラヌト云フノガ、梅君ノ說明デアリマシタガ、併ナガラ管理行爲ト云フモノノ標準ヲ定メタ二項ノ定義ノ中ニハ、詰リ保存改良利用各々權利ヲ喪失シナイモノヲ言フトシテ三ツニナツテ居ル、其三ツノ中ノ一ツノ「改良」ト云フコトニ付テハ旣ニ委員中ニモ異見ガアルヤウナコトデ標準ト云フモノガ能ク極マツテ居ナイ、尙ホ明細ニ言ヘバ起草委員ノ主義デ往ケバ、改良ハ何ウ云フモノ、保存ハ何ウ云フモノト云フヤウニ標準ヲ示シテ置カナケレバナラヌカラ殆ド際限ガナイ、夫レデ私ノ考ヘルニハどれ程想像力ニ富ンダ人ガ例ヲ設ケラレテモ、或格別ナル重モナル例ヲ示シタ丈ケデハ決シテ實際ノ場合ヲ網羅シテ居ナイ、夫レデ意見ガ違ツテ居ル、併ナガラ本統ニ其場合ニ於テ適當ノ裁判官ガ委任ノ範圍ガ定マラナイ場合ニハ管理行爲、丈ケシカ含マナイ、其管理行爲ノ範圍ヲ極メルニ付テハ格別差支ヘナカラウト思ヒマス、夫レデ私ハ是ハ解釋問題デアツテ其問題ハ管理行爲ト言ツタ丈ケデ、實際ノ問題丈ケデ或ハ裁判官ノ解釋ニ任セテ充分デアル、此二項ニ於テ到底完全ノ定義ヲ下スコトハ出來ヌ、ダカラシテ此中ノ保存トカ改良トカ利用トカ云フ辭ハ格段ナル場合ハ然ウデアルト云フ時ニハ一方ノ人ハ改良デアル、一方ノ人ハ保存デアル、或ハ權利ヲ喪失シナイト云フノハ、どれ丈ケノ場合ヲ言フノデアルカ、保存スルニ付テハ金ガ要ル、是レ丈ケノ金ヲ使ヘバ保存デアルガ、是レ丈ケノ金ガ要ルカラ保存デアルマイトカ、或ハ是ナラバ保存ト云フ中ニ這入ルトカ這入ラヌトカ云フコトガ出テ最モ其程度ガ分カラヌヤウニナル、夫レデ私ハ此二項ノ如キ保存トカ改良トカ云フヤウ項ハ事實上全ク不用デ、斯ウ云フ問題ハ總テ裁判官ノ解釋ニ委任スルヨリ外仕方ガナイト思ヒマスカラ此二項ノ削除ヲ望ミマス
山田喜之助君
一寸質問ヲ致シマスガ、私ハ突然出タノデアリマスカラ前條ノ方ハ讀ミマセヌカラ分カリマセヌガ、此代理權ノ範圍ニ付テハ其場所ヲ極メタ個條ハ此個條丈ケデアリマスカ、此總則中ニ未ダ外ノ所ニモアリマスカ
富井政章君
ナイノデアリマス
山田喜之助君
然ウスルト私ハ修正說ヲ提出致シマス、卽チ此百五條ト云フモノヲ全部削ツテ仕舞ウガ宜カラウト思ヒマス、其理由ハ土方君ノ言ハレタ理由ヲ充分ニ移シテ適用スルコトガ出來ヤウト思ヒマス、更ニ詳ニ述ベマセヌガ、到底管理行爲ト云ツタ所デ充分ニ分カリマセヌ、又第二項ガアツタ所ガ矢張リ充分ニ分カリマセヌ、之ガ分カル位ノモノナラ始メヨリ百五條ガナクテモ私ハ分カルダラウト思ヒマス、却テ之ガアルガ爲メニ色々疑問ガ起ラウト思ヒマス、細カニ斯ウ云フ事ヲ想像シテ見レバ分カル、此處ニ起草委員ノ御三方ガ御居デニナルガ、皆腦裡ニ持テ居ラルル法理ガ此法文ニ言ヒ現ハレテ居ルカ何ウカト云ヘバ否ト御答ヘニナルデゴザイマセウ、卽チ此法文ノ上ニ言ヒ現ハサレヌ精神ガアラウト思ヒマス、私モ然ウ思ツテ居ル以上ハ數多ノ諸君ト雖ドモ己ノ腦裡ニ代理權ハ正當ニどれ程ノ範圍デアルカト云フコトヲ充分ニ考ヘタ方ガ、此不完全ナル文字ニ書イテ置クヨリモ完全デアラウト思ヒマス、故ニ是ハ腦髓ニ任スコトニシテ削除スル方ガ宜カラウト思ヒマス、詰リ土方委員ノ說ヲ一層擴張シテ双方共削ツテ仕舞ウト云フ說デアリマス
星亨君
先程伺ヒマシタガ能ク分カリマセヌカラ、尙ホ起草委員ニ承リタイ、第二項ニ「財產ノ保存」云々ト云フコトガアルノハ、管理行爲ノ註釋デアルト云フコトデアリマスカ
富井政章君
左樣デアリマス
星亨君
左樣スレバ詰リ管理行爲ト云フモノハ、財產ノ保存トカ改良トカ云フモノデアツテ、財產ニ付ク外ノモノノ行爲ト云フモノハ這入ラナイト云フコトニナルノデゴザイマセウカ、ソコヲ一ツ承リタイ
富井政章君
無論財產ニ關係ナイ行爲ト云フモノハ管理行爲ト見ナイ、財產ニ關スル管理行爲ト言ツテモ悉ク保存改良利用ニ歸スルモノデナクテモ結果ガ權利ヲ喪失ニ至ラシメナイモノ、此二ツノ條件ヲ備ヘルモノハ管理行爲、夫レカラ結果ガ權利喪失ニ至ツテモ果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルノハ矢張リ管理行爲ト見ル、詰リ此第一項ノ管理行爲ノ說明ニ過ギナイノデアリマス
星亨君
尙ホ分カリマセヌガ、然ウスルト梅さんノ御說明ニ失踪ヤ何カノ事ニ付テノ管理行爲、總テ此中ニ在ル管理行爲ハ財產ノ時計リデナケレバナイト云フコトニ見テ仕舞ツテ宜シイノデゴザイマスカ、此處ハ代理ハ代理デアリマスガ其外ノ所デモ皆管理行爲ト言ヘバ財產切リニ關係スルモノデアルカ、其外ノ事實ノ働クコトニ付テハ財產以外ニ何カ働クコトニ付テハ何カ關係ハナイト云フ譯デゴザイマセウカ
梅謙次郎君
私モ矢張リ然ウ解釋シテ居リマス
星亨君
宜シウゴザイマス
元田肇君
私ハ行レマスマイガ一ツ修正案ヲ出シテ若シ夫レガ成立タナケレバ削除案ヲ贊成シマス、私ハ第二項ヲ斯樣ニ修正シタイ、「財產ノ保存ニ付キ必要ナル限リ又ハ之ヲ增殖スルノ行爲ニシテ權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ及ヒ果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルモノハ之ヲ管理行爲ト看做ス」ト云フノデアリマス、其譯ハ保存行爲ト云フノデアレバ別段ニ解釋ヲ加ヘズトモ管理行爲ト指シテ分カラウト思ヒマス、其分ツタモノヲ本分ト見テ疑ヒヲ存スルモノ準管理トモ言フベキモノハ改良ト稱シテ少シいじくるトカ、增殖トシテ財產ヲいじくるトカ、或ハ果物ノ如キモノハ之ヲ有償ニ處分スルト云フヤウナ變例ニ至ルモノヲ第二項ニ掲ゲテ管理行爲ト看做スト云フコトガアツタラ夫レデ宜シクハナイカト思ヒマス、夫レデ說明ハ第二項ノ如キ文字デ分カリ惡クイト云フコトデアレバ、分カルヤウニシテアツタ方ガ宜カラウト思ヒマスケレドモ、富井さんノ修正ノ如ク「果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スル亦同シ」ト云フコトニナツテハ、何ウモ前ノ文句ト釣合ヒガ宜クナイト思ヒマス、定メテ今日此處デ御修正ニナツタコトダラウト思ヒマス、然ウ云フ意デ第二項ノ文意ガ始メカラ出來テ居ルモノデハナイト私ハ思ヒマス、外ニ何ウカト思ヒマスガ宜イ考ヘモ付キマセヌガ、詰ル所保存行爲以外ニ渉ツテ此處ニ書イテアルモノハ皆存シテ管理行爲ト看做スト云フヤウナ意思ガ分カリサヘスレバ宜シイト云フ旨意デアレバ、只今私ガ修正シタヤウナコトニスレバ分カラウト思ヒマス、夫レデ又利用スルト云フ文字ガアリマスルガ、改良ト云フ文字ヨリモ寧ロ利用ト云フ方ガ實際ニハ省クコトガ出來ハシナイカト思ヒマス、旁保存行爲丈ケハ言ハズトモ知レタコトトシテ、以外ニ渉ツテ管理行爲ト看做スベキモノノ法文ヲ此處ニ掲ゲテ、只今ノ修正案ノ如クニ修正シタラ宜カラウト思ヒマス、若シ之ヲ御採用ガナケレバ私ハ削除案ニ贊成スル積リデアリマス
磯部四郎君
私ハ自分ノ提出シタ意見ニ付テハ殆ド贊成者ハゴザイマセヌカラ、更ニ取消スト云フコトヲ申上グル必要モゴザイマセヌガ、左リナガラ私ハ削除案ニ同意シタ理由ヲ述ベヤウト思ヒマス、元來財產ノ保存利用ト云フ事柄ニ付テハ權利ヲ喪失セシムルト云フ危險ガアリマセヌガ、此「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサル」ト云フ法文ノ規定ハ、改良ト云フ文字ニ付テ餘程必要デアラウト思フ、然ウスルト「改良」ト云フ文字ヲ除クト「權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」ト云フ文字ハ蛇足ニ歸シテ無用ニ屬スル、旣ニ保存ト利用ト云フコトニナツテ之ヲ管理行爲ト爲スト云フコトガアリマスレバ是ハ今日實際ニ日々行レテ居ル事柄ニ付テ今日斯ウ云フ法文ガアツテモ實際其法文ハ必要ヲ感ジナイ法文ニ屬シテ居ル、故ニソンナ法文ヲ設ケルノ必要ハナカラウ、「果實又ハ損敗シ易キモノ」云々ト云フコトニ付テモ先程議長カラ御忠告モアツタヤウデアリマシタガ、彼ノ危險物トカ云フ其文字ヲ入レテ來ルト此處ノ保存スル下ニヽヽヽヽ同ジク處分スルコトヲ許スト云フヤウナ文字ヲ入レヌト、旦那樣ガナクナツテ馬ガ三匹居ルト云フヤウナコトニナツテハ、旦那樣ガ居ラヌト到底三匹ノ馬モ居ラヌヤウニナルト同一デアラウト思ヒマス、到底此果實又ハ損敗シ易キ物ニナルト此爆裂見タヤウナ危險物モ入レナケレバナラヌ、夫レヲ入レルコトニナルト保存ニヽヽヽヽヲ生ズル動產物ヲモ入レテ來ナケレバナラヌ、然ウスルト殆ド總則ノ體ヲ丸デ失ツテ仕舞ウト云フヤウナ結果ニナツテ來マスカラ、寧ロ是ハ是ハ分カリ切ツタコトデアリマスカラ、土方君ノ提出ニナツタ所ノ第二項ヲ削除スル說ニ贊成ヲ表スル一人デゴザイマス
井上正一君
本條丸デ削除ト云フ說ト第二項丈ケノ削除說モ出マシタガ、私ハ熱心ニ本案ヲ贊成スルモノデゴザイマス、夫レデ此第一項ノ削除ノ理由ヲ聽キマスルト云フト、矢張リ是ハ無用デアル、或ハ又第二項モ無用デアルト云フヤウナコトニ歸シヤウト思ヒマスガ、私ハ第一項ノ場合、卽チ代理權ノ範圍ニ付テ別段ニ定メナイ時ハどれ丈ケノ權限ガアルカト云フコトハ卽チ此法律デ定メテ始メテ知レルコトデアラウト思ヒマス、夫レデナイト云フト色々區々ノ解釋ガ出マスルカラ、卽チ縱令法典ガアツテモ丸デ規定セヌモノハ拔ケルト云フヤウナ形チニナツテ仕舞ウ、夫レカラ此管理行爲ト云フモノハどれ丈ケノモノデアルカト云フコトモ是ハ皆さんノ御承知ノ通リニ色々說ガ分レテ居ルノデアリマス、夫故ニ其標準ヲ示スト云フコトハ最モ必要ナコトデ、法典ヲ設ケル以上ハ最モ必要ノコトデアラウト思ヒマス、夫レカラ又「改良」ノ文字ヲ削ラウト云フ御說モアルノデアリマスガ、「改良」ノ文字ヲ御削リニナル位ナラバ「利用」ノ文字ヲ御削リニナツタ方ガ宜シイ、矢張リ「利用」ノ文字モ危險デアル、然ウスルト丸デモウ磯部さんノ御說デハ「保存」許リニナリマスガ、私ハ然ウ云フモノデハナイ、是ハ誠ニ結構ナ標準デアラウト思フ、併ナガラ此第二項デ皆言ヒ盡シテアルカト言ヘバ、私ガ先刻質問ヲシタヤウナ工合デ、或ハ之デハ餘程嚴シ過ギルヤウナ嫌ヒモアルカラ、もう少シ緩メルヤウナコトガナケレバナラヌト思フ、併シ夫レハ起案者ニ於テ充分ナ御注意デ以テ御極メニナツタノデアリマスカラ、私ハ唯「處分スルハ此限ニ在ラス」ト云フコトヲ先刻起案者ニ於テ改メラレマシタ以上ハ、此箇條ハ最モ必要ト思ヒマス
磯部四郎君
一寸おとなしく質問シマスガ、當事者ガ費用ヲ要スル動產物抔モ矢張リ賣ナケレバナラヌト思ヒマスガ、一寸馬デアルトカ、修覆ヲ要スル所ノモノトカ、或ハ又植木屋デモ雇ツテ始終手入レヲシナケレバナラヌ、盆栽トカ、然ウ云フモノハ損敗シ易キ物トモ言ハレナイヤウデアリマスガ、先程富井君カラ說明モアツタ通リニ危險物モアリマス、然ウスルト此處ハ皆入レルト云フコトニナルト、是丈ケデハ含マナイト思ヒマスルガ、然ウスルト其物モ矢張リ其儘保存シナケレバナラヌト思ヒマスルガ、どんなモノデアリマスカ、起草委員ニ質問ヲ致シマス
富井政章君
然ウ云フモノハ成程或場合ニ於テハ賣ルコトモ見テアリマセウケレドモ、一般ニ處分スルコトガ出來ルト云フコトニスレバ、夫レコソ危險デアラウト思ヒマス、損敗シ易キ物デアレバ是ハうツちやツテ置ケバナクナツテ仕舞ウト云フモノデアリマスカラ、是丈ケハ構ハナイ、併シ馬デアルトカ其他然ウ云フ種類ノモノヲ悉ク處分スルコトガ出來ルト云フコトニナレバ、夫レコソ停止スル所ガ知レナイト思ヒマス、夫レカラ危險物云々ノ御話シガアリマシタガ、夫レハ稀レナ話シデアラウト思ヒマス、併シ是ハ稀レナモノトシテハ惡ルイカハ知レマセヌガ、何ウモ賣ルト云フコトモ何ウデアリマセウカ、斯ウ云フだいなまいとノ如キモノハ、賣ルコトモ持テ居ルコトモ夫レ々々法律ノ刑法上ノ制裁ガアツテ夫レデ其方カラ問題ガ起ラナクナリハシマスマイカ、然ウ云フヤウナモノ迄モ總則ニ入レルト云フ必要ハナカラウト思ヒマス
山田喜之助君
私ノ全部削ルト云フ說ニハ贊成者ガナイヤウデアリマスカラ、今一應理由ヲ述ベタイ、磯部君竝ニ土方君の言ハレル所ニ據レバ益々是ハ全部ノ削除說ガ必要ニナツテ來ヤウト思ヒマス、私ガ先刻起草者ニ伺ツタ所デハ此代理權ノ範圍ニ付テ規定シタ所ハ此處丈ケダト云フコトデアリマシタガ、果シテ然ウデアレバ益々是ハ無用ノ長物ニナルダラウト思ヒマス、何故ナレバ此管理行爲ト云フモノハ二項デ以テ管理行爲ノ性質ヲ示シテアリマスガ、是ハ極ク僅少タル話シダラウト思ヒマス、詰リ此案デ見マスルト云フト此處ニ一ツノ財產ガアツテ夫レヲ默ツテ他人ニ管理サセルト云フ場合ノ外是ハ當嵌ラヌ、併シ代理ト云フモノハ然ウ云フモノデハナイ、代理ハ色々ナコトガアリマス、物品ノ賣買トカ或ハ贈與ノ依頼トカ千差萬別デアル、財產ト云フモノガ無形ニシロ有形ニシロ、其保存トカ改良トカ利用トカ云フ事ノミガ代理ト云フモノデハナイ、是ハ極ク代理ノ小部分ニ過ギナイ、例ヘバ賣買ヲ委任セラレタト言ヘバ賣買ヲスル、保存シテ居ツタラ賣レヤシナイ、賣買ヲ委托セラレタ時ハ改良シテ居ルトカ、利用シテ居ルトカ云フコトハナイ、詰リ先刻カラ色々例ガ出マシタガ、畢竟空論ニ過ギナイト思ヒマス、盆栽ヲ默ツテ賣ルトカ渡ストカ云フコトハナイデアリマセウ、明ニ言フニ違ヒナイ、默ツテ盆栽ヲ渡シテ默ツテ受取ル奴モナイ、馬デモ然ウデアル、三匹ノ馬ヲ默ツテ渡シ默ツテ受取ル者モナイ、家ダツテ然ウデアル、默ツテ賣ツテ呉レトカ、周旋シテ呉レトカ言フ者ハナイ必ズ言フニ違ヒナイ、決シテ是ハ唖者許リニ適用スル法律デハナイ、爆裂彈デ以テ言ツタナラバ爆裂彈ヲ持テ宜イ奴ニ渡スノデアリマスカラ、何カ保存ニ使用スルトカ、どツかノ軍隊ニデモ屆ケルトカ何ントカ云フコトニナラウト思ヒマス、詰リ土方委員ノ言ハレタ如ク代理權ト云フモノハ固ヨリ解釋問題デアリマスカラ、法律デ極マツテ居レバ法律ヲ解釋シナケレバナラヌ、又本人ト代理者トノ合意デ出來テ居ルモノナラバ、合意ノ解釋デ宜イノデアル、合意モナケレバ法律ノ規定モナクシテ、本人ト代理人ガぼかんトヤル譯ハアリマスマイ、必ズ合意トカ意思表示ガアルカ何カナケレバ代理スル代理權モ出テ來ナイ、之ガアツテ法律ノ働キガ出來ルノデアル、左スレバ詰リ解釋デ宜シイノデアル、決シテ一部分ノ規定ノミヲ總則中ニ置ク必要ハナイト思ヒマス、詰リ短ク言ヘバ代理人ノ管理行爲ト云フモノハ是モ矢張リ代理權ノ或ル極ク僅少ナル場合ニ過ギナイ、唖者ノ代理人ト言ツテハ惡ルイカモ知レマセヌガ、兎ニ角唖者デナクテモ單純ニ代理權ヲ默ツテ渡スト云フヤウナコトモアリマスマイカラ、詰ル所本條ハ無用ノ長物デアラウト思ヒマス、故ニ此二項ヲ削ルト云フコトガ強クテ宜イト云フコトデアリマスレバ、私ハ一歩進ンデ双方ヲ削ルト云フコトニスレバ尙ホ強クナルト思ヒマス
土方寧君
別ニ言フコトハアリマセヌガ今ノ山田君ノ御議論デ大變ニ可笑シクナリマシタカラ何ウカ眞面目ニ熱心ニ第二項削除說ニ御贊成ヲ願ヒマス、是ハ大變ニ熱心ニ骨ヲ折ツテ御書キニナツタト思ヒマス、ダカラ此削除ヲ望ムノハ私ハ忍ビマセヌガ併ナガラ是ハ完全トモ言ハレマセヌカラ自分ニモ全部ヲ削除スル程ノ勇氣ハアリマセヌカラ一項丈ケハ存シテ置キタイ、詰リ管理行爲ト云フノハ總テノ管理行爲デ夫レハ明法官ノ判斷ニ任スヨリ外ナイト思ヒマスルカラ翼面目ニ御熱心ニ贊成ヲ望ミマス
議長(箕作麟祥君)
モウ大概議論ガ盡キタラウト思ヒマスカラ決ヲ採ツテ宜シイト思ヒマスガ如何デゴザイマセウ、山田君ノ說ニハ贊成ガナイ、土方君ノ說ニハ贊成ガアリマシタ、又元田君ノ御說モアリマスケレドモ贊成ガアリマセヌ
星亨君
私ガ贊成ヲシマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ贊成ガアリマシタガ、併シ土方君ノ御說ガ一番原案ニ遠イヤウデアリマス
元田肇君
一寸申上ゲマスガ、若シ私ノ說ガ御採用ニナラヌケレバ削除ニ贊成シタイ、私ハ馬抔ニ關係ハアリマセヌガ只今出シタ案ノ文章ガ惡ルケレバ直シテモ宜シイト思ヒマスガ、富井君ノ出サレタ「亦同シ」ト云フ案ガ完全デアレバ宜シイガ私ハ文章ヲ爲シテ居ラヌト思ヒマス、今ノ增殖トカ何トカ云フ文字ガ惡ルケレバ「財產ノ改良又ハ利用ノ爲メニスル行爲ニシテ權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ」トシテモ宜シイ、「之ヲ管理行爲トス但」ト云フ字ヲ消シテ「及ヒ果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルモノハ之ヲ管理行爲ト看做ス」トシタ方ガ原案ヨリモ未ダ宜シイト思ヒマスルカラ之ヲ先キニ御採決ヲ望ミマス
高木豐三君
其方カラ先キニ採決ヲ望ミマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ其方ヲ先キニ決シテ貰ハウト云フ御說モアリマスカラ當リ前ナラバ原案ニ遠イ方ヲ採ルノガ當リ前デアリマスガ元田君ノカラ採ルコトニシマセウカ
元田肇君
私ハ若シ之ガ通ラナケレバ土方君ノ說ノ方ニ贊成シタイト云フノデアリマス
星亨君
私ハ削除說ガ原案ヨリ遠イト云フコトニハ取レナイト思ヒマス
横田國臣君
夫レハ議長ノ特權ニ任セレバ宜シイ
土方寧君
元田君ノ如キ請求ハ是迄例モアリマス
議長(箕作麟祥君)
例ガアリマスカラ私モ然ウシヤウト思ツテ居タノデアリマス
富井政章君
御採決ノ前ニ諸君ノ御參考迄ニ申上ゲタイコトハ先刻申シマシタ所ノ「亦同シ」ト云フ改正案ノ若シ文章ガ惡クテ贊成シ兼ルト云フコトデアリマスレバ吾々ノ間ニモモウ一ツ斯ウ云フ案ガアリマス、少シ長クナリマスガ「喪失セシムルニ至ラサルモノ及ヒ果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルハ之ヲ管理行爲トス」ト云フノデアリマス
星亨君
同ジコトデアル
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ元田君ノ說カラ決ヲ採リマセウ、元田君ニ今一遍案ヲ願ヒマス
元田肇君
「財產ノ改良又ハ利用ノ爲メニスル行爲ニシテ權利ヲ喪失セシムルニ至ラサルモノ及ヒ果實又ハ損敗シ易キ物ヲ有償ニ處分スルハ之ヲ管理行爲ト看做ス」ト云フノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ唯今ノ元田君ノ御說ニ御同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數デアリマス、夫レデハ土方君ノ第二項削除說ニ御同意ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者多數
議長(箕作麟祥君)
多數デアリマス、夫レデハ次ニ移リマス
(書記朗讀)
第百六條 代理人ハ左ノ場合ニ非サレハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ス
一 法令又ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ許シタルトキ
二 本人ノ許諾ヲ得タルトキ
三 急迫ノ必要アルトキ
(參照)本案五七、取二三五、一項、商四七、三四七、露一四六七、伊一七四八、瑞債務法三九六、モンテネグロ四〇一、一項、西一七二一、白草二〇七六、一項、獨一草五八八、同商五三、印契一九〇、一九三、一九四
富井政章君
本條ハ旣成法典ノ取得編第二百三十五條ニ修正ヲ加ヘタモノデアリマス、旣成法典ニ依レバ代理人ハ其委任セラレタルコトニ付テ他人ヲシテ自己ニ代ハラシムルコトヲ得トアリマス、卽チ復代人ヲ選任スルコトヲ得ルノ原則トシテアリマス、是ハ多クノ國ノ法典ニモ例ノアルコトデアリマスケレドモ何ウ考ヘマシテモ是ハ其當ヲ得ナイコトト考ヘル、委任契約ノ性質ニ反スルデアラウト思ヒマス、其譯ハ委任契約ト云フモノハ代理人其人ヲ信用シテ結ブモノデアル、履行ノ能力アルコトヲ信用シテ取結ブモノデアル、夫故ニ代理人ノ死ンダ場合ニモ代理權ハ相續人ニ移ラズシテ代理契約ト委任契約ハ修了スルト云フコトガ旣成法典ニモ規定シテアリマス、代理人ガ己レニ代ハルコトノ出來ルモノノ適任者ヲ見付ケルコトニ充分ノ目利ヲ要スルニシテモ本人ハ然ウ云フ所ニ迄信用ヲ置イタモノデナイ、代理人ト選ンダ其人ニ履行ノ能力アルト云フ事ヲ信ジテヤツタモノナラバ外ノ者迄モ夫レ丈ケノ信用ヲ置カレタ者ヲ選ベバ其者ガヤツテモ宜イト云フ意思ガ本人ニ在ルト云フ事ヲ推定スルコトハ出來ヌト思ヒマス、夫故ニ本案ニ於テハ代理人ハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ズト云フヲ原則トシ、本條ニ於テハ其裏ヲ書イテ卽チ例外トシテ復代人ヲ選任スルコトガ出來ル場合ハ先ヅ此三ツノ場合デアルト云フ規定ヲ此處ニ設ケタノデアリマス
土方寧君
本條ノ二號ニ「本人ノ許諾ヲ得タルトキ」ト云フコトガアリマスガ、此許諾ト云フコトハ明示丈ケ則チ明ニ示シタ時丈ケデアリマスカ、又ハ默示ト云フコトモアルト云フノデアリマスカ、本人ノ許諾ハ明示默示ノ區別ハナイ、兩方共含ムト云フ譯デゴザイマセウカ
富井政章君
左樣デアリマス
土方寧君
原案贊成
磯部四郎君
此第百六條ハ是ハ私共ノ今日迄承ツテ居リマスル代理ノ法理ニ全ク反對ノ法理ヲ擧ゲラレタヤウデアリマス、此事ニ付テ一應伺ヒタイノハ此「左ノ場合ニ非サレハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ス」ト云フ禁止法ガ止ミマシテ其後ニ至テ代理人ガ自己ノ責任ヲ持テ他人ヲ使フコトモアル、其場合ニ他人ト約束ヲスル第三者ノ所爲ト云フモノハ全ク總テ夫レガ履行ノ所爲トナツテ其代理人モ義務ヲ負ハズ、委任者自ラハ尙ホ以テ義務ヲ負ハナイト云フ結果ノ所マデ歸スルト云フ御考ヘデアリマセウカ如何デアリマスカ
富井政章君
只今仰セニナツタコトヲ禁ズルト云フ精神デハナイ、只今仰セニナツタコトハ本案ニ謂フ所ノ復代人デハナイ、復代人ハ百九條ニ謂フガ如ク直チニ第三者ニ對シテ本人ヲ代表スルコトノ出來ルモノデアル、代理人ガ其責任ヲ持テ勝手ニ手助ケヲ拵エルト云フガ如キコトハ本人ニ對シテハ然ウ云フコトヲセナイノモ同ジコトデ自分ガスルノモ同ジコトデ夫レハ自分ノうちわ仕事デアリマス、責任ノアルコトハ無論ノコトデ夫レハ別ニ規定スル必要ハナイト云フノデ復代人トハ見ナイ積リデ定義ヲ置イタノデアリマス
磯部四郎君
分カリマシタガ然ウスルト復代人ト自分ノ責任ヲ持テ使用スル他人ト云フ者トハ何ウ云フ違ヒガ出マスカ
富井政章君
復代人ト云フ者ハ代理人トナルノデ直接ニハ本人ノ代理人ト爲ツテ其權限内ノ行爲ニ付テハ第三者ニ對シテハ直接本人ヲ代表スル、又今ノ手助ケヲ雇フト云フガ如キコトハ復代人ヲ選任スルノデナイ、然ウ云フ者ト本人トノ間ニハ法律上ノ關係ハ生ジナイ、尤モ百八條ノ規定ニ依テ代理人ガ違法ノ選任ヲシタ場合ニ本人ガ其代理人ノ頭ノ裡デ復代人ト思フテ選任シタ者ニ對シテ本人ガ權利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行スルト云フ事ヲ直接ニシタナラバ其選任ヲ追認シタルモノト看做スト云フ規定ヲ適用セラルル事ガアルカモ知レマセヌガ、併シ原則トシテハ然ウ云フモノハ復代人トハ見ナイ、本人トノ間ニハ直接ノ關係ハ生ジナイ、斯ウ云フ精神デアリマス
磯部四郎君
モウ一應伺ヒマス、只今ノハ區別ヲ御示シニナツタ御積リカハ知リマセヌガ私ニハ一向飮込メマセヌ、代理人ガ復代人ヲ使フノハ本人ヲ代表スルガ、代理人ガ自己ノ責任ヲ以テ他人ヲ使フノハ本人ヲ代表シナイノデアリマスカ
富井政章君
其使ハレタ者ハ本人ヲ代表シナイ
磯部四郎君
使ハレテシタ仕事ニ付テ第三者ガ權利ヲ行ヘバ第三者ハ矢張リ其本人ニ掛カルコトガ出來ヤウト思ヒマスガ然ウスルト其區別ハ明ニナラヌヤウニナリマスガ夫レガ恐ラクハ私ガ顧フニ只今修正案ヲ考ヘ中デ御座イマスガ此事ニ付テハ代理ノ適用ト云フモノヲ最モ廣クシテ相成ルベクハ一人ノ人ガ座ツテ居テ離レタ所デ商業ナリ財產上ノ關係ナリ自由ニ爲シ得ルヤウニシヤウト云フノガ是ハ經濟上ニ於テ最モ必要デアル、又一己人ノ腦髓ノ働キヲ自由ニ爲サシメルコトニ付テ最モ必要デアリマスカラ代理ノ適用ト云フモノヲ最モ廣カラシメルト云フコトガ今日ノ如ク社會ノ進ンデ居ル時ニハ誠ニ結構デアリマス、然ルニ斯ノ如キ百六條ノ如キ禁止法ニナルト色々此代理ヲ引受ケタ其者ガ委任者ノ意思ヲ働カセル上ニ於テ甚ダ窮窟ナ地位ニ陷リマスカラ却テ現在ノ法律ノ傾キ卽チ經濟上ノ關係カラモ能ク考ヘテ見ルト此禁止法ヲ表ニ出スノハ甚ダ失策デアラウト考ヘマス、デアリマスカラシテ却テ此法文ヲ只今考ヘマシタガ斯ウ云フ風ノ修正案ヲ提出致シマス、「代理人ハ復代人ヲ選任スルコトヲ得但左ノ場合ハ此限ニ在ラス」ト極メテ「一、法令又ハ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ禁シタルトキ」「二、本人ノ之ヲ拒ミタルトキ」斯ウ云フヤウニ二號丈ケニシテ「急迫ノ必要アルトキ」ト云フノハ除イテ仕舞ウ方ガ宜シイ、卽チ全ク反對ノ意味ニ取レルノガ代理法ノ適用ヲ自由ナラシメルト云フコトニ最モ必要デアリマス、然ウスルト只今御說明ニナツタ代理人ノ爲シタ事柄デモ本人ヲ代表スル、又代理人ガ自己ノ責任ヲ持テ他人ニ對シテ代理ヲ以テ夫レニ手助ケヲサセタ時ニ法律上ノ關係ガ生ジテ來タ時ニモ矢張リ其本人ヲ代表スル、卽チ第三者ノ關係ニ付テ復代人ト代理人ガ自分ノ責任ヲ持テ置イタ一個ノ手助ケトヲ問ハズ何時デモ其權限内ニ於テハ無論本人ニ掛カツテ權利ヲ主張スルコトガ出來ルカ何ウカト云フコトガ分カル、權限ヲ超越シタ時ハ復代人デアルト手助ケデアルト本人ニ掛カルコトハ出來ヌト云フ事ニナリマス、斯ノ如キ禁止法ヲ置カレタ所デ實際ノ效果ニ至ツテハ何モナラナイ、却テ法律上ノ行爲トカ云フコトガ盛ンニ行レルニ當ツテ隨分窮窟ナ法文ヲ置クノハ一ノ失策トシテ更ニ只今申シマシタル通リノ御修正ヲ望ミマス
横田國臣君
私ハ磯部君ト反對デ原案ノ方ヲ大變ニ好クノデアリマス、「復代人ヲ選任スルコトヲ得ス」ト云フ方ヲ好クノデアリマス、夫レハ私ハ或人ヲ信用シテ其者ヲ代理人トシタノデアルカラ若シモ他ノ人ヲ持テ其代理人ガヤルト云フヤウナコトガアツテハ其本人ノ目的ヲ逹スルコトガ出來ヌト云フ恐レガアル、夫レダカラ私ハ原案ノ方ヲ贊成デアリマスガ、唯少シ茲ニ自分ノ氣ニ掛カルコトハ第三號ノ「急迫ノ必要アルトキ」ト云フコトニ付テデアル、是ニ付テハ實際非常ナ問題ガ起ルコトデアラウト思フ、又隨分惡ルイ事モ出來ルデアラウト思フノデ御座イマス、夫レハ私ト復代理人ト云フ者トガ少シ目論見カ何カスルト其代理人ト云フ者ハ貧乏人デ復代人ヲ用ヰテ然ウシテ私ノ名前デスル、然ウシテ其時分ニ私カラシテあれハ急迫ノ必要モ何モアリハシナイ抔ト云フコトヲ言ツテ取消シタケレバ何時デモ取消サレルヤウナコトモ出來ヤウト思ヒマス、併シナガラソンナラ之ヲ削ルカト云フニ削ツテハ往カナイ、何ウモ或ル會社ニ火急ナ事ガ起ツテ何處ソコニ往ツテ呉レ私ガ病氣ニナツテ往カレナイト云フヤウナ事ガアツテハナラナイ、夫レデ此「急迫ノ必要アルトキ」ト云フ事ヲ極ク明ニシタイノデ御座イマスガ起案者ガ是丈ケノコトヲ入レラレタノハ何レ其制限モアルコトト思ヒマスルカラ一寸ソコラノ御說明ヲ伺ツテ置キタイ
富井政章君
格段ナル場合ヲ辯ベレバ幾ツモアラウト思ヒマスカラ何ウモ今質問者ノ言ハレタ風ニ狹ク書クコトハ餘程困難デアラウト思ヒマス、包括的ニ狹ク書ネバナラヌ、夫レニハ何ウモ斯ウ云フ風ニ書クヨリ外仕方ハナイト思ヒマス、旣ニ斯ウ云フ事ヲ書イテアルノハ商法ト夫レカラ瑞西ノ債務法、商法ノ三百四十七條デアリマシタカニハ「本人ノ許諾ヲ得ヘキモノト推定スヘキ情況アルトキ」ト確カアリマシタ、併シ夫レデハ是ヨリモ尙ホ締リガナイ濫用ノ恐レガアラウト思ヒマス、又瑞西債務法ニハ先ヅ此「急迫ノ必}要アルトキ」トデモ譯スベキ風ニ書イテアリマシタ、「急迫ノ必要」ト書イテアレバ尙ホ狹クナルデアラウト思ヒマス、詰リ今質問者ノ言ハレタヤウナ場合、其他代理事務ヲ了ルニ際シテ大病デアルトカ然ウ云フ風ノよく々々ノ場合デナケレバ裁判官ハ選任ヲ有效トセナイデアラウト信ジテ居ルノデアリマス
土方寧君
磯部君ノ修正案ニハ贊成ハアリマセヌカラ別ニ辯ズルニモ及ビマセヌガ、私ハ磯部君ノ修正案ニハ全ク反對デアリマス、併シ理由ノ中ニ言ハレタ所ニハ大ニ御同感ナ所ガアリマスガ併ナガラ其處ハ次ノ條ニ於テ修正ヲ加ヘテ或ハ御同意ガ出來ヤウト思ヒマス、次ノ條ヲ能ク見テ戴キタイ、此條ニ於テハ先ヅ反對デアリマス
磯部四郎君
私ハ失禮ナガラ今日マデ勉強ヲ致シマシタ
高木豐三君
起草者ハ大變ニびツくり爲サルカ知レマセヌガ私ハ只今ハ百六條丈ケデアリマスルカラ一箇條ヨリ往ケマスマイガ私ノ考ヘデハ復代人ニ關係スル箇條ハ總テ削除スル、之ヲ削除スルト云フノハ何處迄モ要ラヌト云フ譯デハナイ、此處ニ置カズニ契約ノ方ニ置キタイト云フ積リデアリマス、夫レデ起草者ガ夫レニ反對セラルル御說ヲ承リマセズトモ略ボ推定セラレル、是ハ契約許リデハナイ法律上ノ代理人モ這入ツテ居ルカラ此處ノ總則ニ置カネバナラヌト云フ趣意ニ相違ナカラウト思ヒマス、然ル所前ニ出サレテアル卽チ三十一條ノ管理人ノ如キニ至ツテハ是ハ無論裁判所ノ許可ガナケレバ隨意ニ代理人ヲ選ブコトノ出來ヌト云フコトガ卽チ此裁判所ニ於テ選定シタル管理人ト云フ者ノ性質其者ニ於テ明デアラウト思ヒマス、又其外ノ後見人其他會社ノ代表者、代表者ト名ヅクル者ニ至ツテハ是ハ普通ノ契約ノ場合ノ如ク自分ニ能力ガアリ權利行爲ヲ爲ス能力ノアル者ガ自分デ爲セバ出來ルモノガ他人ニ委任スル場合トハ違ツテ法律上ノ代理人ハ無能力者、本人自ラガ法律行爲ヲ爲スコトノ出來ヌ場合ニ於テ法律ガ法律上ノ代理人ヲ拵エル、此法律上ノ代理人ナル者ガ全ク權利行爲ニ付テハ本人デアル法律上本人ノ代ハリヲ拵エルノデアル、此者ガ復代人ヲ使フノハ恰モ本人ガ代理人ヲ使フノト同樣デアリマス、夫レデ此事ニ付テハ議論ハナイ、ソコデ法律上ノ代理人ガ這入ツテ居ルカラシテ是ハ是非トモ總則ニ置クノ必要ガアルト云フ理由ハナイト思ヒマス、旣ニ之ガ契約許リニ關係スルモノデアルトシマスレバ此復代人ト云フ者ハ代理契約ト云フモノガ一ツ成立ツテ其結果デ出テ來ルノデアリマス、依テ是ハ契約ノ方ニ入レテ差支ヘナイ、旣チ前ニ申シマシタガ如ク起草委員ノ御考ヘハ法律上ノ代理人ガ籠ツテ居ルカラ此總則ニ置カネバナラヌト云フ御趣意デアラウト思ヒマス、併シ獨逸草案ニ於テハ法律上ノ代理ハ認メテ居ツテモ復代人ハ認メテナイ、夫レデ是ハ削ツテ後トヘ讓ツタ方ガ宜シイト思ヒマス
田部芳君
高木君ノ說ヲ贊成シテ置キマス
富井政章君
只今ノ修正案ハ吾々ノ考ヘト根本ニ於テ違ツテ居ル所ガアリマスカラ一言致シテ置キマス、成程獨逸民法ニ於テハ委任契約ノ所ニ斯ウ云フコトガ規定シテアリマスガ、併シ吾々ガ總則ニ之ヲ入レマシタ趣意ハ前會ニモ述ベマシタガ、縱令契約ヨリ生ズル代理ト雖ドモ其純然タル當事者相互ノ關係以外ノ事ハ此處ニ規定スル、第三者ト本人トノ關係ニ渉ルコトハ此處ニ規定スル、只今復代人ノ事ニ付テ法律上ノ代理トスルコトガ出來ル理由ヲ述ベラレマシタケレドモ夫レヲ別ニシテ例ヘバ代理人ガアル場合ニ復代人ヲ選任シタ、其復代人ガ其權限内ニ於テシタ事ハ直チニ本人ニ權利ヲ得サセ義務ヲ負ハス、本人ト第三者トノ間ニ直接ノ關係ヲ生ズルト云フコトハ純然タル委任契約デハナイ、其本人ト第三者トノ關係ニ渉ルモノハ此總則ニ規定スルノガ吾々ノ根本ノ考ヘデアリマス
高木豐三君
誠ニ能ク分カリマシタ、旣チ私ノ考ヘルノモ起草者ノ御旨意ハ寧ロ次ノ百九條ガ根源デ之ヲ置クト云フガ爲メニ百七條百八條ガ出タモノデアラウト考ヘル、私ハ百九條モ皆削ルト云フ考ヘデアリマス、夫レハ何故ナラバ現ニ起草委員ノ自ラガ說明アツタガ如ク復代人ハ決シテ代理人ガ自分ノ手助ケノ爲メニ選ブモノデナイ、旣チ本人ヲ代理スルモノヲ言フノデアル、是ハ如何樣然ウデアラウト思ヒマス、復代人ト云フ者ハ代理人ノ代理人デアルト云フコトハ決シテ言ハレナイ、而シテ其効力ハ本人ニ及ブニ違ヒナイ、是ハ言フノ必要ハナイト思フ、旣チ第三者ト本人トノ關係ヲ定メルト云フコトハ此處ニハ不必要デアルト云フ趣意デ述ベタノデアリマス
山田喜之助君
一寸質問ヲ致シタイノデアリマス、習慣上復代人ヲ選ブコトヲ許サレタガ如キ場合ハ御認メニナラヌ御考ヘデゴザイマセウカ、或ハ又御認メニナル御考ヘデゴザイマセウカ
富井政章君
本人ノ許諾ト云フノハ默止ヲモ這入ルト云フコトハ先刻モ申シタ通リデアリマスガ、夫レガ這入ルカ或ハ法令ト云フモノガアリマスガ此法令ガ必ラズシモ成文法デ明ニ書イテナクテモ其解釋ニ依テ法令ト云フモノガ許スト云フ方ニ出來ヤウト思ヒマス
山田喜之助君
夫レデハ私ハ修正案ヲ提出致シマス、只今ノ起草委員ノ御說明デハ習慣上代理ヲ許サレタル場合ハ御認メニナル譯デアル趣意ニ於テハ私ト同一デアル、詰リ本人ノ許諾ト云フ中カ又ハ法令ト云フ中カ何レカニ這入ルト云フコトデアル、私モ法令又ハ本人ノ許諾ト云フ方ニ當ラウト思ヒマスケレドモ明ニ之ヲ規定シテ置キタイ、夫レデ私ハ新ニ第四號トシテ「習慣ヲ以テ之ヲ許シタルトキ」ト云フコトヲ入レタイ、卽チ土地ノ習慣其他ニ依リマシテ復代人ヲ用ヰルコトヲ許サレタル場合、是ハ詰リ趣意ハ起草委員ト殆ド同ジデアリマス、唯私ハ法令又ハ本人ノ許諾ヲ得タルトキどちらカノ中ニ這入ラウト思ヒマスルカラ更ニ明瞭ニスル爲メニ今ノ第四號ヲ加ヘテ貰ヒタイ
土方寧君
山田君ニ伺ヒマス旨意ハ同ジコトデアリマスガ、然ウ云フ風ニ「習慣ヲ以テ」云々トスルト明瞭ニナラウトハ思ヒマスガ、私ノ考ヘデハ夫レハ第二號ニ這入リハシマスマイカ、或ハ格段ナル種類ニ付テ商法ナリ其他ノ法令ノ中ニ法文ガ出來ルノデ其方デ分カリハシナイカト思ヒマス、書カナイ方ガ宜カラウト思ヒマス、若シ今ノヤウナ新シイ號ヲ設ケルト却テ第二號ノ意味ガ默示ノ意味モ含ンデ居ルト云フコトニ反對ノ方ヲ示スコトニナリハシマセヌカ
山田喜之助君
夫レハ斯ウ云フ事ニナリマス、例ヘバ日本ナラ日本ノ人ガ外國ナラ外國ニ品物ヲ賣リニヤル、其時ノ習慣ト云フモノハ必ズ旅商人トカ何ントカ云フモノヲ雇ツテヤル、其事ヲ本人ガ知ツテ居レバ無論物品ヲ賣捌ク、倫敦ナラ倫敦、印度ナラ印度ニ持テ往ツテ物品ヲ賣捌ク人ヲ撰ンデヤル、本人ガ夫レヲ知ツテ居レバ默示ト見ル、併シソンナコトハ知ラナイ、何某ト云フ者ヲ以テ或品物ヲ賣捌ニヤル、其土地ニ往ツテ見ルト己レモ物品ニ疵ガアルト信ジテ往ツタ所ガ其時ニ物品ヲ賣捌クトカ何トカ云フコトニ付テハ是非糶賣トカ何ントカ、或ハ仲買人トカ何ントカ云フヤウナ其土地ノ習慣ニ依テ事ヲ處セナケレバ品物ヲ其儘持テ還ラナケレバナラヌトカ云フコトニナル或ハ又大變ナ損失デモ釀ストカ云フコトニ至ルト云フヤウナコトニナラウト思ヒマス、兎ニ角私ノ考ヘデハ本人モ代理人モ其事ヲ知ラナイデ或ハ其習慣ニ依テシナケレバナラヌト云フコトハ夫レハ定メテ起草委員モ御疑ヒニナラヌコトデアラウト思ヒマス、然ラバ別ニ一號ヲ設ケルコトノ必要ガ明ニナツテ來ヤウト思ヒマス、本人モ其品物ハ復代人ニ委任シテ之ヲ賣ラナケレバナラヌモノデアルト云フ然ウ云フ風ナ習慣ガアルト云フコトヲ本人ガ知ツテ居ツテヤツタノナラバ默示ノ許諾ヲ得タモノト言ハナケレバナラヌガ、本人ガ然ウ云フ事ヲ知ラナイデ代理人ヲ派遣シタヤウナ時ハ結局默止トモ言ハレナイト思フ、或ハ然ウ言ハレタ所ガ非常ナル疑ヒガ起リマセウカラ寧ロ明ニ別ニ掲ゲテ置イタ方ガ宜カラウト思ヒマス
梅謙次郎君
先刻高木君カラ削除說ガ出マシテ田部君ノ御同意モアリマシタ、夫レニ付テ富井君カラ一旦御辯明ニナリマシタカラ同ジコトハ申サナイデモ宜シイ、卽チ富井君ハ主トシテ復代理ト云フモノハ是レハ果シテ高木君ノ言ハレタ如ク純然タル契約上ノ代理ニシカ當嵌マラナイトシテ見テモ苟モ代理ト云フモノヲ總則ニ置ク以上ハ詰リ斯ウ云フ總則ヲ此處ニ規定シテ置カナケレバナラヌト云フ理由ヲ述ベラレタノデアル、卽チ復代人ト云フモノノ眼目ハ其者ガ果シテ本人ヲ代表スルノ權限ヲ有スヤ否ヤト云フコトデアツテ、其關係ハ則チ此處ニ謂フ代理ノ關係デアリマス、夫レヲ委任ノ所ニ規定シテ宜シイト云フコトデアレバ寧ロ是ハ佛蘭西民法旣成法典其他ノ法典ニ倣ツテ總則ニ入レルト云フコトハ取除イタ方ガ宜イト云フコトニナラネバナラヌ、夫故ニ獨逸民法草案ニハ富井君ガ言ハレタ如ク先キニアルノヲ此處ニ入レルニハ吾々モ餘程考ヘテ入レタノデアリマス、モウ一ツハ高木君ガ重キヲ措テ論ゼラレタ事デ夫レハ則チ復代人ハ法律上ノ代理人ノ中ニ當嵌マラヌト云フコトヲ申サレマシタガ私共トハ正反對ニナツテ居リマス、現ニ佛蘭西ノ民法ニ於テハ裁判所デ選任スル代理デモ矢張リ復代人ヲ許スト云フコトニナツテ居ツテ佛蘭西民法デハ一般ニ許ス、夫レハ私一人ガ左樣ナ說ヲ主張スルノデハナイ、是迄民法商法ノ書籍講議等ニ於テ頻リニ聞テ居ル說デアリマス、卽チ法律上ノ代理人デモ彼ノ復代人ノ規則ヲ適用シテ居ル、デ若シモ此第百六條ト云フモノガナクナリマシテ唯委任契約ニ付テノミ之ト類似ノ規定ガ設ケラレルト云フコトニナツタナラバ例ヘバ先刻高木君ノ例ニ引カレタ所ノ三十一條ノ如キ場合ニ於テハ復代人ヲ許スヤ否ヤト云フコトニ付テ疑ヒガ起ルニ相違ナイ、高木君ハ然ウ云フ場合ハ裁判所ガ許可シナイニ依テ出來ヌト云フノハ當然デアルト云ハレマシタガ、其ヤウナコトハ議決ニナツテ居ル箇條ニハナイ、管理行爲ノミヲ爲ス權限ヲ有スト云フコトハアリマスガ未ダ曾テ復代人ヲ選任スルノハ裁判官ノ許可ヲ受ケナケレバナラヌト云フ規定ハナイ、夫故ニ此場合ニ付テモ餘程疑ヒガ起ル、是ト類似ノ場合ハ少カラヌコトデアル、私ガ一ツノ例ヲ申シマシタノハ適用ノ最モ多イモノト思ツテ示スノデアリマスガヽヽヽヽ同ジ性質ヲ持テ居リマス、其外裁判所デ一時ノ管理人ヲ選任スルコトハ少カラヌコトデ夫レハ皆先キニ往ツテ極マルコトデアリマスルカラ今カラ總テヲ豫想スルコトハ出來ヌト思ヒマスガ必ズ然ウ云フ場合ガ多カラウト思ヒマス、餘所ノ國ノ本ニモ澤山アルカラ日本ニモ澤山起ラウト思ヒマス、夫レカラ民事訴訟法ニ所謂法律上ノ代理入卽チ無能力者ノ代表者デアリマス、是ニ付テハ無論適用ノナイコトデアリマス、如何トナレバ代表者ガ當事者デアルニ依テ其者ノ選任スル所ノ代理人ハ通常ノ代理人デアツテ復代入デナイト云フコトヲ言ハレマシタガ、是モ感服スルコトガ出來マセヌ成程無能力者ニ付テハ本人自ラ働クコトハ出來ナイ或ハ出來ルト言テモ範圍ガ狹クテ充分働ケナイ所カラ是非トモ斯ウ云フ種類ノ代表者ガ出ナケレバナラヌト云フ規定ニナツテ居ル、ケレドモ其者ノ權限ハ本人ト同ジヤウニ決シテ無限デハナイ悉ク其權限ガ限ラレテ居ル、夫故ニ其限ラレタル範圍内ニ於テシカ働ケナイカラ矢張リ通常ノ代理人ト同ジコトデアリマス、夫レハ何故然ウ云フ人ヲ法律上ノ代理人トスルカト言ヘバ法律上夫レガ最モ適當ノ人ト思フノデアリマス、例ヘバ後見人デアルトカ、後見人ノ資格ヲ定メテアツテ甚シキニ至ツテハ身上サヘ杓子定規デ極メテアル、何故ナレバ夫レガ無能力者ニ對シテ愛情ヲ有シテ居ルシ無能力者ヲ保護シテ往クニ最モ適當ト法律上見タカラデアル、又會社ノ代表者ハ必ズ社員中カラ選バナケレバナラヌト云フコトガアルヽヽヽヽヽヽ夫レハ實際自分ノ名義丈ケデ實際自分ハ少シモ働カナイデ皆外ノ人ニ働カシテ宜シイト云フ理窟ハ何處カラモ出テ來ナイト思ヒマス、左レバコソ今ノ法典ニ於テ後見人ニ於テモ唯自分ノ事務ヲ助ケサセル爲メニヤルト云フコトニナツテ居ル、或ハ又會社ニ付テモガ勝手ニ自分ノ代ハリノ人ヲ選ブト云フコトハナイ矢張リ相當ノ制限ガ設ケテアル、デ會社ノ方ハ重モニ定款ノ定ムル所ニ依ルトアリマスルカラ法文ノ上ニ明ニ其制限ハ示シテアリマセヌ、ケレドモ矢張リ制限ノアルモノデアツテ丸デうつちやらかしテ宜シイト云フヤウナコトハナイコトデアラウト思ヒマス、左リナガラ若シモ旣成法典ノ如キ或ハ佛蘭西民法ノ如キ原則ガ行レテ居ツタナラバ解釋上明文サヘナケレバ後見人デモ會社ノ取締役デモ自分ハ名義丈ケデアツテ唯失策ヲシタラ責任ヲ持ツト云フ條件ヲ以テ他人ヲシテ自分ニ代ハラシメルコトガ出來ルト云フ解釋ガ出テ來ルト思ヒマス夫レデハ困ルト思ヒマス、夫故ニ此百六條ト云フモノハ是非トモ此處ニ置イテ貰ラハナケレバ困ルト思ヒマス、是ハ序デスカラ申シマスケレドモガ一體此百六條ノ解釋ニ付テハ先刻磯部君カラ御質問ガアツテ高木君抔モ矢張リ其點ニ付テハ磯部君ノ御聽取リニナツタト同ジヤウニ富井君ノ解釋ヲ御聽取リニナツテ居リハセヌカト云フ疑ヒガアリマスカラ一寸私ガ敷衍シテ置キマスガ、彼ノ復代人ト云フ者ハ如何ナルモノカト云フニ唯手助ケニ使ウ如キ者ハ復代人デナイ、而シテ其者ノ爲ス事ガ本人ニ對シテ直接ニ效力ヲ生ジナイト云フコトデアリマシタ、是ハ其辭ヲ餘リ廣ク取ルト私共ノ信ジテ居ル所ト違ツテ來ヤウト思ヒマス、夫レハ手助ニ使ツタ者デアツテモ矢張リ其本入ニ代ハツテ仕事ヲ爲セバ夫レガ適當ノ處置ナラバ夫レガ爲シタルコトハ矢張リ本人ニ對シテ效力ヲ持ツ、卽チ旣成法典ノ例デアレバ手助ケノ人ガ爲シタコトモ矢張リ直接ニ本人ニ對シテ其效力ヲ持ツ、ケレドモ此百六條ノ規定ガ行ハレレバ然ウ云フコトハ不法デアル、其手助ケノ者ガ本人ニ代ハツテ或行爲ヲ爲セバ其行爲ハ直接ニ本人ニ對シテ其效力ヲ生ジナイ、百八條百九條ノ場合ニ於テ本人ガ追認スレバ格別、左モナケレバ本人ニ對シテ其效力ヲ生ジナイトナル、併ナガラ其手助ケト云フ者ノ中ニハ純然タル仕事ノ賃貸ト云フモノニナルコトモアル、富井君ハ兎ニ角主トシテ其點ヲ言フト云フ積リデアツタノヲ磯部君ハ聽違ヒテ若シ富井君ノ說ノ如クナラバ復代人ト云フ者ト手助ケト云フ者トノスル事ガ同ジコトデアルト云フノハ全ク違フテ居ルト思ヒマス、手助ケト云ツテモ代理行爲ヲ爲スコトガ出來レバ從ツテ百六條以下ノ適用ハ免レナイト云フ事ヲ申シテ置キマス
磯部四郎君
私ハ餘計ナ事ハ申シマセヌガ何ウカ起草委員ノ言ヒ損イハ言ヒ損イト御認定ニナランコトヲ望ンデ置キマス、夫レカラ復代人ト手助ケトノ區別ヲ大變ニ明ニ御辯明ニナツタヤウデアリマスガ決シテ分カラナイ、或ハ本人ニ對シテ義務ガアルガ如ク或ハナキガ如クデアル、左リナガラ仕事ノ賃貸抔ハ格別デアルト云フコトハ何處ニ在ルカ實際上明法官ノ判定ニ任スヨリ外ナイト云フコトニ議論ガ歸着シマスルカラ明ニ御述ベニナツタケレドモ漠トシテ取リ所ガナイ卽チ標準ノナイ御論デアラウト思ヒマス、併シ私ハ自分ガ提出シタ案ヲ強テ主張スルノデハアリマセヌガ商法デハ大抵此主義ヲ採ツテアツテ民法ノ方デハ此主義ヲ採ラナイト言ハレマシタガ、成程商業上ノ代理ト云フコトニナルト其主義ヲ採ツテ宜シイ、商業上ノ代理ハ大抵有償契約ニ原因シテ居ル代理ガ多イ、殊ニ商業上ノ代理ニナルト特定ノ事項ヲ定メタ代理ガ多クナル、否ラザレバ一二ヲ委任スルトカちやんト極メテアル、商業上ノ代理ハ概シテ契約ニ基ク意デアルモノデアリマスルカラシテ是等ノ事ハ禁止シテアツテモ特別契約デ充分補フテ往クコトガ出來ル、民法上ノ代理ハ多クハ自己ノ負擔ニ屬スル代理許リデアリマス、其時ノ適用ヲ餘程樂ミニシテ置カヌト代理人ガ誰モ肯ンゼナクナツテ法律上無能力ト見ラルル者ガ更ニ自分ノ財產ヲ保護スルノ途ヲ見出スコトガ出來ヌヤウニナリマスルカラ、此點ハ商法トハ違ツテ代理人ニハ無論今一層容易ナラシメルヤウニシナイト保護セント欲シテ却テ粗漏ニスルト云フ結果ガ生ジヤウト思ヒマス、卽チ第百六條ノ主義ヲ全ク反對ニセラルルヤウニ望ミマス夫レデ私ノ案ニハ贊成者ガアリマセヌカラ全ク議事録ニ此事ヲ存シ置カレンコトヲ私ハ希望致シテ置キマス
高木豐三君
私ハ磯部君ニハ正反對デ梅君ノ御說明ニ依テ誠ニ能ク明白ニ起草者ノ御旨意ガ分カリマシタガ併ナガラ夫レニ付テ私ノ考ヘモ梅君ノ御說ノアツタ通リ法律上ノ代理ハ這入ツテ居ラヌ、是ニハ必要ハナイト云フヤウナ御考ヘラシイガ如何ニモ其通リデアル、夫レデ起草者ハ御熟考ノ上獨逸其他ノ各國ニモ規定シテナイコトヲ非常ナ卓見ヲ以テ此處ニ入レタノデアルト云フコトデアリマスルガ、私ノ獨逸其他各國ノ法律上ノ代理人ノ事ヲ一緒ニ籠メナガラ代理ノ所ニ籠メナガラ此復代理ノ事ヲ言ハヌト言フノハ是ハ決シテ謂ハレナク出來テ居ルモノデハナイト考ヘル、法律上ノ代理人、夫レニ付テ一寸言フテ置キマスガ、梅君ハ私ガ訴訟法ニ付テ議論ヲシテ居ルヤウニ何カ訴訟委任ノ事ヲ例ヲ引カレマシタガ、私ハ決シテ訴訟委任ノコトヲ頭ニ置イテ論ジタノデハアリマセヌカラ一寸夫レ丈ケ申シテ置キマス
梅謙次郎君
一寸申シマスガ訴訟法ニ所謂法律上ノ代理人ト云フモノ、あすこニ法律上ノ代理人トアルノハ此處ノヨリ狹イト云フコトヲ言フタノデアリマス
高木豐三君
夫レハ分カツテ居リマス、佛蘭西デハ裁判所カラ命ジタル管理人ハ代理人ヲ命ズル事ガ出來ルト云フ御說デアリマシタガ是ハ如何ニモ出來マセウ併ナガラ復代人卽チ法律上ノ代理人ニ付テノ復代人ト言ヘバ之ガ直チニ後見人ニナリマセウガ裁判所カラ直チニ選任シタル管理人トナリマセウカ、又會社ノ代理人ガ社長ニナリマセウカ、夫レハ決シテ代理人ニハナラヌ、夫レハ法律上ノ代理人、無能力者ノ代表者タル全ク法律上ノ代理人カラ言ハレタノデアル、現ニ梅君ハ手助ケガ爲シタル場合ニ於テモ相當ノ行爲ヲ爲シタモノナラバ直接ニ本人ニ對シテ其效力ヲ生ズルト言ハレタ、夫レデアリマスカラ法律上ノ代理人ノ場合ニ於テモ決シテ後見人ガ復代人ヲ吩付ケタカラト言ツテモ決シテ其者ガ後見人ニナラウトカ、又社長が會社ノ代理人ニナラヌトカ、或ハ裁判所カラ選ンデ管理人ト云フ者ニナラヌトカ、卽チ後見人、社長、管理人ノ行爲、其行爲ガ正當ノ行爲デアレバ直チニ本人ニ對シテ其效力ヲ生ズルト云フノハ恰モ梅君ガ末段ニ至ツテ說明セラレタ所ト同一デアリマス、カルガ故ニ各國ノ法律ニ於テモ法律上ノ代理人ニ付テノ復代人ヲ定メズシテ契約ノ場合ニ於テ契約ヲ以テ契約ノ主タル所謂委任契約ヲ以テ復代人ヲ命ズルト云フコトヲ定メタモノデアラウト思ヒマス、若シ夫レガ誤解デ各國ノ立法者ガ分カラナイデ此原案ガ宜イノカモ知レマセヌガ私ハ然ウトハ考ヘマセヌ
議長(箕作麟祥君)
大分御討論モアツタヤウデアリマスカラ高木君ノ削除說ニ付テ決ヲ採ラウト思ヒマス、磯部君ノ說ハ別ニ贊成ハナイヤウデアリマスカラ決ハ採リマセヌ、高木君ノ本條削除ノ說ニ同意ノ諸君ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數デゴザイマス、夫レデハ本條ハ可決ト認メテ休憩致シマス
缺席委員
木下廣次君
(箕作委員議長席ニ着ク)
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ先程ノ續ヲ始メマス
(書記朗讀)
第百七條 前條ノ場合ニ於テ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ其復代人ノ代理行爲ニ付キ本人ニ對シテ自ラ代理スルト同一ノ責ニ任ス
本人ノ指名ニ從ヒテ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ復代人ノ不適任又ハ不誠實ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知スルコトヲ怠リ又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス
(參照)取二三五、一項、二項、佛一九九四、一項、蘭一八四〇、伊一七四八、瑞債務法三九七、一項、二項、モンテネグロ四〇一、二項、四〇二、一項、西一七二一、白草二〇七六、一項、二項、三項、獨一草五八九、印契一九二、二項、一九三
富井政章君
本條ハ旣成法典ノ儘デアリマスルカラ別段辯明ヲ要シナイト思ヒマス、唯本條ニ所謂前條ノ場合ナルモノハ旣成法典ト違ヒマシテ、卽チ前ノ百六條ガ旣成法典ト違ウ結果デアリマス、卽チ前條ノ場合ト云フ其中ニ含ムモノハ本條ニ措シテ居ル所ト、旣成法典デ見テ居ル所丈ケガ違ウノデアリマス
土方寧君
只今簡單ナ御說明デ本條ハ旣成法典ノ規則ト同ジコトデアル、併シ前條ト云フ百六條丈ケガ違ツテ居ル丈ケデアルト云フ御話シデアリマシタガ、私ガ考ヘマシタ所デハ何ウモ大變ナ間違ヒデアルマイカト思フ、前條ガ變ハツテ居ツテ百七條ガ此儘ニナツテ旣成法典ノ二百三十五條ニ合ツテ居ルト云フノハ何ウモ理窟ガ分カリマセヌ、其點ヲ陳ベマス前ニ又誠ニ御迷惑ナガラ少々質問ヲ致シタウゴザイマス、本條ノ一項ハ前條ノニ號モ固ヨリ含ムデアリマセウ、若シ然ウデナケレバ然ウデナイデ宜シイ、夫レカラモウ一ツハ本條ノ二項ハ前條ノ二號ノ中ニ這入ツテ居ルカ夫レト又區別ガアルカ、モウ一ツハ前後時ヲ異ニシテ二人以上ノ代人ヲ命ジタ時ニハ本人ノ指命デ復代人ヲ命ジタ時ト違ヒガアルヤ否ヤ、若シアラバ其區別標準如何、夫レカラ其次ハ本條ハ無論本案ノ五十七條、法人ノ理事ノ箇條デアリマス、之モ適用スルデアラウト思ヒマスガ果シテ然ウデアリマスカ
磯部四郎君
只今土方委員カラノ御質問デゴザイマシタガ、何ウモ大抵私ノ考ヘデハマア分カツテ居ルヤウニ思ヒマスガ、併シ唯無闇ニ質問質問ト云フコトデ條ガ運バヌト云フノモ殘念ナ譯デアリマスルカラシテ、成ル可ク是ハ分カツテ居ルコトハ然ウ一々御答ヘニナルノモ甚ダ煩ハシイ譯デアラウト思ヒマスカラ、成ル可ク無用ノ質問ハ御省キアルヤウニ願ヒマス
富井政章君
只今ノ磯部君ノ御意見ガ旣往ニ遡ツテ效力ヲ持ツコトデアレバ餘程有難イケレドモ、然ウモ往キマスマイカラ是ハ後來ノコトトシテ極ク簡單ニ御答ヘ致シマスガ、果シテ及第點ヲ得ルカ何ウカ知リマセヌガ、試驗問題ニ簡單ニ答ヘテ置キマス、第一ノ御問ヒデ前條ノ場合ト云フ百六條ノ二號ガ這入ルカト云フコトデアリマシタガ、無論這入ル、第二項ハ前條ノ第二號ニ矢張リ當ルノカト云フ御問ヒニ付テハ、無論其場合ノ一種デアル、本入ガ許諾ヲ與ヘタノミナラズ復代人ヲ選任スルナラバ何之某ヲ選ベト斯ウ云フタ場合デアリマス、卽チ細密ノ許諾ヲ與ヘタ場合、夫レカラ第三ノ御問ヒハ
土方寧君
第三ノ問ヒハ、二項ノ場合ト夫レカラ本人ガ一人代人ヲ命ジテ於テ後トデ又タ代人ヲ命ジタ場合
富井政章君
分カリマシタ、夫レハ無論違ウノデアリマス、二人リノ代人ヲ置クト云フコトト、代理人ガ復代人ヲ選ブト云フコトトハ無論違ウ、其復代人ガ權限内ニ於テシタコトニ付テ直チニ本人ヲ代表スルト云フ點ニ於テハ、其二人リノ代人が其權限内ニ於テ爲スト同一デアリマセウ、夫レモ併シ斯ウ云フコトニ注意ヲシナケレバナラヌト思ヒマス、旣ニ代理人ヲ選ンデ置キナガラ、同ジ事ニ付テ又タ代理人ヲ選ブト云フ場合ニハ暗默ノ委任ノ廢棄デアラウト思ヒマス、是ハ多分當然言ハズトモ然ウ云フ解釋ニナルカ、或ハ第三編ノ委任契約ノ所ニ於テ書クコトニナルカ、無論其二人リノ中ノ一人リハ消エルト云フコトニナルデアラウト思ヒマス、何シロ始メカラ二人リガ代理人ニナルト云フコトト、一人リ代理人ガアル上ニ又其代理人ノ選擇ニ依テ代理人ガ出來ルト云フノトハ違ウ、復代人ハ直チニ本人ヲ代表スルケレドモ矢張リ元トノ代理人ハ監督ノ義務ガアル、夫レデスカラ矢張リ下代理人デ元トノ代理人ガ膨レタヤウナモノデアル、別ニ一ツ獨立シタ代理人ガアルト云フ程度ガ違ウ、夫レカラ法人ノ理事ガ含ムカト云フコトデアリマシタガ
土方寧君
當ルカト云フノデアリマス
富井政章君
當ルダラウト思ヒマス
磯部四郎君
私ハちよツこりト質問ヲ致シマス、私ハ舊トノ原案デ議論ノアツタ條文デアリマスカラ夫レデ一寸伺ヒマスガ、前ノ二百三十五條ノ二項ヲ見ルト同ジ文章デ卽チ其末文ニ「代理人ハ其復代人ノ無能又は不誠實ニ付キ委任者ニ之ヲ告知スルコトヲ怠リ又ハ復代人ヲ解任スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス」トアツテ之ト同シ法文ト思ヒマス、私ハ此法文ガ何ウモ分カラヌト云フ考ヘヲ始終持テ居リマシタ、夫レデ一寸御尋ネヲシマスガ、夫レハ何ウ云フ譯カナラバ本人ニ通知サヘスレバ夫レデ後トハ解任シナクツテモ宜シイノデアルカ、又ハ通知シテ解任ヲシナケレバナラヌ譯デアルカ、或ハ又通知セズトモ解任サヘスレバ夫レデ義務ハ免レルト云フノデアルカ、通知ヲシテ解任シテ自分自ラ其任ヲ執ツテ往ケバ宜シイ夫レハ差支ヘナイガ、唯前ニ通知サヘスレバ夫レデ責任ハ免レテ仕舞ウト云フコトニナルト、夫レカラ先キ三日デモ四日デモ怠ツタナリニ繼續シテ往クト云フコトニナリハシナイカ、例ヘバ委任者ガ遠隔ノ地ニ在ルト云フヤウナ場合モアリマセウ、是ハ此度御採用ニナリマシタガ、其場合ニハ何ウ云フヤウナ方法デ之ヲ解釋シテ往ケバ宜シイカ、私ノ考ヘデハ本人ニ通知シテ之ヲ解任スルコトヲ怠リ、又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠ルト云フヤウナコトニシタナラバ其弊ハ防グコトガ出來ヤウカト云フ考ヘヲ持テ居リマシタガ、此處ノ意味合ヒハ唯通知サヘスレバ夫レデ宜シイ、否ラザレバ解任サヘスレバ夫レデ責任ヲ免レルト云フコトデ充分デアルト云フコトデアレバ其事ヲ一寸御說明ヲ願ヒタイノデアリマス
富井政章君
只今御解釋ニナツタ通リどちらカ片一方ヤレバ宜イト旣成法典モ解シテ居リマシタガ、此本條ノ解釋モ然ウデアリマス、夫レデハ或ハ今御述ベニナツタヤウナ場合ニハ不都合ハアリハシナイカト云フコトデ如何ニモ御尤モノコトデアリマス、夫レデハ徃ケナイカモ知レマセヌガ、若シ然ウ云フコトデアレバ修正案ノ御提出ヲ願ヒマス、本條ヲ書ク時ノ吾々ノ考ヘハ、第二項ノ場合ニ於テハ代理人ノ責任ヲ成ルベク輕クシナケレバナラヌ、其譯ハ本人ガ復代人ヲ指名シタ場合本人ノ言フ通リニシタ、是非トモ復代人ヲ選ベトハ言ハナンデアリマセウケレドモ、選ベバ何之某ヲ選ベト云ツタ、本人ガ其人ニ付テ指圖ヲシタ場合デアリマス、夫レデ全ク責任ガ解ケルトスルノハ酷イデアリマセウケレドモ、先ヅ是位ノコトデ充分デアラウト思ヒマス、唯如何ニモ本人ガ遠隔ノ地ニ居ツテ通知シテモ其甲斐ガナイト云フヤウナ場合ニハ嵌マラヌ結果ニナルカモ知レマセヌ、夫レヲ防グ方法デアルト云フ御意見デアレバ御提出ヲ願ツテ或ハ贊成スルカモ知レマセヌ
土方寧君
本條ハ先刻起草委員カラ說明ガアツタ通リ、取得編二百三十五條ノ一項ハト二項トヲ其儘ニ持テ來ラレタト云フコトデ、唯前條ト云フノガ適用ト第百六條ガ變ツタ爲メニ少シ違ウ丈ケデアルト云フコトデアリマシタガ、其違ヒハ大變デアラウト思ヒマス、私ノ解スル所ニ依レバ取得編ノ二百三十五條ハ能ク分カリ惡クイケレドモ併シ先ヅ理窟ニ叶ツテ居ラウト思ヒマス、ト云フノハ代理人ハ復代人ヲ選任スルコトガ出來ルノガ原則ニナツテ居ル、夫故ニ復代人ヲ選任シタ場合ニ、其復代人ノ行爲抔ニ付テ代理人ガ責任ヲ帶ルト云フコトノ制裁ガ設ケテアル、是ハ聞エルダラウ、然ウ云フ制裁ガナケレバナラヌ、然ルニ本案ニ於テハ前條ノ百六條ニ於テ代理人ハ復代人ヲ選任スルコトガ出來ヌト云フコトガ原則トシテアル、是モ私ハ宜カラウト思ヒマス、元ト契約ヲシタ時ハ所謂格段ナル人ヲ信用シテ委任ヲスル、然ウシテ又本人ノ與リ知ラヌコトニ又格段ナル人ニ委任ヲシテ然ウシテ格別ナル或事ニ付テ代理人自ラ爲サナイ爲メニ、其責任ヲ負ウトカ負ハヌトカ云フ問題ガ生ズルノハ尤モノ話シデアリマス、原則トシテハ代理人ハ其委任ノコトヲ自ラ爲サナケレバナラヌト云フコトデアラウト思ヒマス、若シ然ウデアツタナラバ絶對的ニ之ヲ前條ニ於テ三號ヲ設ケテ此一ツノ場合ニ當ル時ハ復代人ヲ選任スルコトガ出來ルトシテアリマス、是ハ止ムヲ得ヌ話シデ前條ノ事ヲ最モ廣ク解スルト前條ノ第二號ノ如キハ默認ノコトモ含ムト思フ、然ウスルト私ノ考ヘタ所デハ、第百七條ノ一項ノ如キニ於テハ、復代人ノ代理行爲ニ付テハ本人ガ其責ニ任ズルト云フコトニナラナケレバナラヌト思ヒマス、然ウデナケレバ代理人ノ責任ガ餘リ過重ニ失スルト思フノデアリマス、或ハ法令又ハ裁判所ノ命令、本人ノ許諾、明示、暗默ノ許諾ニ依テ復代人ヲ選任シタト云フ場合、適當ニ復代人ヲ選任シタ、然ウシテ其復代人ノ代理行爲ニ付テハ本人ガ其責任ヲ帶ビヌト云フコトニナリマスレバ、大變ニ代理人ノ責任ガ重クナツテ來ル、夫故ニ私ノ考ヘル所デハ、本條ハ何ウシテモ改マツテ斯ウ云フコトニナラナケレバナラヌト思ヒマス、「前條ノ場合ニ於テ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ニ過失アリタルトキニ非サレハ代理人ハ本人ニ對シ復代人ノ代理行爲ニ付キ其責ニ任セス」斯ウ云フコトニナラナケレバナラヌト思ヒマス、然ウシテ第二項ハ削ツテモ宜シイト思ヒマス、二項ハ先刻質問シタ時ニ一ツノ場合ニ過ギナイト云フコトデアリマシタケレドモ、私ノ解シタ所デハ然ウデアルマイ、本人ガ指名シタ場合ニ於テハ詰リ本人自ラ旣ニ一人リノ人ヲ代理人ニ命ジテ置キ更ニ又其レト共同ヲスル代理人ヲ命ジタ場合トカ、又ハ自ラ命ジナクモ代理人ヲシテ命ゼシメタ、其委任事務ヲ行フ爲メニ例ヘバ或一部分ノ事丈ケハ代人ニ托シテ呉レト云フヤウナコトヲ定ムルト云フヤウナ場合ニ於テハ本人ガ復代人ヲ指名シタ、更ニ復代人ヲ命ズルコトヲ委任シタ、其委任ニ依テ復代人ヲ選任ヲシタナラバ、其復代人ノ選任ハ直接ニ本人ノ委任ト見テ宜シイ、夫レデ代理人自ラ選任シタ場合ト、本人ノ指命ニ依テ選任シタ場合ト區別ガナケレバナラヌト思ヒマス、本人ノ指命デ選ンダ場合ニ於テハ不適當ノ人、不誠實ノ人デアツタナラバ、本人ガ其責ニ任ゼナケレバナラヌト云フ事ハ論ヲ俟タヌコトデアラウト思ヒマス、夫故ニ私ハ此二項ノ場合ハ格別規定シテ置クノ必要ハナイト思ヒマス、一項ノ場合ニ於テハ此原案ノ通リニナツテ居テハ不都合ト思フ、折角特別ナル場合ニ於テ特定ナ者ヲ以テ代理ヲサセルト云フ便利ヲ聞イテ於テモ、代理人ニ重大ナ責任ガアルガ爲メニ其事ガ行レナイヤウニナル、行レタ所ガ酷ニ扱ウヤウニナル、夫レデ文章ハ如何カ知リマセヌガ前ニ申シマシタ如ク之ヲ「前條ノ場合ニ於テ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ニ過失アリタルトキニ非サレハ代理人ハ本人ニ對シ復代人ノ代理行爲ニ付キ其責ニ任セス」ト云フコトニ改正ヲ願ヒタイト思ヒマス
磯部四郎君
一寸伺ヒマスガ是ハ適用ガ餘程重クナツテ來ハシナイカト思ヒマス、舊案ニ依ルト旣チ此復代人ヲ選任スルコトノ自由主義ヲ採ツテ居リマス、夫レデアリマスルカラ解任スルコトヲ怠ツタ時ニハ其責ヲ代理人ニ歸スルト云フコトハ極ク樂デアリマスガ、此度ノ百六條ニ依ルト、復代人ヲ選定スルト云フコトハ先ヅ特別ニ許シタ場合デナケレバ許サヌト云フコトニナツテ居リマス、ソコデ私ハ起草委員ニ伺ヒマスノハ、復代人ヲ選任スルコトノ許諾ヲ與ヘテ置キ、然ウシテ選任スベキ人ノ指名ノアツタノデ、此時ニ其代理人ガ指名以外ノ人ヲ選任スル自由ヲ持テ居ルカ否ヤト云フコトヲ一ツ御尋ネヲシタイ、一寸言ヘバ甲者ヲシテ其任ニ當ラシメルト云フコトヲ許シテ置イタ、然ルニ其甲者ヲ措テ乙者ヲ選任スルコトガ出來ルヤ否ヤ、旣ニ斯ウ云フ禁止法カラ往クト餘程重イ事ニナリマス、本人ガ許諾ヲ與ヘテ其許諾ヲ與ヘタノハ甲者ヲ選ンデ呉レロト云フ許諾ガアツタナラバ甲者外ノ人ヲ選ブコトガ出來ナクナル、ソコデ指名シタ復代人ガ事務ヲ執ルニ付テ不適當又ハ不誠實ノコトガアツタ、アツタ所デ之ヲ解任スル、解任スル事ハ自分自カラ選任シタモノデアリマスカラ解任スルコトガ出來ルトシタ所デ、元々復代人ヲ選任スルコトノ許諾ヲ得テ置クト云フモノハ、自分自カラ其事ニ當リ惡クイト云フ場合ヲ想像シテ夫レ丈ケノ場合ヲ設ケテ置イタ、然ウスルト其代人ヲ選任シナケレバナラヌト云フ場合ニ本人ノ指名シタ者ハナクナツテ仕舞ツテ居ル、然ウスルト何ウシテモ元トノ許諾ヲ與ヘタ時ノ定メ以外ニ於テ人ヲ選任シナケレバナラヌト云フ結果ガ生ジマスカラ、夫レデ此第百六條ノ法文ニ依テ見マスルト云フト、此「又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタル」ト云フコトハ出來ナクナツテ仕舞ヒハセヌカト云フ私ハ今考ヘガ起ツテ來マシタ、夫レデ唯此誰デモ選ンデモ宜シイト云フコトデアリマスレバ自分ガ實際悉ク責ヲ負フテ居ルカラ第一項デ充分デアルシ、第二項ノ本人ノ指名デ復代人ヲ選任シテ然ウシテ解任シタコトハ自分自ラ局ニ當ルコトハ夫レハ何モ差支ヘナイガ、併ナガラ元々復代人ヲ選ブコトガアルカラ誰ニシマセウト云フコトヲ相談ヲシテアル時ハ兎ニ角自分ハ事務ガ多クシテ自ラ其事ニ當リ惡クイト云ノ時ノ事ヲ見テ居ルノデアリマスカラ、若シ其所デ其者ヲ解任シテ仕舞ウト云フ事ニナルト、其外ノ人ヲ選ブト云フ許諾ヲ得テ居ラヌカラ解任スルコトガ出來ヌヤウナコトガ起ツテ來ルコトモアリマセウ、要スルニ此解任スルコトヲ怠リタルトキノ責ト云フモノハ、第二項ノ場合ト百六條ノ第一號ノ場合ト比較シテ見ルト變ハツテ來マスカラ、其責任ヲ代人ニ負ハセルコトガ出來ナクナツテ來ハシナイカト云フ想像ガ起ツテ來タノデアリマスルカラ一寸此點ハ何ウ云フモノデゴザイマスルカ、夫レデ私ハ若シ然ウ云フ困難ガアルナラバ寧ロ指名ノ場合デハ「又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リタル」ト云フコトヲ削除シタラ宜カラウカ知ラント云フ考ヘヲ持チマシタガ、先ヅ起草委員ノ御說明ヲ承ツテ果シテ夫レ丈ケノ事ガ出テ來レバ其上デ是丈ケノ文字ノ削除說ヲ提出シヤウト云フ考ヘデアリマスカラ何ウゾ御說明ヲ願ヒマス
山田喜之助君
序ニ御說明ヲ願ツテ置キマス、本員ハ土方委員ノ修正案ノ精神ニハ贊成デアリマス、併ナガラ一寸質問ヲシテ置キマセヌト間違ツテ贊成シテモ往ケマセヌカラ質問シテ置キマスガ、此第百七條ノ第一項ノ規定ハ概シテ言ヘバ、代理人ノ責任ガ重キニ失スルト云フ考ヘデアリマス、何故ト考ヘマスルニ百六條ハ如何デアリマス、卽チ復代人ヲ選定スベカラザル場合、選定シテハナラヌ場合ニ復代人ヲ選定シタ所ガ百七條ヨリ重イ責任ヲ負フコトハ出來ヌ、卽チ百七條ハ復代人ノ代理行爲ニ付テハ一切代理人ガ本人ニ對シテ其責ヲ負ハナケレバナラヌカラ本人ノ許諾ヲ得ベキ所ノ場合ニ得ズシテ復代人ヲ選定シタ所デ其責任ハ百七條ノ責任ヨリ重イ氣遣イハナイ、夫故ニ此百六條ノ場合ニ於テ許諾ヲ得タルトキトカ何ントカ云フコトガアリマスルガ、實際ノ場合ニハ復代人ヲ選定スルノ必要ニ迫ルト云フ場合ハ幾ラモアラウト思ヒマス、尤モ各本條ニ至ツテ例外モ出ルカモ知レマセヌガ、或ハ船長ガ水先案内ヲ傭フトカ、或ハ債權ヲ集メルコトヲ委任セラレタ場合ニハ代言人ヲ頼ムトカ、執逹吏ヲ頼ムトカ幾ラモゴザイマセウ、是等ノ場合ニ於テ代人ヲ選ンダ時デモ矢張リ法令又ハ裁判所ノ命令ヲ以テ許シタト同ジ事デアリマスルカラ、兎ニ角本人ノ許諾又ハ法令等デ以テ許サレタル場合ニ於テ選定シタ復代人ハ不適當不誠實ノコトガナイ以上ハ代理人ト云フ者ハ復代人ノ責任ヲ全然負フト云フコトハナカラウト思ヒマス、ケレドモ何カソコニ謂レノアルコトデアリマスレバ承ツテ置キタイ
富井政章君
只今ノ御二人リノ方ノ御質問ニ答ヘルコトト、夫レカラ土方君ニ少シ質問ヲシタイコトガアリマス、只今ノ磯部君ノ御質問ハ詰リ此復代人ト云フモノノ何タルコトニ付テ或ハ我々ノ意見ト違ツテ居ルカラ然ウ云フ御考ヘガ生ズルデアルノカモ知レナイ、復代人ヲ選ンダ場合ニ元トノ代理ト云フモノハ解ケルト吾々ハ解シテ居ラヌ、元トノ代理ト云フモノハ唯實際中止セラルルノデ、夫レデ其代理ト云フモノハ解ケナイ、夫故ニ代理人ハ後ニ實際履行ヲセネバナラヌヤウニナルコトガアラウ、復代人ト云フモノハ或國ノ法律ニ於テハ殊ニ白耳義ノ國ノ草案抔ニハ明ニ書イテアリマスガ、代理人ノ相續人デアル、卽チ元トノ代理ト云フモノハ解ケテ仕舞ウト云フヤウナ風ニ見テアル、是ハ餘程大キナ問題デアリマスカラ吾々モ餘程考ヘテ見マシタガ、復代入ト云フ者ハ然ウ云フモノニ見ズシテ矢張リ元トノ代理ハ存續シテ居ル、解ケナイ、其結果トシテ例ヘバ復代人ガ死ンデモ、代理ハ解ケナイ、是ニ反シテ代理人ガ死ンダ場合ニハ其代理ガ解ケルト云フヤウナ結果ニ認メナケレバナラヌデアラウト思ヒマス、夫故ニ此本人ニ通知ヲシテ然ウシテ本人ガ解任ヲスレバ元トノ代理人ト云フ者ガ再ビ自ラ選バナケレバナラヌト云フコトニナル、夫レデ宜カラウト思フタノデアリマスケレドモ、磯部君ノ御說ハ或ハ復代人ト云フ者ハ相續人デ元トノ代理ハ解ケルト云フヤウナ御考ヘカラ先キノ御質問ヲ出サレタノデハアルマイカト思フノデアリマス、夫レカラ山田君ノ御質問ハ詰リ本條ノ責任ガ餘リ重過ギルト云フコトデアレバ其實質ヲヽヽヽヽヽ歸スル、夫レナラバ別問題デアリマスケレドモ本條ハ何處迄モ法律ニ反對ノ規定ノナイ限リハ是丈ケノ責任ヲ負ハス積リデ書イタノデアリマス、夫レカラ土方君ノ質問ニ掛リマスルガ、是ハ餘程重大ナ問題デ復代人ノ選任ト云フモノハ一體何ウ云フ性質ノモノカ、元トノ代理ガ解ケテ新タニ代理ガ出來ルノデアルカ、或ハ本人ニ對シテ直接ニ效ヲ生ズルケレドモ矢張リ元トノ代理ト云フモノハ依然トシテアツテ唯實際中止セラレテ居ル丈ケノコトデアツテ元トノ代理ノ瘤見タヤウナモノデアルカト云フ斯ウ云フ問題デアリマス、デ此條ト云フモノハ反對主義ヲ採ル時ハ如何ニモ重大ニ失シテ惡ルイト云フコトニナル、夫レデ然ウ云ウ御考ヘカラ來テ居ルノナラバ固ヨリ一ツノ利害說デ決シテ無理ナ御考ヘトハ思ヒマセヌ、大體是ハ代理人ハ第一項ノ場合ニ於テ代理人ニ過失アリタル時云々其過失ト云フノハ選任ノ當時ノ過失ノミヲ指スノデアルカ、卽チ例ヘバ權限ヲ示サナイ、代理權ノ範圍ヲ示サナイトカ、或ハ履行ノ仕方ニ付テ始メニ本人ヨリ指圖ヲ受ケテ居ツタ、夫レヲ復代人ニ告ゲナイデ居ツタトカ其選任ノ當時ニ於ケル過失ト云フノデアルカ、或ハ復代人ガ仕事ニ就テカラ後チノ管理ニ付テ代理人ノ責任ニ何カ過失ガアルト云フ丈ケデゴザイマセウカ其點ヲ伺ヒタイ、夫レカラ第二項ハナクテ宜シイ復代人ガ不適任又ハ不誠實デアツテモ夫レハ本人ガ元ト復代人ヲ指名シタノデアル其人ヲ復代人ニ選ンダノデアルカラ其責任ハ復代人ニ負ハセテ宜シイト云フコトデアリマシタガ、然ウスルト元トノ代理ガ解ケテ仕舞ツテ居ツテ其復代人ハ獨立シテ新タナル代理人トナツタノデゴザイマセウカ其點ヲ伺ヒマス
土方寧君
能ク分カリマシタ、三ツニ分ケテノ御質問デアリマシタガ丁度始メノト終ノトハ同ジヤウナコトノヤウニ思ヒマス、此方カラ先キニ御答ヘヲ致シマス、復代人ヲ選任シタ時ハ元トノ代理人ハナクナツテ仕舞ウカ何ウカ、私ノ考ヘデハ甲ガ乙ニ代理ヲ命ジテ然ウシテ甲ガ始メ乙ニ委任ヲシタ總テノ事ヲ更ニ丙ニ命ジタ場合ニハ是ハ乙ハ全ク代理ガナクナツテ仕舞ウト見テモ宜シイ、又代理ノ中ニ居ルト見テモ是ハ空ナ話デ現ニ甲ガ丙ト云フ者ニ任命スレバ丙丈ケガ實際事務ヲ執ル、其丙ノシタ事ニ付テハ乙ガ責任ヲ帶ビナクモ宜シイト見ナケレバナラヌ、夫レハ甲ガ乙ヲ命ジタ後チ丙ヲ復代人ニ命ジタ場合デアルケレドモ、私ノ考ヘデハ富井君ノ言ハレタ然ウ云フ場合ニハ却テ其復代人ト云フ者ハ代理人ニ委任セラレタル或部分ヲ委任サレタト云フコトヲ明ニ示スカ或ハヽヽヽヽヽヽヽ暗ニ通知シ得ルコトガ出來ルニ依テ或格段ナル委任ノ部分丈ケヲ執行スルコトガ出來ルト云フ目的デ委任スルノデアラウト思ヒマス、然ウ云フ場合ニハ固ヨリ復代人ガスルコトモアル、又元トノ代理人ガスルコトモアル、夫レハ元トノ代理人デアルト云フ名ノミナラズ、實モ存シテ居ル、斯ウ考ヘル、何レニシテモ始メ代理人ヲ極メテ居ツテ外ノ又人ニ代理人ニサセルコトノ全部ヲ任セタナラバ其外ノ人ガ本人ノ指名ニ依ツタ時ニハヽヽヽヽヽヽヽ其全部ノ事ニ付テ委任ヲ受ケタニシロ、一部ノ委任ヲ受ケタニシロ、其復代人ノシタ事ニ付テ本人ニ對シテ代理人ガ責ヲ負フト云フ事ハナイト思ヒマス、始メカラシテ本人ガ二人以上ノ人ヲ代理人トスルコトハ出來ナカツタ、夫故ニヽヽヽヽヽヽ夫レガ或ハ復代人ノ名前ガ付ク場合ニハ多クハ私ノ考ヘデハ始メ代理人ノ爲ス或一部ニ限ル事デアラウト思フ、若シ然ウデナケレバ解ケタト見テモ宜シイ、實際上ハ其譯デアリマスルカラ監督ノ義務モナイ、本人ガ指名シタ場合ニハ監督ノ義務モナイ、然ウ云フ考ヘデアリマス、夫レガ二項ヲ削ルト云フ趣意デアルシ、然ウシテ復代人ト云フ者ニ付テノ自分ノ考ヘ、又一項ニ付テ過失云々ノ御質問ノ點デ卽チ第二ノ御質問デアリマスガ、私ノ考ヘデハ今申シマシタガ如ク本人ガ指名ヲセヌデモ、前條ノ規定ニ依テ卽チ法律ノ規則ニ依テ許サレテ居ル場合ニ代理人ガ復代人ヲ選任シタ時分ニハ其選任サレタ復代人モ矢張リ一個ノ獨立ヲシタ代理人デアツテ其復代人ノ爲シタ事ニ付テハ代理人ハ少シモ其責ハ帶ビヌト云フコトニナラナケレバナラヌ、復代人ト本人自ラ責任ヲ帶ビルコトニナランケレバナラヌ、復代人ノ爲シタ事ニ付テ少シモ與カリ知ラヌ所ノ代理人ハ責ヲ帶ビナイト云フ事ニシナケレバナラヌ、唯自分ニ過失ガアツタラト云フノデアツテ詰リ本人ガ指名ヲシナカツタ場合ニハ不誠實ナ人ト知リナガラ復代人ニ選任シタトカ、又ハ一歩進ンデ言ヘバ過失ト云フノハ格段ナル場合ヲ少シ注意スル丈ケノコトヲスレバ屹度分カリ切ツタ場合ニ大變輕率ニ復代人ヲ選ンダト云フコトガアツタナラバ是モ過失デアル、夫レガ爲メニ損害要償ヲ起シタト云フヤウナ時ニハ復代人ノ行爲ニ付テハ代理人ガ代理人デアルガ爲メニ其責ヲ負フ譯デナイ、代理人デアツテ然ウシテ復代人ヲ選任ヲシタ時分ニ過失ガアツタナラバ其過失ニ付テハ責ヲ帶ビル斯ウ云フ考ヘデアリマス
井上正一君
私ハ土方君ノ御說デハ第二項ヲ削除スルト云フ御說デアリマスルガ、之ニハ同意ヲ致シ兼マスル、併ナガラ一項ニ付テハ意見ヲ同ジクスル者デアリマス、夫レハ卽チ旣成法典ノ二百三十五條ト夫レカラ此第百七條卽チ本條トハ自ラ精神ガ變ハツテ來タデアラウト思ヒマス、是ニ付テハ旣ニ御辯明ニナリマシタカラ止シマス、夫レデ百七條ノ第一項ニ付テハ卽チ第百六條デ此復代人ヲ選任スル事丈ケハ或ハ裁判所或ハ法令或ハ本人ノ許諾ヲ得テ爲スノデアリマス、此第三ノ急迫ノ必要ト云フノハ、或ハ急迫ノ必要ニ迫ツテ卽チ其必要ヲ許シタト云フヤウナ意味ニ解シテモ宜シイト思ヒマスカラ、詰リ復代人を選任スルコトノ出來ル場合デアリマス、然ウスルト私ノ考ヘデハ此原案デハ少シ代理人ノ責任ガ重カラウト云フ詰リ意思ニ基イタノデアリマシテ、此代理人ガどれ丈ケノ責任ガアルカト云フト、選任ヲスルト云フ事ニ付テハ色々許サレテ居ル、其選任ニ不行屆キガアツタ場合、卽チ選任ノミニ止ツテ選任以上ノ責任ニハ與カラヌモノデアラウト思フノデアル、夫レデアリマスカラ私ハ斯ウ云フヤウニ修正ヲ致シ度クアリマス、「選任シタルトキハ代理人ハ其復代人ノ不適任又ハ不誠實ニ依テ生セシメタル損害ニ付キ本人ニ對シテ其責ニ任ス」是ハ土方君ノ御意見ト同ジデ
土方寧君
意味ハ同ジデアリマス
井上正一君
意味ハ同ジデアリマスガ、夫レナラバ私ハ然ウ云フ風ニ修正シタラ宜カラウト思ヒマス
磯部四郎君
私ハ第二項ノ修正說を出シマス、詰リ修正デハナイ、「又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リ」是丈ケヲ削除スル意見デアリマス、其理由ハ先程稍々述ベマシタカラ長クハ述ベマセヌガ、元來代理人ハ此處ノ責任ハ極ク輕クナツテ居リマスルト申シマスルモノハ卽チ「復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ復代人ノ不適任又ハ不誠實ナルコトヲ知リテ」ト云フ位デアツテ卽チ本人ノ指名ニ從ツテト云フ話デアリマス、然ウスルト此選任ト云フコトハほんノ器械的デ本人ガ選任シタノデ言ハバ間ニ一人リ人ヲ繋グト云フ丈ケノ話デアツテ御前ガ出來ナケレバ誰某ニサセテ呉ロト云フ丈ケノ話デアリマスカラ、解任ト云フ權利ヲ代理人ニ持タセルノハ少シ強過ギハシナイカト思ヒマス、何ヲ監督シテ居ルカト申シマスルト、唯復代人ノ不適任又ハ不誠實ナルコトヲ知ツタカラ通知シロト云フ丈ケノ事デアツテ其選任ヲシタノハ卽チ本人ノ指名ニ依テヤツタノデアリマス、夫レデアリマスカラシテ之ヲ解任スルトセザルトハ本人ノ指命ヲ持ツテ然ルベキコトデアラウト思ヒマス、左リナガラ先程此事ニ付テ然ウ云フコトヲシテ置クト此復代人ニ大イナル過失ガアツタトキニハ何ウスルカ夫レデモ矢張リ通知シタ丈ケデ居ルト云フノハ不親切デハナイカト云フ斯ウ云フコトデアリマシタガ、成程承ツテ見レバ一應御尤モナコトデアリマス、併ナガラ能ク考ヘテ見ルト元ト某ニシテ呉レロト云フコトデアルカラ解任ヲシタナラバ更ニ是ニ代ハルト云フ風ノ餘暇ノナイ人カモ知レヌ、代理人ガ代人ヲ選ブト云フコトハ旣成法典ニハ出來タケレドモ、此法典ニハ出來マセヌ、ソコデ然ウ云フ譯デアリマスルカラ卽チ旣成法典デ縱シヤ出來ルトシテモ構ハナイ、夫レハ旣成法典ガ惡ルイノデアリマスカラ、然ウ云フコトデ不適任又ハ不誠實ナルコトヲ知ツタ時ニハ本人ニ通知ヲシロト云フ事丈ケニ止メテ通知ヲスレバ更ニ本人ノ指令ヲ持ツト云フ位ノ事ニシタ方ガ穩カデアラウト思ヒマス、何故ナラバ代理人ニ解任シロト云フ權利ヲ與ヘテ置クト、自分ガ之ヲシタイガ爲メニ過失ノナイ者デモ解任スルト云フヤウナ弊ガ實際起ルカモ知レマセヌ、兎ニ角此主義ガ禁止法ニナツタノデアリマスカラ自ラ夫レヲ引受ケルコトノ出來ヌト云フモノヲ解任シテモ矢張リ誰モ取リ手ガナイト云フ結果ヲ生ジマスカラ、夫レデ私ハ第二項ニ付テハ「本人ノ指名ニ從ヒテ復代人ヲ選任シタルトキハ代理人ハ復代人ノ不適任又ハ不誠實ナルコトヲ知リテ之ヲ本人ニ通知スルコトヲ怠リタルニ非サレハ其責ニ任セス」卽チ「又ハ之ヲ解任スルコトヲ怠リ」ト云フノ數字ヲ削除スル修正說ヲ提出致シマス
横田國臣君
私ハ土方君ノ說ニモ反對、夫レカラ又磯部君ノ說ニモ反對デアリマス、夫レハ第一項ニ付テ責ガ重イノハ此主義ニ適セヌト云フコトデアリマスケレドモ、甚ダ適シテ居ル、代理人ト云フ者ハ漫ニ復代人ヲ許サナイ、許ス場合デモ斯ウ云フ責ガアルゾト云フノデアリマスカラ卽チ此主義ニハ餘程適シテ居ルモノデアル、夫レカラ此第二項ノ方デ「之ヲ解任スルコトヲ怠リ」ト云フコトヲ除クト云フノハ是ハ富井君モ何ンデアリマシタケレドモ、是ハ甚ダ實際ニ暗イ、其譯ハ例ヘバ東京ニ本人モ居リ代理人モ居ル、然ウシテ復代人ハ九洲ニ居ルト云フヤウナ場合、斯ウ云フ場合ハ通知許リデモ宜カラウ、併ナガラ九洲ニ復代人ト代理人トガ居ツテ本人ガ東京ニ居ツタ場合、其場合ニ通知ヲシテモ間ニ合ハナイ、然ウ云フ場合ニハ仕方ガナイ、其場合ニ矢張リ東京迄云フテヤリサヘスレバ宜シイト云フコトデアツテハ其間ニどんなコトヲ仕出スカモ知レナイ、夫レモ構ハヌト云フコトデアレバ夫レハ實際ニ暗イ方デアル
高木豐三君
私ハ原案ニ熱心ニ贊成スル者デアリマスガ、土方君ノ說ニ大分贊成ガアリマスカラ一言辯ジテ置キタイト思ヒマス
議長(箕作麟祥君)
夫レハ純粋ノ贊成者トハ違フ、文句ガ違ツテ居ル
山田喜之助君
私ハ贊成デアリマスカラシテ
高木豐三君
夫レデハ一言願ヒタイ
山田喜之助君
發言權ヲ持テ居ルノデアリマスカラシテ私ガ述ベマス、百七條ノ代理人ノ責任ト云フモノハ何ウシテモ是ハ重過ギル、其譯ヲ申上ゲマスレバ起草委員若クハ起草委員ノ說ニ贊成セラルル方々ノ御說ニ依ルト、復代人ヲ命ズルト云フコトハ恩惠カ何カノヤウニ感ゼラレテ居ル、代理人ガ當然自分デ事ヲシナケレバナラヌノニ恩惠的ニ復代人ヲ置イテモ宜シイト云フヤウナ斯ウ云フ考ヘヲ持テ居ラルルノデハアルマイカ、若シ然ウデアレバ非常ナ間違ヒト言ハザルヲ得ヌ、何故ナラバ代理人ガ己レノスル仕事ニ付テ復代人ヲ選ブノハ當然デナケレバナラヌ、例ヘバ船長ガ水先案内ヲ選ブトカ、或ハ又債權ヲ集メルコトヲ吩付ケラレタル場合ニ於テ代言人ヲ頼ムトカ、或ハ執逹吏ヲ頼ムトカ云フコトハ已ムヲ得ヌコトデ正當ノ事デアラウト思ヒマス、夫レヲ代言人ヲ頼ムトカ、或ハ執逹吏ヲ頼ムトカ云フ事ハ適當デアルノニ自分ガのこ々々ト出テ行ツテヤルノハ夫レガ當然ト云フノハ間違ヒデアル、決シテ復代人ヲ選ブト云フノハ恩惠的デモ何ンデモナイ、結局復代人ヲ選ブト云フコトハ選バナケレバナラヌコトデアル、又選バナケレバナラヌト云フ場合ハ幾ラモアリマスカラ、ソコラノ場合ニナルト復代人ヲ選ブコトニ付テハ充分ノ注意モ行屆キ何等ノ過失モナク、又己ノ選ンダ復代人ニ於テモ何等ノ不注意モナク過失モナイト云フコトデアリマスレバ、復代人ノシタ行爲ニ付テ一切ノ責任ヲ持タセルト云フコトハ餘リ酷イデハアリマセヌカ、若シ復代人ノシタ行爲ニ付テハ一切其責ヲ負ハセルト云フコトニナツタナラバ百六條デ以テ之ヲ許サレタ甲斐ガナイ、此百六條デ以テ斯ウ云フ場合ニハ許スト云フノデ夫レニ依テ許サレテ復代人ヲ選ブ場合ニハ其復代人ノ爲シタ行爲ニ付テ何時デモ代理人ガ一切責ヲ負フト云フコトハ私ハナカラウト思ヒマス、是ハ穗積委員ニ御尋ネヲシマスガ、英吉利法律ニ依ルト土方委員ノ言ハレタ通リニナツテ居リマスガ、之ヲ御替ヘニナツタコトデアレバ定メテ御替ヘニナツタ丈ケノ理由ガアラウト思ヒマスルカラ夫レヲ一ツ御說明ヲ願ヒマス
穗積陳重君
私ノ名ヲ指シテノ御問ヒデアリマスルカラ一應御答ヲ致シマスルガ、吾々ハ固ヨリ英吉利法律ノ宜シイ所ハ採ラナケレバ往カヌト思ヒマスガ、併ナガラ英吉利法律デアリマシテモヽヽヽヽヽ結構ナ英吉利法律デアリマシテモ申ス迄モナイコト、必ズシモ從ウニモ及バナイ、英吉利法律ニ從ハヌカラト云ツテ決シテ詰問ヲ受ケル譯ハナイト思ヒマス、何故ニ從ハナカツタカト云フコトハ旣ニ富井委員カラモ委シク御話ガアリマシタカラシテ別ニ申スベキ必要ガアリマセヌガ、一言以テ之ヲ掩ヘバ復代人アリト雖ドモ代理人ハ尙ホ舊トノ資格ヲ存シ、復代人ハヽヽヽヽヽ代理人ハ自ラ事ヲ行フニ至ルノデアリマス、其一ツハ代理人ハ其責ニ任ジ且監督ノ責任ト云フモノモ有スルノデアリマス、斯ウ云フコトニ歸スルノデアラウト思ヒマス、夫レデ土方君ハ第二項ヲ削除シテ第一項ト云フモノハ復代人ニ過失アル場合ニ限ツテ代理人ニ責メヲ負ハセヤウ
土方寧君
代理人ニ過失ノアル場合デアリマス
穗積陳重君
代理人ニ過失ノアツタ場合ニ限ツテ責ヲ負ハサウト云フ斯ウ云フ御考ヘノヤウデアリマスルガ、若シ斯ノ如キ御考ヘデアリマスレバ第一項ト云フモノモ要ラナクナリハシマスマイカ、其第一項ノ過失ニ依テ損害ヲ生ゼシメタナラバ、敢テ明文ヲ要セズ他ノ箇條ヨリシテ其制限ハ生ズルデアラウ、何故ニ第一項ヲ活シ然ウシテ代理人ニ過失アル場合ニ限ツテ責ニ任ズルト云フ明文ガ此處ニ要ルカト云フコトヲ了解致シマセヌ、尙ホ先刻磯部委員ノ御辭ニ付キマシテ正誤ヲ致シテ置キマスガ、磯部さんト交渉ヲ致シマシタ時ハ之ヲ解任スルコトヲ得ルト云フノハ、大イナル過失ガアツタ時ハ之ヲ解任シナケレバナラヌト云フコトデアツタ、其交渉ト云フモノハ私ニ一寸御内談ガアツタト思ヒマスガ、私ハ大イナル過失デ以テ現ニ不都合ナ所爲ヲ爲シツツアツテ之ヲ通知ヲ爲スト云フ丈ケノコトデアツテハ間ニ合ハヌヤウナコトガ屡々アリハシマセヌカ、其場合ニ於テハ監督ノ責ヲ帶ビ尙ホ代理人タル所ノ者ハ直チニ之ヲ解任シテ本人ニ其損失ヲ負ハシメルヤウニスル任ガアルト云フコトヲ此處ニ極メタモノデアラウト云フ意味ヲ申シタノデアリマス、或ハ辭ガ足リナカツタカモ知レマセヌ
土方寧君
如何ニモ此箇條ハ實際大切ナ箇條ト存ジマス、今日ノ總テノ法律行爲ノ適用上最モ重大ナル違ヒヲ生ジヤウト思ヒマス、原案ノ通リトスルト云フノト、修正案ノ通リニスルノトハ違ヒガアラウト思ヒマス、夫レデ重復ハシナイヤウニシテモウ一言申シマス、只今穗積君ハ御質問ノヤウナ御演說デアリマシタカラ一言致シマス、一項ヲ修正シテ二項ヲ削除スル意味ハ、代理人ノ代理行爲ニ付テハ代理人ニ過失ノアツタコトニ付テノミ責任ガアル、夫レヨリ外ナイ、斯ウ云フ事ニスルノハ是ハ當然ノコトデハナイカト思ヒマス、自己ノ過失ニ依テ損害ヲ來タセバ其責任ヲ負ハセナケレバナラヌ、之ニ對シテノ責任ハ言ハヌデモ分カツテ居ルデハナイカト云フ御話デアリマシタガ、成程然ウ言ツテ見レバ夫レモ然ウデアリマスガ、此百七條ニ於テ一項ト二項ト場合ヲ別ケテ規定シテアル所ヲ見レバ、第百六條ニ於テ復代人ヲ選任スルコトガ出來ルト言ツテ置テモ或ハ其代理人ノシタ行爲ニ付テハ其責ヲ負ハナケレバナラヌカ何ウデアルカト云フ疑ヒヲ起シ得ルノデアリマス、夫レデ一項ヲ改メテ代理人ハ過失ガアツタコトデナケレバ其責ニ任ゼヌト云フコトニ書イテアツタ時ニハ其裏迄分カツテ來ル、過失ガアル時ハ其責ヲ負ヒ過失ノナカツタ時ニハ其責ヲ帶ビナイト云フコトガ分カツテ來ル、之ヲ言フ爲メニハ必要デアラウト思ヒマス、夫レカラ私ノ考ヘデハ復代人ノ事ニ付テ二項ニ付テハ或ハ委員ノ中デ意見ヲ異ニシテ居ラレハセヌカト思フ、夫レデ私ハ一項ニ付テ言ヘバ甲ナル者ガアツテ其代理人タル者ハ乙、而シテ丙ガ復代人ニナツタ場合、其時ハ丙ナル者ハ甲ヲ代表スル者デアツテ其丙ナル者ガ權限内ニ於テ爲シタ事ハ直接ニ本人ト第三者ノ關係ヲ生ズルノデアル、ケレドモ其場合ヲ全ク箇條ニ極メテアリマスケレドモ、此外ニ代理人ノ代理ニシテ本人ノ代理人ニ非ザルモノヲ禁ズルト云フ精神デナク認ムルト云フ精神デアラウト思ヒマス、此第百七條ノ一項ハ代理人ノ代理ニ非ズシテ本人ノ代理人ト云フ者ハ代理人ニ依テ選任セラレタル場合、併ナガラ此場合ハ代理人ノ代理ニ非ズシテ且本人ノ代理人デアルト云フコトデアリマス、此百六條ニ於テ復代人ヲ選任スルコトヲ得スト云フコトガ原則ニナツテ居テモ代理人ガ自分ノ代人ヲ選ンデサセテモ宜シイ、其結果ニ付テノ責任ハ甲ニ對シテ帶ビル、百六條ノ三號ニモ這入ラヌ場合、夫レデ私ハ本人ノ代理人ニ非ズシテ代理人ノ代理ニナルモノガアリ得ルト思ヒマス、然ウ云フ場合ニハ本來自分ニ過失ガナカツタニシテモ其事柄ニ付テハ本人ニ對シテ責任ガアルト云フ事ハ無論法文ガナイ場合デモ極マツテ居ラウト思ヒマス、終リニ一言スルノハ旣ニ議決ニナリマシタ本案ノ五十七條デアリマス、會社ノ理事ノ場合デアリマス、或格段ナル事ハ外ノ人ニサセルコトガ出來ル、斯ウ云フ理事ノ規定ガ出來テ居ル、其或格段ナル會社ナラ會社法ニ於テ特別ナ原則ガ出來テヽヽヽヽヽ制限セラレテ然ウデナイ以上ハ所謂此第百七條ノ規則ト云フモノヲ前ノ法人ノ理事ノ場合、五十七條ノ規定ニ當嵌メテ往ク時ニハ理事ガ會社ノ爲メニ事ヲ爲スノニ、或ハ不動產ヲ買ウトカ賣ルトカ理事ガ特別ノ人ヲ選ンデヤツタ時ニ、其者ガ賣溜ヲ取ツテ仕舞ツタトカ何ントカ云フヤウナ時ハ理事ガ其會社ニ向テ辨償ヲシナケレバナラヌト云フ事ニナル、然ウ云フ事ハ理事ニ取ツテ非常ニ重大ノ責任ヲ帶ビサセルコトニナル、夫レデ復代人ヲ選任スルニ付テ代理人ガ自分ニ過失ガアツタ場合ニ責任ガアルト云フコトニナラナケレバナラヌ、然ウシテ其過失アル場合ニ格段ナル場合ニ總テノ實地ヲ斟酌シテ然ウシテ裁判官ガ認定スルヨリ外仕方ガナイ、過失如何ハ事實問題デアリマス、之ヲ或ハ井上君ノヤウニ書換ヘテ往クコトニスルト狹クナリハシマセヌカ、却テ過失ト云フコトヲ廣クシテ於テ然ウシテ格段ナル場合ニ於テ過失ガアツタカナカツタカト云フコトハ其格段ナル總テノ場合ヲ斟酌シテ決スルヤウニシタラ宜シカラウト思ヒマス
高木豐三君
私ハ一言申シタイ、土方君ノ說ガアツテ井上君ノ贊成ガアツテ大層勢力ガアルヤウデアリマスガ、所ガ私モ始メ土方君ノ御說ヲ聞キマシタ時ニハ誠ニ御尤モナヤウニ聽キマシタガ、併ナガラ能ク考ヘテ見ルト却テ土方君ガ誤解シテ居ラレハシナイカト思ヒマス、其譯ハ旣成法典ニ於テハ法律ニ於テ復代人ヲ選ブコトハ許シテアル、其權限内ニ於テ自分ガ勝手ニ選ンダ時ニ其責ヲ負ハシテ宜シイ、今度ハ百六條ニ於テ主義ガ變ハツテ居ル、主義ガ變ツテ居ルノニ尙ホ同一ノ責任ヲ負ハシムルト云フノハ無理デアル、重キニ失スル、井上君モ同感デアル、是ハ大變間違ツテ居ル、磯部君モ言ハレタヤウニ之ヲ禁止シタ、復代人ト云フ者ハ容易ニ許サヌ、更ニ重クナツテ居ルトハ私ハ言ヒマセヌガ虛心平氣ニ御考ヘヲ願ヒマス、此百六條ノ一二三ノ理由ニ依テ復代人ヲ選ブコトヲ許スト云ツタノハ丁度旣成法典二百三十五條ニ於テ復代理ヲ許スト云フ場合ト同ジ場合デアル、前ノハ一般ニ何時デモ選任スルコトヲ許ストナツテ居ル、今度ハ許サヌト云フコトヲ原則ニ置テ此三號ノ場合ニ於テハ復代人ヲ選任スルコトヲ得ルト定メテアル、此三號ノ場合ニ於テ旣成法典ト同ジ權ヲ持テ居ルモノデアル、依テ旣成法典ニ於テハ相當デアル此前條ノ場合ニ於テハ不相當デアルト云フ理窟ハ少シモ出テ來マセヌ、又次ノ第二項ノ所ニ至ツテ土方君ハ曰ク、代理人ガ其權限ノ全部ヲ復代人ニ委任シタ時ニハ其代理ノ權限ガ解ケタト云フ事ヲ云ツテモ宜シイト云フコトデアリマシタガ、是ハ自分ガ然ウ云フ案ヲ立テルト云フコトデアラバ宜シウゴザイマセウガ、此案ニ據レバ決シテ前ノ代理ハ解ケナイト云フコトハ何處迄モ原則ニシテ置クノデアリマス、ソコデ之ガ解ケナイトシテ見レバ磯部君ガ言ハレタヤウニ「之ヲ解任スルコトヲ怠リ」ト云フコトヲ削除スルト云フコトハ出來ヌ、何故ナラバ前ノ代理ガ解ケナイト云フコトヲ見ルニハ此一句ニ在ル、若シ代理ガ解ケルト云フコトデアレバ復代人ヲ解任スルコトモ何モ出來ヌ、此解任スルコトが出來ルト云フコトヲ見ルノハ「之ヲ解任スルコトヲ怠リ」云々ト云フコトガアルニ依テ見エル、夫レデ磯部君モ全ク間違ヒ、又土方君ノ御說モ大變尤モナヤウニハ聽エマスガ矢張リ其御說モ誤解ト思ヒマスカラ私ハ原案ヲ贊成シテ置キマス
山田喜之助君
私ハ淺學ノ人間デアリマスカラさツき少シ笑ハレタヤウデアリマスガ、後學ノ爲メニ質問ヲ致シタイ、船長ガ水先案内抔ヲ雇フノハ適當ナ譯デハアリマセヌカ、又債權者カラ債權ヲ取立テルコトヲ委任セラレタ代理人ガ代言人ヲ頼ムトカ、執逹吏ヲ頼ムトカ何ントカ云フヤウナノハ夫レハ復代人デナイノデアリマスカ
梅謙次郎君
私ハ其點ヲ御質問ガナクテモ言ハウト思ツテ居リマスケレドモ皆さんガ御退窟ノヤウデアリマスカラ控ヘテ居リマシタガ、私ハ此水先案内ハ決シテ代理人デハナイト思ヒマス、卽チ先刻私ガ申シタ或仕事ヲ頼ンダ勞力ノ賃貸デアル、水先案内ガ何ヲ代表シテ何ヲ代理行爲ヲシテ居リマス、人ヲ案内スルト云フノデアリマスカラ案内サレル方ガ本人デアツテ案内スル方ガ復代人デアルト云フコトハ何ウモ思ヒ付キマセヌカラ然ウ云フモノハ代人デナイ、又後ニ仰ラレタル所ノ辯護士ノ方ハ代理人デアル、代理人デアルガ、是ニ付テハ其辯護士ト云フ者ハ法廷ニ於テハ代理ノ特權ヲ持テ居ルモノデアツテ多クノ場合ニ於テハ本人ガ代理スルコトガ出來ナイ、夫故ニ
山田喜之助君
一寸伺ヒマス、法廷デハアリマセヌ、法廷以外デアリマス
梅謙次郎君
然ウ云フ場合デアレバ純然タル復代人デアツテ若シ惡ルイ事ヲスル、辯護士ニ頼ンデ辯護士ノ選任ヲ誤ツテ酷イ目ニ遇ウヽヽヽヽヽ次ニ執逹吏ノ例ガ出マシタガ、是抔モ水先案内ノ例ト同樣デ執行抔ハ自身ニ出來ナイコト、法律ガ執行スルニハ執逹吏ガスルモノデアル、丁度裁判ハ裁判所デヤルコトハ極マツテ居ルト云フノト同樣ノコトデアリマスカラ是ハ決シテ復代人トスルモノデハナイ
土方寧君
高木君ノ言ハレタヤウニヽヽヽヽヽノヤウニナツテハ如何ニモ遺憾ト思ヒマス、旣成法典デハ復代人ヲ許スコトガ原則ニナツテ居リマスカラ夫レダカラ制限制裁トシテ代理人ニ責任ガアルトシテ原則ハ代理人ヲ選任スルコトヲ許ストシテアツテ成ル可クハ代理人自ラセヨト云フノガ旨趣デアル、矢張リ唯復代人ニサセルコトガ出來ルト云フノデアルガ夫レニ制限制裁シテアル、原則トシテハ必要ノ場合、無據イ場合ニ限ツテ許シテアル、其場合ニ尙ホ責任ヲ帶ビナケレバナラヌト云フ事ニナルト、復代人ヲ選バナケレバナラヌト云フ必要ナ場合ヲ認メルニ於テモ復代人ヲ選ブコトガ出來ヌト云フヤウナコトニナルト思ヒマス、本條ハ一番實際ニ必要ナルモノデアル、何ウカ是デ終リニナラヌデ能ク御考ヘノ上御議シニナルコトヲ望ミマス
議長(箕作麟祥君)
大分議論ガアリマシタカラ決スル方ガ宜カラウト思ヒマス、只今問題ニナツテ居ルノハ土方君ノ御說ト思ヒマスガ
土方寧君
私ノハ一項ヲ改メテ二項ヲ削ルト云フノデアリマスガ先ヅ一項ヲ改メルト云フコト丈ケニ付テ一ツ先キニ決ヲ望ミマス
議長(箕作麟祥君)
夫レニハ贊成アリマシタカ
山田喜之助君
私ガ贊成シマシタ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ土方君ノ一項ヲ改メル說丈ケニ御贊成ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數、續テ第二項ヲ削除スルト云フ說ニ御同意ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數デアリマス
梅謙次郎君
此第二項ノ終リノ所ノ「其責ニ任セス」ト云フノハ是ハ旣成法典ト同ジ文例ニナツテ居リマスカラ一寸宜イヤウニ吾々モ考ヘマシタガ、或御方ノ御注意ニ依テ能ク々々考ヘテ見マシタガ「其」ト云フ字ノ掛リ所ガ分カラナイ、夫レデ此文章ヲ「怠リタルニ非サレハ、代理人ハ復代人ノ代理行爲ニ付キ本人ニ對シテ自ラ代理スルト同一ノ責ニ任セス」ト改メタイト思ヒマス
(此時「元トノ方ガ宜シイ」ト呼ブ者アリ)
穗積陳重君
元トノ通リデ分カレバ夫レデ宜シウゴザイマス
議長(箕作麟祥君)
夫レナラバ決ノ採リ方ガ何ウデゴザイマセウカ
梅謙次郎君
夫レデ次ニ移リマス
(書記朗讀)
第百八條 代理人ガ第百六條ノ規定ニ反シ又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ復代人ヲ選任シタル場合ニ於テ本人ガ復代人ニ對シテ直接ニ其權利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行シタルトキハ其選任ヲ追認シタルモノト看做ス
(參照)取二三六、二項、佛一九九四、二項、蘭一八四〇、四項、伊一七四八、四項、瑞債務法三九七、三項、モンテネグロ四〇二、二項、西一七二二、白草二〇七六、四項
富井政章君
本條ハ取得編第三百三十六條ニ依ツタモノデアリマス、唯旣成法典ニハ直接訴權ヲ行フ場合ガアル、如何ニモ斯ウ裁判所ニ皆出ナケレバナラヌト云フヤウニ聞エマス、デ訴權ト云フ語ヲ用ヰズシテ唯廣ク權利ヲ行フト云フタ方ガ宜カラウト考ヘタノデアリマス、又權利ヲ行フニ限ツタコトハナイ義務ヲ履行スルニ由テモ矢張リ同ジ效果ヲ生ゼネバナラヌモノト思フタノデアリマス、唯タ夫レ丈ケヲ申シテ置キマス
土方寧君
一寸質問ヲ致シマス、此第百八條デアリマスガ、此場合ハ本文ニ云フ通リニ百六條ノ規定ニ反シ或ハ百七條ノ二項ニ反シテ復代人ヲ選任シタ場合デアリマス、此場合ニ追認ヲシタ、本人ガ復代人ノ行爲ヲ追認ヲシタ場合ニハ夫レト同時ニ代理人ハ前條ノ責任ヲ免レルノデアリマスカ、矢張本人ガ追認ヲシタガ爲メニ免レル事ニナルノデアリマスカ、ナラヌノデアリマスカ夫レガ一ツデアリマス、夫レカラ此第百八條ハ固ヨリ其復代人ガ正當ノ代理權ヲ持テ居ル可キ筈デナイト思ヒマスガ、然ウスルト次ノ條ノ百九條ノ中ノ本人ヲ代表スルモノデナイト云フ場合ニ當ル、若シ然ウデアレバ復代人ガ第三者ト爲シタ事ニ付テハ第三者カラ直接ニ本人ニ向テ權利ヲ主張スルコトハ勿論出來ヌ事ト考ヘマスガ如何デアリマスカ
富井政章君
第一ノ御質問ノ點ハ矢張リ第百七條ニ付テ起ツタ議論モ同ジ事デ吾々共ノ見ル所デハ矢張リ第百七條ノ適用ヲ要セナケレバナラヌト思ヒマス、夫レカラ第二ノ點デ第三者ガ本人ニ對シテ行爲ヲ行ツタ場合ニ本人ガ夫レニ應ジタ時ハ矢張追認ト看做スカト云フ御問ヒノヤウニ思ヒマシタガ然ウデアリマスカ
土方寧君
然ウデアリマセヌ、第二ノ問ヒハ復代人ガ第三者ト爲シタ法律行爲ニ基ヒテ第三者ガ本人ニ對シテ直接ニ權利ヲ主張スル事ガ出來ルヤト云フノデアリマス
富井政章君
其第三者ノ行爲ニ本人ガ應ジタ時ハ矢張其義務ヲ履行スト云フ所ニ當リ得ルト思ヒマス、併シ本條ニ見タ場合ハ主トシテ然ウ云フ場合デナシニ本人ガ復代人ニ對シテ權利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行スル場合ヲ見タノデアリマス
土方寧君
尙ホ伺ヒマスガ、主トスルト云フノハ他ノ場合モ含ンデ居ルト見テ居ルノデアリマスガ、然ウスルト是デ見ルト「本人カ復代人ニ對シテ」云々トアリマスカラ復代人ニ對シテ丈ケニ見エテ本人カラ第三者ニ對シ、又第三者カラ本人ニ對シテハ一向權利ヲ行使シ義務ヲ履行スルコトハ出來得ベカラザルヤウニ書イテアリマスガ如何デゴザイマセウカ
富井政章君
通常ハ復代人ニ對シテ爲ス場合ガ最モ追認ト見ルモノデアリマスカラ「復代人ニ對シテ」ト書イタノデアリマスケレドモ、復代人ト行爲ヲ爲シタル第三者ガ請求ヲスルト云フヤウナ行爲ニ本人ガ應ジタ時ハ矢張リ其事情ニ依テハ追認ト見ルベキ者デアラウト思ヒマス、夫レニ付テ文章ガ是デハ往カヌト云フ事デアレバ修正案ヲ御提出ニナル事ヲ望ミマス
土方寧君
應ジタ譯デハナイ、應ジナケレバナラヌ譯デアルカト云フノデアリマス
富井政章君
然ウ云フ譯デナイ、違法ノ場合ノ時デアリマスルカラ應ジナケレバナラヌト云フモノデハナイ
土方寧君
權限内ノコトデアツテモ
富井政章君
左樣
元田肇君
此第百八條ニ「其權利ヲ行使シ」ト云フコトガアリマスガ、「其權利」ト云フコトハ能ク分カツタヤウナ分カラヌヤウニ考ヘラレマスガ、是デ能ク分カルンデゴザイマセウカ、夫レカラ今一ツハ百十五條ニ「本人ノ追認ナキ限ハ」ト云フコトガゴザイマスルガ、此追認ト云フコトハ前ノ百八條ガナケレバ追認ト云フコトガ分カラヌコトニナリマセウカ伺ヒタイ、夫レヲ伺ヒマスル理由ハ「其權利ヲ行使シ」ト云フコトガ誠ニ曖昧デアツテ面白クナイコト、第百八條ニ追認ト云フコトガアリマスガ、此追認ト云フモノノ事實ト云フモノハ分カルコトトスレバ百八條ハ削除シタイト云フ考ヘヲ持テ居リマスガ如何デゴザイマセウ
富井政章君
「其權利」トアル「其」ト云フ字ハ、日本語ノ誠ニ重寶ナ辭デアツテ、此處デハ其本人トシテノ權利ト云フ積リデアリマス、義務モ其通リ、夫レカラ「追認シタルモノト看做ス」ト云フコトハナクトモ私共ハ此場合ハ追認ト見ル併シ疑ヒガ起ラウト思ヒマスコトハ、百十五條以下ノ場合ニ追認ト云フ場合ハ代理人ガ丸デ權限ナクシテ第三者ト或行爲ヲ爲シタ、或ハ權限ヲ超越シテ第三者ト行爲ヲ爲シタト云フ場合ニ、本人ガ其行爲ヲ追認スルト云フコトハ是ハ通常ノ追認ノ場合デアリマス、ケレドモ此場合ハ復代人ハ本人カラ見レバ第三者ト見ラレルノデゴザイマセウケレドモ、代理人ガ第三者ト一ノ取引ヲシタ場合デナイ、代理人ガ復代人ヲ選任スルト云フコトハ少シク實際ガ違ウ、權限外ノ行爲ヲ爲シタトカ、或ハ委任ナクシテ行爲ヲ爲シタトカ云フヤウナ場合ト少シ違ウト思ヒマシタ、或ハ疑ヒガ起ラウト思ツテ書イタノデアリマス
山田喜之助君
私ハ此第百八條ヲ削ルト云フ修正案ヲ出シマス、其理由ハ極ク簡單ナ譯デアリマスルガ、詰リ此第百八條ト申シマスルモノハ、追認ノ或一種ノ場合ヲ規定シタニ過ギナイト思ヒマス、是ハ起草委員モ定メテ御同意ダラウト思ヒマス、追認ト云フモノハ是ニ限ツタコトバゴザイマセヌ、外ニ幾ラモ追認ノ方法ガアリマス、唯特ニ追認ノ一種類ノミヲ掲ゲテ置クノ必要ハナイト思ヒマス、私ハ土方委員ノ質問ハ何ウ云フノデアツタカ其時ニハうつかりシテ居リマシタカラ分カリマセヌデアリマシタガ、詰リ土方委員ガ御問ニナツタノモ斯ウ云フコトデアツタラウト思ヒマス、本人ガ復代人ニ對シテ權利ヲ行ハヌデモ直チニ復代人ト取引ヲシタ第三者ニ向ツテ權利ヲ行ツタリ、或ハ又義務ヲ行フタ時ニハ無論追認ト見ナケレバナラヌ、詰リ是ハ或一個ノ特例ヲ掲ゲタノデアツテ之ヲ特ニ掲ゲナケレバナラヌト云フ必要ハアルマイト思ヒマス、あの追認ノ場合モ此場合モ變ラナイト思ヒマス、或ハ斯カル百八條ト云フガ如キ規定ノアルガ爲メニ追認トハ此事ノミニ限ツテ居ツテ本人ガ第三者ニ向テ直チニ權利ヲ行使シタリ、義務ヲ履行シタリスル場合ニハ追認ナキガ如キ反對ノ考ヘヲ懷ク者モアルト云フ恐レガアリマス、詰リ追認ト云フ事ハ數多キ事務テ其追認ノ一種類ノミヲ此處ニ掲ゲルノ必要ハアルマイト思ヒマスルカラ、此第百八條ハ削ラレン事ヲ希望致シマス
磯部四郎君
私モ一寸質問シテ置キマス、外ノ事デモゴザイマセヌガ此條文ヲ見マスルト云フト、本人ノ指名ヲシナイ復代人ト云フ者ニ對シテ直接ニ權利ヲ行使シ又ハ義務ヲ履行スルト云フ事ハ追認ノ事柄ニナツテ居リマスルガ、前ノ條項ヲ見マスルト云フト、本人ガ復代人ニ對シテ直接ニ權利ヲ行使スルトカ、義務ヲ履行スルトカ云フヤウナ事ハ些ツトモ見エナイヤウデアリマス、却テ前ノ一項ヲ見ルト丁度復代人ト代理人トノ關係丈ケノヤウニ一寸前條ノ第一項丈ケデ見エマスガ、夫レデ却テ此第百八條ノ所ニ至ツテ此百六條ノ規定ニ反シタ違法ノ復代人ニ對シテハ直接ニ權利モ出テ來、直接ニ義務モ出テ來ルヤウニ一寸文章ノ表ニ於テ見エマスガ、是ハ如何ナモノデアリマセウカ、唯此法文ガアリマスルカラ私ノ考ヘデハ固ヨリ普通ノ復代人ノ場合デモ本人カラ復代人ニ對シテハ直接ニ權利ヲ行使シ直接ニ義務ヲ負フデアラウト云フコトハ疑ヒマセヌ、疑ヒマセヌケレドモガ獨本人ノ指名ニ依ラズシテ復代人ヲ選任ヲシタル場合ニノミ直接ニ權利ヲ行使シ義務ヲ履行スルト云フガ如キ文章ガ出テ來テ却テ第百六條ノ規定ニ從ツタ復代人ノ場合ニハ代理人ガ本人ニ對シテ一切其責任ヲ負フト云フノデ復代人ト本人トノ間ニハ直接ノ關係ハナイヤウニ見エマス、斯ノ如クアルノハ誠ニ不體裁デアリマスルカラ、唯簡單ニ此復代人ヲ選任シタル場合ト雖ドモ本人ガ其選任ヲ追認スレバ則チ第百六條ノヤウナモノト同一ノモノニナルト云フコトニシテ、直接ニ權利ヲ行使スルトカ、義務ヲ履行スルトカ云フヤウナ文章ハナイ方ガ體面上宜クハアリハシマスマイカ、前條ニ對シテ少シク體裁ガ何ウデアラウカト思ヒマスガ如何デゴザイマセウカ
富井政章君
本條ノ場合ニ於テハ如何ニモ本人ト復代人トノ間ニ於テハ當然ハ直接ノ關係ハナイノデアリマス、全ク其違法ノ選任ヲヤツタ場合デアリマスルカラ、本人ト復代人トノ間ニ於テ默ツテ居レバ何ンノ關係モナイ、然ルニ本人ガ直接ニ本人トシテノ權利ヲ行ウト言ヘバ例ヘバ履行ヲシテ呉レト云フテ手紙ヲ遣ルトカ、或ハ今日迄ノ履行ノ仕方ハ宜イカラ尙ホ然ウ云フコトニ續ケテヤツテ呉レトカ、或ハ少シ斯ウ云フ點ガ往ケヌカラ履行ノ仕方ヲ替ヘテ呉レトカ云フヤウナ請求ヲスル、或ハ義務ヲ履行スルモノデアレバ報酬ヲ拂ウトカ、然ウ云フコトハ當然ハナイノデス、當然ハ權利モ義務モナイ話デアリマス、併シ然ウ云フ事ヲ本人ガスレバ恰モ直接ニ關係ガアル如キ行爲ヲ本人ガスレバソコデ直接ノ關係ガ生ズル、直接ノ結果ヲ法律ガ作ルノデアリマス
議長(箕作麟祥君)
此「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フコトハ何ウ云フ場合デゴザイマセウカ、例ヘバ本人ガ甲ト云フ者ヲ指名シタノニ夫レヲ聞カヌデ乙ト云フ者ヲ選任シタ場合デアリマスカ
梅謙次郎君
然ウデアリマス、夫レカラ先刻山田君カラ削除ガ出テ未ダ贊成ガアリマセヌガ、前ニ元田君カラ御質問ガアツテ御兩君ノ御說ヲ聽イテ見テ此百八條ト百十五條トノ關係ガ明ニナツテ居ラヌデハナイカト云フヤウナ感覺モアリマスルカラ一言說明ヲシテ置キマス、私ノ見ル所デハ百八條ノ追認ハ百十五條ノ追認トハ違ウ、此百八條ノ追認ト云フノハ何ヲ追認スルカト云フト復代人ノ選任ヲ追認スル、其追認ニ依テ何ウ云フ結果ヲ生ズルカナラバ將來其復代人ハ自分ノ代理人デアルト云フ事ヲ追認ヲスル、卽チ本人ニ代ハツテ何ンデモ權限内ノ事ハ出來ル、之ニ反シテ百十五條ノ場合ハ或一ノ行爲ガ權限ノナイ者ノシタコトデハアリマスケレドモ自分ニ利益ガアルト見タナラバ夫レヲ認ムル場合デアリマス、卽チ百八條ノ權限ナキ時ニ復代人ノシタ事ガ利益ノアルモノハ百十五條ニ依テ認ムルコトガ出來ル、併ナガラ百十五條ニ依テ利益ノアル行爲ヲ認メタカラト云ツテ將來ニ其人ヲ自分ノ代理人ト認ムルト云フ譯デハナイ、夫レガ何故山田君ニ對スル說明ニナルカナラバ、山田君ハ此第百八條ニ言フテアル追認ノ場合デナクモ外ニ幾ラモ追認ガアルデアラウ、例ヘバ本人ガ第三者ニ向テ權利ヲ行ツタリ、或ハ第三者ガ本人ニ向テ權利ヲ行ツタリスルコトモアラウト云フコトデアリマシタガ、夫レハ此第百八條ニ當ラヌ、本人ガ第三者ニ向テ權利ヲ行使シテモ夫レデ以テ將來ニ於テモ認ムルト云フコトヲ約束ヲスルノデハ決シテナイ、其一ツノ行爲丈ケハ自分ノ利益ニナツタノデアリマスカラ百十五條ニ依テ追認シタモノデ有效ニナルケレドモ、決シテ復代人ノ選任ガ有效トナルノデハナイ、有效トナルノハ直接ニ復代人ニ向ツテ本人ガ權利ヲ行フカ、又ハ義務ヲ履行スルト云フ場合ニ限ル、外ノ場合ハ百十五條ノ適用トナルノデアル
土方寧君
此百八條ハ條文ノ通リニ本人ガ追認ヲシタト看做サルル場合デアラウガ、復代人ノ選任ヲ追認シナイ結果ノ解釋ニ付テハ先刻質問ヲシタ通リニ私ノ考ヘト違ヒマスガ法文ニ現ハレテ居ラナイ、故ニどちらニ解シテモ宜カラウ、向フハ向フデ解シ、こつちハこつちデ解ス、併ナガラ私ハ此「本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フ事ハ削除シテ貰ヒタイト思ヒマス、前條ノ二項ハ殘ルコトニナリマシタガ本人ノ指名ニ依ル云々ト云フヤウナコトハ如何ニモ穩カデナイト思ヒマス、夫レノミナラズ先刻百七條ノ二項ノ質問ノ時ニ本人ノ指名云々ト云フコトハ百七條ノ二項ノ中ノ格段ナル場合デアツタノデアル、然ウシテ見レバ百八條ノ中ニ「第百六條ノ規定ニ反シ」ト云フコトヲ言ハナクツテモ當然似寄ツタ場合ハアルノデアリマスカラ當然是ハ削ツテモ宜シイト云フ事ト、夫レカラモウ一ツハ私ガ考ヘマシタ所デハ、折角只今梅君カラ御說明ガアリマシタケレドモ丸デ其委任權ノナイ者ガ他人ガ詰リ代理人トシテ事ヲ爲シタ場合ニ於テ本人ト目指サレテ居ツタ者ガ追認スルコトガ出來ルト云フコトデアル、夫レガ百十五條ニ在リマスガ同ジヤウナ譯デアツテ本人ノ委任モ何モナイ代理ノ權限外ノ事ヲシテ復代人ヲ恣ニ選任シタ時、其選任ヲ追認スルトカ、其外選任ヲ適法ニ選任シナカツタ場合デモ其復代人ノ爲シタ行爲ニ付テハ矢張リ追認スルコトガ出來ルト思フ、其結果ハ始メカラ本人カラ許諾ヲ得テ百六條ノ規定ニ從ツテヤツタヤウナコトデ夫故ニ私ハ本條中ノ「本人カ復代人ニ對シテ直接ニ」ト云フ所ニ字ヲ加ヘテ「本人カ復代人又ハ相手方ニ對シテ」ト云フコトニシタイト思ヒマスル、一寸伺ヒマスガ、相手方ト第三者トアリマスガ、最初法律行爲ヲ爲ス前ニ於テハ第三者ト云ツテ意思表示ガ成立シテ夫レカラ相手方ト云フ辭ヲ用ヰルト思ヒマスガ、夫レデ復代人ガ適當ニ選任シテ居ラレナイ場合デアツテモ現ニ代理ノ積リデ然ウシテ第三者ト事ヲ爲シタ場合ハ意思ガ成立ツタモノト見テ宜シイノデアリマスルカラ、第三者ト言ハナイデ相手方ト云ツタ方ガ穩カデアラウト思ヒマスカラ此「本人カ復代人ニ」トアル下ニ「又ハ相手方ニ」ト云フ文字ヲ加ヘタイト思ヒマス、又「本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フコトモ削ツテ仕舞ウ、斯フ云ウ修正說ヲ出シマス
磯部四郎君
私ハ間違ヒデアリマスルト困リマスルカラ一寸念ヲ入レテ置キマスガ、百六條ノ規定ニ從ツテ復代人ノアル時ニハ本人ト復代人トノ間ニハ直接ノ關係ハ毫モナイ、斯ウ云フコトニ御說明ガアツタヤウニ思ヒマスガ然ウデアリマスカ、夫レデ本人ト夫レカラ復代人トノ關係ハ何時デモ此百六條ノ場合デモ本人ト夫レカラ復代人トノ間ニハ直接ニ權利モ行フコトモ出來ズ本人カラ代理人ヲ經ズシテ直チニ復代人ニ係ツテ權利ヲ行フコトモナイ、義務ヲ行フコトモナイト云フ斯ウ云フ御說明ノヤウニ先程伺ヒマシタガ果シテ然ウデアリマスカ如何デゴザイマセウ
富井政章君
百七條ノ場合ニ於テ本人ト復代人トノ直接ノ關係ハ固ヨリアル百九條ノ規定ニ依テ無論復代人ノ選任ガ有效デアツタニ依テ無論其關係ハアル、第百八條ノ場合ハ然ウ云フ場合ハ權利モ生ゼズ義務モ生ゼナイ違法ノ選任デアルカラ何モナイ、何モナイケレドモ若シ本人ガ其何モナイニ拘ハラズ本人トシテノ權利ヲ行フヤウナ事ヲスル、或ハ義務ヲ履行スルヤウナ事ヲスレバソコデ法律ガ其時カラ直接ノ關係ヲ生ゼシムル、斯ウ云フ意味デアリマス
磯部四郎君
夫レデハ分カリマシタ、然ウスルト第百七條ノ所ハ兎ニ角復代人ノアル時ニハ本人ト復代人トノ間ニ於テハ直接ノ權利義務ハ固ヨリアル、加之ナラズ代理人ガ其間ニ這入ツテ本人ニ對シテ一切ノ責ヲ負フテ居ルト云フ譯デアリマスカ
富井政章君
選任及ビ監督ヲ行フノ責モアル
磯部四郎君
直接ニ權利ヲ行ハナイ時ニハ何ンデモナイ、行ツタ時ハト云フ斯ウ云フ意味デアリマスカ
富井政章君
然ウ云フ時ニハヽヽヽヽヽヽ
磯部四郎君
夫レナラバ直接ノ權利義務ヲ持テ居ツタ所ガ、百七條カラハ見エ惡クイヤウニ思ヒマスカラ文章ノ體裁上如何デアラウカト思ヒマス
山田喜之助君
私ハ一ツ質問致シマスルガ「其選任ヲ追認シタルモノト看做ス」ト云フコトニ付テ質問ヲシマス、此選任ヲ追認シタルモノト云フノハ、直接ニ權利ヲ行使スルトカ、義務ヲ履行シタトカ云フ時ハ其事柄ニ限ツテノミト見ル譯デゴザイマセウカ、全體ニ初メカラ委任ガアツタモノト見ルノデアリマスカ
梅謙次郎君
卽チ復代人ノ選任ヲ追認スルノデアリマスカラ、將來ニ向ツテ其者ヲ復代人トスルト云フコトヲ追認スルノデアリマス
山田喜之助君
夫レデハ宜シウゴザイマス、私モ然ウ解シテ居ツタノデアリマス、左樣ニスルト此第百八條ト云フモノハ益々削ラナケレバナラヌト思ヒマス、何故ナラバ追認シタ時ニハ追認者ト云フ者ハ其時カラ其者ヲ委任シタモノト同一ノ效力ヲ生ズルノハ當リ前ノ話シデアリマス、此處ハ私ノ見ル所デハ唯追認ノ一種類ヲ掲ゲタモノデアラウト思ヒマス、無論追認ノ結果ヲ言フノデナクシテ、直接ニ權利ヲ行使スルトカ直接ニ義務ヲ履行スルトカ斯ウ云フ場合ニハ追認ト見ルゾト云フ追認ノ解釋ヲシタモノデアラウト思ヒマス、左スレバ追認ノ解釋ヲ此處ニ置クノ必要ハナイト思ヒマス、御承知ノ通リ追認ト云フモノハ色々ナ解釋ガアラウト思ヒマス只今土方委員カラモ御說ガアツタ通リ矢張リ代理人ニ對シテヽヽヽヽヽ認メテモ矢張リ追認ニナル、又語弊ヲ咎メルヤウデハアリマスルガ、權利ヲ行使セヌデモ追認ニナル又代理人ニ向ツテ始メ委任シタ權限外デアツテモ隨分追認シテヤル、斯樣ナ話シデアリマスルカラ不取敢追認ト云フモノハ必ズ直接ニ權利ヲ行使シタ場合、直接ニ義務ヲ履行シタ場合ニハ限ラヌト云フコトハ明カデアラウト思ヒマス、追認ト云フモノハ直接ニ權利ヲ行使シタリ、直接ニ義務ヲ履行シタリスル外ニ幾ラモアラウト思ヒマス、然ルニ此事ノミヲ此處ニ掲ゲルノ必要ハナイト思ヒマス、故ニ本條ハ削除スルガ宜シカラウト思ヒマス
星亨君
此處ニ「本人カ復代人ニ對シテ」ト云フコトガアリマスガ、是ハナシニシテハ何ウデゴザイマセウカ、若シ之ガ要ルト云フコトニスルト、「相手方」ト云フヤウナ字ヲ入レナケレバナラヌヤウニ見エマスガ
富井政章君
丸デナクテハ誰ニ對シテト云フコトガ分カラナクテ困ルデアラウト思ヒマス、夫レカラ「相手方ニ對シテ」ト云フコトハ、此條ガ此儘デ通レバ相手方ニ對シテ唯ヤツタト云フ丈ケデハ徃ケナイ、夫レガ同時ニ復代人ニ對シテト云フコトニ見エナイ、夫レガ多クノ場合ニ於テハ見エナイヤウダト云フ私ハ斯ウ云フ考ヘデアリマス、先刻說明ノ仕方ガ不充分デアツタカモ知レマセヌガ、何故ニ「本人カ復代人及ヒ相手方ニ對シテ」ト書カナカツタカト云フ譯ハ、先刻梅君カラモ言ハレタ通リ此處ノ追認ハ權限外ノ行爲ニ付テノ追認デナクシテ、其代理人ノシタ選任ト云フ一ツノ纏マツタモノヲ追認スル譯デアリマスカラ、唯「復代人ニ對シテ」ト斯ウ書イタノデアリマス
長谷川喬君
土方君カラ「本人ノ指命ニ依ラスシテ」ト云フコトヲ削ルト云フ說ヲ提出セラレマシタカラ、時機ニ依テハ贊成ヲシヤウト思ヒマスカラ土方君ニ御尋ネヲシマスルガ、若シ「本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フコトヲ削ツタナラバ、本人ガ許諾ヲシテ居ル併ナガラ指名シテ甲ヲ復代人ニシロト命ジテ居ル場合ニ乙ヲ選任シタ場合ハ何ウナルノデゴザイマセウカト云フ事ヲ承リタイ
土方寧君
只今長谷川君ノ御尋ネデアリマスガ「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フコトハ詰リ本人ガ甲ヲ指名シタノヲ代理人ガ乙、卽チ外ノ人ヲ選任シタ場合デアツテ其場合ニハ百六條ノ規定ニ反シテ居ルト云フコトハ別ニ此處ニ言ハヌデモ分カリ切ツタ事デアラウト思ヒマス、然ウシテ其場合ニ於テ始メ本人ガ甲ヲ復代人ニセヨト指名シタケレドモ、代理人ハ乙ト云フ外ノ人ヲ選任シタニ拘ハラズ本人ガ夫レヲ默認スルヤウナコトガアツタ場合ナラバ、夫レハ追認ト認メテ宜シイノデアリマス
長谷川喬君
許諾ト云フコトニナリマスカ
土方寧君
本人ガ甲ヲ選任セヨト云ツタ、夫レヲ代理人ハ乙ヲ選任ヲシタ時ハ百條ノ規定ニ反スルコトニナル、其時ニ今あなたノ御尋ネデハ代理人ガ其指名ニハ從ハナクツテ乙ヲ選任シタケレドモ本人モ夫レヲ承知デアツタト云フ場合デアレバ後トカラ許諾シタノデアル、許諾シタノハ前カラニハ限ラヌ後トカラデモ宜シイ、此事ニ付テ先刻起草委員ニ質問シタ時ニ夫レハ百六條ノ二項ノ「本人ノ許諾」ト云フ中ニ這入ルヤ否ヤト云フコトヲ御尋ネヲシタ時ニ這入ルト云フコトデアリマシタ、矢張リ百七條ノ「前條ノ」ト云フ中ニ這入ルト云フ御說明デアツタ、夫レデ宜カラウト思ヒマス
富井政章君
只今長谷川君カラ土方君ニ問ヒガアツタニ付テ一寸一言陳ベタイノハ「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フ場合ハ本人ガ指名シタ以外ノ者ヲ選任シタ場合丈ケヲ言フ積リデアツタノデアリマス、丸デ許諾ノナイ場合ハ「第百六條ノ規定ニ反シ」ト云フ中ニ這入ル、デ本人ノ指名シタル以外ノ人ヲ選任シタ場合デモ土方君ノ御說ニ據レバ本人ノ許諾ヲ得タルト云フ中ニ這入ルベキデアルト云フコトデアリマシタガ、成程然ウモ解セラレル、併シナガラ少シ疑ヒノアル譯ハ廣ク言ヘバ許諾ヲ與ヘテ居ルノデス、與ヘテ居ルケレドモ斯ウ云フ者ヲ選ベト斯ウ指名シタ、其指名ニ依ラズシテ選任ヲシタ、百六條ノ場合ハ本人ノ許諾ヲ得タト云フ場合デ許諾ハ得タト云フコトハ言ヘ得ル解釋ノ仕方ニ依テハ、唯何之某ト云フ者ヲ指名シタ者ヲ選バナンダ、許諾ヲ得テ居ラヌト言フコトガ確カデアレバ宜シイガ少シ疑ヒガ起ラウト思ヒマシテ「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フ事ヲ入レタノデアリマス
土方寧君
今ノハ疑ヒガナイト思ヒマス、何故ナラバ自分ノ復代人ヲ選任シタ場合ハ詰リ其中ノ一ツノ事ヲシタノデアリマスカラ復代人ヲ選ブト云フコトハシタノデ夫レデ之ヲ別ニシテ見ル譯ニハ何ウシテモ往カヌ夫レハ決シテ疑ヒノアルヤウナコトハナイト思ヒマス
本野一郎君
一寸起草委員ニ御相談ヲシマスガ、「代理人カ第百六條ノ規定ニ反シ又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」トアリマスガ、此「指名ニ依ラスシテ」ト云フ字ガ穩カデナイト云フヤウナ說ガ出テ居リマシタガ、此處ヲ「第百六條ノ規定又ハ本人ノ指定ニ反シ」トカ或ハ「本人ノ指名ニ從ハスシテ」ト云フヤウナコトニシテハ何ウデゴザイマセウカ
梅謙次郎君
「指名ニ從ハスシテ」ノ方ガ宜シイヤウデアル
本野一郎君
夫レデハ「指名ニ從ハスシテ」ト云フ方ニシタイト思ヒマス
議長(箕作麟祥君)
土方君ノ御說ニハ贊成ガアリマセヌガ
元田肇君
私ハ贊成シタイト思ヒマスガ、此土方君ノ修正說ノ「復代人又ハ相手方ニ對シテ」ト云フコトニスルノハ徃ケナイ、選任ヲ追認スルト云フコトデナケレバ徃ケナイ、同一ニ看做サルル行爲ヲ本人ガ爲シタ場合デモ矢張リ其選任ヲ追認スルコトニシナケレバナラヌト云フ事デアリマスカ、復代人以外ノ人ニ向テ夫レヲシタ時分ニモ然ウナルノデアリマスカ
梅謙次郎君
私ノ解釋デハナラナイ、一體追認ノ原則ハ百十五條ニアリマス、其原則トシテハ相手方ニ對シテあの條ノヤウニナツテ居リマス、ソコデ此處ノ復代人ノ選任ヲ追認スル場合ハ本人ガ復代人ニ向テ權利ヲ行ヒ義務ヲ履行スルト云フノデ、其者ノ爲シタ事ヲ第三者ニ向テ追認シテモ本人ニ取ツテ利益ノアルト云フヤウナ唯其一ツノ行爲ニ付テハ第百十五條ノ規定ヲ適用シテ追認スルコトハ出來ルガ復代人ノ選任ハ追認シタモノデナイト言ハナケレバナラヌ、其利益アルモノハ其一ツノ行爲ニ付テ丈ケ百十五條ニ依テ追認スル事ガ出來ルガ、夫レヲシタガ爲メニ復代人ニ選任シタ事迄追認ヲシタモノデハナイト言ハナケレバナラヌ
元田肇君
結果ハ何ウ云フ違ヒニナルノデアリマセウカ
梅謙次郎君
例ヘバ私ガ元田さんヲ代理人トスル、然ウシテ元田さんハ星さんヲ復代人トシテ使ツタ、所デ星さんガ第三者タル所ノ横田さんニ對シテ或行爲ヲ爲シタト云フ時ニ私ガ星さんニ向テ星さんノ爲シタ行爲ヨリ生ズル利益ヲ親シク渡ストカ、又星さんガ費用ヲ使ツタナラバ私ガ夫レヲ償フトカ云フヤウナコトヲスレバ星さんハ正當ナル私ノ復代人タルコトヲ認メテ星さんハ將來私ノ代理人トシテ何事モ爲スコトガ出來ルト云フヤウニナツテ來ル、又星さんガ代理權ヲ持テ居ラナカツタ人デアツタケレドモ其爲シタ行爲ガ利益ト思ヘバ其行爲ヲ有效ト追認スルトカ、星さんハ決シテ私ノ代理人デナイガ此人ノ爲シタコトガ私ノ爲メニ利益ガアルカラ追認スルト言ヘバ其一ツ丈ケノ行爲ヲ追認ヲスル、他ノ行爲ハ追認ヲセヌト云フコトニナルカラ然ウハナラヌト云フノデアリマス、夫故ニ此處ヲ相手方ニ對シテト云フコトヲ削ラナクツテハ大變此精神ニ違ツテ來ルト思ヒマス
土方寧君
色々修正案ガ出マシタガ一向成立ツテ居ラヌ、私ハ先程「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フ字丈ケ拔シテ其次ニアル「本人カ復代人」ノ下ニ「又ハ相手方」ト云フ字ヲ別ニ加ヘルト云フ二ツノ修正案ヲ出シテ置キマシタカラ何ウカ御贊成ヲ願ヒマス
議長(箕作麟祥君)
二ツノ修正案ヲ土方君カラ御提出ニナツテ居リマスガ
山田喜之助君
私ハ兩方共ニ贊成シマス
元田肇君
私ハ後ノ方ヲ贊成シマス
星亨君
私ハ最初丈ケノ修正案ヲ贊成シマス
元田肇君
本人タル權利ハ復代人ヲ選定スル權利ト思ヒマスガ、然ウスルト直接權利云々ト云フヤウナコトモアツテ唯夫レ丈ケヲ修正シタ丈ケデハ立派ナ修正案トモ考ヘラレマセヌカラ如何ナモノデゴザイマセウカ、土方さんデモ此次迄ニ御考ヘニナツテ立派ナ修正案デモ御出シニナツタラ宜カラウト思ヒマスガ
梅謙次郎君
今迄ノ例モアルコトデアリマスカラ、大分質問ヤ議論モアリマシタカラ決ヲ採ツテ貰ツテ見テ若シ宜イ案ガアツタナラバ此次ニ尙ホ提出ヲスルト云フコトニシタイ、夫レデ先ヅ今ノ儘デ決ヲ採ツテ貰ヒタイ
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ決スルコトニナリマセヌガ、夫レ迄鄭重ヲ要シマスガ、隨分議論モアツタヤウデアリマスルカラ今晩決スルコトニシテハ如何デゴザイマセウ、先ツ山田君ノ全部削除說ニハ贊成者モナイヤウデアリマス、夫レカラ土方君ノ御說ニハ贊成ガアツタヤウデアリマスカラ大抵之デ決シテモ宜カラウト思ヒマス、夫レデハ土方君ノ御說デ「又ハ本人ノ指名ニ依ラスシテ」ト云フ文字ヲ削除スル說ニ贊成ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數、夫レデハ次ニ同ク土方君ノ御說デ「本人カ復代人」トアル下ニ「又ハ相手方」ト云フ文字ヲ加ヘル說ニ贊成ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數デアリマス
本野一郎君
私ハ「第百六條ノ規定又ハ本人ノ指名ニ反シテ」ト云フ修正說ヲ出シマス
(此時「贊成」ト呼ブモノアリ)
議長(箕作麟祥君)
夫レデハ只今ノ本野君ノ修正案ニ贊成ノ方ハ起立ヲ請ヒマス
起立者少數
議長(箕作麟祥君)
少數夫レデハモウ一箇條ヤリマス、百九條退席委員
三浦安君
(書記朗讀)
第百九條 復代人ハ其權限內ノ行爲ニ付キ本人ヲ代表ス
(參照)取二三五、一項、二三六、一項、印契一九二、一項、三項
磯部四郎君
原案贊成
富井政章君
本條ニ付テハ疑ヒハ起ルマイト思ヒマシタケレドモ、或ハ異議ガ生ズルカモ知レヌト思ヒマシタカラ出シタ譯デアリマス
元田肇君
百條ニハ「代理人カ其權限内ニ於テ本人ノ爲メニスルコトヲ示シテ」云々ト云フヤウニ委シク書イテアツテ、此處ニハ唯「代表ス」トシテ百條トハ書キ方ガ替ヘテアルノハ何ウ云フ譯デアリマスカ
富井政章君
是ハ唯簡單ニシヤウト思ツタノデアリマス、法人ノ所デモ「理事ハ法人ヲ代表ス」トアリマス、其文例ニ倣ツテ唯簡單ニ濟マサウト思ツタ譯デアリマス
土方寧君
原案贊成
山田喜之助君
贊成
議長(箕作麟祥君)
此百九條ニ付テハ別ニ御異論ガナケレバ原案可決ト認メテ今晩ハ之デ散會致シマス