商法再調査案議事速記錄第十二回
明治廿一年十一月二日第九時開會
第八百五十四條朗讀
（議案入）
（元尾崎）
六十日以內ナレハ何程テモ云ハレルカ少シ文カ足ラヌヤウタ
（渡）
原トノハ「ナクシテ」トアル
（元尾崎）
「ナクシテ」トナイト文カ切レルヤウニナル「シテ」ヲ入レヤウ
（南部）
同シ事テハナイカ
（箕作）
ナク航海ヲ爲スノテス
（元尾崎）
「ナク航海ヲ爲ス」ト云フト通シマス
（松岡）
航海ヲ爲スト云フト航海ニ發航シタライケンタラウカ
（村田）
發航シテ然ウシテ六十日ヲ過キテハイケナイ
（南部）
發航ト云フノハ六十日ノ起算㸃ヲ示シタ丈ケタ
（松岡）
發航セスト思ヘハ宜シイ
（元尾崎）
渡航シテト云フ字カナケレハ可笑シイ
（南部）
航海シタラ消滅スルカト云フト然ウテナイ航海シテカラ六十日目テナケレハ消滅セヌ
本條ハ原案ニ決ス
第八百五十五條朗讀
（議案入）
（村田）
二項ハ新規ニ這入リマシタカ
（松岡）
會議テ入レタノタ
（箕作）
民法ノ記入ハ三年テスカ
（南部）
然ウテス
本條ハ原案ニ決ス
第八百五十六條朗讀
（議案入）
（村田）
今度ハ總テ質入ト云フ字ヲ削ツテ仕舞ツタカ其レテ宜シイカ
（松岡）
置イタ方カ宜シイ
（村田）
質入書入ト云ツテアル
（元尾崎）
合法ノ原因ト云フノハ
（南部）
買フタトカ讓受ケトカ云フノタ
（元尾崎）
記入ノ時ト云フノハ午後何時ト云フノテスカ
（南部）
矢張日附テス
（元尾崎）
其レナラ記入ノ日テ良カラウ
（村田）
質入ヲ削ツテモ宜シイカネ
（岸本）
佛蘭西ノモ抵當ハカリテ御座イマス、記入ノ方ニヤツテ居ルノハ抵當ハカリテ良イテハナイカト云フ事テ質ニ入レルハ經濟ト良クナイト云フ主意テハナイカト思フ
（村田）
現今登記簿ニモ質入ト云フ事カアル
（松岡）
殘シテ置イテモ差支ナイ
（岸本）
御修正ニナレハ兎モ角モ、原案者ノ主意ハ抵當ハカリテ御座イマス
（松岡）
矢ツ張リ質入ト抵當ト兩方置クカ宜シイ
（淸岡）
其レテナイト質入ヲスルトキ困ルト云フ
（元尾崎）
質ニ取ツテ直キ其船ヲ運轉スル事カアルタラウカ
（村田）
現行ハ澤山アリマス
（南部）
質入ヲ禁スルト云フヤウテハ困ル
（岸本）
實際ナイタラウト思ヒマス
（淸岡）
偶々アツタトキ困ル
（岸本）
イヤ地面トハ違ヒマス運轉スルノニ大變入費カ掛リマスカラ實際取ラナイ
（淸岡）
運轉スルカモ知レン
（松岡）
運轉シテ收益ヲ取ル
（岸本）
動產ヲ質ニ取ツテ其レヲ使用スルト云フ事ハ民法テモ認メテ居リマセン
（松岡）
收益シテ宜シイノタ
（元尾崎）
默ツテ置イテハ善イカ惡イカ分ラン
（岸本）
佛蘭西テモ質テ大變困難ヲスルカラ抵當ヲ許シタト書物ニアリマス
（松岡）
抵當ハ便利カ良イカ質ハ惡イカラ禁シテ抵當ヲ許スト云フ事カ妻百物ニアリマス
（岸本）
是レモ禁シテハ居リマセン質ナレハ民法ノ手續テ行キマス併シ恐ラクイケマイト思ヒマス
（松岡）
民法テハ船ヲ不動產ト見テナイカラ質ハ出來ン
（岸本）
民法テ動產ト見テ居リマスカラ質ニ置ク事ハ出來マス
（松岡）
入レテ置カウテハナイカ
（南部）
入ランタラウ是迄ノ船ナトヲ質入スルト云フノハ小サイ船ヲ見テ居ル是レハ頓數モ定ツテ一々登記モスルシ國旗ヲ揭ケテ國ノ物ト云フト云フ事ヲ示スカラ抵當ト云フ事カアレハ普通ニスル事ハナイ
（箕作）
原案者ハ不都合ナイ積リテ載セタノテ御座イマスカラ
（南部）
船舶ノ登記ヲ心得テモ其働キヲ心得ナケレハナラン左モナクテモ船ノ質入ヲ法律テ認メタモノハナイ
（村田）
今ノ登記ニハ質入書入トアル
（南部）
書入質トアル
（北畠）
經濟上便利カアルト云フ事ハ利害ハ向ノ中ニアルノタカラ書入テモ出來ナイ事ハ出來ナイ只徒法ト云フ丈ケテ甲斐カナイ
（木下）
入レルナラ質入ヲスルノハ規則カ違ヒマセントイケマセン質入ノ權利義務ヲ定メマセント只ノ質入ハ使用スル事カ出來マセンテ良クアリマセンカラ向テ勝手ニ使ツテ宜シイト云フナレハ宜シウ御座イマスカ
（北畠）
使用スル事ハ出來ナイタラウ
（松岡）
民法テハ家ヤ地面ト同シニ使用スルヤウニナル
（岸本）
其レテハ別ニ明文カナケレハナラン
（南部）
前ニハ質入ト云フ字カアツタ抵當ト云フ字ハ落チテ居リマシタカラ抵當ト云フ字ヲ入レタノタ船ヲ質ニ入レルト云フ事ハ何處カニアルカ知レン
（岸本）
船ヲ質ニ取ルノハ田舟トカ何トカ小サイ物テス
（南部）
海上法ハ成丈ケ外國ト權衡ヲ取ラナケレハナラン外國ニハ恐ラクアルマイ
（村田）
船ヲ向フニ渡シテ收益ヲ取ツテ仕舞ツテ本當ノ質ノヤウニヤツテハ何ウタラウ
（木下）
質入ヲシテモ此法律ニ依テ登記ヲ受クル事ハ出來ナイト云フ結果カアリマス
（南部）
船ハ動產不動產ノ間ニ在ル物タカラ質ハ入ラヌテス
（岸本）
質ニ入レテ不動產ノ如ク運轉サセテモ船長ヲ撰フ權ナトノ責任ハ何處ニ在リマスカ持主カ持ツテ居リマスカラ運轉サセルヤウニナレハ詳細ノ規則カナケレハナラン
（松岡）
訴訟法テハ船ノ差押ハ不動產ト同シヤウニシテ居ル日本ノハ條ハ拔イタケレトモ六百九十三條テ船舶ニ屬スル强制執行テ不動產ト同シヤウニナツテ居ル
（南部）
强制執行ト云フ事ハ關係ハナイコレハ合意上ノ質タカラ
（岸本）
其質ハ使用權ヲ與ヘル質テハアリマセン
（松岡）
直キニ賣テ仕舞フノテス
（岸本）
收益ハ出來マスマイ
（松岡）
裁判所ハ申立ニ依テ航行ヲ許ス事ヲ得ルトアル
（岸本）
獨逸ニハ佛蘭西ノ不動產質ハナイト云フ事テ御座イマス
（南部）
强制執行ハ質ニ取ル事ニハナランテモ相對ノ質ハ負ハナケレハナラン一向關係ナイ訴訟法ニ質カアルカラ之ヲ質ニシナケレハナラント云フ事ハナイ訴訟法ハ强制執行カラ起ル質テ合意上トハ違ヒマス
（大尾崎）
是レテ宜シイ
（元尾崎）
宜シイ、四ハ「記入ノ時日」トシヤウ
（槇村）
時日カ良カラウ
本條ハ第四「記入ノ時」トアルヲ「記入ノ時日」ト改ム
第八百五十七條朗讀
（議案入）
（南部）
公證帳簿ト云フ事ハ
（元尾崎）
登記簿タラウ
（木下）
仕舞ニモアリマス登記簿テス
（南部）
登記簿ナラ登記簿トヤルカ宜シイ
（箕作）
民法テハ抵當ハ記入スルト云フ事ニナリマシタ然ウスルト記入簿トヤラナケレハナラン登記ハ買賣ヤ讓與ト云フモノハ所有權ノ移轉ヲ登記スル抵當ヤ先取特權ヲ記入スル其レカ公證帳簿テス
（元尾崎）
登記簿トスルカ宜シイ
（箕作）
船舶登記簿トシマシタカ今ノ差支カアリマスカラ公證帳簿ト致シマシタ
（松岡）
記入モ何モ一緖テ登記簿トヤツテ差支ナイ
（渡）
登記簿トシヤウ
（南部）
前ニ帳簿トアルカ公證帳簿ト云フ事ハナイ
（岸本）
是レモ帳簿テ宜シウ御座イマス
（村田）
原トノ九百十六條ニ特別ノ登記簿ヲ拵ヘルト云フ事カアツタノヲ削ツタノタ
（南部）
アレハ現行法ニ牴觸スルカラ削リマシタ
（元尾崎）
登記簿テ宜シイ
（岸本）
登記簿トシテモ現行法ヲ更ヘナケレハナランテセウ
（木下）
船ノ登記證書ハ別ニ極メマスカ
（南部）
抵當ノ帳簿トヤツテ置キマセウ
（箕作）
其レテ足リルト思ヒマス民法テモ記入ト云フ語ト一ツニシテ仕舞フ事ハアリマスマイ
（淸岡）
登記簿カ宜シイ
（南部）
登記簿テ差支ナイ
（木下）
五十二條ノ十ニハ船舶登記簿ト致シマシタ
（箕作）
然ウスルト五十六條ハ記入ハ船舶登記簿ニ之ヲ爲ストスルカ宜シイ然ウシナイト矢張リ別ノ帳面ニ書クヤウニナル
（木下）
原案者ノ趣意ハ特別ニ帳簿ヲ拵ヘルト云フノテ御座イマスカラ
（箕作）
其レテハ然ウシマセウ五十六條ハ「記入ハ船舶登記簿ニ之ヲ爲ス」トシマセウ
本條ハ「抵當ノ公證帳簿」トアルヲ「船舶登記簿」ト改ム
第八百五十八條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第八百五十九條、第八百六十條、第八百六十一條、第八百六十二條、第八百六十三條ハ原案ニ決ス
第八百六十四條朗讀
（議案入）
（渡）
船長ハ或ル人ノ指圖ヲ受ケテスルノハ何ウ云フ事タラウ
（村田）
荷主ノヤウナ者カアルタラウ
（渡）
依賴ヲ受ケテアレハ宜シイカ指圖ヲ受クルト云フノハ良クナイ
（松岡）
或ル人ハ荷主テモアリ所有者テアル
（南部）
其人ノ情況ヲ知リタルトキニ限リトスレハ宜シイ
（槇村）
自分カ指圖ヲシテ其情況ヲ知ランカ
（淸岡）
或ル人ト或ル人トハ違フ
（松岡）
違ツテハ大變タ
（渡）
其或ル人ニ違ヒナイ
（淸岡）
二人リアツタ時一人リハ指圖ヲシテ一人リモ指圖ヲシタ事ヲ知ツテ指圖ヲシタ者ニ對シテハ負ケラレルケレトモ指圖シナイ者ニハ負ケラレン
（南部）
或ル人ハ其人トヤリマセウ
（元尾崎）
其レカ宜シイ
本條ハ「或ル人」トアルヲ「其人」ト改ム
第八百六十五條、第八百六十六條、第八百六十七條、第八百六十八條、第八百六十九條、第八百七十條、第八百七十一條、第八百七十二條、第八百七十三條、第八百七十四條、第八百七十五條、第八百七十六條、第八百七十七條、第八百七十八條
本條ハ原案ニ決ス
第八百七十九條朗讀
（議案入）
（木下）
「包有事項」ハ「旨趣」トナリマス
本條ハ「包有事項」トアルヲ「旨趣」ト改ム
第八百八十條、第八百八十一條、第八百八十二條朗讀
本條ハ原案ニ決ス
第八百八十三條朗讀
（議案入）
（村田）
之モ二項三項ハアルノテスカ
（箕作）
仕舞ヒ丈ケハアルノテ御座イマス
（松岡）
船舶カ掠奪ト云フ事モナイ
（木下）
是レハ此議場テ論カアツテ餘リ酷タカラト云フノテ報吿委員カラ原案者ニ相談シテ入レマシタ
（淸岡）
碎ケテ仕舞ツテ修繕ノ出來ナイトキハ
（松岡）
沈沒ハシナイ
（南部）
其レタカラ歸リノ旅費ヲヤル
（木下）
緩メタノテ御座イマス沈沒シタトキハ孰レ修繕ノ效ハナイノテ御座イマス
（淸岡）
其時ハ吳レルカ
（南部）
權利ハ貰ハレル
（淸岡）
沈沒シタトキハ修繕ノ效カナイカラ損害ノ請求ヲスル事ハ出來ル或ル上ニハ權ヲ失フトアリテ具合カワルイ
（松岡）
上ノ給料ハ雇ヒ期限中ト見ナケレハナラン
（淸岡）
上ハ失フトアル
（元尾崎）
沈沒スレハ前ニ這入ル少シテモ殘ツテ居レハ此後ニ這入ル
（松岡）
前ノ方ハ一ト航海ノ全額取レント云フ話タ之ハ全額テハナイケレトモ其時マテノ分ハ取レルト云フノタ
（箕作）
同シ事ヲ云ツテ居ルノテス
（淸岡）
酷イト云フ論モアツタカ助クルナラもツとドウカシナイト良クナイ
（南部）
全額トヤリマスカ
（渡）
全額ヲ入レハ宜シイ
（箕作）
修繕ノ效ナキモノト言渡サレタル場合ト云フノハ沈沒ヨリ廣イカ沈沒シナイテモ船員ハ給料全額請求權ヲ失フノテセウ全額入レルノハ御同意テ御座イマスカ變ニナリハシマセンカ第一沈沒トシテ一項ハ沈沒シタルハカリテ請求權ヲ失フヤウニナツテ修繕ノ效ナキモノハイランヤウニナルカラ
（木下）
此一條ハお預ケヲ願ヒマス
（箕作）
其レカ宜シイ
本條ハ未定
第八百八十四條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第八百八十五條朗讀
（議案入）
（南部）
此場合ニハ九百四十四條ノ場合ヲ適用シ原案者ニ質問スト書イテアリハシマセンカ
（松岡）
五日ノ雇テ三个月看護スルト云フノハ酷イテハナイカ
（岸本）
三个月ヲ超エサルテ御座イマスカラ最高㸃ヲ定メタキリテ其中ヲ縮メル事ハ出來マス
（松岡）
病氣中ニ放ス事モ出來マイ
（岸本）
おツ放シテモ構ハンノテス
（松岡）
向フニ權カアルカラ其レハ出來ン
（南部）
雇フタ期限ヲ超エテ居ルト云フ事ハ出來ナイ
（岸本）
法律ノ精神ハ許シマセン雇入レテアル問役ニ就カンカラ貰ハヌカト云フト是丈ケハ貰ヘルト云フノテ御座イマスカラ雇期限後ニナレハ役ニ就ク就カヌト云フ論ハ出ナイ
（村田）
權利ハアルト云フノタカラ夫丈ケヤランカモ知レン
（南部）
其レテハイケン其レテハ權利テハナイ
（松岡）
三个月マテハ權利カアル本文ノ主意ハ病ノ爲メニ雇ハ解ケヌテセウ併シ何時迄モ使フカト云フト際限カアルカラ三个月ニシナケレハナラント云フ主意タ
（淸岡）
病ハ然ウタケレトモ傷痍ナトハ其船ニ雇ハレタ爲メニ傷痍ヲ負フタノタカラ十个月テモ二十个月テモ三月ヤラナケレハナラン
（村田）
三十日外雇ツテナイ三十日仕事ヲサセル爲メニ雇フタノタカラ
（松岡）
少シ文カ足ランヤウタ
（村田）
期限ノ外マテ養ツテヤルト云フ事ハナイ
（淸岡）
昨日來タ婢僕カ病ツイタラ昨日來タカラ出テ行ケト云フ事ハ出來ナイ
（元尾崎）
然ウ云フ者ニ出合ツテハ仕方カナイ
（南部）
原案者ハ雇期限ノ中ヲ指シタノタ
（淸岡）
其年期限テアツタトキハ六个月後ニ病氣ニ罹ツタトキハ十日カ二十日テおツ放シテ仕舞フタラウ
（渡）
其レハセンテモ三个月置クト云フ事ハナイ
（大尾崎）
其レテハ此文章テハ分ラン
（渡）
身分ノ約束ハ三个月テ跡一个月殘ツテ居テ本人ハ三个月養ツテ吳レト云ツテモ出來ン
（委員長）
其レハ船長カ見テ三十日ノ雇期限ノ者ニ三个月ヤル筈ハナイ
（渡）
其レタカラ三个月テ差支ナイ
（木下）
原案者ノ主意ハ今日迄ニ雇期限カ切レテモ其時分病氣ヲシテ居レハ跡三个月ヤラナケレハナラント云フノテ御座イマス給料ハ取レマセンカ病氣テハ養ツテヤラナケレハナラン
（渡）
一个月雇テモ十五日雇テモ然ウテスカ
（木下）
勿論然ウテス
（松岡）
ソンナ事ハ出來ルモノテハナイ
（渡）
ソンナ馬鹿氣タ事ヲ極メテモ行ハレン
（松岡）
病ム方ニ權利カアルカラ訴ヘル事カ出來ル
（箕作）
註ノ二一九ニアリマス
（松岡）
一年トカ二年トカニ限ツテ居レハ船舶ナトハ一航海ニ限ツテ居ル其レニコソナ事ヲシテハ會社カ立タヌヤウニナル
（元尾崎）
水夫ナトカ煩ツテ三个月モ經ル事ハ全クアリマセン心配スルニハ及ハン原案テ宜シイ
（大尾崎）
原案テ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
第八百八十六條、第八百八十七條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第八百八十八條、第八百八十九條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第八百九十條朗讀
（議案入）
（南部）
運送ノ送ノ字ハ直シテ置キマシタカ「送」ニナリマシタカ
（木下）
送ニナリマシタ海上運送ハ陸上運送ト同シニシタ方カ良カラウト云フノテ御座イマス
（南部）
賃貸借トヤツタナラ良カラウ民法ハ皆賃貸借タ
（箕作）
中ノ文ノ一分ヲ貸借スルト云フ所ハ賃貸借トシマスカ
（松岡）
賃貸借テ良カラウ
（村田）
民法テハ途中ノ時ハ賃貸トカ賃借トカ云ツテアリマシタ
（南部）
賃借テ宜シイ
（松岡）
兩方云ハレント云フモノテハナイ
本條ハ「貸借」トアルヲ「賃貸借」ト改ム
零時十二分休憩
午後一時開會
第八百九十一條、第八百九十二條、第八百九十三條、第八百九十四條、第八百九十五條、第八百九十六條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第八百九十七條朗讀
（議案入）
（箕作）
亦ト云フ字カ入リマセウカ原トハ「又運賃ノ半額」トアツタ
（元尾崎）
解除シテモ半額ハ取ルテセウ
（南部）
亦ハ入リマセン
（村田）
原トハ又運送賃ノ半額ヲ支拂フ事ヲ要ストアツタカアル方カ良カラウ其レカナイト尾崎サンノ云フヤウニ疑カ起ル
（南部）
併シ入ラナイ
（元尾崎）
文カ惡イ
（渡）
「看做ス」テ宜シイ
（岸本）
契約ニ背イテ以テ行カナイトキハ皆取ラレルト云フ事モアル位タカラ半額ハ無論取ラレルト思ハレマス
（箕作）
前ノヤウニシマセウ「又運送賃ノ半額ヲ支拂フ事ヲ要ス」トシヤウ
（委員長）
其方カ宜シイ
（淸岡）
看做スト云フト半額ヲ拂ハシムル事ヲ要スト云ハナケレハナラン
（大尾崎）
看做サレカ宜シイ
（委員長）
看做サレトスルカ
本條ハ「亦之ヲ契約解除ト看做ス」トアルヲ「之ヲ契約解除ト看做サレ又運送賃ノ半額ヲ支拂フ事ヲ要ス」ト改ム
第八百九十八條、第八百九十九條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第九百條朗讀
（議案入）
（元尾崎）
「トキハ」カ二ツアル
（槇村）
之ハ英文タ
（木下）
得タルトキハ其收入減シタルトキハ其減額テ御座イマス
（松岡）
半額ヲ支拂ツテ解除スル其レハ一向遲延モナク荷物ヲ積ンテ船カ發シテ行クトキカアラウトモ
（淸岡）
控除スル事ヲ得スト云フカラ分ランノタ
（元尾崎）
文カ六ケシイカ其收入シテトナリマシタカラ
（槇村）
收入テ切ラナケレハナラン
（南部）
控除スル事ヲ得スカ宜シイ
（淸岡）
之ハ船長ノ方カラヤツテ居ル
（南部）
運送賃カラ差引ヲサセナケレハナラント云フノタ
（淸岡）
其收入ト云フノハ船長タラウ其航海ヲ止メルノモ船長ノ方カラ止メルノタラウ止メテ費用カ減シタ夫故ニ其減額ヲサレタ其借リタ方カラ受クヘキ運賃ハ借リタ方カラ拂ハナケレハナラン其レハアツテモ引去ル事ハ出來ント云フノタ控除スル事ヲ得スト云フノハ可笑シイ
（元尾崎）
九百八條ハ賃借人ノ承諾ヲ得テ積ンタトキハ賃借人ニ歸ス默ツテ積メハ船長ニ歸スト云フノハ何ウ云フモノタラウ
（淸岡）
併シ此場合ハ前條ノヤウナ場合テハ借人ニ落度カアツテ是レテハ船カ行ケナイ船カワクワクシテ行ケナイト云フヤウナトキハ
（大尾崎）
全體充分ニ船積ヲスレハ具合カ出來ルカ十分ニ船積カ出來ンカラ外ノ荷物ヲ積ンタト上ノ條ト合セテ見テ行ケハ宜シイヤウタ
（淸岡）
モツト字ヲ足ソウテハナイカ
（南部）
船長カト入レルト「及ヒ」ト云フ字ハ下ニ利キマセンカラ
（松岡）
誰カ控除スル事ヲ得ストナルタラウ
（南部）
控除セラルル事ヲ得スト云フノタ減額ヲ控除スル事ヲ得スト云フノト同シ事タ
（箕作）
他ノ運送品ニ付キ收入ヲ得又航海ヲ止メタルニ因リテ費用ヲ減シタルト云フノヲ之カ爲メニ運送賃ヲ減スル事ヲ得スト云ツテハ違ヒマスカ賃借人ト云フ字ヲ入レハ宜シイノテス
（淸岡）
此文章テハ船長ノ方ニ掛ツテ來ル
（委員長）
前ノ方カ宜シイカ知レン
（箕作）
前ニシテモ收入及ヒ航海ヲ止メタルト云フト分ランヤウニナリマセウ
（元尾崎）
收入ヲ得サルトキ及ヒ航海ヲ止メタルニ因リ費用ヲ減シタルトキハ其收入及ヒ減額ハ船長ノ受クヘキ運送賃ヨリ之ヲ控除スル事ヲ得ストスレハ宜シイ
（南部）
其レカ宜カラウ
（木下）
他ノ運送品ニ付テ得タル收入及ヒ航海ヲ止メタルニ因リ減シタル費用ハ
（元尾崎）
船長ノ受クヘキタラウ
（岸本）
船舶テ御座イマス、ナクテモ宜シイ
（箕作）
費用ハ運送賃ヨリ之ヲ控除スルテ宜シイ
（南部）
其レテ宜シイ
（淸岡）
船舶ノ受クヘキト云フノハ甚タ必要ト思フ
（箕作）
「但」ヲ切ツテモ同シ事タラウ
（松岡）
同シ事テス唯之カ分リ易イヤウニシテ置クノタ
（箕作）
「但」ハ註ノ爲メニアルノテス九百八條ノ二項ノ場合ハ此限ニアラスト云フト運賃ヲ差引テモ良イト云フ事ニナル
（元尾崎）
其レテ宜シイノタ
（村田）
然ウスルト解約ハカリテナイ
（淸岡）
船舶ノ受クヘキハイランカ受ク可キ額ハ否ヤ應ハ言ヘマセント云フ事タカラ唯タ運送賃ト云フト減シタ運送賃モアル
（南部）
減シタノモアル
（淸岡）
受ク可キ正當ノ分ハ拂ハナケレハナラント云フ事ヲ示スニハ「受ク可キ」カアル方カ宜シイ
（木下）
初メ極メタ運賃ト解セラレテハ困ルカラ「受ク可キ」ハアツテモ宜シウ御座イマセウ
（南部）
船長カ受クルト云フ論モアリ船舶ノ受ク可キト云フ論モアツタカ運送ヨリト云ヘハ同シ事タカラ削ツタト云ヘハ宜シイ
（元尾崎）
入レテモ宜シイ
（村田）
船長カ宜シイ
（元尾崎）
船舶カ宜シイ
（北畠）
運送賃ト云ヘハ船長カ取ルカ船舶カ取ルカト云フ事ハ尤モノ事タ
（木下）
實ニ受クル可キト云フノハ必要ト云フノテ御座イマセウ船長カ取ル可キ運送賃ト云フノテ御座イマス
（南部）
外ノ所モ入レナケレハナラン事ニナル
（村田）
九百八條ノ二項ヲ見テ下サイ
本條ハ左ノ如ク改ム
第九百條他ノ運送品ニ付キ得タル收入及ヒ航海ヲ止メタルニ因リ減シタル費用ハ運送賃ヨリ之ヲ控除スル事ヲ得ス但第九百八條第二項ノ場合ハ此限ニ在ラス
第九百一條朗讀
（議案入）
（木下）
之ハ船舶賃貸借トナリマス
本條ハ「貸借」トアルヲ「賃貸借」ト改ム
第九百二條朗讀
（議案入）
（松岡）
「荷主」トアルヲ「賃貸借人」ト直シマシタ
（木下）
五項ノ「若クハ重量」ヲ總テ數量トナツテ居リマスカラ直シマシタ
（松岡）
「若クハ重量」ヲ削レハ宜シイ
本條ハ第五項ハ「若クハ重量」ノ五字ヲ削ル
第九百三條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
第九百四條朗讀
（議案入）
（木下）
「包有事項」ハ「旨趣」トナリマス
本條ハ「包有事項」トアルヲ「旨趣」ト改ム
第九百五條朗讀
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
午後二時十分閉會