商法草案議事速記第四十八回
自第七百四十條
明治廿一年四月六日午前九時三十分開會
（鶴田）
ヤリマシヨウ
第七百四十條朗讀
（議案入）
（渡）
生命又ハ健康ト云フト生命保險會社ト云フノハ日本ニモアリマスカ、健康保險會社ト云フノモアリマスカ
（本尾）
然ウテハアリマセヌ、生命保險會社テアリマス生命保險會社テ生命健康共ニ保險ニシテ宜シウ御座リマス生命病傷ト兩方テ御座リマス私カ死ンタラ金ヲ吳レロト云フノハ生命保險テ私カ肺病ニ罹ツタラ金ヲ吳レト云フノハ健康テ御座リマス
（淸岡）
表題ニハ病傷トアツテ本文ニハ健康トアリマスカ同シテスカ
（本尾）
違ヒマス
（渡）
病傷保險ハ病トカ大怪我ヲシタトキナノテ疾病傷痍ト云フノテスカ
（本尾）
然ウテス
（淸岡）
病傷ト健康ト裏表ニナツテ居ル
（渡）
病傷保險ト貫イテハ何ウタラウ健康保險ト云フトチト解シ難イ
（本尾）
先キニ往キマシテ自己ノ健康ヲ毀損シト云フコトカ御座リマシテ何ウモ工合カ惡ウ御座リマス
（渡）
疾病傷痍ハ健康ニ非ス不健康テス
（鶴田）
生命ナトモ活キテ居ル命タカラ實ハ死亡タ
（淸岡）
船舶保險モ難船保險タ
（本尾）
然ウテ御座リマス
（松岡）
附スルト云フ字ハ何ウ云フ字テセウ
（本尾）
保險シテモ宜シイト云フコトテ保險セラレ能フト云フ字テ御座リマス付スルト云フ字ハ是迄云ヒ來ツテ居リマス
（松岡）
終身又ハ定マリタル期間中付スルト云フト付スルト云フ字ハ保險者カラ保險者ニ向ツテ付スルヤウニモ聞エルソレカラ死亡ト云フノハ死ンタ後ハ物カ貰ヘル活キテ居ル中ハコツチカ貰ヘル中ト云フノハ何處ニ係リマスカ
（本尾）
歐羅巴ヘ行キマスニハ一月牛船ニ乘ツテ居ラナケレハナラヌト云フノカ期間中テス
（松岡）
終身ト云フノハ
（本尾）
死ヌマテノ間ト云フノテ御座リマス
（松岡）
死亡ノ方ハ
（本尾）
終身テ御座リマス私ノ活キテ居ル間ニ死ンタナラト云フノト五年ノ間ニ死ンタナラト云フノト斯ウ云フ終身ト期限ト御座リマセウ
（松岡）
一寸讀ンテ御覽、死亡ト云フノハ死ヌルノタ期間ト云フノハ大西洋ニ航海中ト云フ保險ヲ入レル是等ハ恰度宜イ
（村田）
無期有期ニ出來ルト云フコトタ
（淸岡）
十年經テハ家事ノ目的カ立チマスカ十年ノ中ニ死ネハ妻子カ路頭ニ迷フカラ保險ニ入レルト云フノカアル
（松岡）
然ウ云フ保險ノ入レ方ト云フモノハアリハシナイ
（本尾）
私ハモウ二十五年經ツト六十過キニナル、然ウスルト恩給カ貰ヘル恩給ヲ貰ヘハ食ツテ行ケル、其以前ニ死ネハ恩給カ少ナイカラ行ケナイ、二十五年ノ間ニ死ンタラ是丈ケ金ヲ吳レロト云フコトカ出來ル
（渡）
コチラノ保險會社テモ期限ヲ限ツテアルモノカアル
（鶴田）
先キニ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百四十一條朗讀
（議案入）
（松岡）
保險ヲ受クルト云フノハ
（本尾）
保險ニ付スル其時ト云フノテス
（松岡）
付スルト受クルトハ彼我ノ違ヒカ御座リマスカ
（本尾）
詳シイ違ヒハアリマセヌ保險カ引受ケラルヽトキニトアリマス爰テハ引受ケルト云フ實名詞カ御座リマセヌカラ
（松岡）
私カ保險料ヲ拂ツテ鶴田サンノ爲メニ保險ニ入レル
（鶴田）
「又ハ他人ノ生命若クハ健康ニ付テ財產上ノ利害ヲ要スルトキハ」トシタラ宜カラウ
（渡）
然ウシヤウ、保險シテ貰フタトキテモ付スルトキテ宜イノタ
（南部）
他人ハカリヲ付スルコトハ出來ヌカネ
（本尾）
出來マス私ノ親父ヲ保險ニ付スルトキ私ノ親父テナケレハイケナイ
（南部）
自分ノ生命ト一緖ニ付スルノテハナイカ
（鶴田）
然ウモ見ヘル
（本尾）
然ウテハアリマセヌ又ハ他人ノ生命若クハ健康ヲ保險ニ付スルトキハテ御座リマス
（鶴田）
三項ニ切ルカ「自己ノ生命若クハ健康ヲ保險ニ付スルコトヲ得」トシタラ宜カラウ
（松岡）
詰リ他人ニシテモ保險ニ付スルト云フ丈ケヲ擧ケタラ宜カラウ
（鶴田）
前ノ條ハ人ノ生命ト云ツテ犬ノ生命ハ這入ラヌコトヲ云ツテソレカラ自他ヲ擧ケテ來タノタラウ
（南部）
「健康ヲ保險ニ付スルコトヲ得又ハ」トシタラ宜カラウ
（村田）
二項ニスルノハ良クナイ「他人ノ生命若クハ健康ニ付キ保險ニ付スルトキハ財產上ノ利益ヲ有スルトキニ限ル」トシタラ宜カラウ
（南部）
「保險ヲ受クル時」ト云フノハ分ラヌ「付スルコトヲ得」トシヤウ
（鶴田）
ソレカラ又他人ノ生命若クハ健康ニ付キ保險ヲ受クルトキ財產上ノ利益ヲ有スルトキハトシタラ宜カラウ
（南部）
「又他人ノ生命若クハ健康ニ付キ財產上ノ利益ヲ有スルニ於テハ其人ニトシタラ宜カラウ
（松岡）
保險ニ付スルトキカ宜カラウ
（鶴田）
「又他人ノ生命若クハ健康ヲ保險ニ付スルコトヲ得ルハ其他人ノ健康若クハ生命ニ付キ財產上ノ利益ヲ有スル時ニ限ル」トシタラ宜カラウ
（南部）
然ウナレハ「保險ヲ受クルトキハ」削ツテ仕舞ツタラ宜カラウ
（本尾）
之ヲ削ツテ大騷キテ御座リマス
（淸岡）
アツテモ分ルコトハ分ルネ
（鶴田）
然ウナラ又カラ先キヲ二項ニ切ツタ方カ宜カラウ
（松岡）
保險ニ付スルト云ツテ見ヤウテハナイカ
（淸岡）
ヤツテ見ヤウ
（本尾）
後ノ「時ハ」ヲ「者」ニシテモ宜シウ御座リマス
（南部）
者トスルト其人ト見ルカ知レヌ
（淸岡）
前ノ通リナレハ宜シイカ「スルコトヲ得」トシテ「者」ト云フノハ工合カ惡イ
（本尾）
尤モ前ノヤウニ付ストシテ「有スル者ハ」トスルノテ御座リマス
（松岡）
保險ニ付スルトキトヤラウ
（本尾）
ソレテハ又保險ニ付スル時トシナケレハナラヌ
（淸岡）
又有スル時ハト云フノハ惡イタラウ
（南部）
「於テ」ノ字カアツテハ徃ケナイ
（淸岡）
又ナラ付スル者ハトシタイ
（鶴田）
付スル者ハトシヤウ
（南部）
「又ハ其人ノ」ハ分ラヌ
（本尾）
前カラ「他人ノ」トシマセウ
（淸岡）
法律上ノ證據ハ
（本尾）
法律上テ認メテ仕舞フカラ是丈ケ關係カアルト云フコトヲ證據立テルニ及ハヌト云フノテ御座リマス
（鶴田）
利益ノ證據タネ
（松岡）
壁叩リ然ウタ
（鶴田）
「利益ニ付テ證據ヲ要セス」テヨサソーナモノタ
（本尾）
法律上テ證據ハ入ラヌモノトスルト云フノテ御座リマス
（南部）
ソンナラ法律上證據ヲ要セス宜カラウ
（鶴田）
「ノ」ノ字ヲ削ルカ宜シイ
（村田）
適法ノ證據ヲ要セスト云フノタネ
（南部）
ソンナラ「法律上ノ」ト云フノタ
（本尾）
形容詞テ御座リマスカ其意味ハ法律上ノ證據ハ何ウ云フモノカ人證ナトノモノヲ云フノテナクシテ之ハ法律上證據ノ入ラヌモノト看做スト云フノテ御座リマス
（松岡）
「利益ニ付テハ證據ヲ要セス」テ分ル
（鶴田）
法律然タル證據ヲ要セスト云フノタラウ
（南部）
處ニ因テハ要スルコトカアルカ此法律上テハ要セヌト云フノタラウ
（本尾）
然ウテス
（松岡）
「ノ」ノ字ヲ削ツテ「法律上」トシテ下ニ句讀ヲ切ツテ置コウ
（南部）
法律上ノトモ法律上テトモ讀メルヤウニ「ノ」ノ字ヲ除ケテ置クカ
（本尾）
除ケテモ宜シウ御座リマス
（鶴田）
「ノ」ノ字ヲ削ラウ
本條ハ左ノ如ク改ム
何人ニテモ自己ノ生命若クハ健康ヲ保險ニ付スルコトヲ得又保險ヲ付スル時他人ノ生命若クハ健康ニ付キ財產上ノ利益ヲ有スル者ハ其他人ノ生命若クハ健康ヲ保險ニ付スルコトヲ得配偶者、兄弟姉妹、尊屬親及ヒ卑屬親ノ生命及ヒ健康ニ關スル互相ノ利益ニ付テハ法律上證據ヲ要セス
第七百四十二條朗讀
（議案入）
（淸岡）
了知ヲ要セスシテヤルコトハ實際六カシイテセウ診察テモシテ見ナケレハ分ラヌタラウ
（本尾）
老人ナトハ御前ノ身體ヲ保險ニスルト云フト嫌ヒマスカラ何トナク脈ヲ見サシテ保險ニ入レルコトカ御座リマス
（南部）
ソレハアルタロウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百四十三條朗讀
（議案入）
（村田）
前ノ被保險額ト其滿期トナリタルトキニ益ヲ受クル者ニトヤリタイ
（松岡）
私ハソレヨリモ上ノ「ニ」ヲ二ツ削ツテ仕舞ヒニ皆受ケサセタラ宜カラウト思フ
（南部）
然ウハイカヌ村田サンノ說カ宜シイ
（渡）
其レハ村田君ノ論カ宜シイ
（鶴田）
「ニ」ノ字ヲ入レルカ
（淸岡）
他人シヤナイカラ人カ宜シイ
（鶴田）
「受クヘキ者カ」テモ宜シイ
（淸岡）
保險額ノトキニハ被保險額ト云フコトハ入ラヌ保險額テ宜シイ
（南部）
七百二十三條ノ末項ニ被保險額ト御座リマス
（本尾）
是レハ被保險額ト願ヒマス
（淸岡）
保險者トカ被保險者トカト云フトキハ原吿ト被吿ト同シテ宜シイカ保險額ノトキハ被保險額ト云フノハ宜シクナイ
（鶴田）
前ニ被保險額トナツテ居ル
（淸岡）
保險額トヤツテ居ル處モアル
（本尾）
被保險額トシナイトイケマセヌ保險セラルニ額トナリマセヌト被保險者ノ處カラ言葉ヲ立テマセヌトイケマセヌ
（村田）
之カ法律語ニナルノタカライケマセヌ
（本尾）
保險料ハ被保險者カラ拂フタノテ御座イマス
（淸岡）
保險額トナレハ被保險者カ受取ル額トナル
（南部）
七百二十條ノ保險額ハ被保險額ノ間違ヒテセウ
（本尾）
總テ被保險額ト直シマス七百八條ニ被保險額トアツテアレテ推シテ往ク積リテ御座リマスカラ本條ノ一項ノ保險額ハ被保險額ト御更ヘヲ願ヒマス
（村田）
七百十二條モ被保險物トナルタラウ
（南部）
他人ト云フ字ハ宜シイカネ民法ニ在ツタラウ、アレハ外人カ
（渡）
他人ハ死者ヨリ外ノ人ト云フノタラウ
（本尾）
死ンタ者ノ外ノ人ト云フノテ御座リマス
（鶴田）
保險額ヲ受クヘキ者カテモ宜シイ
（南部）
者テモ宜シイ人カテモ宜シイ
（渡）
他ノ字ヲ削ラウテハナイカ
（本尾）
宜シウ御座リマス
本條ハ第一項「益ヲ受クル者又ハ保險額ニ付テノ」トアルヲ「益ヲ受クル者ニ又ハ被保險額ニ付テノ」ト改メ第二項「受クヘキ他人カ」トアルヲ「受クヘキ人カ」ト改ム
第七百四十四條朗讀
（議案入）
修正案本條中「及ヒ」ノ二字ヲ「又ハ」ノ二字ニ改ム
（本尾）
「及ヒ」ハ「又ハ」ト御更ヘヲ願ヒマス之ハ一例ヲ擧ケマセウ製造者カ職工ヲ一人傭ヒマス其職工ノ爲メニ保險ヲ付ケテアルト云フノハ全體申ストナラナイ話テ御座リマス何トナレハ製造人ト職工トハ財產上ノ利益カナイノテ御座リマスソレ故ニ出來ナイノテ御座リマスカ是レハ出來ルト云フ取除ヲ付ケタノテ御座リマス貴樣カ機械場テ怪我ヲシテ死ヌカ知レヌ死ネハ貴樣ノ女房カ困ルカラ斯ウ云フ雇傭契約ノ中ニ書イテ入レテヤラウト云フ契約カ出來マス其契約ニ御座リマストキハ契約上ノ義務ニ依リマシテ其人ノ利益ノ爲メカ又ハ女房カ子供ノ爲メニ製造人卽チ他人カ保險ニ付シテモ宜シイ之ハ財產上ノ利益カナイカラ出來ナイヤウタカシテモ宜シイト云フノテ御座リマス
（淸岡）
財產上ノ利益ニ更ヘルニ契約上ノ權利テヤルト云フノテスネ
（本尾）
左樣テス
（松岡）
他人ヲ一番頭マニヤツテ下ノ「他人モ」ヲ削ツタ方カ宜カラウ
（鶴田）
ソレテ宜シイ
（淸岡）
人ノ生命ト云ヘハ他人ノ生命タカラ入レヌテ分ル
（委員長）
「他人モ又」ヲ削ルカ
（松岡）
ソレテ上ハ他人ト入レマス
（委員長）
渡サンノ生命ヲ私カ保險ニ入レテ村田サンノ爲メニト云フノタネ
（渡）
然ウテス契約上ノ義務ト云フコトカ眼目テアル以上ハ職工ト親方トノ關係ニ必ラス契約ノ義務ニ關係ノアル場合ハ何處テモイケマセウ
（本尾）
唯タ一ノ例ヲ擧ケタ丈テ誰ヘテモイケマス必ラス製造人ト職工ノ間ト云フノテハアリマセヌ
（鶴田）
七百四十一條ハカリテナイ他ニモアル
（南部）
第四十一條ハ財產上ノ利益カアルノタ
（鶴田）
併シ之モ矢張リ利益ノ關係ヲ離シテハ出來ナイ
（委員長）
先キニ行キマセウ
本條ハ「人ノ生命及ヒ」トアルヲ「他人ノ生命又ハ」ト改メ「他人モ亦」ノ四字ヲ削除ス
第七百四十五條朗讀
（議案入）
（渡）
第二ノ契約ノ義務ニ違反シト云フノハ例ヘハ御前ト保險ノ契約ヲスルカ船ニ乘ツテ旅行ヲスルナレハ知ラセテ吳レナケレハナラヌ製造場ノ本尾ノ職工ニナレハ知ラセテ吳レナケレハトラヌト云フ契約ヲシテ置イタニ知ラセスニ置イテ契約ヲシタトキハ無效ニナルト云フノテ御座リマス
（鶴田）
「無效タリ」ト「無效ト爲ル」ノハ
（本尾）
初メカラ無效ト後ニ無效ト爲ルノテ第一ハ無效タリ第二ハ無效ト爲ルノテ御座リマス
（村田）
「任意且」ハ「又ハ」テハアリマセヌカ任意卽チ故意ヲ以テト云フノタ
（本尾）
左樣テス
（鶴田）
然ウカ「任意且」ハ可笑シイナ「卽チ」タラウ任意ノ死亡ト云フノハ情死タロウ、腹テモ割ルカ首テモ縊ルカ
（渡）
摺鉢山ノ首縊リナトハ任意タラウ死亡致サレタルト云フノハ變タナ
（本尾）
任意テヤツタケレトモ其任意ハ唯タ自分テ良心テヤツタノハイケナイ、例ヘハ大變身體カ暑イカラ冷イ水ヲ飮ンタ喉カ喝イテ暑クテ飮ンタ、死ノウト思ツテ飮ンタノテハナイト云フ場合ニハイケナイト云フノテ御座リマスカラ且ノ意味テス少シク重イヤウテ御座リマスカ且ノ方カ原案者ノ意味カ通ルヤウテ御座リマス卽チハ宜ク御座リマセヌ
（南部）
醫者ハ虎列拉ヲ診察シテモ宜シイカ病人カ虎列拉ニ接シテハイケナイ
（渡）
第二項ナトハ實際、論カ起ルタラウ
（本尾）
裁判官ハ餘程苦シマンケレハナリマセン
（委員長）
ウツカリ保險ニハ附ケラレナイ
（淸岡）
契約ト云フモノハ大變六ケ敷イ
（松岡）
輕業師カ私ハ靑竹ノ上ヲ下駄穿テ渡リマスト云フコトヲ始カラ言テ、承諾シテアレハ宜イカ人カ挽テ御座ルト言テ、ソウシテ、ソンナコトヲシテハ無效タ
（本尾）
然ウテス
本條ハ原案ニ決ス
第七百四十六條朗讀
（議案入）
（尾崎）
但書ハ何ノ效カアルカト思フヤウタ前ノ條テ此場合テハ無效ト爲ルトアリ此場合テハ無效トナツテモ半額丈ハ戾ストアル、ト云フコトハ前ニハ見ヘナイヤウタ
（本尾）
保險無效ノ總テノ場合ト御座イマス今ノ條ハカリテハアリマセン
（渡）
四十五條ノ外ニ御座イマスカ
（本尾）
御座イマス契約カ時々、無效ニナル場合カ御座イマス然云フ場合モ玆ニ包含致シマス前ノ條ノミテナイ、契約ハ無クナツタ場合テハト云意味ナノテス、ソレ故ニ但書カ出テ參リマス假令ハ契約ヲ解除スルトキ詭譎ノトキハ貰ハレナイ善意ナレハ貰ハレル
（渡）
契約ヲ解除シタ場合ハ半額ヨリ戾サン
（鶴田）
契約テ書イテアレハ戾スコトカ出來ヤウ
（本尾）
ソレハアリマス合意ナキトキハトアリマスカラ
（鶴田）
此條ハ生命保險ノ一分ヲト言タノテ七百四十五條ノ外、ナイト思フ、總テノ場合ト云フノハ前ノ一、ニ、三、ヲ云フノタラウト思フ
（南部）
總則ハ皆ナ通シマス
（本尾）
重複保險テハ無效ニナルト云フコトモ出テ來マス
（鶴田）
アー云場合ハ解除シタトキハ無效ト云フノテハアルマイ
（南部）
六百九十六條ニ無效トスト云フノカアル
（本尾）
七百十九條ナトカアリマス七百十九條ト本條トハ睨ミ合テ居リマス唯、違ヒマスノハ七百十九條テハ積立金ト看做センカラ還スモノハ餘計アリマセン生命保險ハ積立金タト返スモノカ餘計アリマスソレ丈ノ違ヒテアリマス
（鶴田）
何シロ、但書カ分ラン
（淸岡）
善意トノ差異ハ
（本尾）
七百十九條ニ被保險者ニ過失無クシテト云フノヲ但書テ委シク言タ丈テアリマス
（鶴田）
過失ノアツタトキハ
（本尾）
過失ノアツタ折ハ半額ハ貰ハレナイ
（鶴田）
詰リ前條ヲ除クノ外タ
（本尾）
前條モ、ソレ、其外ニト云ノテ御座イマス其外契約ノ效カ無クナツタ場合ニハト云フノテ御座リマス
（松岡）
刑罪ヲ犯シテ、禁錮セラレタ、刑罪ヲ犯シタノハ故意テヤツタケレトモ、禁錮中ニ運動ヲ怠ツテ健康ヲ害シタノハマル々々取上ルノハ宜クナイ半分ハ返シテ遣ラント、保險會社カ甘マ過キテ仕樣カナイ
（鶴田）
刑罪執行中ニ病氣ニ罹ツタ
（本尾）
區別ヲ願ヒ度ウ存シマスノハ保險契約ノ無效ト被保險額ノ拂フ拂ハントヲ別ニ願ヒタイ前條ハ契約カ無クナルト云フノテ御座イマシテ其結果カ御座イマセン通常ノ契約ハ現在ノ被保險額ヲ拂フ拂ハンテ極ツテ來ル併シ生命保險ハ取モ直サス金ヲ積テ置テソレヲ返シテ貰ウト云フ性質ニ違ハナイ信用貸ト違ツタコトハナイカラ契約カ無效ト云テ取上ケラレテハ大變タ併シ利足マテ拂ウカ、然スルト保險會社カ行キ立タン、何故ナレハ百圓ノモノ二千圓モ拂ハンケレハナランコトカアルカラ、保險會社ニ利足ハ遣ランケレハナラン、ソレ故ニ契約ノ無クナツタノハ半分遣ラウ、通例ノ保險ト生命保險トハ全體カ違ツテ居ルト云フコトヲ御承知ヲ願ヒマス、併シ半額、取テ除イテ仕舞フト云、時分ニ惡意ノモノハ遣ラナイト云フノカ但書テ御座イマス
（淸岡）
若シ罪ヲ犯シテ、輕罪、重罪ノ刑ニ罹ツテ、死ヌルトカ或ハ病氣ニナル場合ニハ是丈ノモノヲ拂ウト云合意ヲスルソースルト、契約カ無效ニナツテモ金ハ拂スソケレハナラント云ト
（松岡）
唯、契約ヲ無效ニシテモ金ハ拂ハンケレハナラント云フト同シコトタ
（村田）
半額ト云フト、入レ込タ金ト利子ト一所ニシテノ半額テセウ
（本尾）
ソレハ先キニアリマス利子ハ會社ニ附シテ仕舞フ併シ其コトハ會社ノ規則ニ任シテアリマス
（村田）
註ニハ利子ヲ加ヘタルモノノ半額ヲ償還スヘシトアル
（委員長）
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百四十七條朗讀
（議案入）
（南部）
「保險者カ繼續シタルトキハ」トハ言ヘナイカ
（村田）
保險者カ契約ノ無效タルノ情況ヲ知リタル後尙ホ契約ヲ被保險者ト繼續シタルトキハ保險者ヨリ被保險者ニ對シテ之ヲ主張スルコトヲ得ス
（鶴田）
日本文ニ書ケハマタ書キヤウカアル
（村田）
英文ノ方カ日本文ニハ近イ
（松岡）
玆ニ何故主張セラルヽコトヲ得スト書カンタラウ
（委員長）
先キニ行キマセウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百四十八條朗讀
（議案入）
（渡）
繫ラシムルハ分ラナイ
（本尾）
是ハ前カラ澤山アリマス
（松岡）
民法テハ繫ラシムルヲ從フト遣タ、淸岡サンノ先刻言ツタ例カ玆ヘ出テ來タ
（淸岡）
保險ノ滿期テハナイカ被保險額ノ滿期テハ無カラウ
（松岡）
被保險額ヲ拂フトキノ滿期タ
（鶴田）
保險ノ滿期テモ宜カラウ
（本尾）
保險ノ滿期ト致シマスト假令ハ五年ト云、期限ヲシテ保險ヲシマス、其五年ノ間ニ死ナヽカツタトキハ保險ハ滿期ニ至リマシテモ、保險額ノ滿期ニ至リマセン、此所ハ、五年間ニ死タ場合テナケレハ往ケマセンカラ被保險額ノ滿期ト言ハナケレハナリマセン
（南部）
此ノ「亦」ハ「又」タラウ「亦」テハナカラウ
（本尾）
然テ御座リマス
（松岡）
上マテハ滿期ノコトヲ言テ來テ今度ハ普通ハ一度ニ拂ウケレトモ變体ノコトモアルタラウ
（南部）
「又」ニシテ「ヲモ」トシタラ宜カラウ
（鶴田）
「又」ハモノ意味ヲ持テ居ルカラ「又」テ宜イ
（委員長）
然テハナイ斯云フコトヲ保險額ノ支拂ニ換ヘテ年金ヲ支拂ウコトカ出來ルト云フノテ上ヲ受ケテ亦ヲ書イタヤウテス
（南部）
亦トスルト被保險額ノ滿期モ亦ト云ヤウニナル
（松岡）
實ヲ云ト起案者カ感心スルタラウ被保險額ノ支拂ハ一時ニスルケレトモ年金ニ換ユルコトカ出來ルト云ノタ
（委員長）
被保險額ノ滿期ト云ノハトウタラウ
（松岡）
法律語テ滿期ハ支拂期日ト云フノテ御座イマス
（淸岡）
「又其被保險額ノ」トシテ「又」ノ字ニシタラ宜カラウ
（松岡）
ソレナラ宜敷イ註ニハ「又」ト書イテアル
（渡）
「又」ニシヤウ
（委員長）
「又」テモ宜カラウ
（本尾）
又亦ト書イテアル所ヲ考テ見レハ是々ノ外ナレトモ期間ノ滿了テモ出來ル、其通リシタ上テ保險料ノ支拂テモ、他ノ方法テモ出來ルト云フ意味テ御座イマス
（淸岡）
「又」ニスルナラ「繫ラシメ又」トスルカ宜イ
（南部）
然スルト病傷ノ起發ニ繫ラシメ又ト云ト病傷ノ起發カ外ノコトニナツテ仕舞フ
（松岡）
「年金ノ支拂ヲ約束スルコトヲ得」テ宜イノタ
（委員長）
是マテ被保險額ノ滿期ハト云フコトカアツタカネ
（本尾）
七百四十三條ニ「被保險額ハ其ノ滿期」トアリマス被保險額ハ支拂期日ニナツテ居ルニト云フノテ御座イマス
本條ハ「亦」ハ「又」ニ改ム
正午休憩
午後一時十五分開會
（委員長）
ヤリマシヨウ
第七百四十九條朗讀
議案入
修正案「保險者ト共ニ」トアルハ「被保險者ト共ニ」ノ誤リ
（本尾）
「保險者ト共」ニハ「被保險者ト共ニ」ノ誤リテアリマス
（淸岡）
定マリタル金額ハ保險料テスカ
（本尾）
始メニ渡ス金テス逆サマノ保險テス最初一萬圓ヲ保險者ニ渡シテ年々、極ツタ額ヲ還シテ貰ウノテス、ソレカ年金權ノ眞面目テ御座イマス
（淸岡）
ソンナラ一萬圓ヲ預ケテ其高タケヲ吳レルノテスカ
（本尾）
高タケテハアリマセン利息ニ利息ヲ加ヘマスカラ
（委員長）
最初一萬圓豫ケテ月二百圓宛、吳レロト云ツテモ一萬圓ナラ、百年貰フ丈ノ物ヲヤツテ百五十年生キテモ貰ヘル
（淸岡）
假令ヘハ子孫ノ爲メニ拂フトキニハ己レカ存生中、十年生キレハ千圓拂ヘル、自分カ死タラ年金ヲ遣テ吳レト云コトモ出來マスカ
（本尾）
ソレモ變體テ出來マス
（松岡）
利息ヲタント、取ラン理窟ニ走ル、普通ナレハ百ノ五シカ取レンノカ運賦天賦ナレハ百ノ七モ八モ取レル是ハ日本テハ實效カ少ナイ
（本尾）
歐羅巴アタリテハ自分ハ親戚モ何ニモナイ、其トキハ自分ノ金ヲ先キニ預ケテ死ヌマテ年金ヲ吳レト云ノカアルソウテス
（淸岡）
保險者ト共ニ保險ニ與カリタルト云ノハ妙ニ書イタモノテスナ
（本尾）
併シ通例ノ第三者テハ徃ケナイノテス、共ニ保險ニ與カリタル第三者テナケレハ往ケマセン
（鶴田）
是モ與カリタル人テ宜イノタ
（松岡）
先刻ノ例ニ依レハ人タ
（淸岡）
若イ女房ヲ持テ居ルモノハ餘程、便利タ若イモノニ豫ケテ置クノハ判呑タカラ
（松岡）
年ヲ取タ人カ若イ妾ヲ持テ居ルノモ是タネ
（委員長）
先キニ往キマセウ
本條ハ「他人ニ」トアルヲ「人一ニト改ム
第七百五十條朗讀
（議案入）
（鶴田）
是ハ生命保險ノ場合テハ己レニ屬スル同一ノ範圍條件ト云ト、我輩カ終身ノ保險ヲ以テ人ニ讓ルコトハ出來マイ
（松岡）
貴君カ死タラ、ソレヲ吳レタ人カ取レルノテ貴君ノ妾ニ自己カ死タラ取レト云ノト同シコトタ
（南部）
年金權ニ又年金權ヲ設ケルノトハ違フ
（鶴田）
私ノ年金權ヲ遣タ、其人カ又死タラ何スルカ
（本尾）
貴君ニ戾ツテモ宜イ、契約次第テ讓受人ノ相續人ニ讓ツテモ宜イノテアリマス
（淸岡）
轉付セラレタ奴カ先キヘ死テハ何ノ效モナイ
（南部）
何トモナケレハ相續人ニ往クタラウ
（委員長）
宜ケレハ先キヘ往キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百五十一條朗讀
（議案入）
（渡）
免責金ト云ノハ
（本尾）
七百四十六條ノ半額ヲ貰ウト云、彼カ免責金ト云場合ニナルノテアリマス
（淸岡）
其免責金ヲ貰ハスニ利ヲ附ケテ何月何日ニ返シテ吳レト云フ豫吿ヲ以テ償還ヲ求ムルト云ノハ詰リ金ヲ貸シタト云フ證文ニ書換テ宜イ
（淸岡）
放用ノ變換ト云ノハ
（本尾）
七百五十二條ニモアリマス方ヲ附ケテ置クトカ始末ヲ附ケテ置クト云意味テ御座イマス
（鶴田）
元本ノ放用ト云ノハ分ラン
（委員長）
元本ハ取返スノテハナカラウ利息タケ取ルノタラウ此約束ヲシタラ元本ハ取レナイタラウ
（本尾）
假令ハ私カ生命保險ニ入レマシテ、拂ヒ込テ居マシタ所カ、取レル場合ニ至リマシタ、終リニ取テモ宜イノテ御座イマスケレトモ、又金額ヲ取ラスニ貸金證文ニ書換ヘテモ宜イ年金、保險モ其通リテアリマス
（渡）
元本、据置キト云意味テスカ
（本尾）
貸附ケニシテ證文ヲ書換ヘテ、貰ラツテ被保險者ハ何時テモ豫吿シテ取レルヤウニシテ宜敷イ
（渡）
年賦ノ据置ト云意味テスカ
（本尾）
元本ノ預ケニト云意味テス、三島サンニモ、モウ一人ヘモ相談、致シマシタカ一番「放用」カ當ルタラウ銀行ニ金ヲ預ケルノハ資本ヲ放用スルノテ御座イマス公債證書ヲ買テ置タト云ノハ資本ヲ公債證書ニ放用シテ置ク
（南部）
据置トハ違ヒマスカ
（鶴田）
少シ違ヒマス
（松岡）
設定ト云コトタラウ
（本尾）
有リ付ケテ置クト云フノカ宜ウ御座イマセウ銀行ニ預ケテモ公債證書ヲ買テモ宜イ
（淸岡）
自分カ手放シテ先キヘヨツテ使用スルノタカラ
（渡）
最ウ少シ分ル字ニ代ヘルコトハ出來マセンカ
（南部）
放用ト云ト坊主ノ用語、見タヤウタ
（村田）
次キノ條ニ安全ニ放用シトアルカ、彼ニナルト分ル
（南部）
是モ分ラン
（村田）
物ヲ置クコトモ言フテス
（鶴田）
犬テモ放ツカ、鷹テモ放ツカ働カセルヤウナ意味カアル
（渡）
人ニ物ヲ預ケルノカ放用タラウ、ソレニ預金ト云フコトハ出來ヌ放用ト言ハンケレハナラント云コトハアルマイ
（村田）
預金テハ意味カ狹ヒ
（淸岡）
放用ハ用イテ妙ト謂フヘキタナ
（委員長）
原書ノ意ヲ聞テ自分々々テ選フヨリ外ニハ仕方カナイ向ノモ種カ竭キテ居ルカラ
（鶴田）
有リ付ケテ置クトハ見ラレナイ
（淸岡）
四十六條ニ從ヒ免責金ヲ受ケテト云フノハ期限カ來テ受取レン場合ニ於テト云フコトカ出來ルト云コトテ御座イマスカ四十六條ハ無效タラウ
（本尾）
期限ハ參リマセン未タ受取レナイト云場合テモ生命保險ハ積金ト同視シマスカラ今マテ掛ケ來ツタカ是カラ、掛ケルノハ否ヤタカラ半額下サイ、契約ハ解イテ仕舞ト云コトカ出來ルノテ御座イマス假令ハ私カ生命保險ニ附シテ居リマス金ハ私カ死タラ私ノ女房ニ遣テ吳レト言テ置キマス所カ私ヨリ先キニ女房カ死タトキハ私ハ後ニ金ヲ殘ス要用カアリマセン其時ハ保險者ヘ往テ、要用カナイカラ止メニシタイ、四十六條ニ書イテアル免責金ヲ下サイト云フコトカ出來ルノテアリマス
（淸岡）
正當ノ時期ト云ノハ
（本尾）
今カラ言出シテ置クカラ直ク止メテお吳レナサイト言テハ困ルカラ一ケ月ノ後止メルカラ免責金ヲ下サイト云フ、ソレカ正當ノ時期ニ豫吿ヲ爲シタルノテ御座イマス
（淸岡）
四十六條ニ揭ケタル免責金ナラ宜イカ四十六條ニ從ヒト云ト、畢竟過失上カラ生シタノヲ其所テ言フノテ無イ此所ハ無事平穩ノトキタカラ四十六條ニ從ヒト云フノハ何云フモノタカ
（本尾）
從ヒハ要用テ御座イマセウ合意ノトキハ半額テナクトモ宜ウ御座イマセウ
（尾崎）
利息附ヲ以テ償還スルト云ノハ利息附ノ貸金同樣ニスルト云フノテ利ヲ受取ルトキハ一ケ月前豫吿ヲセンケレハナランカ
（本尾）
然テス
（鶴田）
是ハ利息ハカリ取ルノテハナイ、元金モ取レルノタ
（淸岡）
七百四十六條ニ從ツテ脫退スルノ權利ト云ノハ何ウモ分ラン
（本尾）
從ヒハ權利ニ掛ケスニ免責金タケニ掛ケテお讀ミ下サルト宜ウ御座イマス
（松岡）
佩文韻府ニモ放用ト云字ハナイ
（松岡）
契約ヲ以テ利息附ノ元金ニ換エルコトヲ得ト云ノタ
（本尾）
金ヲ回ハスト云フコトカアリマス彼レテス
（南部）
ソレハ環用タ
（松岡）
利息附ノ元金トハ出來ンカネ
（村田）
放債ト云コトカアル
（委員長）
置キ用ユルト云コトタ
（村田）
事實ハ貸附ト云ノタ
（鶴田）
放債ト云ノハ貸附ト云コトタ
（委員長）
日本テ云フ貸附ケト預ケルノトハ違ウ放債ト云ヘハ貸スノモ預ケルノモ皆這入ル
（鶴田）
放債ニ返還スルトシタラ宜カラウ
（委員長）
債トハ言ヒ兼ネル
（淸岡）
債ト云ノハ借方カラ言フコトテス貸方カラハ言ハン
（鶴田）
併シ債權者ト云ヒ債務者ト云
（本尾）
修正カアリマス、且ノ下ニ「其證劵ヲ資本」ト云コトヲ加ヘマス、「又」ヲ「但」ト致シマス
（淸岡）
證劵ト言タラ保險證劵ト紛レハシマセンカ
（本尾）
證劵ハ廣ク見ルコトニ今マテ例ニナツテ居リマス一種、極ツタ證劵ナレハ何々證劵ト肩書ヲ附ケマス
（松岡）
起案者ハ英國テ、二萬磅、佛蘭西テハ五萬磅テニ倍額カ宜イト云カ、盛大ニナレハ支拂額カ殖ヘル、保險ヲ受ケルモノカ尠ナケレハ減スル寧ロ何所、其所、ノ會社ハ何萬圓ノ資本タト云フコトヲ廣吿シテ於タラ宜サソウナモノタ、他ノ國ニニ倍額ト云フコトカアリマスカ
（本尾）
マツアリマセン
（松岡）
之ハ皆サンノ御考ヲ願ヒタイ
（本尾）
五十四條ノ普通ノ場合ト大分違ヒマスノテ、、、、、、、
（松岡）
今ノ總テノ會社テモ申立ニ依テト云コトハアルカ本體カ信用ナラ信用、政府カ押エルナラ押ヘタ一ノ極ツタコトカアルノタ、玆ハニ倍額トシテ人民ニ對シテ責ヲ擔ハソケレハナラン
（南部）
ソレハニ倍テ宜イ
（淸岡）
ニ倍ト云ト一倍ノコトカ
（本尾）
然テス法律カ出テニ倍ト云ヒマス是ハ何萬磅ト極メテ置クコトカ出來ナイ
（淸岡）
是ハ安全ニ放用シテ置クノタカラニ倍位ハ積金セネハナラン
（松岡）
何ノ會社テモ隨分其額ヲ極テ置クノハ造作モナイコトタニ部類ト云フコトハ動カナケレハナラン
（南部）
ソレハ平均額テ遣タラ宜カラウ
（本尾）
七百五十三條ノ年々計算シテ報吿ヲセネハナランカラ直クニ分リマスソレテモ疑ヒカアレハ、五十條ニ是丈ノ權利カアリマス其實、見出シ惡イコトハナイノテ御座イマス
（委員長）
是ハ「ロエスレル」ノ發明テ他ニハナイノテスカ
（本尾）
一向承リマセン
（鶴田）
最初ハ取レルタラウ
（本尾）
資本カナケレハナラン漸々殖ヘルニ從ツテ積金モ殖ヘテ往カンケレハナラント云フコトニナリマス
（鶴田）
詰リニ倍ニ見テモ準備金ハ最初ハ出來ナイカラ後ノコトタ
（本尾）
一人テモ被保險者カ出來レハソレニ拂ハンケレハナラン金カナケレハナラン、假令ハ私カ死ンタラ千圓、下サイト云ト何時死ヌカ分ラン既往ノ十年、二十年ノ生死ノ統計ニ依テ計算シテ大抵、一年ニ此位拂ウカ標準テアルト云コトヲ見積テ其額カ一年ノ債務額ニナル其債務額ヲ倍ニシテ置カンケレハナラン十年二千圓ナラ一年百圓ノ債務額ノ二倍、二百圓ニナリマスカラ二百圓ノ債務額ニナリマスカラ其倍ヲ積テ置カンケレハナラント云コトテ御座リマス
（松岡）
理窟上、算盤上ハ誠ニ宜イコトタ
（本尾）
實際、分リ惡イト仰シヤルノテスカ
（松岡）
分ルコトハ分ルカ不確定ノモノタ第一、信用ヲ確ニシテ世人ヲ安心サセルニハ此會社ハ幾許ノ資本金テ裁判所テ押ヘテ居ルト云目安カアレハ其社ハ榮ヘテ信用カ厚クナル其事ハ世間ノ信用ニ任シテアルノハ宜カラウカ保險ニ倍額ト云ハ確實ニナランカラ何ノ會社ノ資本カ何ノ位ト云コトカ確タラウト思フ
（淸岡）
是ハマツ確ナコトヲ證明スル丈ノコトタ準備金カ多ウ過キルトカ少ナイト云フ御論ナレハ論シモノタケレトモ
（松岡）
ソレハ構ハン、一口テ言テ見ルト、自由ノ營業會社モ多クアル、又特別ノ監督ヲ受ケルモノモ世界ニ多クアル、然ルニ何レノ國ニカ增減不確定ノ監督ヲ受ケル、準備金額ノ立テ方カアルカト云ト、ナイ、英吉利ハ自由營業ノ開祖テ或ル國ハ近年生命保險會社ヲ拵ヘタ、佛蘭西テモ拵ヘタ、ソレハ二萬磅、五萬磅テ拵ヘタ、然云フ樣ナ盛ンニ開ケタ國々ニヤツテ居ル事ハ宜カラウ、然ルニ不確定ノモノヲ裁判所ニ預ケルノハ不安心タラウ
（淸岡）
報吿書ト云モノカ出來テ支拂ト收入カ出來ルカラ詰リ詐ヲ言フ譯ニハ往カン、嘘ヲ言タ所カ百圓カ千圓ノ嘘ハ言ハレルカ知レンカ、ソー澤山ニ詐ハルコトハ出來ン
（松岡）
一人々々ノ者ナラ知テ居ルカ、大勢ノモノハ分ラン
（淸岡）
間違カアツテモ何錢何厘ト云フ迄キツチリヤラナケレハナラヌト云フ事柄テハナイ其レタカラ昨年ハ二萬圓ノ保險料ヲ拂出シタカラ今年ハ幾ラニスルトカ前年比較ヲ以テ大抵ニヤツテ宜シイ
（松岡）
理窟ハカリノ上カラ云フト單純ナモノテ年々資本金カ最初ニ書イテアル後トハ借方貸方ノ計算モシ極ツテ廣吿モシテ關係人カラ云ヒ立テカ出來レハ檢査モ出來ルト云ヘハ堅固不拔ノモノタソレハ此會社ハカリテモナイ外ノ會社テモ出來ル併ナカラ之カ小サイモノヲ大勢集メテ人ノ一生ヲ目的ニスルノタカラ確實ノモノニシテ置カナケレハナラン、其處ニ持ツテ來テ、學者ノ說テ百事後レテ居ル國ヘ乘リ超ヘタ物ヲ持ツテ來ルノハ不安心テハアルマイカト思フ
（鶴田）
トツチカ良イカ分ラヌ
（委員長）
何ウトモ分ラヌカ何萬圓ト積ンテ置クノモ資本カ幾ラカアツテ何分カ積ンテ置クノハ宜シイカ現ニ要求者ノ多イトキハ拂ヒカ出來ルカ出來ヌカ分ラヌ愈適當トモ思ハレヌ
（松岡）
其保證ハ出來ン故ニ公衆ニ確ニシテ廣吿シテ其後トハ信用如何ニ任スト云フ側カラ申スト幾ラカ預カツテアルソヨト云フコトヲ知ラセテ置ケハ宜シイト思ヒマス
（村田）
併シ多クナルト五萬モ六萬モヤラナケレハナラヌ人ノ出入テ大變違ウ
（渡）
資本金ヲ豫メ極メルノハ良クナイヤウタ、盛ンニナレハ增スト云フナレハ宜シイカ、是レテ最初立テタラ幾ラ殖ヘテモ目途ニスルノハ宜シクナイ、此方ハ多々益々辯スルノテ人間カ一人增セハ倍增ニシテ行クカラ此方カ確カテアラウ人數ニ應シテスルノカ一番確カト思フ
（淸岡）
ニ倍丈ケノ準備ヲシテ置ケハ少々虎列拉カ流行ツテモヤルノタ
（本尾）
報吿委員テモ保險會社ニ就テ論カ御座リマシタ、全體ロエスレルノ草案ニ依レハ合名會社、株式會社、合資會社ハ殘ラス許可ヲ得スシテ立テサセル草案テ御座リマス、處テ株式丈ケハ離シテ許可ヲ得サセルコトニシマシタ、アレカ然ウナツタ以上ハ若モ保險會社ヲ立テルトキハ尙更許可ヲ要スルテハアルマイカト云フ論カ出マシテソレハ無論然ウナケレハナラヌカ、六十七條カ六十八條ニ營業ノ種類ニ因テ官許ヲ得ナケレハナラヌモノハ官許ヲ得ナケレハ設立スルコトカ出來ヌトアリマスカラ、爰テハ許可ト云フコトハ云ハスニ、六十八條ニ基イテ此法律カ發布ニナレハ保險營業ヲ爲ス會社ハ許可ヲ得ナケレハ出來ヌト云フコトニシテ此場合テハ云ハヌ方カ宜カラウト云フコトニナリマシタ、偖許可ヲ受ケサセルニスレハ、七百五十四條ニ保險營業ヲ營ム原則カ御座リマス、是レハ何ンナモノカト云フニ過去ノ事ヲ充分調ヘサシテ比例ヲ取リマス、若モ三十歲迄ノ人カ保險ヲ賴ンタトキハ通例四十テ死ヌトカ五十テ死ヌトカ云フ比例カ出マス、四十テ死ネハ通例ノ統計テ云ヘハ、十年間ノ保險料ヲ取ルコトニナリマス、百圓ツヽ取ツテモ千圓ニナルト云フ計算カ直キニ出マス、其事ヲ爰テ申シマスル、保險業ヲ營ム原則ト云フ中ニ包含シテ居リマス、貴樣ノ保險會社ハ何ウ云フ原則カ私ノ方ニハ今迄ノ統計ニ依レハ、四十テ死ニマスカラ二十ノ時賴ミニ來タトキハ幾ラテヤリマス、三十テ賴ミニ來タトキハ是々テヤルト云フコトヲ極メテ置キマスカラ直クニ勘定カ出テ參リマス、一向六ケシウ御座リマセヌ、然ウ云フ處モ報吿委員テ議シマシタコトカ御座リマスカラ、御參考ノ爲メニ申上ケマス
（鶴田）
年々支拂滿期トナルモノカ表ニ依テ極ツテ仕舞フ、然ウスルト平均ト云フ字ハ或ハ年々支拂滿期トナルヘキ平均ノ支拂額テハナイカト思ツタ、貴君ノ說テハ年々支拂フ額ハ極ツテ仕舞フシテ見レハ平均ニ倍額トシテニ倍額ノ方ノ平均ヲ償フタロウト思フカ何ウテスカ
（本尾）
分リハ致シマスカ其通リ行クカ行ヌカハ分リマセヌ、唯タ原則カ分ル丈ケテ今年ハ原則ヨリ少ナイ年モ又或ハ多イ年モ御座リマセウソレヲ二年ナリ三年ナリ平均シテ見タ處ノ額ノ二倍ト云フ積リテ御座リマス
（鶴田）
然ウスルト平均被保險額ノ少ナクトモ二倍トシタラ宜カラウト思フ
（本尾）
極ク睹易ク申シマスルト保險業ヲ營ム原則ハ一人リニ就テ一人二拾圓テアルト云フ原則ヲ立テ百人アレハ千圓ト云フノハ年々支拂フヘキ保險額テ御座リマス之ハ原則カラ出テ動カヌソレテ少ナイトモ平均ニ倍額ト云フトソレヲ元トシテ去年ハ九百圓一昨年ハ千二百圓今年ハ八百圓タカラ又來年モ此位タラウト年々狂ヒカ出來ルカラ其狂ヒヲ平均シテニ倍ニ當ル積リテ御座リマス
（鶴田）
矢張リ被保險額ニナルネ
（淸岡）
是レテ間違ヒハセヌ
（松岡）
「何時ニテモ」ハ可笑シクハナイカ
（本尾）
何時テモニ倍額ニ滿チテ居ルト云フ積リテ御座リマスソレテ何時行ツテ蓋ヲ開ケテ見テモニ倍額ニナツテ居ルト云フノテ御座リマス
（渡）
何時テモハ入ラヌテハナイカ
（村田）
削ラナイ方カ宜シイ
（尾崎）
是レハ地方裁判所テハヤラレマセヌカ
（本尾）
大抵ノ處ハ地方裁判所テヤツテ居リマス登記廣吿トモウ一ニケ條丈ケ治安テヤラセマス
（松岡）
コレハ構成法カラ來タノテセウ
（尾崎）
證劵ヲ預ケル處位ハ治安裁判所テ良サソウナモノタ裁判ハ地方カ宜シイカ、、、、、、、
（松岡）
會社ハ例ヘハ一人ノ人カ營業ヲ創メテモ保險料ヲ拂フ人ハ社員ト見テ會社ト云フ名ヲ附ケタノカ
（本尾）
重モニ會社カスルノテ一人テスルトキハ七百六十條テ規定シテ置キマス
（松岡）
成程是レハ恐入ツタ
（委員長）
先キニ行キマセウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
第七百五十三條朗讀
（議案入）
（鶴田）
會社條例ノモノカ出來タ
（本尾）
會社條例テハ各被保險者ト云フコトハアリマセヌ之ハ要用テ御座リマス
（村田）
英文テハ寫ヲ送ルトアル
（淸岡）
此社員ハ被保險者テハアリマセヌカ
（本尾）
之ハ通例ノ社員テ御座リマス
（委員長）
先キニ行キマセウ
本條ハ原案ニ決ス
第七百五十四條朗讀
（議案入）
修正案「行政官廳モ亦」云々ノ十八字ヲ削リ第二項トシテ左ノ文ヲ置ク
此檢査ハ行政官廳モ亦之ヲ行フコトヲ得
（本尾）
起案者ニ相談致シマシテ起案者カ更ヘマシタ「行政官廳モ亦同一ノ檢査ヲ命スルコトヲ得」トアルヲ削除致シマシテ二項ヲ設ケ「此檢査ハ行政官廳モ亦之ヲ行フコトヲ得」ト致シマシタ
（渡）
「右申立ヲ爲スニ充分ノ理由アリトスルトキハ」ト云フノハ
（本尾）
檢査公吿ノ費用ハ保險會社カ之ヲ負擔スル併ナカラ裁判所テ申立ヲ爲ストキハ充分ノ理由カアツタトキハ會社ニ拂ハセル若シ充分ノ理由カナクシテシタトキハ本人ニ拂ハセルト云フコトカ出來ルノテ御座リマス初メカラ理由ノナイノナラ裁判所テ却下致シマス
（渡）
ケレトモ裁判所ハ何時ニテモ被保險者ノ申立ニ依リ公吿スルノ權利アリトスレハ其費用ハ保險者ヲシテ擔任セシムルト云ツタカラ良イ譯テハアリマセヌカ若シ公吿スルニ及ハストスレハ下ノ事ハ入ラヌコトニナル
（本尾）
公吿ハシナイテモ檢査ノ費用ハ掛リマス其費用ハ何ウナルカ充分ノ理由アリトシタトキハ會社ニ負ハセル
（渡）
ソレカナケレハ却下スルノタカラ
（尾崎）
若シ受付ケテ檢査スルトキ何ウスルソ檢査シタ折ニ申立人ニ拂ハセルト云フコトニナリマセウ
（村田）
是レハ地方裁判所テセウ
（本尾）
地方裁判所ト致シマス
（松岡）
固ト行政官廳モ同一ノ權利ヲ命スルト云フノハ誰ニ申シマスカ
（本尾）
命スルト云フ字ニ弊カアリマスカラ今度更ヘマシタノテ御座リマス
（松岡）
行政官廳自ラ出來ルト云フ意味テ御座リマスカ
（本尾）
自ラモ出來ル鑑定人テモサセラレル
（松岡）
政府ノ許可ヲ受クル會社ハ主務ノ官カラ檢査スルコトカ出來ルト云フノハ一般ノ會社テヤツテ居ル爰ヘ書イタノハ保險營業ハ是非トモ裁判所カ監督スルノミナラス行政官ノ監督ヲ受ケサセル意味テスカ
（本尾）
成立ノ許可ハ得サセナイ、行政官廳カラ調ヘニ行カウト思ヘハ何時テモ出來ル
（松岡）
何ノ會社ヘテモ行政官カ行クト一箇人ノ會社ヘモ行政官カ這入ツテ行クコトニナルロエスレルモ爰ニ來テハ此營業ハ行政官ノ許可ヲ受ケサセルト云フ精神ニ立戾ツタノカト思フ
（本尾）
然ウテハ御座リマセヌ
（鶴田）
檢査ノ法ハ充分ニ取締ルト云フノタ
（本尾）
六百八十六條ト註ニ許可ヲ得サセル得サセヌノ㸃カ書イテアリマス保險會社ハ許可ヲ得サセルカ宜シイト云フ論カアルカ知レヌ其レハ入ラヌ併シ檢査ヲサセル丈ケノ權カナケレハナリマセヌソレハ先キニ書イテアルト御座リマスアレハ以テ見マスレハ此意味モ分リマセウ
（尾崎）
取締上一片ノコトヲ以テ法律ヲ適用スルコトテハナイ誰ニ爲セルカト云フト檢査人ニヤラセルノタカラ行政官カヤツテモ中央政府カラヤツテモ宜シイト見レハ强イテ裁判權ト行政權テ混淆スルト云フ極論ニハ至ルマイ
（鶴田）
手數料モ行政廳ヘ拂ツテ居ルタラウ
（本尾）
然ウテハ御座リマセヌ行政廳ヲ一緖ニ書イテ置クト行政廳カラ檢査シタトキ會社ニ掛ケラレルヤウナ嫌カ起ツテ來マス其處ニモ不都合カ御座リマスカラ終リニ持ツテ來テ行政官ハ公安ノ爲メニスルノタカラ行政官廳カラ費用ヲ出シテ宜シイト云フ積リテ御座リマス
（委員長）
然ウカ
（渡）
併シ又之ヲ行フコトヲ得ト云フト矢張リ裁判所ト同シヤウニナリハシナイカ
（本尾）
爰ハ斯ウ書イテ置イテ實際會社ニ不都合カアレハ會社ニ出サセテモ宜イト云フロエスレルノ趣意テ御座リマス別段ニ施行條例カ何カテ行政官カ檢査ヲシテ會社カ不都合ノトキハ取ツテモ差支ナイコトニナツテ居ルノテ御座リマス
（渡）
行政官カ自ラ檢査スルトハ此文テハ解シ難イト思フ
（鶴田）
アスコカラ引ツコ拔イタ處カラ考ヘレハ分ル
（委員長）
行政官廳ハ其職權ヲ以テ行フコトヲ得ルト書イテアレハ費用ハ行政廳カラ出スヤウニ見ヘルカ行政廳モ人ノ依賴ヲ受ケテヤルヤウニナル
（鶴田）
人ニ願ヒテモヤルタラウ
（委員長）
其レハ裁判所ニ行キマス
（鶴田）
ソンナラ職權ヲ以テト云ハナケレハナラヌ
（委員長）
「行政廳モ亦其職權ヲ以テ檢査ヲ行フコトヲ得」トスレハ宜シイ玆モ聞イテ見ルカ宜シイ
（松岡）
二百七十八條ニ官許ヲ得テ設立シタ會社ハ云々トアル其レハ何故カト云フト官ヨリ許可ヲシテアルノタカラ其官許ヲ得タ旨趣ニ違フ事柄カアツテハナラヌ、公衆ヲ保護シテ害ヲ蒙ラシメサル趣意タ總テ行政官ノ許可ヲ得テ設立スル會社ハ檢査ヲ受クルトアル、爰テハ許可ヲ受ケスシテ設立スルニ、行政廳ハ職權ヲ以テ檢査スルノハ分ラン
（本尾）
六百八十六條ノ註ニ御座リマス
本條ハ左ノ如ク改ム
地方裁判所ハ何時ニテモ被保險者ノ申立ニ因リ各保險會社ノ保險業ノ現況、業務ノ實況、貸借ノ關係及ヒ會社カ保險業ヲ營ムノ原則ヲ一人若クハ二人以上ノ鑑定人ヲシテ檢査セシメ其檢査ノ結果ヲ被保險者ニ通知シ且公吿スルノ權アリ其檢査及ヒ公吿ノ費用ハ裁判所ノ見込ヲ以テ右申立ヲ爲スニ充分ノ
理由アリトスルトキハ保險會社カ之ヲ擔任スルコトヲ要ス行政官廳モ亦其職權ヲ以テ檢査ヲ行フコトヲ得
午後第四時閉會