商法草案議事速記第三十二回
第一條ヨリ二讀會
明治廿一年三月二日午前第九時三十分開會
（委員長）
ヤリマシヨウ
（本尾）
四條ノ第八テ御座イマス「商ヒ」ノ「ヒ」ノ字ヲ入レマス
（箕作）
此處テ御決議ニナツタノハ確定議テ御座イマスカ、眞正ノ決議テ動カサン積リテアリマスカ、止ヲ得ナイ處ハ改メマシタカラ御叱リノナイ樣ニ願ヒマス
（本尾）
ソレカラ第九「船舶ノ賣買、質入、抵當、構造、修繕、艤裝」トナリマス
（鶴田）
宜シウ御座イマス
（本尾）
ソレカラ九條十條十一條ノ三ツヲ連結シテ申シマス、九條ノ意味ハ十二條ト連結致シマシテ居リマス、處カ九條ト十二條トノ間二十條ト十一條トカ夾ツテ居リマス見惡クウ御座イマスカラ九條十條ヲ離レン樣一ニ結シ度イ、又十條ノコトハ詰リ此處ニ置キマシテハ少シ順序カ可笑シイ樣テ御在イマス、懸ケ離レマシタ總體ノコトニ關係シタ起定テ御座イマスカラ此場所ニ置キマスヨリハ他ノ場所ニ離シタ方カ宜シイ樣テ御座イマスソレト十一條ト云フモノハ九條ヨリ先キニ出サナケレハナラヌト申スハ八條マテ商ヒ取引ノコトヲ申シ其次キニ商人ト云フモノハトウ云フモノカト云フコトヲ立テナケレハナリマセン、何トナレハ此條ノ初メニ商人ト御座イマス、ソレニ續イテ商人カ出ナケレハナリマセンカラ十一條ヲ八條ノ次キニ回シテ九條ト致シマス處カ八條テハ商事ト云フコトニ付イテ更ニ委シク解釋ヲ與ヘテ居リマス、此條ニ至リマシテ商業ヲ營ム者ヲ謂フト丈ケホカ云フテアリマセン、ソレ故ニ商業ヲ營ム者ハコウ云フモノテアルト云フコトヲ定メルノハ極ク必要テ御座イマスカラ此處ヘ追加ヲ致シマシタ全文ヲ朗讀致シマス
商人トハ總テ商業ヲ營ム者ヲ謂ヒ商業ヲ營ムトハ常業トシテ商ヒ取引ヲ爲スコトヲ謂フ
之カ一項ニアリマス二項ニハ農作牧蓄及ヒ捕漁ノ營業ト御座イマスノヲ業ヲ營ムハ商業ヲ營一ムト看做サスト致シマス斯ク修正致シマスノハ前ニ商業ヲ營ム者ヲ謂フト御座イマスカラ商業ヲ營ムト云フコトヲ申シテ置キマセント別事ニ見ヒル嫌ヒカ御座イマス、ソウナツテ九條ハ十條ニナリマシテ末項ニ但書カ付キマス
但後見人ハ登記簿ニ其登記ヲ受クヘシト入レマス之ハ起案者ニ相談シテ入レマシタ十二條ハ十一條ニナツマス「署名シタル陳述者」トアルノヲ「署名捺印シタル」トナリマス十三條カ十二條ニナリマシテ「婦ハ其夫ノ」ハ二項ニナリマス、十四條ハ十三條ニナリマス、其中「又夫アル」ノ「又」ノ字ヲ「但」ト致シマス其次キニ舊ノ「於テハ」トアル「ハ」ヲ削リマス舊ノ「ニ限リ」ヲ削リ「ハ」ノ字ヲ入レマス其次キニ十五條ハ十四條ニナツマス「是レ等ノ契約ヲ取結ヒタル後直チニ」ヲ削リマス次キニ其事實ヲト云フ字ヘ「其事實ヲ管轄裁判所ヘ屆出ルコトヲ要ス」ト致シマス之ハ他ノ條ノ權衞ヲ取リマシタノテ御在イマス、十六條カ十五條ニナツテ十六條カ十七條ニナリマス十五條十六條ハ御議定ニナリマセンテ報吿委員テ調ヘルコトニナツテ居リマシタ、只今御決シニナリマシヨウカ
（委員長）
序テニヤツテ仕舞フ
（本尾）
十七條ニ「ロエスレル」ノ意見テ出テ居リマス
（委員長）
舊ノ十六條ハ修正テ格別ハナイ同シコトタ、コウヤレハ原文ヲ書換ヘナケレハナルマイ
第十五條法律上禁セラレタル總テノ商ヒ取引又ハ法律上特ニ起定セラレタル別段ノ資格ヲ有セサル者ノ爲シタル總テノ商ヒ取引ハ無效トス
公務ヲ帶フル者商業ヲ營ムコトヲ禁セラレタル場合ト雖モ其者ノ爲シタル取引ハ此理由ノ爲メ無效ト爲ルコトナシ
（本尾）
左樣テ御在イマス、前後ニナリマスカラ書換ヘナケレハナリマセン
（松岡）
改正ノ十五條ハ誰レモ論ハナイテシヨウ
（渡）
同シコトタ
（松岡）
同シテハナイ、此處テハ注文シタ樣ニ修正シテ吳レタ
（委員長）
斯ノ十六條ヲヤリマシヨウ
第十六條一方ノ者ノミニ對シテ商ヒ取引タル取引ニ付テハ此法律中商人ノ身分ニ關スル起定及ヒ他ノ法律ニ反スル起定ヲ除クノ外雙方ニ對シ總テ此法律ヲ適用ス
（本尾）
此前ノ被吿ノ爲メニ商ヒ取引テアツタ折ニハ其訴訟ハ商事裁判所ヘ出ル、被吿人ノ爲メニ商ヒ取引キテナイ場合ハ民事裁判所ヘ出ルト云フ樣ナ都合ニシタラ一番良カラウト云フ議論カ御座イマシタ、併シナカラ其場合ノ契約ヲ民法ニ依テ解釋スルカ、或ハ商法ニ依テ解釋スルカト云フコトハ定マランテ居リマシタ、若シモ被吿カ非商人テアツタトキハ民法ニ依ル、ソウテナケレハ商法ニ依ル其㸃ヲ報吿委員テ調ヘテ立案シテ吳レト云フ命ヲ受ケテ居リマシタ、種々熟考致シマシタカ何分ニモ六ケ敷ウ御座イマス裁判所ヘ出マスル方ノ側ハ此處テ定メルニ及ハン、伊太利ノ八百七十五條ニ御在イマス樣ニ被吿カ非商人ナレハ民事ニ出ル、被吿カ商人ナレハ商事裁判所ニ出ルト云フコトハ定メマセンテモ構成法ノ二十六條ニ商事局ヲ置クト云フコトカ御座イマス其方テ若シモ始審裁判所中ニ商事裁判所ヲ置カレニハ特別法カ出來ナケレハナラン、其特別法ニ是レ々々ノ訴訟テアツタ折ハ商事裁判所ニ來イト云フコトヲ起定スレハ充分テ御在イマス商法中ニ裁判所ノ孰レニ出ルト云フノハ不要用テ御在イマシヨウ、唯商法中テ定メテ置カナケレハナラント申シマスノハ契約ヲ民法ニ依テ解釋スルカ或ハ商法ニ依テ解釋スルカ孰レカ一ツニシナケレハナラン其事ハ商法テ起定シナレハナラヌト云フコトカ違ツテ居リマスソレニ就イテ段々論及致シマシタ末報吿委員カ修正致シマシタノカ今日提出致シマシタ十六條テ御座イマス十六條ノ精神ハ「一方ノ者ノミニ對シテ商ヒ取引タル取引ニ付テハ此法律中商人ノ身分ニ關スル規定及ヒ他ノ法律ニ反スル規定ヲ除クノ外雙方ニ對シ總テ此法律ヲ適用ス」トナリマスト假令ヘテ申シマスルト商法中ニ商人ト云フモノハ帳簿ヲ持タナケレハナラン、商人ハトレ丈ケノ義務カアルト云フ規定カ御座イマス、其規定ハ非商人ニハ適用シナイト云フコトカ一ツト、ソレカラ此商法中ニ他ノ法律ニ反スル起定カアル、民方ノ法テハ三十年ノ期滿免除、商法テハ六年、此商法中ノ他ノ法律ニ反スル規定ト云フノハ商法テ六年ト定メテアル規定テ御座イマス、其規定ハ適用シナイト云フコトニナリマス、詰リ民法ノ方ニ依ルト云フコトニナリマス、致シマスルト商人ニ對シマシテモ民法ヲ適用スルト云フ結果ニナリマス、一ノ例ヲ擧ケレハ保險會社ハ通例ノ人ノ保險ヲ受合ツテ保險ノコトニ付キマシテ商法ニ二ツノ規定カアル、併シ保險會社ハ商法テアル、保險サレル者カ通常ノ人テ民法ニ從フヘキモノテアル、シテ見レハ其間ニ起ル爭論ハ總テ民法ニ依ルト云フ結果ニナリマス、保險會社ノミナラス、運送會社テモ亦銀行テ御座イマシテモ
（南部）
商人カラ常人カ品物ヲ買ツタトキハトウナリマスカ
（本尾）
商人カラ一個人カ物ヲ買ツタトキハ民法ニナリマス、ト云フノハ此商法中ノ他ノ法律ト云フノハ民法テ御座イマスカラ
（松岡）
考ヘテ見ルト餘程六ケ敷イ
（長谷川）
報吿委員カ十六條ヲ修正シタ旨意ヲ申上マス、其譯ハ只今報吿委員カラ辯シマシタノテハ害カ多クテ利益カ少ノウ御座イマスカ、報吿委員カ拵ヘタノハ「ロエスレル」ノ原案ニスルト總テ商法ヲ適用スルコトニナツテ居リマス、ソレヲ報吿委員カ全ク反對シタ修正ヲ出シタ處カ、此會テ伊太利ノ主義ヲ取ル樣ニト云フコトテ御座イマシテ其中ノ伊太利ノ譯ニ間違ヒカアル樣テ御在イマス、伊太利ノ最初ノ誤譯テアレハ宜シウ御座イマスカ、本統テアツタナレハ採用スルコトハ出來マセン此十六條ハ伊太利トモ違ウ、又「ロエスレル」トモ素ヨリ反シテ居リマス、保險會社ト非商人ト取引シタトキハ總テ民法ヲ適用シナケレハナラント云フ例カ出マシタカ、總テ民法ヲ適用スルノテハアリマセン、他ノ法律ニ反スル規定ヲ除クノ外テ御座イマスカ、民法ニ規定ノナイトキハ商法ニ依リマス、併シ反對シタ場合カアレハ民法ヲ適用シナケレハナラン、民法ハ利息カ百分ノ六、商法ハ七ニナツテ居リマス、此場合ニハ民法ノ六ニ依ラナケレハナラン何トナレハ民法ハ一般ノ人カ遵奉シテ商法ハ商人ハカリテ御在イマスカラ、若シ民法中ニ反シタモノカナケレハ悉ク商法ヲ適用スルカラ決シテ弊害ハアルマイカト、是レカ孰レノ說ニモ拘泥シナイ、或ハ實地都合カ良カラウト思テ提出致シマシタ
（南部）
此裏ハ民法ハカリト見テ民法ニ反スル規定ヲ除クノ外ト云フコトニナル、ソウスルト民法テ規定シテアル場合ハ一方カ商人テ一方カ常人ノトキハ兩方トモ民法ヲ以テ支配スルト云フノハ商人ハ商法テ支配シ常人ハ民法テヤルト云フノテ御座イマス
（長谷川）
雙方ニ適用スルノテ御座イマス
（松岡）
貴君ト私ト取組ヲシテ私カ商人、貴君カ非商人ノトキハ此商法中テ他ノ法律ニ反スルカ利子カ違ウ、此場合ニ私ノモ商ヒ取引タト云フトキハ雙方ニ此法律ヲ適用スルカラ
（長谷川）
ソレハ除カレルコトニナリマス
（南部）
反スル規定ト云フノハ、反スル此商法ノ規定ヘト云フノタ
（長谷川）
ソウテス
（松岡）
一方カ非商人ナレハ雙方トモ民法ト云フノテスカ
（長谷川）
牴觸スレハ民法テス
（尾崎）
帳簿カ非商人ニハナイ、其時ハ商人モ帳面ヲ持出スコトハ出來マセンカ
（長谷川）
ソレハ出セナイ、何トナレハ一方カ其レニ對抗スル丈ケノモノヲ具ヘテ居ランカラ
（南部）
顚倒シテ云フト「他ノ法律ニシテ此商法ノ規定ニ牴觸スルモノハ」ト云フノカ
（長谷川）
ソウ云フ旨意テス
（箕作）
此旨意テハ雙方トモニ民法ニナツテ仕舞フカ、雙方共ニ商法ニナツテ仕舞フカ偏頗ト云フコトハナイト云フ旨意タカ其旨意カ不分明タ
（長谷川）
大旨意カ定マレハ文字ハ修正致シマス、隨分是レニハ數日ヲ費シマシタ
（委員長）
兩方カ商人ト非商人ノトキハ民法ニ從フコトニナリマスカ
（長谷川）
若シ牴觸シテ居レハテ御座イマス
（委員長）
商人ノ身分ニ關スルト云フト陳テノ帳簿ノコトヤ其外商法ニ於テ定メラレテ居ル通常ノ人ト違ツテ居ル資格ヲ持ツテ居ル、其レ丈ケノ關係ヲ持テ居ルトキハ民法ニ依ルカラ商人カ民法ニ依ラナケレハナラヌ、ソウスルト民法ニ這入ル者カ多クナル
（淸岡）
年齡ナトカ違ウノハトウ云フコトニナリマスカ、商賣人ニナルニ未丁年テモヤレルカ、民法テハ未丁年者ト結ンタ契約ハ無效タト云フトキハ民法ニ依ルトキハ無效ニナルタラウ
（長谷川）
ソウナリマシヨウ
（南部）
アレハ民法ニモ御座イマス
（箕作）
十八歲以上テ同シコトテス
（淸岡）
ソレカアレハ幸ヒテ御座イマスカ
（箕作）
反スルテハナイ、附合スル方テス
（淸岡）
帳面ヲ持テ入ツテ民事ノ法テソンナモノハ證據ニナラント云フ場合カアツテ見ルト困ル
（松岡）
之ハ伊太利ノ商法ト違ヒマスカ
（本尾）
違ヒマス伊太利ノハ此商法中ニ別段ノ規定ヲ設ケテナイ以上ハ兩方ニ適用スルト云フノテ御座イマス
（松岡）
詰リ長谷川サン、貴君ノ方テ商法ニ專從セシメレハ商人二一番難義ノ㸃ハトノ位テ御座イマスカ
（長谷川）
一例ヲ擧レハ商法ニ於テ契約上履行地カ分明ニアルナレハ權利者カ其場所ヲ選フト云フコトカ書イテアリマス、我々カ素人テ米屋カラ米ヲ買ウ切期ニナルト掛ケ取リカ向ウカラ來ル代ハリニ素人ハ向ウヘ持テ往テ拂ハナケレハナラント云フコトカ出テ來ル、若シ民法ニ從ヘハ權利者ノ所ヘ來ル
（本尾）
此處ノ商法中商人ノ身分ニ關スル規定ノ中正整ナル商人ノ注意ト云フコトモ必要テ御座イマシヨウカ、重モニ裁判所ヘ出テ來ルノハ帳簿ノコトテ御座イマス、帳簿ノコトハ「ロエスレル」ノ草案ノ四十條ニ在リマス但捨用スルトキト云フノハ若シモ商人ト非商人ト訴訟シテ非商人カ彼ノ人ノ帳簿ハ正整テ御座イマスカラ彼ノ人ノ書イタノナラ宜シイト云ヘハ宜シイト云フコトカ此處ニ見ヘテ居リマス、第三者ノ所テ又ハ相手方ニ於テ之ヲ不正トスル理由ヲ僅カニテモ信認セシメ得サルトキハ此限ニ在ラストアテ、若シモ非商人ノ方カラ私ノ相手ノ商人ハ正整テ御座イマスカラ正當ニ書イテアレハ腹シマスト云ヘハ役ニ立チマス
（松岡）
此處テ見ルノハ一切向ウテハネ付ケル
（本尾）
ソレハ裁判官ニ任カセルコトハ出來ナイ
（松岡）
身分ニ關スル規定ハ取除ケント云フ中ヘ帳簿モ這入リマスカ
（本尾）
這入リマス
（委員長）
伊太利ノ商法ヲ幾ント取ツタノタ
（本尾）
伊太利ノハ商法中ニ此條ハ商人ニモ適用スルト云フコトカ書イテアレハ非商人ニ適用セント云フノテ御座イマス
（委員長）
二人ノ中一人カ商人ナレハ商法ニ從フコトニナツテ居ル、ソウシテ商法ノ規定ヲ取除ケ法律ニ反スル規定ヲ妨ケストアルカラ
（長谷川）
法律上之ハ非商人ニノミ適用スルト云フコトカ書イテアルト云フ意味タソウテス
（曲木）
伊太利ノハ若シ一ツノ事柄ニシテ雙方ノ一方ニノミ商業トナル持分ニハ契約者ノ總テノ契約者ハ商法ニ從ハナケレハナラン但商人ノ身分ニ關スル規定ハ此限ニ在ラス及ヒ法律ノ卽チ此商法ニ牴觸スル反對ナル規定ハ矢張リ取除ケル
（箕作）
アラユル契約ヲ支配シナイト云フコトカ商法中ニ明記シテアルノテス
（曲木）
ソウテス
（箕作）
法律ト云フ字ハ商法テスカ
（曲木）
ソウテス、本法ト云フコトテス
（長谷川）
獨乙ノ二百七十七條ニ御座イマス
（村田）
恰度軍人ト常人ノ區別ノ樣ナモノタ
（南部）
身分ニ依ルト云フコトハ僅カトカアリマスマイ
（本尾）
帳簿ナトノコトテス
（南部）
大體ヲ論シタ處テ民法ハ一般ヲ支配シテ居ルト云フ原則ヲ立テヽ民法ハ商人テモ知ラナケレハナラン何トナレハ商法ニ書イテナイ處ハ皆民法ニ因ラナケレハナランカラソウスレハ常人ハ商法ヲ知ラナケレハナランカト云フト此方ハ知ラント云テモ宜シイト云テ宜シイ位タカラ、ソウスレハ其契約ニ常人ト商人ト契約シタトキハ商法中ノ民法ト牴觸センモノハ格別タケレトモ若シ牴觸スレハ民法ニ付ケテ仕舞フ卽チ修正案ノ通リニスルカ止ヲ得ス至當トナツテ來ル、之ニ反シテ商法テヤルト云フコトニナレハ常人カ商法ヲ知ラナケレハナランコトニナル
（本尾）
ソウ云フコトニナリマスト、先刻カラ段々御論ノ御座イマシタ樣ニ商法ト民法ト相牴觸スル場合ニノミ限ツテ民法ニ因ル、民法ニ牴觸シナケレハ商法ニ因ルト云フ論カ御座イマス民法ト商法ノ性質ヲ論スレハ普通人民ノ因ル處テアル、ソンナラ商人ト雖モ其レニ因ルカ當リ前テ御座イマス、處カ民法ニ因テハ活發ナル商業カ出來ナイカラ別段ニ商法ト云フモノヲ拵ヘル、シテ見レハ商法ノ條項ニシテ民法ニ牴觸シナイモノハ一モナイト申シテ宜シイ、民法ニ在ルモノハ民法ニ因ルト云フ論ハ鳥渡シタ論テ御座イマスカ、ソウ云フ論ノアル筈ハナイ、民法カラ異ツタ法律ヲ拵ヘ樣テハナイカト云テ拵ヘタカラ牴觸セント云フモノカアル筈ハナイ、斯ウ論シテ見レハ此處ノ十六條ノ體裁ハ良ク書イテハ御座イマスケレトモ民法ト商法テ牴觸シナイ條カ決シテアル筈ハ御座イマセン、ソウスレハ商人カ民事上ノ人ト契約スレハ孰レノ場合ヲ除クノ外民法ニ腹從サセルト云フ意味ト推測スルヨリ外ハ御座イマセン又修正ノ通リニスレハ理論上實際上不都合ト思ヒマス、何セ理論上不都合カト云フト普通法ト特別法ト成立ツタトキハ特別法ニ優先ノ效力カアル、シテ見レハ民法ト商法ト對シテ商法ハ特別法ト云ハナケレハナラン、處カ商法ヲ退ケテ民法ニ因ルトスレハ卽チ特別法ヲ後ニシテ普通法ヲ先キニスルト云フ理論上ノ不都合カ御座イマス、第二ノ實際上ノ不都合ハ銀行テ御座イマスルノ保險會社ナトカ御座イマス、其レハ契約ヲ結ンタ者ハ誰テアルカ保險會社ナトハ契約スル者ハ凡ソ殘ラス民法ノ人テ御座イマシヨウ、其間ニ爭論ノ起ツタトキ民法ヲ適用スル、ソウスレハ何ノ爲メニ保險會社ノ爲メニ商法ヲ設ケタカ實際上不都合ト思ヒマス
（南部）
然ラスト思フ、ト云フノハ民法カ元トニナツテ商法ハ特別法タ特別法ヲ設ケル旨意ハ特別ニ入用カアツテ設ケタニ違ヒナイカ、併シナカラ商法ヲ設ケルノハ商人ノ爲メニ設ケタモノテ商人カ商業ヲスル爲メニ設ケタモノテアル、普通ニ見タトキハ商賣人カ相互ニ商法ヲスルノハ普通ト見ナケレハナラン、常人ト商人ト關係シタトキハ普通法ト特別法ト兩方ニ關係ヲ生シタ場合テ當リ前ナレハ常人ハ民法ニ從ヒ、商人ハ商法ニ從フカ當リ前テ御座イマスカ實際ソウハラソカラソレテ商業ノ場合ニ於テハ據ナク普通法ニ因ルト云フ旨意ナレハ之カ爲メニ特別法ヲ破ルト云フコトハナイ、又保險法ハ民法テ保險ノ所ニ關シテ民法ニ牴觸スル處カ果シテ幾許アリマシヨウ、筐カホカアルマイト思フ、シテ見レハ箇樣ナ保險ノ場合ニ商法ヲ以テ支配シナケレハナラント云フ理由モ出マスマイ、民法ト商法ト牴觸スル事柄カ商人ノ一脈ノ身分ニ關シタ事カアリマシヨウカ、大體民法ノ原則ニ牴觸スルコトハ僅カホカアリマスマイ、一般民法ヲ元トシテ商法ハ商人同士ニ適用スル若シ牴觸スレハ民法テ支配スルカ適當ト思フ
（淸岡）
之ヲ拵ヘタ以上ハ元トノ民法ニ戾ツテ支配スルノハ具合カ惡ルイ
（松岡）
私モ誠ニ利害判然タル見込ハ付キマセン、私ハ矢張リ前意ト反スルカ、伊太利獨乙ノ法ニ文字モ從フカ宜シカラウト思ヒマス、第一何レ契約ノ上テ民法ト商法トノ違ウト云フモノカ原則ヲ調ヘテ見ルト澤山ト云フテモナイテ御座イマシヨウカ、其處丈ケノ要用ニナル、然ル處大勢ノ人ニ係ルタラウカト云フト訴訟ニテモナツテ大ニ要ノアルコトハ鳥渡シタ事ヨリハ多分ハ非商人テモ商ヒノ取引キト云フコトニ係ツタ縺レノ起ルモノカ多イ、此商ヒ取引ハ佛蘭西ノ樣ニシテ置キマスト事カ狹イカ、商法ノ今ノ案ニ從ツテ見レハ大抵ノ事ハ餘程商ヒ事ト云フ方ノ部分ニ這入ツテ仕舞フ、ソウスルト離レテモ起ルト云フコトハ多分ハ商ヒ事ニ這入ルト云フコトニナレマシヨウ、一番先キヘ見ナケレハナランノハ本尾君ノ云ヒマス樣ニ商業ニ付テハ活撥ナ事ヲ薑ニニシテ往カナケレハナラン、昔ヨリ近年ニ至ツテ商業ノ世界カ廣クナツテ農業工業モ商業ニ讓リ渡ス樣ニナリマシタカラ今カラ先キ法律ヲ立ルニハ商業ニ便利ヲ讓ツテ唯ノ人ハ幾分ノ不便ヲ受ケテ行ク方カ國ノ經濟上ヨリ申シテモ宜シカラウト、誠ニ良イコトテ御座イマスカ、伊太利獨乙ノ主義ニ從フ方カ良カラウト思ヒマス
（委員長）
非商人カ困難ト見ル場合ヲ認メテ取除ケヲシテ置ケハ極ク宜シイ「ロエスレル」ノ案ノ中テ其レ丈ケヲ見出サナケレハナラン
（松岡）
ソレハ「ロエスレル」ニ云ヘハ宜シイト思ヒマス、「ロエスレル」ニ於テモ獨乙ノ商法ノ場所ト標シヲ付ケテ吳レルト思ヒマス
（委員長）
「ロエスレル」ヨリ日本人カ見出サナケレハナラン、獨乙文テハ商法テ支配サレルカラ其處ニ注意シナイト書イテアル
（松岡）
獨乙ノハ獨乙ノ商法中ニ兩方ニ用イルト書イテ一方ニ關スルトキハ此限ニ在ラストシテアリマス「ロエスレル」モ取除ケル積リテ御座イマス
（委員長）
此文ノ中一ニモナイ
（松岡）
然ルニ獨乙ノ例ヲ見セテ吳レタ處ヲ見テモ判然ト商事ニ非サルモノニ適用セスト書イテナイテシヨウ、自カラ見出ス樣ナコトテ
（委員長）
獨乙ノハ自ラ分明ナルモノハ此限ニ在ラストアルカラ私ノ憶測テハ長谷川サンカラ見セタ箇條位テハ非商人ノ利益ニナルト云フコトハ見ヘナイ、日本ニ適用スルト云フト明カニ書クカ良シ、獨乙クライナレハ書カンカ宜シイ、日本人カ之ヘ取除ケヲ書クカ、或ハ此處ヘ事ノ序テニ區別ヲスルカ、修正案ヲ採用スルカシナイ力ノ御意見ヲ聞イテ、其レカラ後ニ修正致シマシヨウ其處テ報吿委員カラ出タ修正スルカセン力ヲ決シテ其後ノ論ニシマシヨウ
（長谷川）
修正ノ潰レルノハ伊太利ノカ宜シイト云フコトテ御座イマシヨウカ、「ボアソナード」ハ明カニ之ニ反シテ居リマスコトヲ御議及ヲ願ヒマス
（箕作）
「ボアソナード」ノハ切リ上ル積リノ樣タ
（長谷川）
原吿ニハ商法ヲ適用シ被吿ニハ民法ヲ適用スル積リノ樣テス
（委員長）
其論カ立派ニ出來レハ良イニ違ヒナイカ、トウシテモ行ハレナイ、白耳義ノ商法ハトウテスカ
（長谷川）
佛蘭西ト同シ商法ホカアリマス
（本尾）
「ロエスレル」カ佛蘭西ノコトヲ云テ居リマス、六百三十一條ノ言葉ハ總テノ人ノ間ニト云フコトテ、其レハ商人間ト云フ意味テナクシテ商ヒ取引ノ訴訟ニ付テト讀マナケレハナラント云テ居リマス、ソウスルト此結果ト同シニナリマス
（松岡）
反對カラ云ヘハ一方カ商ヒ取引ニ關セント云フノテアリマシヨウ
（渡）
私ハ本尾サンノ原案ノ旨趣ヲ證明スルニ付テ此條ヲ報吿委員提出ノ如ク改メ得ントキハ條理ニ於テモ實際ニ付テモ不都合カアルト云フ論カ勞力カアリマスカラ、ソレニ對シテ試ミニ述ヘヨウト思ヒマス、民法ハ總テ一般ノコトヲ支配スルモノテアルニ因テ商人ト雖モ民法テシテ良イ筈ノモノタ商人ニ對シ特別ノ法ヲ以テ活撥テナケレハナランカラ民法ニ因ラス商法ヲ作ツタノテアル卽チ之ハ民法カラ別家シテ特別法テアル若シモ此法律カ二ツアツテ尋常法ニカカアルカ、特別法ニ因ラナケレハナランカト云フト特別法ニ依ラナケレハナラント云フ御論㸃カアリマシタカ私ハ然ラスト云フ、私カ他ノモノニ假令ヘテ云ヘハ常法ト云フモノハ人ノ生レテカラ刑法ニ服從シナケレハナラン其當人カ軍事ニ在ルニ付テハ常律ヲ以テハ出來ナイカラ軍人ニハ軍律ヲ設ケル卽チ活撥ニ處斷シナケレハナラン、卽チ常律カラ軍律カ別家シテ恰モ商法ノ民法ニ於ケル如キモノテアルト思ヒマス、然ルニ軍律ノ支配ヲ受ケテ居ル人ト軍律ヘ這入ラン常人卽チ非商人トノ間ニ喧嘩カ起ツタトキ軍律ニ依ルカ常律ニ依ルカト云フト、其事柄ニ依テ軍律ニ依ラナケレハナランノト、事柄ニ依テ軍人ト雖モ常律ノ支配ヲ受ケナケレハナラン恰度之ト同シニ考ヘラルヽコトト思フ、其事柄カ軍律ヲ混シテ何人ト雖モ軍律ヲ以テ處斷スルト云フトキハ其身分カ軍律ニ入ランテモ軍律テ處斷スル軍律ハ特別法テアル、ソレ故ニ前ニ御陳述ニナツタ通常ノ法カアツテソレニ又特別ノ法律卽チ民法ハ通常ノ法テ商法ハ特別法タ、兩方ノモノカ違ツタトキハ特別法ニ依ラナケレハ條理ニ於テモ實際ニ於テモ不都合ト云フカ私ハ然ラスト思フ、是レハ場合ニ依テ異ル、尤モ最密ノ處分カナケレハ常律ニ依テ處斷スルカラ此場合テハ本律ト特別律トアルトキハ特別法ニ依ラナケレハ效カナイト云フコトハナイ、又實際ニ於テ不都合ト仰シヤル㸃ハ假令ハ銀行船海會社保險會社ナトハ多數ハ非商人ヲ相手ニシテ商賣ヲスル、然ルニ差縺レカ出タトキハ何時テモ民法ニ依ラナケレハナラント云フト銀行保險會社ハ商業テアルノニ對シテ民法ヲ以テ行カナケレハナラン、本體ノ性質ノ會社ヘ向テ何時テモ民法ヲ以テ處分シナケレハナラントキハ恰モ保險會社ニハ商法無シト云フ御論㸃テアリマスカ、之モ然ラスト思フノハ保險會社銀行ナトハ體面カ商法ニ近イカラ商法ニ服從シナケレハナランカ、銀行ハ相手カ商人半分非商人半分ト見ラレルカ、船海會社ヤ保險會社ハ商人ヲ相手ニスル商法トハ云ヘン商人モ賴ミニ行クテアラウ、又船海モ貸物ナトノ運搬ハ相互ヒニ商業上ノ資格ヲ以テスル場合モアラウカ之ハ商人ヲ相手取テスルト云フカ目的テナクシテ半分々々カ孰レカ多數ニナルカ知レンカ半分ハ非商人ヲ相手取テスル會社テアル、ソレ故ニ之ハ外ノ會社ト餘程異ツテ居ル、必ラス半分ハ非商人ヲ相手ニシナケレハナラン商法テアルカラ之ニ不活撥ナル民法ヲ當テルノハ不都合ト云フヨリモ元ト軍律ニ隨從スヘキ義務ノナイ者ノ軍人ト取合ツタ軍律ニ依ラナケレハナラント云フコトヲ一般ノ人ニ掛ケル方カ重イト思フ實際ノ不都合ハ船海、銀行保險會社クライテアルカ此三、四ノ爲メニ不活撥ナル民法ヲ行フカ不都合ト云ハンヨリハ一般ノ人ヲ商法ニ書キ込ンテ仕舞フノカ不都合ト思フ、矢張リ之ハ報吿委員ノ提出案ノ如ク精神ヲ取ツテ文面ハ解シ難イカ、精神ハ「ロエスレル」ノ適用スルト云フ方テナク、適用セン方カ宜シイト思フ
（本尾）
軍律ト民法ト普通ノ商法ノ比例カ出マシタ、成程表面カラ見レハ一方ハ特別、一方ハ常律テ御座イマスカ軍律ハ陸軍ノ人ニ對スル法律テ御座イマスカ商法ハソウ云フモノテハ御座イマセン若シモ昔ノ樣ニ商人ノ身分ニ關スル致方ナレハ只今ノ比較カ當リマセウカ此草案ハ決シテソウテナイ、商ト云フ事柄ニ對スル法律テ御座イマス軍律ハ軍ト云フ事柄テハ御座イマセン軍人ニ適用スル法律テ御座イマス
（松岡）
遉ハ渡君テ旨ク御返事ニナリマシタカ、ソレカラシテ商法ハ軍律ト違ウ事ヲ見出シテ來タ、今云フ通リ軍律ハ軍人ヲ目的トシテ軍律ハ凡人ヨリ重クスルカ普通ニナツテ居ル、商法ト云フモノハ何ソ平民二かぶり付ク嚴酷ナ法律ト見レハ御尤モテ御座イマスカ
（渡）
只特別法ノ例ニ出シタノテ御座イマスカラ
（松岡）
軍律ハ重モ二人ニ係ルカ決シテ商法ハ只ノ人ニ用イロノ平人カ不利益ト云フコトハ出來ン、權利者ノ方ニナツテ來レハ詰リ物カ速カニナル
（渡）
軍律ハ嚴酷テ之ハ反對ト云フ御辯駁ト承ルカ、特別法ト云フ丈ケニ借リテ來タノテ商法ト民法ノ便益ハ相互ヒニ互格ト思フ其處ハ軍律ノ嚴ナルト常律ノ
（松岡）
ソレテハヤメマシヨウ
（尾崎）
修正案ヲ贊成シマス
（村田）
私モ贊成
（南部）
私モソウテス
（箕作）
私ハ修正ハ充分ト思ヒマセン、獨乙伊太利ノ通リニシテ「ロエスレル」ニ書イテ貰ヘハ格別、左モ無ケレハ此處テ入レルノカ良カラウト思ヒマス
（松岡）
私モソウテス
（淸岡）
私モソウテス
（委員長）
私ハ決スルニ先ツテ鶴田サンノ說カアリマシテ是レカ極ク良カラウト思フカ、其レテハ餘リ切リ込ミ過キテ却テトウタラウカト思フ、鳥渡鶴田サンノ說ヲ借リテ云ヒマスカ、修正案ニ「此法律中商人ノ身分ニ關スル規定ヲ除クノ外」ト云フコトヲ除ケテ他ハ總テ此法律ヲ適用スル之ナレハ良カラウト思ヒマス
（箕作）
身分ニ關スル規定ハカリテ及ヒ他ノ法律ニ反スルト云フコトヲ削ツテ契約篇ナトハ非商人ニ適用スルト云フコトヲ書ク積リテアリマシタカ
（鶴田）
雙方共ニ商法ヲ適用スル、併シナカラ差當リ商人ノ身分ニ關スル規定ハ非商人ニハ適用ハシナイ、ソレカラ外ニ在ルナレハ探ツテ取除ケテ書イテ宜シウ御座イマスカ鳥渡見當リマセンカラ違ウ所ハ違ウ樣ニ書イテアル說モアル、組合ノ所ナトニハ書イテアル、或ハ又商人ノ務ムヘキ義務モ商人ニ付イタ身分テアルカラ彼レ等ハ身分ニ關スル中ヘ入レテモ宜シイ
（箕作）
只十六條ニ他ノ法律ニ反スル規定ヲ總則ニ揭ケテ置カンテ宜シイト云フノテ御座イマスカ
（鶴田）
ソウテス
（委員長）
私ハ伊太利ノ法律ニ因ル、併シナカラ「ロエスレル」ノ云フ如クニ取戾ストカ、會社ノ連帶責任ト云フ樣ナ部ノ類ト思フカラ其箇條ハ書ク方カ良カラウト思フ
（松岡）
ソレハ箕作サンノ云フ通リ「ロエスレル」ニ見出シテ貰ウカ宜シイ
（委員長）
報吿委員テ見出シテ貰ツテ報吿委員カ必要ト云フ處ヲ見、又聞イテモ見テ「ロエスレル」ニ御前ノ說ノ通リニ行カン、日本テハ是レ々々カ必要トアルカラ是レ々々筆ヲ入レテ吳レト云フコトヲ注文シテ尙ホ此上ニ自分ノ考ヘカアレハ入レテ吳レト云フカ良カラウ
本條ハ起案者ニ質問スルコトニ決ス
于時午後零時十五分休憩
午後第一時開會
（委員長）
十六條ノ修正ハ出來マシタカ
（本尾）
十六條ノ修正ハ一方ノ者ノミニ對シテ商ヒ取引タル取引ニ付テハ雙方ニ對シ總テ此法律ヲ適用ス但此法律中身分ニ關スル規定及ヒ反對ノ意ヲ表シタル規定ハ此限ニ在ラスト致シマス
（鶴田）
トウモ些ト面白クナイ
（委員長）
「及ヒ之ニ反スル」トヤツテハトウカ
（箕作）
「之」ト云フノヲ滅多ニ入レルト、上ニ身分ニ關スルト云フコトカアリマスカラ顚倒ニ書ケハ宜シウ御座イマス
（鶴田）
コウ書クト私ノ考ヘトハ違ウ、商人ノ身分ニ關スル規定ハ此商法ニ揭ケテアルノハ用イント云フコトニナリマスカ商人ニモ用インノテアリマスカ
（本尾）
ソウテハアリマセン
（南部）
矢張リ雙方ニ適用セステナケレハナラン
（鶴田）
商人ハ適用スルカ、帳面カアルカト云フコトハ商人ニハ云ヘルカ、非商人ハ適用ハ出來ナイ
（本尾）
事實雙方ニナリヤセンカト思ヒマス今商人ト非商人ト訴訟ヲ起シテ其訴訟上テ商人ハ帳簿ヲ持タナケレハナラント云フコトカアル、訴訟其モノニ付テハ全ク雙方ニナイモノト同シニシナケレハナラント云フ樣ニナリマスカラ雙方ニ適用セント決シテ宜シイト思ヒマス
（鶴田）
原則ハ適用スルケレトモ非商人ニ貴樣何カ帳面ヲ持タソト責メルコトハ出來ナイ
（渡）
商人ヘハ云フト云フノタラウ
（鶴田）
商人ト非商人ト來タトキハ商人ニハ貴樣帳面ヲ持テ來ナイカト云フコトカ云ヘルカ非商人ニハ云ヘナイ
（渡）
ソウスルト「ボアソナード」ト同シタラウ
（鶴田）
ソウテハナイ
（尾崎）
鶴田サンノ御說ニスルト是レテハ分ラン
（鶴田）
商人ノ法律ヲ非商人ニ持テハ行ケナイ私ハ身分ニ付ク丈ケハソウシ樣ト思フノタ
（委員長）
商法ノ定メニ依テ拵ヘタ帳簿ナラ效力カアルト見ナケレハナラント云フコトカアルカ知ラン
（南部）
商業上ノコトニ致シマシテ一方カ民事ノトキハ民法ヲ以テ處分スル
（委員長）
處分スルケレトモ一切商人ハ商法ト云フモノニ支配ヲ受ケテ營業シテ居ル、ソレハ民法上テハ認メラレシ、民法上テハ無效ト云フコトニナラン場合モアラウト思フ
（南部）
身分ニ關スル分ハ致方カ御座イマセン一般ノコトハ但以上テ行キマスカラ
（委員長）
但以下ハ總テ民事ノ起定ニ依テヤルト云フコトハ云ヘルタラウ
（南部）
併シ時效ノ場合ニ方カ商人テ商人ハ商法ノ期滿テ行ク常人ハ民法ノ期滿效テ行クト大變六ケ敷イコトニ相成ツテ來ヨウト思ヒマス
（鶴田）
非商人ニ商法ヲ持テ行カレント云フ場合ヲ取除ケニシタノテ商人ニ民法ヲ持テ行ケト云フコトハ此處テハ云ハンコトト思フ
（委員長）
商人ハ商事裁判所ニ行キ非商人ハ民法裁判所ヘ行クノカ
（鶴田）
商人ノミニ限ツテ用イル規則ハ之ニ在ル、ソレハ民事ノ非商人ニ適用ハ出來ナイ
（箕作）
貴君ノ御讀ニシテモ「此限リニ在ラス」テ宜シイト思フ、此コトハ非商人ニ適用セスト云フコトヲ書キマスカラ、雙方ニ適用スル限リニ在ラスト云フノタカラ差支ナイト思ヒマス、雙方ニ適用センカラ一方ニ適用スルカ知レン
（鶴田）
ソウ讀メハ宜シイカ南部サンノ樣ニ讀ムト違ウ
（委員長）
孰レヘテモ讀メル
（松岡）
商人ノ身分ニ關シテ第一ニトウスルカト云フト氏名ヲ登記シナケレハナラント云フト此商人モ登記ハシテ居ルカラ其人ニハ適用スルノカ本則ト云ハナケレハナラン
（南部）
別ニ關係ナクシテ適用スルノハ宜シイカ、
（箕作）
商人ト非商人ニ關連スルト一方ハ商法ヲ適用シ、一方ハ民法ヲ適用スルコトハ出來ンカラ
（委員長）
主義ヲ孰レニ定メルカ
（南部）
考ヘテ見レハ一樣ニ定メストモ良イカト思ヒマス
（委員長）
曖昧テハイケン
（南部）
商業帳簿ニ常人ト商人ト取引ヲシタコトカアル、商人ハ商業帳簿ニ裁セナケレハナラント云フコトハ一人テ宜シイ、一人ハ適用シテ常人ニ適用センテ宜シイ、併シナカラ一ノ事柄カアツテ常人ト商人ト關係シテ孰レカニ固メナケレハナラントキハ普通法ヲ民法ニ固メルト云フ樣ニスレハ孰レヘテモ參リマス、其方カ實際ニ廣イト思ヒマス
（委員長）
本尾サンノ書イタ旨意ハ
（本尾）
私ノ書イタ旨意ハ其事柄ニ付キマシテ兩方ニ適用シナイ、假令ハ非商人ト商人ト訴訟ノ起ツタトキ商人トシテ帳簿ヲ作ラナナケレハナラントキハ商人ノ義務トシテヤラナケレハナラン、併シ其帳簿ヲ擔キ出シテ通例商人ト商人トノ間ニ效ク樣ニスルコトハ出來ナイ、兩方ニ對シテ用インノテアルト云フ意味テ書キマシタ
（委員長）
但以下ハ民事ノ通則ニ依ルノテスカ
（本尾）
左樣テス
（委員長）
之ヲ書ク以上ハ商法ノ支配ヲ受ケソモノト定ツタ方カ良カラウト思フ、半分ハ商法、半分ハ民法ト云フト之ヲ書イタ旨意カナイ
（本尾）
私モソウ考ヘマスノハ一方ノ者ノミニ對シテ商ヒ取引ハ商人タル身分ニ付テハ別ノ話シテ、之ハ取引丈ケノ話シテ御座イマス、取引上カラ出ル結果丈ケニナリマス、假令ハ甲ト乙ト契約ヲ結ヒマシタ、一人ハ商人、一人ハ非商人テ民法ヲ解釋スル方法ト商法ヲ解釋スル方法ト違ツテ居ル、孰レノ意ヲ以テ解釋スルルカ、ソウ云フトキハ反對ノ明示カアレハ商法ノ方ノ商人ノ良心ニ間フテ解スルノテナク民事上ノ普通ノ人ノ解釋ニ因ラナケレハナラン詰リ取引上ニ關シテ商人ノ身分ニ關シテハ云ハナイ
（鶴田）
通常商人ノ帳簿ヲ保存スルト云フコトヲ非商人ニ持テ行クコトハ出來ヌ、併シ商人ニハ持テ行クコトカ出來ル、貴樣商人テ他人ノ物ヲ預ツテ帳面ヲ無茶苦茶ニシテ置クコトハナラント云フコトハ商人ニハ當テラレルカ非商人ニハ當テラレナイ
（本尾）
一ノ契約ヲ民法ト商法ト二ツテ解釋シナケンハナラン必要ノ爲メニハ商法テ解釋シ原吿ノ爲メニハ民法テ解釋スル一ノ受取書面カアレハ商法ト民法テ解釋シナケレハナラント思ヒマス
（鶴田）
二ニハナラント思ヒマス、其身分ニ付テ注意ヲスルコトハ身分ニ付イテ居ル
（本尾）
損害賠償ノ訴カアル商事上テハ難イ事テモ賠償シナケレハナラン、民事テハ證明ヲシナケレハナラン、其訴訟カ出タトキ一方ハ商事テ御在イマスカラ、私カ僅カニ不注意カアツテ民事上テハスルニ及ハン證明セラルヽ場合テナケレハナイト生レマシタトキ何レニ決シテ宜シイカ、裁判官カ困リマス、或ハ民法ト商法ト云フ限リヲ判然ト致シマセント實際差支カ起ラウト思ヒマス
（鶴田）
其身分ニ關スルコトハ非商人ニ當テルコトハ出來ナイ、併シ其レヲ粗末ニ取扱ヘハ重キ方ニ書テヽ差支ナイ
（本尾）
ソウ云フ場合テモ商法ニ當テルナレハ但ヲ削ツタト同シコトニナリマス
（松岡）
但書ハ「ロエスレル」ノ註解ヲ見テモ是レ丈ケヲ變ヘテモ此ニトモ違ツタコトハナイ
（鶴田）
「ロエスレル」ノ意ハ同シコトト思ヒマス今ノ說明ハ少シ違ツテ居ル
（南部）
先刻ノ御論ハ反對ノ場合ニ於テハ悉ク商法ヲ適用スルト云フ譯ハイケナイ、商法ト民法ト別々ニ別レタ事柄ノ上ニ於テ分ケル困難ノトキハ民法ニ從フノテハナイカ
（委員長）
一方ンミニ對シテ商ヒ取引タルトキハトアルカラ一方カ非商人ト云フコトカ分ル、一方カ非商人ノトキハ非商人ニモ適用スル、其場合ヲ云フノタカラ松岡サンノ解釋ハ違ウ
（松岡）
ソウテナイト思フ
（委員長）
鶴田サンノ論ハ「ロエスレル」ノ前ノ案ト同シニナツテ但ハ入ラナクナル
（松岡）
三人ノ義務者カアツテ、中ノ二人カ商人テ、一人カ非商人ノ場合ニ非商人ハ民法ニ從ヒ、一人ハ商法ニ從テ連帶ニナル
（南部）
一方ヲ貴君ハ一人ト御覽タカラ違ウ
（松岡）
二人ノトキモアル
（南部）
原被吿ノ當事者ノ間ノコトヲ云フノタカラ
（本尾）
松岡サンノ御說テハ三人アツテ二人カ商人テ一人カ非商人ノトキハ其契約ハ民法ニ因テ解釋セラルヽ非商人ハ商法ニ因テ判決セラルヽナレハ連帶無限テ各個ニ行ケル併シ民法テハ各個ニ行ケナイ、連帶テナクシテ訴訟ヲ起サナケレハナラント云フ結果カアリマス、ケレトモ是レ丈ケノ區別カ御在イマス、但書ヲ設ケテソウ云フ場合ハ民法ヲ以テ解釋スルト云フト民法ニ因テ各個ニ訴訟ヲ起シテ行カナケレハナラン、ソレテ一向差支ナイト思ヒマスノハ、ソウナツタカ爲メニ兩人ノ商人カ不利益ニナルカト云フト決シテ不利ニナラン却テ利益ニナル非商人ノ爲メニハ不利益カ利益カト云フト不利益ニモ利益ニモナラン
（松岡）
分ツタカ獨乙ノハ但書トハ意味カ違ウ何トナレハ三人カ一人ハ無カツタラトウスルカ、此時分ニ商人ニハカリ用イルカラ一人ハ民事ノ平分法ヲ受ケルカラ二人ハ商法ノ連帶ニナルモノヲ云フタト云ハント獨乙ト違ツテ來ル
（箕作）
三人カ商人ノトキハトウシマスカ
（本尾）
ソレハ本條テ無クシテ先キヲ取除ケヲスルカセンカト云フ處テ起ツテ來ル論ト思ヒマス先キニナツテ民法テ解釋サセ樣カ商法テ解釋サセ樣ト云フトキハ
（松岡）
今此處ヲコウ書イテ仕舞フウト雙方ニ當テルノテナイ、皆民法ニ當テルト云フト不都合カ起ル
（本尾）
此處テハ民法ニ當テルト云テ先キテ之ハ商法ニ當テルト云フ
（委員長）
三人ノ中一人カ非商人ノトキハ若シ此先キニ規定カアレハ民事ノ支配ヲ受ケルコトニナルト思フ
（松岡）
ソレハ具合カ惡ルイムカ非商人テアラウカ、商人テ御座イマス、ムカ這入ツタ爲メニ兩人カ引付ケラレテ民法ニ這入ルコトハナイ
（箕作）
雙方ヲ商法テ支配スルト云フコトヲ前テ云フタカラ此處ハ雙方ヲ民法テ縛ルカ一方ヲ縛ルカト云フコトサヘ分レハ其場合場合テ定メルカラ宜シイ、此場合テ商法テ縛ルトカ民法テ縛ルトカ云フコトハ定メンテモ宜シイ
（松岡）
ソンナラ案ハ宜シイ
（鶴田）
雙方ニハ出來ナイ一方ニハ出來ルト云フコトニ解釋スルナレハ宜シイ
（箕作）
二人トモ民法テ縛ルト云テモ一人民法テ縛ルト云テモソレハ其場合々々テ宜シイ、此處テ二人トモ民法テ縛ルト云フノハ定メンテモ宜シイト思フ、伊太利ノモソウテアルト思ヒマス
（委員長）
トウモソレテ宜シイト思フ
（淸岡）
今少シ書碎クコトハ出來マセンカ
（委員長）
此處ハ總則テスカラ此位テ宜シイ
（村田）
「但反對ノ場合ハ此限ニ在ラス」ト云テモ宜シイ位タ
（淸岡）
及ヒ此法律ノ規定ニ反スルカ此法律ヲ雙方ニ適用スルト云フ樣ニ書キ度イ、此旨意ハ前項ノ場合テハ雙方ニ適用スルカ商人ノ身分ニ關スルモノマテ雙方ニ適用スルト酷ニナルカラ非商人ニハ適用セント云フノタラウ
（委員長）
適用セント云フノハ適用スト云フ裏ヲ云フノテスカラ二人ハ適用スルト云フ裏ハ二人ニ適用スルモ一人ニ適用スルモアル
（鶴田）
ソウ讀メハコトハ讀メルカ、讀ミソコナウト大變タ
（委員長）
之テ宜シウ御座イマスカ、解釋ニ讓ツテ置クカ
（松岡）
宜シウ御座イマスカ
（淸岡）
意ヲ表スルト云フノハ六ケ敷イテハアリマセンカ、法律上意ヲ探ラナケレハナランカラ
（委員長）
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
（本尾）
其前二十條ハ十六條ノ次キヘ十七條トシテ這入リマス
（箕作）
今度ハ商號ニナリマス
（委員長）
三好サンモ居ルカラ商號ヲヤリマシヨウ
是レヨリ第二章商業登記簿ノ事ヲ議ス
（松岡）
商號ト云フモノハ重モニ商號ヲ保護スルトノ働キカアリマス連絡ヲセン方カ良クハアリマスマイカ
（箕作）
商號ヲ廢スレハ商人ノ氏名トカ何トカ云フモノヲ入レルコトニナリマス聯合ヲサセン樣ニシテモ商號ヲトウスルカト云フコトカ定マラン以上ハ商號ノ代ハリニ登記スルカ宜シイカ商號ヲ先キヘ定メナケレハナラン
（委員長）
十八條ニハ他ニ修正ハナイカ、是レ丈ケ先キヘヤリマシヨウ
（本尾）
未成年者ノ上ニ「後見人」ト云フ字カ這入リマス、次キニ當事者ノ下ニ「住所又ハ營業所ノ」ト這入リマス、其次キハ二項カ這入リマス、二項ヲ入レマシタノハ會社ノ方テハ若シモ住所又ハ營業所ヲ轉スルトキ登記公吿ヲシナケレハナラン、十八條ノ未成年者婚姻契約代務ナトハ登記ヲ受ケルノカ不明亮テ御在イマスカラ原案者ニ聞キマシタ處カ、二項ヘ入レルト云フコトテ御在イマス、前項ニ住所又ハ營業所ヲ他ノ地ニ移入シタトキ既ニ登記シタル事實カ尙ホ存スル場合ニ限リ移轉地ニ於テモ亦更ニ其登記ヲ受クヘシトナリマス
（松岡）
尙ホ存スルト云フノハ未成年ハ未タ幼年テ居ルト云フノテスカ
（本尾）
ソウテス
（松岡）
全體惡丁寧タ
（委員長）
「ロエスレル」ノ商號ニ付テノ意見書ヲ讀ンテ下サイ
「ロエスレル」氏商號意見書朗讀
ロエスレル氏商法意見書
第二章商業登記簿
登記ハ新聞紙上ノ揭載書狀等ニ由テ之ヲ補充スルヲ得ヘキヲ以テ是レ絕對的ニ必要ナルニハアラスト雖官府登記ノミ獨リ完全且永續ノ確實ヲ生スルモノナルニ由リ頗ル有益ナリ、又一營業ノ開始ハ或ル方法ヲ以テ之ヲ報吿セサルヘカラス、而シテ官府ノ報吿ハ最確最單ノ方法ナリトス
秩序ノ㸃ヨリシテ登記ハ何人カ商法ナルヤヲ詳細ニ知ルカ爲メ望マシキコトナリ、然ルニ佛國法ニテハ此㸃頗ル不確實ニシテ且商ヒ取引ニ付テノ職業上及ヒ慣習上ノ擧行ハ頗ル疑ハシキモノナリ、抑々商號ノ純正及ヒ確實ナルコトハ各商業ノ名義及ヒ信用ノ爲メ頗ル必要ナルヲ以テ商號ハ殆ント名譽事項ト看做サレ得ヘシ、爲替交通、信用付與、銀行交通ニ於テ商號ノ純正ナルコトハ實ニ必樞ナリトス
登錄ハ實ニ此ニ々タル事ニシテ敢テ繁難ヲ來スヘキモノニアラス且開業ノ際一度登錄ヲナシ變更アラサル限リハ之レカ爲メ敢テ時日ヲ費シ繁勞ヲ招クコトナクシテ商號ハ一生懸命スヘシ而シテ繁難ナル㸃何處ニアルヤ
他ノ商號ヲ用ヒサル限リハ商人ノ通俗氏名ヲ以テ商號トシテ登錄スヘシ、是レ少クトモ秩序ノ㸃ヨリ望マシキ事ナリ何トナレハ各營業ハ重ニ公然ナル事項ナレハナリ、又課稅、統計及ヒ商業帳簿ヲ作ルヘキ義務等ノ㸃ヨリ必要ナリトス
第三章商號
此章ノ規定ハ正整ナル各商人ノ商業慣習上自然ニ守ルヘキモノニ外ナラス故ニコトヲ包舍スルモノナレハ商法ニ於テ毫モ之ヲ揭載セスト雖トモ守ラサルヲ得サルナリ商號トハ取引上ノ氏名ト云フニ外ナラスシテ佛蘭西、白耳義其他ノ國々ニ於テハ之ヲ「メーソソ」ト唱フルナリ蓋シ商業上ニ其氏名ヲ用フルハ卽チ是レ一個ノ缺クヘカラサルコト孰レノ商人ト雖トモ之ヲ否認スルモノナカルヘシ左レハ法律ニ此規程ヲ設クルハ毫モ無要又ハ面倒ナルコトヲ强要スルニ非ス而シテ此成規ノ特ニ日本ニ必要ナリト信スル所以ハ他ニ非ス日本ニハ未タ確乎タル商業慣習ナク、又此問題ニ付テノ法理存セサレハナリ
一地ノ商號ハ互ニ同一ナル可ラスト云フ第二十六條ノ規程モ亦本來ハ言ヲ要セサルモノナリトス何トナレハ全ク同樣ノ氏名ヲ互ニ商號トシテ用ユルトキハ固ヨリ之カ區別ヲ立ツルコトハ能ハサレハナリ然レトモ其區別ハ容易ニ判然タルニ至ルヘシ此ノ如キ附加等ヲナスノ義務ハ固ヨリ常ニ後人ニ在リ而シテ此際ニ困難又ハ面倒ヲ生スルコトハ毫モ之アルヘシトハ覺ヘス
然レトモ終ニ日本ノタメ此區別ヲ立ルコトヲ望マストアルハ責メテ會社タケニハ此法ヲ用イテ可ナルヘシ卽チ一地ニ於ケル數會社ノ商號ハ同一タル可ラスト規定セラレタシ之ニ付テハ毫モ異論ナカルヘキ歟而シテ若シ單獨商人ニ付キ錯雜ヲ生スルトキハ其錯雜ハ之ヲ忍耐セサルヲ得ス其錯雜タル勿論私個ノ生活上ニモ時トシテ之ナキニハ非サレトモ商業上ニ於テハ不知人ト交通スルコト頻繁ニシテ例ヘハ不知人ノタメ爲替ノ引受ヲナシ又ハ之ニ信用ヲ與フル等ノコト甚タ多シトス故ニ其困難ヲ生スルノ恐ヲ絕ツニハ商號ヲ區別ヲ立ルハ終ニ亦肝要ナリ
他人ノ商號ヲ用フルノ權利商ヒ營業ノ移付及ヒ之ニ附着スル法律上ノ效果其他商業商號共引受契約ヲ有效ニ取結フコトニ關スル規定モ亦全ク缺ク可ラサルモノニシテ此等ノ場合ハ孰レノ國ニ於テモ生スルモノナレハ日本獨リ例外ニ在ルヲ得サルヘシ然ルニ若シ其規程ナキトキハ日本ノ判事ハ何ニ據リテ裁判ヲナスヘキ歟判事若シ右等ノ問題繁生スルニ當リテハ外國ノ法律書ニ據ラサルヲ得サルトセハ抑モ何ノ爲メニ商法ヲ設クルヤ等ノ用用ヲナスヘキ歟拙者ハ右等ノ規程ヲ削除スヘキ理由ヲ毫モ見出出スコト能ハサルナリ
（本尾）
詰リ「ロエスレル」カ之ヲ書キマシタノハ一應申シマセント分リマセン、委員長ノ命カ御在イマシテ若シモ三章ノ商號ト云フモノカ削除ニナツタ以上ハ第二章ニ揭ケテアル屋號ヲ登記サセル、屋號ヲ登記シナケレハナラント云フコトハ共ニ削ツテモ良イモノテアルカ縱令商號ノコトハ削ランテモ此方ハ存シテ置カナケレハナランモノテアルカ其㸃ヲ聞ケト云フ命ヲ受ケマシテ「ロエスレル」ニ申シマシタ處カ其意見ハ申上ケモシ樣カ、三章ヲ削除スルノハ分ラント云フ處カラ致シマシテ此方ノ議論モ話シ商エ會ノ意見モ話シマシタカ、中々不折合テアリマシテ何モ六ケ敷ク考ヘルコトハアルマイト思フ、商號ト云フモノヲトウ云フニ解シテ御出ニナルカ知レンカ、商賣ヲスルノニ何人テモ名前モ何モ無シテ商賣ヲスル筈ハナイ、伊勢屋ト云フカ、本尾屋ト云フカ、鶴ノ池ト云フカ何カアル、私ノ商號ト云フノハ商ヒヲスル時分ニ用イルモノヲ商號トスルノテ必ラス伊勢屋ト云フ別段ノモノヲ拵ヘテ其レヲ商號ニスルト云フノテハナイ、歐羅巴テハ其名ヲ屋號ト認メルノテアル、日本テモ屋號ヲ用インテ商賣ヲスル者ハアルマイ商號ヲ義務トシテ持タナケレハナラント云フコトニトレタケ六ケ敷イコトカアルカ、私ハ感シナイ、ソウシテ見レハ登記モ要用テアル、又委員會ノ御話シニ依レハ一地方ニ於テ同名ノ屋號ハナラント云フコトハ實際爲シ能ハンコトテアル、何トナレハ東京ノ如キハ伊勢屋カ大變アルテアラウ、尤モ同一テナラント云フノハ同程ノ營業上ニ於テ同一ノ屋號ハナラント云フノテアルカ其レテモ澤山アル、ソレ故ニ出來ント云フノテアルカ私ハ反對ト思フ、餘計アルカラ區別ヲ立テ置カンノ混スル、少ナケレハ區別ヲ立ル要用ハナイ、併シナカラ委員會ノ御話シニアリマスカラ其處ハ區別シテモ宜シイカ、既ニ同シ屋號テ同商賣ヲシテ居ル、其レ等ヲ以テ一時ニ區別ヲスルト難イト云フノハ至極尤モテ御在イマスカ、決シテ爲シ能ハント云フコトハナイ日サヘ費セハ公平ノ道ノ立ツコトカナイトハ云ヘン其レカ爲メニ本章ヲ削除スルハ解シ能ハン若シ其レカ爲メナレハ區別ヲサセンテモ宜シカラウカ、會社ハ區別サセナケレハナラン一個商人ハ要用テナイトシテモ宜シイカ、是レ迄日本テハ伊勢屋ト云フテ取除ケヲスルモノハ實際伊勢屋何兵衞ト書イテ又日本テハ名ノ下ヘ判ヲ押スカラソレテモ區別カ立ツト思フカラソレカ爲メニ商業會社ヲ攪亂スルナレハソレハ變ヘテモ宜シイ、併シ實ハ快クナイ、屋號ト云フモノハ是非ナケレハナラント云フノハ商法上ノ㸃カラハカリテナク經濟上カラ考ヘルノテアル、ト云フモノハ今日日本ノ有樣ヲ考マスルト實ニ經濟上ニ於テ憂ヲ悽ク事カ多イ、此有樣ハトウシテモ何時カ挽回セサルヲ得ンコトテアルト思フ、其レハ何ノ方法ニ因ルカトウシテモ農、工、商ノ三ツニ因テ日本ノ經濟ノ位置ヲ變ヘルヨリ外ニ仕方カナイ、農工商ヲ盛ンニスルニハ間接ニ各人ニ勉强ヲサセルノカ要用テアル、處カ今日ノ日本ノ有樣ハ少シ口ニ云ヒ惡クイ話シテアルカ、日本ノ商人ハ一人トシテ當テニナラン、又歐羅巴人ハ皆ソウ云フ商事上ニ於テ日本ノ商人ト取引ヲシテ儲ケノアルトキハかつかつ行ケルカ日本ノ商人ニ損失ノアルトキハ何處ヘカ蔭シテ名ハ變ヘテ仕舞ツテ居ル、詰リ其レカ爲メニ損失ヲ蒙ムルコトカ多イ、詰リ外國商人カ日本商人ヲ信シナイカラ商業上ニ幾分カ損害ヲ與ヘル尤モ登記ノ事ヲ以テ時弊ヲ挽回スルコトハ出來ンカ登記ヲ確實ニシテ置クノハ又經濟上ノ有樣ヲ挽回スル所ノ千一ニカ萬一ニ力ノ方法ニ過キナイ、トウシテモ行フヘカラサルモノテアル、竹槍席旗ニ至ルナラトウカ知ランカ私ノ考ヘテハ決シテ其レ程六ケ敷イコトテハアルマイト思ヒマスカラ三章ハ置カレンコトヲ冀望致シマス、勿論區別ヲスルノカ御望ミカナケレハ除ケテモ宜シイト云フコトヲ申シテ居リマス
（箕作）
「ボアソナード」ノ議論ハ御覽ニナリマシタラウ
（委員長）
ソレモ讀ンテ下サイ
「ボアソナード」氏ノ意見書略ス
（委員長）
三章ノ方カラ決シマシヨウ、三章ヲ「ロエスレル」ノ意見通リニスルカ報吿委員ノ通リ全ク削ツテ仕舞フカ
（松岡）
一般ノ商號ヲ保護スルノト會社丈ケニスルカト云フコトヲ先キヘ御決シニナツテハ如何テス
（委員長）
ソレヲ先キヘ決シマシヨウ「ロエスレル」ノ今度書イタノハ會社ノミト云フト下ノ者カ保護ヲ願ツテ來テモナランノタ
（本尾）
併シ二十六條ニ手ヲ入レマスカラ
（委員長）
ケレトモ商社ノタラウ
（本尾）
一個商人ニ適用シテ唯御互ヒニ區別シナケレハナラント云フコトカ無クナルノテ御在イマス二十六條ノ同一ナルコトヲ得スト云フノテ修正致シマシテ制限致シマシタ
（松岡）
報吿委員テハ第三章ヲ修正スル御意見ハアリマスカ
（本尾）
ソレハアリマセン以前カラ削除ニナツテ居リマス
（松岡）
孰レヲ活カシマスカ
（長谷川）
二十六條二十七條二十九條三十條ノ邊ヲ活カシテ、或ハ會社ニ入レ又ハ賣買若シクハ契約濟ノ方ヘ入レ樣ト思ヒマス
（委員長）
殘シテモ原案ノ旨意トハ旨意カ違ウノタ
（鶴田）
一般ノ商人ノ商號ヲ保護スルカシナイカト云フ決ヲ採テ見タラ良カラウ
（委員長）
元トノ原案ノ二十五條ニ右登記ニ因リ云々專有ノ權ヲ有ストハ二十六條ノ會社ノミニスルト云フコトハ「ロエスレル」ノ今度ノ主義ト變ツタモノト見テ議シテ貰ヒマシヨウ、元トノト云フト全ク以前ノ會議ニ戾ツテ仕舞フカラ「ロエスレル」ノ今度ノ意見ヲ採ルカ採ラン力ヲ議シテ貰ヒマシヨウ
（松岡）
「ロエスレル」ハ日本人ハ全ク「ヒルマ」ハ無クテ無茶苦茶ニヤツテ居ル樣ニ思テ居ルカ伊勢屋ト云フノテハヤランカ、伊勢屋八兵衞トカ太兵衞トカ金太郞トカ同シ屋號テモ名カアツテ區別ハシテ居ル、唯保護スルト登記カナイ
（本尾）
其㸃ハ話シマシタ、伊勢屋ト云フノモ何號ト云フノモアル、又ハ姓ト名トヲ取テ雁鍋トカ今金トカ云フ樣ニヤツテ居ルコトモアル、實際トウシテ居ルカト云フト表テハ雁鍋トカ今金トカ云フカ、其實雁屋鍋藏ト云フカ、今屋金何ト云フカテアルト話シマシタ處カ、其レテアル既ニ持テ居ルモノカアルカラ其レヲ法律テ認メルニ過キナイ、雁屋鍋藏今屋金兵衞ト云フノハ普通テナイカ、普通ノモアルタラウ、ソレハアリマス、鴻ノ池善右衞門ト云フ樣ナモノカアリマスト申シマシタ處カ唯私ノ案テ區別ヲ立テルト云フノカ御氣ニ入ランノタラウト云フコトテ御在イマス
（淸岡）
詰リ區別ヲ立テナケレハナラン
（南部）
區別ヲ立テンノハトウタラウ
（委員長）
其處ハ良ク御考ニナラント自分ノ家テ作ツタ代ヲ賣ルノテナイ、商業ヲスルノタカラ其者ハ裁判所ヘ名ヲ知ラセナケレハナラン
（南部）
商號ハ土地テ一所テナイ、尾張屋ハ尾張屋カ一軒アツテ尾張屋ト云フ商號ヲ得テ尾張屋ノ保護ヲ受ケルト云フノヲ一ツニ定メレハ其方ニナリマシヨウカ、一步讓テ商號ハ一町テ二ツアツテモ三ツアツテモ良イトナツテ商號ノ商號タル所以ヲ失ハント云フコトハアルマイト思ヒマス
（松岡）
其處丈ケハ會社テ有效タト云フノタラウ、日本人テ商號ト云フト屋號ト讀ムカ其レハ誤リタラウ「ヒルマ」ト云フノハ伊勢屋太郞兵衞トナルノテハナイカ、其レヲ我々カ前會議ニ諸君カ伊勢屋太郞兵衞ト解釋サレテアルカ、私ハ今迄伊勢屋ト云フノカ商號ト思テ居リマシタ、伊勢屋太郞兵衞ハ商號ト云フモノト少シ腹ヘ入リ樣カ違ツテ來ル
（南部）
ソレハ初メカラソウタ、伊勢屋太郞兵衞ハ何代シテモ伊勢屋太郞兵衞テナケレハイケナイ、息子ニナツテ太郞兵衞カ八兵衞ニナツテハイケナイ
（箕作）
松岡トカ澁澤トカ大倉トカ云フノカ本當テ、ソレカラ雁鍋トカ何トカ云フノカ出テ來ル
（松岡）
日本テハ平民ニ氏ハ無ク伊勢屋トカ大和屋トカ云フノテ五兵衞トカ八兵衞トカ太郞兵衞ト力ヲ付ケル
（箕作）
ソレハ前委員會テ區別ヲシテ論シタノテス
（三好）
前回ニ會社ノ屋號ハ無論保護スル積リテアリマシタカ
（南部）
會社ハ保護スル積リテアリマシタ
（三好）
會社ヲ保護シテ一個人ハ保護シナイト云フノハトウ云フ御旨意テスカ
（南部）
會社モ小サイノモアル、一個人ニ大キイノモアリマスカ、會社ハ大キイカラ會社丈ケノ條例ハ別ニ拵ヘテアルカラ會社ト常人ト違ウカラ會社ハ之ヲ保護スル
（三好）
會社ノ保護スヘキ必要カアルトスレハ會社ヨリヨリ多キ一個人ノ商人ヲ保護シナイノハトウ云フ理由テスカ
（南部）
ソレハアリマスケレトモ會社ハ別段ノモノニナツテ居リマスカラ
（三好）
法律上ノ保護ヲシテセラル丈ケノモノハ保護シテ宜シイテシヨウ
（南部）
保護スル必要ハナイ
（三好）
何セ必要カナイテシヨウ、信用カ第一テス
（南部）
商號カ出來テ、一地方ニシテハ出來ナイトカ或ハ別ノ營業ヲスレハ營業ノ商號ヲ外ニ作ラナケレハナラント云フコトヲ委シク定メテ制限スレハ、其レカ爲メニ幾許ノ信用カ增スカ、信用ハ平常ノ間ニ存スルノテ法律ヲ以テ縛テモ信用ハ出來ナイ、商號ヲ悉ク要セシメテ法律テ制限スルコトハ今日ノ商人ニハ不適當テ大變之カ爲メニ混雜ヲ生シ、大變之カ爲メニ手數ヲ增シ種々ノ混雜ヲ生シテ損失償ハンコトニナルタラウ、今日ノ商賣ノ實況ヲ見テモ商號ト云フモノヲ悉ク要セナケレハナラン處ニ進ンテモ居ラン、實益ノ方カラ商人ヲ奬勵シテ財產モ運轉スル樣ニナル、信用モ增スト云フコトノ方カラ奬勵シテ行クカ宜シイ、法律ヲ以テ束縛シテコウ云フコトニ至ラシムレハ苦情カアル、況ンヤ弊害カ種々出來テ來ル、ソウナツテ見レハ保護スル精神テ實際ニ適用スル益カ無クシテ其レ丈ケノ弊害カアツテ却テ商業ヲ束縛スル實ニ判呑ナモノタト云フ論旨テアリマス
（三好）
私ハ反對ノ考テアリマス、混雜スルカラ區別ヲスル混雜ヲ防ク旨意ト思ヒマス今日ノ屋號ヲ用イテ居ルノハ商賣上屋號ノ必要テアルト云フコトハ自然ノモノテアル、保護ハシテナイカ、頭ノ字ヲ取テ押切リ印判ヲシテ居ルノカ通例テアル、ソテ見レハ商號ハ必要缺ク可カラサルモノテアルト云フノハ認メラレテ居ル、ソレハ保護カ加ヘテナイ、其レヲ獨乙ノ如ク區別シテ商號ト云フモノニ保護ヲ加ヘタトキハ商賣上ノ信用カ益起ツテ來ル何トナレハ私カ聞ク處ノ說テハ「ロエスレル」ノ註釋トハ少シ違ウテスケレトモ屋號ハ其人ヲ表スルヨリモ寧ロ其事業ヲ表スル人ニ非スシテ其商ヒ其物ニ在ル、商ヒ其物カ信用ヲ得ル、人ハ幾ラ變ツテモ商ヒノ事業ハ前後貫イテ得ラルヽ其ウ云フモノテアルカラ之ヲ登記シテ法律上保護シテヤル、保護シテヤルカラ益事業カ因クナツテ行キマス、因イモノテアルト云フカラ其名ヲ廢シテハナラン誰カ讓ラレテモ誰カ引受ケテモ屋號ニ對シテ不信用ヲシテハナラント云フ精神カ益籠ツテ來ル、商業ヲ爲ス人カ斯ノ如ク務メテ行キマスカラ其業ヲシテ確實ナラシムルカ爲メニ世ノ中ノ人カ益其レヲ信スル、信スルカラ華主先キモ益廣マツテ行クト云フテコソ始メテ商業カ盛ンニナルト云フコトニ聞イテ居ル、「ロエスレル」ト兩方ニ云ツテ居ル
（南部）
身分ノ上カラ信用ヲ付ケテ論スレハソウ云フモノテモ御在イマシヨウカ、併シナカラ商業ト云フモノヲ保護シテ保護ハトレ丈ケカト云フト此處ニ書イテアル丈ケテ其レカ爲メニ俄カニ信用カ出來テ商人カ厚クナルカ、望ムヘカラサルコトテアル、商業カ盛ンテ商業ノ信用ヲ置ク方ニ傾イテ居ル處ハ格別テ御座イマスカ、日本ニ行ハレテ居ル商業ハ信用ノアル者ハ信用カアル、信用ノナイモノハ信用ナクシテ往ツテ居ル信用ノナイモノカ信用アルモノニハナラン
（三好）
併シナカラ今日家名ヲ損スト云フコトハ名譽上重ンスル處テアル、人ヨリモ寧ロ家名ト云フコトヲ云フノテ御座イマス、家名ヲ損サソト云フカ爲メ二人カ務メル、ソレテ或ル人ノ說テハ卽チ此屋號ハ官府テ云フ官省ノ名前テアル、其家ニ在テ事ヲ執ル人ハ卽チ商人テアル、屋號ハ卽チ官省其名前テアル、人ハ役人ヲ信スルニ非スシテ役所ノ名ヲ信スルノテアル、役所ノ名ハ大變重イモノテアル、其レテ商人カ商賣ヲ爲ス商業ノ上ニ付テハ必要缺ク可カラサルモノテアル、缺ク可カラサルモノテアル法律上出來ル丈ケ保護シテ其名カ世ノ中ニ步イテ行クコトカ出來テ商業カ秩然トシテ秩序ヲ立テ相侵スコトナク相悖ラスシテ商賣ノ運傳ヲ爲シ隨テ一個人ノ經濟モ其所ヲ得テ行ク樣ニナル、ソレテ何處迄モ之ヲ保護シナケレハナラン之ヲ混雜シテ居ルノハ矢張リ混沌タルモノノ區別ノ分ラン處テアル、世ノ中ノ事ヲ分折シテ分課分業ヲ爲スノ順序カラ云フテモ物ハ明カニシテナケレハナラン出來ル丈ケノ區別シナケレハナラン、其レテ始メテ此好結果カ得ラルヽノテアルト云フノハ商號ヲ主張スル人ノ論テアルト聞イテ居リマス、今日日本ノ商賣ノ活撥ナラント云フノハ實際ニ勤勉サヘスレハ行ケル、實際ニスルニハ手段カナケレハナラン唯商賣ヲ勉强セヨ勉强セヨト云テ勸メテモ行ケルモノテナイ、左スレハ及フ丈ケノ保護ハ法律ヲ以テ政府カ與ヘテ人ノ務メル丈ケノ光リヲ世ニ現ハスコトカ出來ル樣ニ保護シテヤツテ始メテ人ニ務メタ甲斐カアツテ立チ所ニ結果ヲ見ルコトカ出來ル樣ニナル、ソレヲ混雜スルト云フノハ大變分ランコトテ、混雜シテ居ルカラ混雜セン樣ニ分ケテヤルノテ、報吿委員カラ論シテ居ラルヽ樣ニ今日マテノモノヲ順次ニ登記スルニ初メノトキハ混雜スル、其レハ登記役所カ混雜スルノテ人ハ混雜シナイ、人カ混雜スルノヲ防クノテアル、官吏ノ煩卽勞云フヘカラサルコトテアルカ、ソレハ一時ノコトテソレカラ後ハ煩雜セン、商人カ窮阨スルト云フ成程一時ハ窮阨スルカ知レンカ其レハ一時ノコトテアル、攪亂スルト云フカ之ハ攪亂ヲ防クノテアル「ロエスレル」ハ一步ヲ讓ツテ仕方カナケレハ會社丈ケニスルト云フカ「ロエスレル」ノ本意ヲ探ツテ見レハ結末ニ往ツテ實ニ分ラン、併シ餘義ナイ次第テアルカラ必ラスヤ會社丈ケハ取留メナケレハナラント云フテアルカラ是レハ多數耐敞シ難シト思ツテ「ロエスレル」モ讓ツタノテアルカ私ハ委員ノ一人トシテ飽ク迄モ「ロエスレル」ノ本意ヲ贊成シテ三章ノ全ク採用アランコトヲ冀望致シマス
（箕作）
今迄ナイコトヲシテ商人カ迷惑スルニモ拘ハラス思ヒ切ツテヤラカシテ屋號ヲ保護スレハトレ丈ケ利益カアルカト云フコトカ分ランノテス、既ニ專賣特許商標條例モアル、ソレヘ持テ往ツテ伊勢屋太郞兵衞ト云フノカアル、其レヲ保護シテ他ノ者ハ伊勢屋太郞兵衞トナルコトハナラント云テ伊勢屋太郞兵衞ハトレ丈ケ御蔭ヲ蒙ムルカ一切分ラン
（三好）
二十年前ノ日本ト二十年後ノ日本トハトレ丈ケノ區別カアリマスカ商標條例ノ出ルトキモ、出ルトキハ大變議論カアルタ、專賣免許モ大變議論カアツタカ今日ニ至ツテ絕ヘテ議論カナイ、物ハ混沌タル世ノ中カラ段々山ハ山、川ハ川ト區別カ立テ行クノカ開化ノ順序テ、自然ノ區別テアル、今迄濟ンタモノヲ新タニスルニ及ハント云フハ極端ニ論スレハ歐羅巴ノ法律ヲ輸入シテ法律上區別ヲ立ルノモ餘計ナコトタト云ハナケレハナラン、今迄サヘ濟ンテ來タテハナイカト云ハナクテハナラン樣ニナル
（箕作）
ソレテハ民法モ商法モ丸テ止シニシナケレハナラン樣ニナルカ、何モ箇モ全ク騷カシテ商業帳簿丈ケハ制限シテモ益カアルト思テ委員モ報吿委員モ廢案說ハ一モナイカ、屋號ハ違ウカラ廢案說カ起ルノテス
（三好）
ケレトモ商業帳簿ニシタ處カ、是レテモ今テハ簿記法テヤレト云フコトハ云ハンカ、是レモ簿記法テヤレト云フコトヲ云ハナケレハナラン樣ニナルタラウト思フ、シテ見レハ
（箕作）
簿記法ノコトニ付テ此中ニ簿記法ト云フコトハナイカ此儘テ商業帳簿カ明白ニナレハ簿記法ニ依テヤレト云フコトヲ云ハンテモ明白ニ付ケテ置ケト云ヘハ滿足スルカラ商號ヲ保護シナケレハナラント云フトキニ設ケテモ遲クハアルマイト思ヒマス
（三好）
混雜ト云フノハスルテアラウト云フノタカラ今ノ御說カアリマスカ、同一ノ地方ト云フノハ「ロエスレル」モトレ丈ケト云フコトハナイト思ヒマス、此處モ考ヘナケレハナラン、屋號カ一般ニ及ンテ行クナレハ混雜モ甚シイテシヨウ、併シナカラ同一ノ地方ト云フコトニ付イテ同一ノ屋號ハナラシト云フノタカラ其區域カ誠ニ狹イ、全國カ顚倒シテ治安ニ關係スル樣ナコトハ決シテナイト思フ、其場所々々ニ限ルト思フ
（長谷川）
「ロエスレル」カ一地方ト云フノハ東京ハ十五區、西京ハ上京下京、卽チ東京テ云フ朱引キトカ隨分大キナコトテ御在イマスカラ隨分大キナ混雜テアラウト思ヒマス、ソレカラ御說中ニ削除說ヲ持出シタモノハ開化ノ「アテリヤル」ヲ輸入スルヲ好マン樣テ御在イマスカ、果シテ此商號カ開化ノ「マテリヤル」テ御在イマシヨウカ、獨乙ニハアリマスカ英國ト云ヒ、佛蘭西ト云ヒ、亞米利加ト云ヒ商業ハ獨乙ヨリ盛ンテアリマスカ、商號ハ御在イマセン、之カ開化ノ「マテリヤル」ト云フノナレハ、何セ英國ヤ佛蘭西ニ用イナイノテ御座イマシヨウカ、
（松岡）
十八條ノ未成年者婚姻契約會社ト云フ、會社ノコトハ會社ノ所ニ往ツテ會社ハ營業ノ種類、資本金額、人ノ名ハ申ス迄モナク、然ル二十八條テ商號ヲ除ケテ未成年者婚姻契約ハトウ云フコトヲ書クテアリマスカ、何商賣ヲ何處其處テト云フコトヲ書カンテ幼年者カ商賣ヲ致シマスト云フコト丈ケヲ書クノテ御座イマスカ
（本尾）
其處迄ハ本條テハ分リマセン、併シナカラ商號ト云フ字ハ十八條ニ在リマストシテ見マシタ折ニハ
（松岡）
鳥渡御待チ下サイ、商號ハ前ノ委員會テ未定テアリマスカラ其儘削ルカ知レン、未丁年者婚姻ハトウ云フ登記ヲサセルト云フ決定テアリマスカ
（本尾）
此議場テハソウ云フ議論ハアリマセンカ、何某ト云フ獨立シテ義務ヲ負フコトハ出來ンモノカアルカラ後見人某カ義務ヲ負ウト云フコトヲ登記シナケレハナラン、又何某タル者ハ十八歲ノ未成年テ營業ヲスルト云フコトヲ登記スルテ御座イマシヨウ、其事柄ノミヲ登記スルニ過キナイト考ヘマス
（松岡）
近頃ハ氏ト云フモノカアリマスカ、登記ト云フトキハ人遍トカ井筒トカ云フコトヲ云ハスニ松岡八兵衞ト云フ未成年者テ御在ルト云フ屆ヲシマスカ家名カ松岡八兵衞テ大和屋テ御座イマスト云フモ屆ケマスカ
（本尾）
ソレハ御座イマセン商號ヲ削レハ本名ヲ書クコトニナラナケレハナリマセン
（松岡）
俳優ハ國十郞ト云フケレトモ其實ハ掘越何ト云フトキハ私ハ掘越某テ俳優ヲ致シマスト云フノテ國十郞ト云フコトハ云ハンノカ
（本尾）
左樣テス
（松岡）
同一ノ營業ニ伊勢屋八兵衞ハ東京ニ二十人モ三十人モアルト云フトトウタラウ
（本尾）
ソレハアリマスマイ
（三好）
隨分極㸃ノ氷水屋燒芋屋ナトヲ御論シニナツテ居ルカ、之ハ何年以上ノ取得稅ヲ納ムルモノト云フ如キ
（松岡）
ソレハ今日ハ出サンコトタ、私ノ考ヲ申スト第三章テ必ラス同一地內テ同名テ同商賣テ云々云フモノヲサセナイト云フ保護スル要用カ不要用カト云フコトヲ此中ノ一ノ問題ト見マシテ、其レ丈ケノ要カアルカナイカハ斷定シ兼ネマス、詰リ煩雜ニナル、何ニナルト云フノモ十八條カ元トニシナケレハナラン、十八條ハ商號ト云フニ字ヲ削ツテ未成年者婚姻代務ト云フコトヲ必ラスサセルト云フニ前回テナツタ決議ノ旨意ハ了解シ兼ネル、抑モ商賣スル人間ノ身元ヲ確カメルカ要用ナレハ總體ヲ云ハナケレハナラン、總體ヲ云ハスニ未成年者婚姻契約代務人ノ登記ヲスルト云フノハ之ヲ捨テ末ヲ取タモノニナリヤセンカ、詰リ未成年者カ登記シテ置カント不安心タ、何トナレハ未成年者ヲロ實トシテ契約ヲ取消ニ來ルト云フノテ御座イマシヨウケレトモ畢竟一般ノ商業ヲ盛ンニスルニハ何商賣ヲスルノハ何屋ノ何兵衞ト云フコトヲ確カメルノハ誠ニ必要タ、其レカ法律ニナレハ其末ヲ擧ケテ來ルノハ惜シイコトニハ小サイコトニ外ナラン「ボアソナード」モ云フ通リ主タル商人ハ裁判所ニ登記スルモノト云フコトカ定マレハ三章テ同一ノモノヲ禁スル禁センハ問ノモノニナラウト思フ、詰リ私ハ十八條ニ一般ノ商人ハ登記ヲサセヘキモノ、登記ヲサセルニハ伊勢屋八兵衞私ハ絹ノ商ヒヲシマス、今一ツ委シクシテ人遍ヲ用イマス、井桁ヲ用イマスト云フコトハ登記サセテ置イテ宜ロシイ
（委員長）
ソレハ商標條例ニ在リマス
（松岡）
吳服テ伊勢屋何兵衞ト云フ類ヒノモノハ總テノ商人ハ登記スヘキモノタ隨テ未成年モ登記スル、商業スルモノハ何々シナケレハナラント云フノハ揭ケンテモ商業ノ種類ハ明了ニ分ツテ居ル、下ヘ書キマスカラ未成年者婚姻契約ト置イタノテアリマシヨウカ、登記ノ旨意ハ何商賣ヲ何某カ何ト云フ名前テシテ居ルト云フコトヲ確メルカ必要テアル、私モ其レハ必要ト思フ、ソウスレハ三章ニ來テ同一ノモノヲ防クカ防カンカカ問題ニナリマスケレトモ三章ヲ削リ單ニ二十七條タノ九條三十條ト云フ樣ナモノハ入用ト云フコトハ認メラレテ居ル、ソレモ十八條ヘ今ノ商號ト書イテアル、彼ノ登記ノコトカ不要トナレハ後ニ來テモ本末カ連結シナイ、十八條ノ登記カ必要ナレハ私ノ考ハ唯一地々々ノモノヲ行クノタ、守田治兵衞ト云フ寶丹ヲ賣ルコトヲ禁スルカ禁シナイカカト云フコト丈ケニナツテ來マシヨウ、混雜不混雜ハ一時ノコトテ其レヲ正シクスルト取引ヲスル上ノ㸃ヨリ固クナル、世ノ中ヲ詒欺テ渡ルノモナクナル、其一例ヲ擧ケレハ先年神戶ノ問屋ト申シテ立派ナ家ヲ借リテ諸國ノ荷物ヲ引込ンタ其實裸體ノ奴カ旦那ニナツタリ手代ニナツタリシテ田舍ノ船ヲ引込ンテ荷物ヲ賣リコシテ夜逃ケヲシタリ、訴ヘレハ身代限リヲスルソウ云フモノモ何屋何兵衞ト云フコトヲ明記スレハ防クコトカ出來マス、尤モ悉ク防クト云フコトハアリマセンカ幾分カ不正ノ者ヲ押ヘルコトモアリマシヨウ、先ツ三章ト二章ト切ツテ見度ク御座イマスケレトモ十八條ノ所カ定マリマスルト此後ノ所モ問題カ一ツ殘ルカ殘ランコトニナリマスカラ
（委員長）
十八條ニ付イテ二十四條モ三章モ削ラウト云フノテアリマスカラ併シ三章ノ制裁カ其處ニ至ラナケレハ商號ヲ受ケレハ登記スルコトニナリマスカラ氏名ヲ登記スルモ商號ヲ登記スルモ格別變ツタコトハアリマセン、其氏名ヲ登記スレハ何屋何兵衞ヲ登記スルノモ差支ナイカラ其處ヲ先キヘ決シタラ良カラウト思フ
（松岡）
商號ハ後ニシテ登記ハ必要テアルカナイカト云フ處テ商號カ必要テアル、商人ノ氏名ヲ登記スルカ伊太利西班牙葡萄牙瑞士白耳憂又字ノ讀メソモノモ一ケ所御座イマス
（委員長）
皆サンノ御讀モ前ノ御讀モアリ今度モ御說カアツテ大槪御盡ニナツテ居リマシヨウカ、十八條ノ商號ト云フモノ卽チ商人ノ氏名屋號ヲ書クカ書カンカト云フコトヲ決シマシヨウ
（淸岡）
松岡サンノ論ハ十八條ノ範圍ヲ廣ケテ總テ商人ノ身分ニ付イテ登記ヲ要スルコトヲ決シヨウト云フノタ
（松岡）
商號ト云フ字ハ早ク云ヘハ商人ノ氏名
（尾崎）
假令ハ屋號ノコトニ於テ保護ヲ與ヘルコトニシテモ日本ノ商人カ或ハ松岡某テ取引ヲスルモノテナシ屋號ヲ爲スモノテアルカラ登記サセル場合ニ屋號ハ登記サセテ宜シイ
（松岡）
私ノ申シマシタノハ私カ今日官ヲ罷メテ吳服屋書物屋ヲ始メル書物屋ナレハ松岡太郞兵衞テ御在ルニ是レカラ兎屋太郞兵衞ト唱ヘテ書物ノ商賣ヲ始メルト云フコトヲ商賣ヲスル奴ハ是非サセルト云フノテ御座イマス
（尾崎）
ソレハ其レテ宜シウ御座イマシヨウ唯ノ氏名ト屋號ト兩方屆ケサセテ宜シイ
（渡）
第二章ヲ削ルノ後ニ於テ商號ト云フコトハ日本ノ所謂屋號トカ氏名トカ云フコトニシテ初メテ見テ居タ、ソレテ之カ有要ナコトハ論ヲ俟タン、若シ之ヲ削レハ未成年婚姻契約ハカリニナルト云フ議論タカ此處ヲ削ルトキモ商人ノ家名ハ登記サセント云フ論テハナカツタ此處ハ未定テアツテ、商號ハ此樣ナモノテアル一地方テ同一ノモノハ禁スル、是レテハ日本ノ家號家名氏名ト云フコトテハナイ、屋號ト云フノハ歐米各國ノ商法ノ盛ンナル國々ノ原況ヲ見ル、旦慣ノ有樣ヲ見樣ト云フタ處カ、甲ノ國ニ在テ乙ノ國ニ無イカラ幾ラ外國ニ殖ヘテモ日本ニ適用スル可否得失ヲ考ヘナケレハナラン、此處テ未定ナルハ商號ノ文字テアツテ氏名ヲ登錄シナケレハナラント云フノハ要々テナイト云テ商號ヲ削ルト云フノテハナイ
（南部）
私ハ大變違ウ、ソウ御覽アルト初メニ商號ヲ分析シタ論カナクナツテ仕舞フ、何トナレハ商號ヲ保護スルコトニ付テハ大變ナ混雜ヲスルト云フノカ一ツノ削ル理由ニナツテ居ル、混雜ヲ生スルノハ一地內ニ於テ同一ナルコトヲ得スト云フコトテ、ソウ云フ譯テアリマスカラ一地內テ二ツノ商號カアルト云フコトハ惡ルイト云フノハ大變ナ混雜ヲ來ス又小サイ商賣人モアル、之ヲ悉ク登記サセルコトニナレハ大變混雜ヲ生スルト云フ理由テ削除ニナツタ譯テ、商號カ削除ニナツタカラ若シ登記ハ氏名ヲ登記スルト云ヘハ氏名ヨリ屋號カ宜シイ、何トナレハ氏名ハ時々變ルカラ之ヲ登記スレハ益煩雜ニナル、ソレヨリ商號ヲ登記サセタ方カ宜シイ、其旨意カラ考ヘレハ私ノ服中テハ十八條ニ於テ商號ヲ削タノハ何ノ爲メニ削ツタカ登記簿ノ中ノ十八條ヲ削ツタノハ商號ヲ登記サセント云フノテ併シ登記ヨリ管係ノモノナレハ宜シイカ、氏名ナレハ商號ヨリ屢々變ルカラもつと混雜スルモノト云ハサルヲ得ン
（渡）
私カ變シタノハ前回ノ決議ハ云々トハ述ヘマセン、私モコウ云フ考テ十八條テ商號ト云フコトヲ留保ニナツテ居ルノハコウ云フ理由テ留保ニ同意シテ居ルト云フノテ貴君ノ御服中迄ヲ想像テ云ツタノテハアリマセン、次キニ御誤解テハナイカト思フノハ私ハ最初商號ハ家名ト讀ンタ處カ三章ハ日本ノ家名トハ違ウ性質テ獨乙西班牙ニ存シテ他ノ國ニナイト云フコトヲ聞イテ始メテ商號ハコウ云フモノト云フコトカ分リマシタ、十八條ノ登記スルト云フコトハ私ハ要用ト思テ居ルノテ御座イマス、三章ニ商號ノ性質カ書イテアルカラ此性質ヲ日本ニ當テルノハ如何テアラウカト思フ、其處カ少シ違ツテ居リマスカラ、前回ノ決議ヲ代言スルノテナイ、私ノ意見ヲ述ルノテ御座イマス
（鶴田）
私ハ「ボアソナード」ノ說ニ從ヒ度イ
（尾崎）
登記ハ望ミニ任セテ宜シイト思ヒマス
（淸岡）
私ハ强テ煩雜ニ至ランモノテアレハ控ヘテ置イテ宜シイ併シソレニ付テ實際不都合カアレハ又考ヘナケレハナリマセン、商人ノ名簿ヲ拵ヘル丈ケハ置イタ方カ宜シイ
（委員長）
ソウスルト氏名ト書クモ商號トスルモ同シタカラ
（村田）
十八條限リモ削ル積リテス登記シナイモノハ罰則ヲ設ケナケレハナラン登記シタ上ニハ
（松岡）
罰ノコトハ後ニシ樣
（村田）
ケレトモ罰ヲ加ヘナケレハナラン是モ必要ト思フ、今日今迄大人シクシテ居ルモノヲハ保護スルト云フコトニスレハ人民カ大人シクシテ居ルノヲ騷キ立ル樣ナモノテ却テ商業ノ進步テナクシテ退却スルモノト思フ、登記ヲスル位ナレハ商號モ保護シテヤラナケレハ一向效カナイト思フ
（南部）
私ハ商號ハ煩雜モアリ且一ト騷動起スカラ商號ヲ保護シテヤルト云フ譯ニハ及フマイ、ソウシテ見レハ商號ハ登記スル必要カナイ、然ラハ氏名ヲ登記スル必要カアルカト云フニ氏名ハ尙ホ必要カナイ、若シ氏名ヲ登記スルト云ヘハ氏名ヨリ商號カ宜シイ、商號ヲ置クカト云ヘハ無クテ宜シイ
（委員長）
裁判所ヘ出テ來タトキ私ハ商人テ御在ルト云ヘハ商人ト認メルカ
（南部）
ソウテス、ソレハ商號カアリマスカラ
（委員長）
盡マテハ農テアツタカ午後ハ商テアルト云ツテモ仕方カナイ
（南部）
ソレハ工業テモ同シコト
（委員長）
商人タルヲ認ムル樣ナ法律カ立テハ工業テモソウテアリマシヨウカ、商人ト云フモノヲ認メテ置カント、農カ自分テ作ツタモノヲ賣ルノト商人ト區別カ六ケ敷イト思フ
（南部）
同シ商人テモ商ヒ取引ヲスレハ同シコトテス、ソレハ商業帳簿テ制限シマス、又今日一向苦シミマセン、戶籍ニ職業カ載テ居リマスカラ一向差支ヘマセン
（委員長）
戶籍ニ載テ居テモ雜業ト云フモノカ多ク商ニ在テ明日農ニナルカラ、其レハ判斷カ出來ナイ
（南部）
以外ノ事テ御座イマス雜業ハ商業テナイ取引ヲシテ居ルモノテナケレハ商人トハ云ハンテシヨウ
（委員長）
商業ト云フモノハ帳簿ヲ拵ヘ自分ノ小遣錢ト區別ヲスル
（南部）
雜業ヲ商人ト認メテアルト御量定ニナツテハ間違ツテ居リマス
（委員長）
戶籍ニハ農トカエトカ商トカアツテ其中ニ雜業ト云フモノカアル、其レハ何ト判斷シマスカ
（南部）
ソレハ商人テナイト判斷シマス
（箕作）
私ハ南部サント同覩テス、唯違ウノハ南部サンノハ姓名ヲ屆ケル位ナラ商號ヲ屆ケルカ宜シイト云フカ、私ハ商號モ姓名モ屆ケルニ及ハント云フノテ御座イマス、私ハ戶籍ノコトモ申シマセン、頓ト構ハン唯今日ヤツタ所ノ取引ノ性質テヤリサヘスレハ嘘ヲ吐ク奴モアリマシヨウカ、其レヲ一々屆ケサセテ背ク者ハ罰金ヲ取ルト云フノハ束縛ニ當テ宜シクナイ
（委員長）
商人ト云ハウカ、何ト云ハウカ向ウノ云フニ任スト云フノテスカ
（箕作）
ソウテス商人籍ヲ拵テ屆ケナケレハ罰スルト云フノハ重箱ノ隅ヲ楊枝テホシクル樣ニ奇麗ニ見ヘマスカ、其レハ束縛スルノテ宜シクナイ
（委員長）
餘程極㸃ノ議論タ、併シソウ云フ論ニシテモ貴君方ノ論ハ三人タカラ仕方カナイ
第二章ハ存スルコトニ決ス
（尾崎）
三章ノ商號ノ處ハトウナリマスカ
（委員長）
アレハ未タ議シマセン
（箕作）
二章ニ未タ大分修正カ御在イマス
（本尾）
十九條テハ「官報及ヒ」ノ四字ヲ削リマス次キニ「定メ置クモノトス」ノ「モノトス」ノ四字ヲ削リマス、次キニ「騰寫料」ヲ「手數料」ト換ヘマス
（委員長）
ソレカラ此條ニ意見カアレハ御述ヘ下サイ
（松岡）
登記ハ必要ト致シマシテ、ソウシテ一般ノ商人ハ登記ヲサセテモ登記ヲ悉ク新聞ニ廣吿スル丈ケハ格別要ハアルマイト思ヒマス、會社トカ何トカ云フモノハ却テ義務トシテ自分ニ望ムコトトシテ尋常ノ商人ハ登記ノミテ新聞ノ廣吿ハ止メヨウト思ヒマス
（淸岡）
至極良カラウ
（鶴田）
其レカ宜シイ
（尾崎）
ソレテ宜シイ
（箕作）
其レカ多數テ決シマスト十九條ハ會社ノ處ヘ入レナケレハナリマセン
（本尾）
併シナカラ「又各人ニ」ト云フ以下ハ存シテ置カナケレハナリマセン
（松岡）
ソレ丈ケハ置キ度イ
（三好）
廣吿シナイト人カ知リヤセン
（松岡）
今ノ登記スル者ト雖モ不動產ノ登記ナトモ廣吿シナイ
（三好）
不動產ノトキハシナイテ宜シイカ、大勢ノ人ニ知ラセルノタカラ
（松岡）
出來レハ廣吿シテ宜シイカ、商賣ハ大キイノモアリ小サイノモアル
（三好）
第一錢カ取レナイ
（松岡）
貴君ハ新聞屋ノロ錢ヲ刎ネ樣ト云フ考カ
（三好）
人間カ出來テ人一人テスモノテナケレハイカント云フコトハ出來ナイ、矢張リ一入置カナケレハナラン、新聞紙ヲ貴君カ賴ンテモ裁判所ニ云フニハ及ハン
（箕作）
錢ノコトハ御同意ハ出來マセンカ貴君ノハ商號ヲ置クコトニナツタラ非商人ヲ新聞ニ出スノハ惡ルイト云フカ、未成年トカ婚姻契約代務ナトモ廣吿シナイト婦ノ共通財產カトウナツテ居ルカ未成年者ハ親ノ許シテ出來ルカ出來ンカ少シモ分ラン
（松岡）
靑二歲テ取引シ樣トスレハ人カ信用セン、ソレハ自ラ廣吿スルカ宜シイ
（三好）
其レハ會社テモ同シコトタ
（委員長）
自ラシタモノテハ人カ信用センカラ公ノ力ヲ借リルノタ
（長谷川）
登記ノ效用ハ二十二條テ御在イマシテ「登記シタル事項ハ公ニシテ且裁判所ノ認諾シタルモノトス何人ト雖モ己ノ過失ニアラサルヲ證明シ得ルニ非サレハ之ヲ知ラサルヲ以テ己レヲ保護スルコトヲ得ス」トアリマスカラ孰レ廣吿ハ致シマセント困リマス
（委員長）
手數料ノコトハ役ニ立タンカ之ハ自分ノ田ヘ水ヲ引ク譯ハナイカラソウ思テ下サイ
（渡）
原案テ宜シイ
（南部）
登記スル以上ハ之ハ置クカ宜シイ
（尾崎）
小民ニ至ル迄廣吿料ヲ出スト困リマスカラ
（委員長）
私ト雖モ芋屋豆腐屋迄セストモ宜シイト思ヒマスカラ、唯シ度イト思フ者ハシテモ宜シイ
（三好）
裁判所ヘヤツテ吳レト云テ來ル奴ハシテヤルトシテハ如何テス
（鶴田）
ソレナラ至極宜シイ
（南部）
廣吿シテモシナイテモ同シコトトナレハ誰モスル者ハナイカラ寧ロ削ツタ方カ宜シイ
（淸岡）
此精神ハ求メテ來タ者ニシテヤルノテシヨウ
（松岡）
何モ箇モ全イ物ヲ得ヨウトスルト出來ナイ先ツ登記テ締リカ付イテ愈新聞テ廣吿シナケレハナラント云フト獨乙風ニ官報テ迄廣吿シナケレハナラン樣ニナル、其必要カ起レハシテモ宜シイカ、此處テ廣吿料ヲ取ルト云フト世間カ八釜シイ
（渡）
氏名ヲ登記スルニ及ハント云フ議論ナレハ宜シイカ十八條テ是非登記シナケレハナラント云テ居リナカラ確乎タル手續ヲ以テ示サナケレハ頭マカ固クシテ尻カナイ
（松岡）
餘リ貴君ハ全イ事ヲ責メラルヽカ、登記ハ一體ニシテ其人ト取引シ樣ト云フ人カ屋號ヲ讓ルトカ何トカ云フトキハ相手方カ縱覽スル所ヘ見ニ行ク、又登記簿ヲ見テ來ナイテ良シト信スルハ登記簿ヲ見テ來タモノト法律カ看做ス、登記シタノハ廣吿シナケレハ效カナイト云フコトハアリマセン
（本尾）
成程御論ヲ伺ツテ見ルト氣ノ毒千萬テ御在イマス、ソンナラ丸テ登記ハシナイ是非廣吿ヲスルコトニスルト云フコトニナリマス、會社ハ大キナモノト云フノハ想像テ實際會社ヨリ大キイ一個人カアルカ知レマセン、會社テサヘアレハ小サイモノテモスルト云フコトハナイ一個人テモ大キイモノカアリマス、私ノ考テハ廣吿ハ法律通リニスヘキモノテアル、一カラ十マテスヘキモノテアル、併シ實際芋屋豆腐屋ハ望ミニ因ヲシテヤルト云ヘハ仲裁ニナルト思ヒマス、其方法ハ必ラス御在イマシヨウト思ヒマス施行條例ニ於テ或ハ幾許如何ナルモノヲ納メルモノハト云フコトニ制限シタラ宜シウ御在イマシヨウ
（南部）
取得稅ハイカン
（本尾）
取得稅ハ御座イマセン、營業稅テ御座イマス
（淸岡）
原案テ宜シイ
（松岡）
第一ノモノヲ取レハ跡ハ考ヘナイト良クナイ
（三好）
皆同意タ
（南部）
ヤル以上ハ何處迄モヤルカ宜シイ
（尾崎）
今日ハ荒物屋明日ハ八百屋ナトヲスル商人ニ廣吿ヲヤラセテ溜ルモノカ
（渡）
シテモ良イテハナイカ、既ニ登記ヲスルトシテ其レヲ知ランテモ良イト云フコトハナイ
（松岡）
物ハ極端マテ行クニハ及ハン
（尾崎）
之ヲ自分ニ廣吿スルト云ヘハ我輩ハ十八條ニ戾ツテ商號モ削ラナケレハナラン
（松岡）
更ニ云ヒ直シマスカ、「又各人」カラ上ヲ削除シマス
（鶴田）
其方カ宜シイ
（委員長）
商標ハ官報ヘ廣吿シマス、登記簿ヘ同シ名ヲ「イロハ」テ書イテ置イテモ山田顯義ト云フ奴カ幾ツモアツテハシ樣カナイカラ
（松岡）
登記ハ廣吿シマセンテモ宜シウ御座イマス、
（委員長）
ソレハナラント云フノハ隣リニモ山田顯義其隣リニモ山田カ居ルト云フコトハ分ラン、廣吿カシテアルカラ私ノ隣リニ山田ト云フモノカアリマスカ私モ山田テヤリマシヨウト云フトキ、ヤルコトハ出來ント云ハナケレハナラン
（松岡）
ソレニ致シマシテモ同商賣テ同屋號ト云フ者ハ少ナイト見ナケレハナリマセン、凡ソ廣イ東京テモ探スコトハナイト思フ、一々廣吿シナケレハナラント云フ義務付キモ困ルト思ヒマス
（委員長）
ソレハ小サナモノテモヤラナケレハナラント云フコトハナイカ、人ノ利害ニ關スルトカ、未丁年者トカハ政府カ殊更ニ保護ヲ與ヘナケレハナラン、廣吿ト云フモノハ他人ニ知ラセルニ必要ト思フ
（松岡）
アルノカ良イカ無イノカ良イカト云フト苦情ノアル者カアルト思ヒマス
（委員長）
廣吿シタイト思フ者マテモ、出來ンコトニナル、自分ノシタノハ人カ信シハセン
（松岡）
併シ此儘テハ誰テモシナケレハナリマセンカラ
（委員長）
ソレカ嫌忌ナラ營業ヲスルナト云フノタカラ其中間ニ良イノカアレハ其レニ因ラウト思フ
（三好）
未丁年婚姻契約代務會社ハ是非ヤラナケレハナラン其他ノ所ハ向ウカラ請ウテ來ル者ハシテヤルトシテハトウテス
（委員長）
其處ラカ良イカ知ラン、全ク廣吿ヲシナイト云テハ困ル
（渡）
未丁年者婚姻契約ハ法ノ上テヤレト云テ其他ノ者ハ勝手ニスルト云フノハ宜シクナイ
（尾崎）
天下一般ニ己レノ名ヲ知ラシメテ人ノ信用ヲ得ヨウト云フトキハ賴ンテ來ル
（南部）
ソウナラ自分テヤツテ宜シイ
（尾崎）
ソレカ裁判所ノ奪イ所タ
（南部）
裁判所ハソウ云フコトヲスヘキ所テナイ
（淸岡）
土地ノ變ル度ヒニ廣吿シテ溜ルモノカ
（渡）
若シ一般ニ廣吿スルカ可愛ソウト云ヘハ一般ニ廣吿サセンテ宜シイカ、或ル者ハ廣吿セヨト云フノハ宜シクナイ
（淸岡）
ソンナラ會社ハトウスルカ
（松岡）
三好君ノ說ハ未成年者婚姻契約代務及ヒ會社ノ登記ハ其都度裁判所ヨリ其地ニ於テ發行スル新聞紙ヲ以テ
（委員長）
其他ノ者モナケレハナリマセン
（松岡）
其他ノ施行規則テヤルノテシヨウ
（委員長）
施行規則テヤルコトハ出來ン、未成年者ト自分ノ望ミニ因テヤルモノ丈ケヲシテヤルノテス
（鶴田）
未成年婚姻契約ナトモ是非廣吿シナケレハナラント云フコトヲシナクモ良カラウ
（渡）
私ハ原案ノ通リテ宜シイト思フ、修正スルナレハ會社丈ケニスルナレハ宜シイカ、商號ヲ登記シテ廣吿シナイト云フコトハアルマイト思フ
（尾崎）
夏氷水ヲ賣ル者モ廣吿スルト云フノハ何タルコトタラウ
（松岡）
三好サンノ發議ノ旨意ハ御贊成ニナリマスカ
（尾崎）
其方ナラ折合ヒマシヨウ
（三好）
「但商號ニ限リ當事者ノ請求ニ因リ之ヲ廣吿ス」テ宜シイ
（委員長）
「後見人未成年者婚姻契約代務者ノ登記ハ何々ト書イテ新聞ヲ以テ廣吿ス」ト書イテ「其他ノ登記ハ當事者ノ望ミニ從ヒ之ヲ廣吿ス」トスレハ三好サンノ說ノ樣ニナル
（三好）
ソウテス、其他ハ商號ニナリマスカラ宜シウ御座イマス
（淸岡）
ソンナニ書カンテモ十九條ノ中ヘ商號ノ取除ケヲ書ケハ宜シイ
（委員長）
ソレト同シコトテス
（三好）
「之ヲ廣吿ス」迄ヲ置イテ「其廣吿ニ付イテハ司法大臣命勅ヲ以テ制限ヲ爲スコトヲ得」ト云フコトヲ法律カ許シテ、置イタラ良カラウト云フ說カ出テ居リマス
（委員長）
ソンナラ良カラウ
（鶴田）
司法大臣カヤレナンタト云テハ困ルカラ
（委員長）
司法大臣モ人間タカラ
（箕作）
司法大臣ハ制限ヲ設ケルノテアルカラトンナ收斂家カ司法大臣ニナツテモ大丈夫テス
（淸岡）
危イ々々
（渡）
司法大臣ノ制限ノ方ニ贊成スル
（鶴田）
施行規則ト云フモノハ役人カ施行スル丈ケタカラ役人サヘ知テ居レハ宜シイノタ
（淸岡）
成ルヘク原案ヲ助ケル精神カラ後見未成年者婚姻代務會社ハ置ク積リテ御座イマス、商號ハ困雜シマスカラ是レ丈ケハ削ルカ良ロシイト思ヒマス、ソウスルト下ノ項ヘ商號ハ本人ノ望ミニ因テ廣吿スルトシタラ良カラウト思フ
（三好）
矢張リ十九條ハ此儘ニシテ末項ニ書クカ但書ニスルカ孰レテモ宜シウ御座イマシヨウ
（淸岡）
委員長ノ書イタノテモ宜シイ
（委員長）
原案ト其論ト何レカニ決シマシヨウ後見人未成年者ヲ置ク說ニ御同意ノ方ハ御起立ナサイ
起立者四名
（委員長）
ソウスルト少數テ倒レルカラ原案カ五人テ成立ツ
（鶴田）
我輩ハ削ル
（松岡）
削ル
（尾崎）
削ル
（淸岡）
鶴田サンノ會社ハ別ニ會社ノ方ヘ入レテ後見人未成年婚姻契約代務ハ望ミニ任カセテヤルト云フノタラウ
（鶴田）
ソウテス
（渡）
會社ハカリニスルト困ルタラウ
（委員長）
鶴田サンノ說テハ會社ノ登記ノ箇條ヲ商法ノ方ニ加ヘナケレハナラン
（鶴田）
ソウテス
（委員長）
七十條ノ第三者ハ會社ハ一人テ無形人テ其他ノ人ニ契約スル人トハ效力カアルカ第三者ニ效力ノナイト云フノハ效力カナイノテ二人ノ間ハ效力カアルノタラウ
（本尾）
ソウモ讀メマスカ、アラサレハ社外ニ對シ效カナイト云フコトテ御在イマス
（委員長）
ソレナラ社外ニ對シテト云フコトカナケレハナラン
（本尾）
ソウ云フ疑ヒモ起リマスカ、精神ハ社外ニ對シテト云フノテ御在イマス
（松岡）
十九條ノ「又各人」ノ上マテ削ツテ會社丈ケ商社法ニ入レル
（鶴田）
私ノ說ハ「登記ハ其度每ニ裁判所ヨリ當事者ノ望ミニ從ヒ其他ニ發行スル新聞紙ヲ以テ」トスルノテアリマス
（委員長）
其說ニシテヤリマシヨウ、ソウスルト社外ニ對シト直サナケレハナラン
（鶴田）
「登記ハ當事者ノ望ミニ從ヒ其度ヒ每ニ」トシマシヨウ
（箕作）
甚タ妙ナ御說ト思ヒマス、ソウ云フコトナラ此處ハ削ツテ會社ノ方ニ至テ廣吿ノコトヲ義務トシテスル樣ニシテハトウテシヨウ、望ミニ因リトスルトシテモ、シナクテモ良クテ、會社ノ方テ括ツテ仕舞フ方ハ何タカ變テ御在イマスカ
（淸岡）
會社ハ括ツテ此處ハ括ランテ宜シイ
（鶴田）
箕作サンノ論ハ丸テ削ツテ仕舞フ論タ、私共モ削ル方ニ同意シナイコトハナイカ、折衷說タカラ
（南部）
篤ト御考ニナツテハ如何テシヨウ、望ミニ從フト云フト望ミニ從ヘハ會社テモ出來ル、請ハネハ宜シイ樣ニ見ヘル、其處テ他ノ人カ會社ニ向テヤル時分ノ效力ト云フモノハ登記所ヘ出テ來テ登記所ニ立派ニ付イテ居ル、又廣吿ハ望ミ次第ト云フカラ會社カラ他人ニ效ヲ生セシメ度イトキハ出來ナイト思フ
（長谷川）
會社ハ登記廣吿前ニ開業スルコトヲ得スト云フコトカ御在イマス
（南部）
一般ニスルコトニシテ置イタ方カ宜シイト思フ
（尾崎）
今日荒物屋明日八百屋ト云フ奴ニ迄廣吿料ヲ出サセラレテハ大變テス
（委員長）
貴君ノ考ハ登記ハ效能ノナイモノト思テ居ルカラソウナルノタ
（尾崎）
薩張リナイト云フコトモアリマスマイカ、其レ程保護ニナルマイト思フ
（委員長）
幾分カアルニ相違ナイカラ金ヲ出サナイモノトシテ裁判所カ唯廣吿シテヤルト云フトキハ貴君ハ御斷ハリナサルカ、我ハ效能カアルカラ裁判所カラヤルト云フノナラヤラセルト云ヒマスカ
（尾崎）
唯テ廣吿シテ貰フコトカ出來レハシテ貰ヒマス
（委員長）
效能カアルカラシテ貰フノテアリマシヨウ
（尾崎）
效能ハ御在イマセン實ハ斷ハリタイ
（箕作）
司法大臣ノ省令ト云フノハイケマセンテシタカ、今度ハ勅令テ定メルトシテハトウテス
（委員長）
ソレテモ宜シウ御座イマス
（箕作）
ソウスレハ豆腐屋八百屋ヲ救ウコトカ出來マス
（淸岡）
勅令テモ法律カ出來ル
（委員長）
勅令案ヲ拵ヘテモ宜シウ御在イマス、此法律上ノ體面ノ穢ナクナラン方カ宜シイ
（松岡）
皆登記シテ、商號ハ勅令ト云フ御旨意カ
（三好）
商號ニ付イテハ請ヒニ因テヤルト云フコトモ出來ヨウシ又外ノ者モ請ヒニ因テヤレル、トウテモ出來ルト思フ
（松岡）
ソウスルト法律ノ體裁上ノ責任ヲ後ニ定メルト云テソレキリト同シタ
（委員長）
其レハ案ハ此處テ拵ヘマスカラ貴君方カ御不審ノナイ樣ニ御見セ申シテ御一所ニ拵ヘマス
（箕作）
勅令マテ御疑ヒカアツテハ仕方カナイ
（委員長）
晝間人力ヲ引イテ夜間蕎麥ヲ賣ル樣ナ者ハ商人トハ云ヘナイ
（尾崎）
小サイ商人ハ實ニ困リマスカラ
（委員長）
箕作サンノ仰シヤツタ勅令カ問題ニナレハ問題ニシテヤツテ見マシヨウ
（村田）
原案ノ儘テ宜シイ、登記シタ以上ハ廣吿シナケレハ登記ヲシタ甲斐ハナイ
（南部）
廣吿ヘ制限ヲ置ケハ登記ニモ制限ヲ御置キニナツタ方カ宜シイト思ヒマス、廣吿ヲセスニ登記丈ケシテ置クノハ效能カ少ナイト思ヒマス
（淸岡）
岩谷松平カ廣吿スル位ナレハ宜シイカ、裁判所ノ廣吿ハ何ニナルモノカ
（村田）
登記シナイカ宜シイ
（鶴田）
ソレテハ登記ヲ止メルカ宜シイ
（村田）
登記ト廣吿ハ船ノ樣ナモノタ
（淸岡）
日本ノ新聞廣吿料ノ高イコト御互ヒカ熱海行ノ廣吿ナトヲ御覽ナサイ
（南部）
廣吿ハ登記ト密着ノ關係ヲ有シテ居ル、十八條ニ商號ヲ登記スルト云フコトヲ決定ニナリマシタカ、商號ヲ置クニ付イテハ制限ヲ置クカ置カンカト云フ議論ハ出マセンカ、成ラウコトナラ小サイ商人ハ商號ヲ登記センテモ宜シイト云フ制限カ置ケルコトナラ貴方カラ御採用ニナツテ御決定ニナル樣ニシテ、其レニ類シテ廣吿モ置イタナラハ穩當テハアルマイカ、併シ過去ツタモノモアルカラ
（委員長）
過去ツタコトテモアルシ此處カ定マレハソレト前ノ條ト權衡ヲ取ルト云フコトカアルカ、之カ原案ナレハ前ヲ直サンテ宜シイカラ皆少數ナレハ原案通リニナルカラ
（淸岡）
鶴田サンノ說ハ「登記ハ當事者ノ望ミニ從ヒ」ト云フノタカ其方カ宜シイト思ヒマス
（松岡）
私ハ斷然「又各人」ノ上迄ヲ削ル說ヲ提出致シマス
（鶴田）
松岡サンニモ贊成スル
（委員長）
會社丈ケハ小サイ會社マテモ廣吿サセルト云フノハトウ云フ譯テスカ
（松岡）
何處ノ國テモ會社ハサセマス
（委員長）
他國テシテモ五六人ノ會社ニ何セサセマスカ
（松岡）
會社ハ一人立チテナイ多數テヤルカラ公ケニスルカラ會社ト云フ字カラ付イテ來タモノト思ヒマス
（委員長）
會社ハカリ人ノ財產ヲ集メルモノテナイ一人一個テモ集メテ居ル者カアル
（松岡）
一人ナレハ百萬兩ノ身代カアツテモ特別ノ法ヲ設ケタコトハアリマセン
（委員長）
廣吿スルノハ同シコトテ宜シイ
（松岡）
會社ハ特別ノ法律ヲ設ケル位テ御座イマスカラ他ノ國ニモ會社ニ特別ノ法律カアリ會社ニ特別ノ廣吿カ御座イマス、一人一個ハ廣吿ナシテスルノテ御座イマス
（委員長）
登記廣吿ヲ受ケナケレハナラント云フ天然ノ性質ハナイ
（松岡）
頭マテ法律カソウ云フコトヲ望ム者カアレハト書出シタノハ餘程希妙ナ理屈テアリマス
（淸岡）
之ヲ望ムモノハ許スノテス
（松岡）
ソンナコトヲ云テハ大變タソレマテ裁判所カ新聞屋ノ如キニナル
（南部）
長クナルト決着カ付キマセンカ先ヘ往キマシテ今一應ヤリマシテ商號マテ濟ミマシテ後御定メニナツテハトウテスカ
（委員長）
幾ラヤツテモ同シテシヨウカラ今少シ待テ見テトウ云フ風ニ松岡サンノ說カ成立カ鶴田サンノ說カ成立カ何方カ定メテニシマシヨウ
（淸岡）
松岡サンノ讀モ良カラウカ止ヲ得ンコトテアリマス鶴田サシカ說ヲ贊成シテ置キマス
（松岡）
ソレテハ私モ鶴田サンノ說ニ同意シテ置キマシヨウ
（委員長）
鶴田サンノ說ハ登記公吿ヲ請フ者アレハ其度每ニ裁判所ヨリ其地ニ發行スル新聞紙ヲ以テ公吿スルト云フノテ、ソウシテ會社ノ方ニ是非ヤラナケレハナラントスルノテ、斯ウ云フ說テアリマス
（淸岡）
ソコ等ハ宜シウ御座イマシヨウ
（鶴田）
「登記公吿ヲ請フ者アルトキハ」トスルノテアリマス
（三好）
ソレテハ鶴田サンノ說ニシマシヨウ
（委員長）
ソレテハ折合テ鶴田サンノ說カ多數テアリマスカラソレニシテ置キマシヨウ
（鶴田）
「之ヲ定ム」ハ
（南部）
之ハ論カアツテ定マツタノテアリマス
（淸岡）
其地ニ發行スル新聞ト云フト日本抔ハ新聞ノナイ處カ澤山アリマスカネ
（松岡）
區裁判所ノ地ニナイ處カ多ヒ
（箕作）
成リ丈ケ最近ノ處テヤルヨリ外仕方カアリマスマイ
（淸岡）
土佐ノ如キハ高知ヨリ外ハナイ區裁判所ノ在ル所ト云フト二十一里以上ニナル
（委員長）
ソレテハ先ツソウ定メテ商號ノ處マテヤツテ置キマシヨウ
本條ハ左ノ如ク決ス
登記公吿ヲ請フ者アルトキハ其度每ニ裁判所ヨリ其地ニ於テ發行スル新聞紙ヲ以テ速ニ之ヲ公吿ス云々以下原案ノ通リー會社ハ總テ公吿スルコトニ決ス
（本尾）
二十條ノ「申」ト云フ字ヲ「屆」ト云フ字ニ御變ヘヲ願ヒマス
二十二條ノ終リカラニ行目ノ「其表示ノ場所ニ於テ」トアル「表示ノ」ノ三字ヲ削リマス
二十三條ハ罰則ハ酷テアルカラ本條ヲ削除シタラ良カラウト云フ論カ御座不マシタ、若シ削除カ御採用ニナリマセン節ニハ字句ニ付キマシテ少々變更シタイノテ御座イマスカ、兔モ角モ第一ノ問題ハ削除ノ論テ御座イマス
（淸岡）
持テ來ナイトキハ
（本尾）
民事ノ制裁ニ止メテ罰ハ掛ケマセン
（淸岡）
登記モシナクモ宜シイノテスカ
（本尾）
登記ヲシナクモ罰ハ受ケナイ、唯民事上ノ制裁ヲ受ケル丈ケテス
（南部）
其方カ宜シイ
（本尾）
大元トノ「ロエスレル」ノ案ハ五圓以上百圓以下トアリマス、其レヲ一旦此議場テ報吿委員カラ提出致シマシタニ付キマシテ御決定ニナリマシタノハ五錢以上一圓九十五錢以下テ御座イマシタ其後「カルクート」ノ注意テ五圓以上五十圓以下トナリマシタ、其後會社ノ罰則ヲ論スルトキ本條ニ論カ及ンテ五十圓ハ置クカ宜シイカ五圓ハ酷タカラ一圓ニシ樣ト云フ議論テ御座イマシタ
（南部）
削除說ニ贊成致シマス何トナレハ初メニ一圓以上五十圓ト定メタトキテモ、元トノ五錢以上一圓九十五錢以下ト定メタトキテモ商人ノ登記簿ヲ省クト云フ旨意テ未成年者婚姻契約代務ト云フ事柄テ僅力ノ分テ御座イマシタカラ、之ハ罰金ヲ付ケテ制限シタラ良カラウト云フノテ規定ニナツタモノト思ヒマス、シテ見レハ今日總テノモノヽ商號ヲ登記スルコトニナツテ罰金ト云フモノヲ科スルコトニナレハ强イモノニナラウト思ヒマス、又罰金ハ時々アツテハトウシテモ制裁テ付ケナケレハナランコトカ間々アリマスケレトモ此場合ニハ商號ノ登記ヲ致サントキハ自分カ其レ丈ケノ權利ヲ抛棄シテ其保護ヲ受ケンノテアリマスカラ其レ丈ケノ損害ヲ蒙ルカラ民事上ノ制裁テ充分テ、科料ニ處スルニ及ハント思ヒマス、報吿委員ノ削除說ノ成立タンコトヲ望ミマス
（三好）
私ハ反對ニ此法ハ存セラレ度イト思ヒマス已ニ登記ヲ設ケラレテ登記カ成立ツ以上ハ之ヲ怠ルト云フコトハトウシテモ制裁ヲ付ケテ置カナケレハナラント思ヒマス、此制限ノナカツタトキハ怠リ勝ニナツテ參リマス、又大ヘン利益ヲ害スルコトカアラウト思ヒマス、唯本人ノミテハナイ、他ニ對スル關係カ大ヘン多イノテ御座イマス、何卒之ハ存セラルヽコトヲ冀望致シマス、其金高ハ此額テモ苦シクナイ
（淸岡）
之ヲ削ツテ制裁ナシニスルノハ盡タ不同意タ、是非登記ヲスルト定メタ以上ハ幾分力ノ制裁ハ付ケテ置カナケレハ定メタ功カナクナル、併シ少シ重イト云フ感觸カアル、上ハ五十圓テモ宜シイカ、下ノ方ハ一圓取ラレルト云フト困ルカラ之ハ減少シテアツタ方カ宜シイ、兎モ角モ何モナシト云フコトニナレハ治マリカ付カン
（南部）
自身ニ保護ヲ蒙ムラン者ハ公ケニ認メラレンカラ宜シイ
（淸岡）
五錢取ラレテモ喚出サレテ叱ラレテハ苦シイカラ五錢テモ十錢テモ宜シイ
（三好）
一圓以上三十圓以下テ良クハナイカ
（委員長）
金ヲ定メルコトハ後ニシテ報吿委員ノ削除スルカセン力ヲ定メマシヨウ
（淸岡）
之ハ無論置クカ宜シイ
（松岡）
私ハ報吿委員ニ同意
（委員長）
其他ニナケレハ報吿委員ノ削除說ハ消滅スル、ソウスルト報吿委員ノ修正ヲ出シテ御見セナサイ
（本尾）
「此法律ニ規定シタル」ト云フノハ差支ヘマス、全體此條ノ意味ハ普通ノ商人會社カ法律ニ規定シタル登記ヲ怠ツテ居ルノト讀マナケレハナリマセンカ此法律ト云フト商法全部ヲ穢シマスカラ會社法ニモ適用サレル樣ニナリマスカラ登記簿ニ登記ヲ怠ツタ者サヘ罰スレハ宜シイノテ御座イマスカラ「此法律ニ規定シタル」ヲ削リマシテ「屆出ヲ爲サヽルトキハ」ト致シマス、ソレト但書カ御座イマスカ、外ニ但書ヲ付ケナケレハナラン樣ニナリマス、此科料ハ裁判所ノ命令テ科スルコトカ出來マス、其命令ハ抗吿カ出來ルカ出來ンカト云フト抗吿ハ許サナケレハナリマセンカラ但書ハ二ツニナリマセンカラ以前ノ但書「モノカ」ノ下ニ「第二百六十一條ニ揭ケタル場合ヲ除クノ外」ト入レマス
（松岡）
抗吿ハトレテモ行ケルタラウ
（本尾）
此命令ノ中ニ抗吿ヲ許スモノト許サンモノト御座イマスカラ其場合々々ニ書キマス
（長谷川）
構成法ノ元トノ三十三條ニ「第二審トシテ「イ」區裁判所ノ判決ニ對スル扣訴「ロ」區裁判所ノ決定及ヒ命令ニ對スル抗吿」トアリマスカラ一々加ヘナケレハナリマセン
（本尾）
ソレカラ訴訟法テモ裁判所ノ命令ト云フコトカ澤山出テ參リマス、其場合テ故障ノ抗吿ヲ許スト云フ場合テナケレハナラント云フ積リテ拵ヘルト云フコトテ御座イマスカラソレニモ關係及ホシマス
（南部）
ソレハ書カナケレハナラン
（松岡）
宜シイ
（箕作）
罰金ノ額カ一旦御決定ニナツタ通リナレハ地方裁判所テ宜シウ御座イマスカ、直下ケニナレハ區裁判所ノ命令ヲ以テトシナケレハナラン
（南部）
之ハ區裁判所テナケレハイケマスマイ
（委員長）
區裁判所ノ方カ便利テシヨウ
（渡）
裁判所カ宜シイ
（委員長）
「區裁判所」トヤリマシヨウ
（本尾）
「但其命令ニ對シ抗吿ヲ爲スコトヲ得」ト致シマス
（委員長）
罰金ノ額ハトウテスカ
（三好）
五十錢以上五十圓以下トシタラトウテ御座イマシヨウ
（箕作）
以上ヲ御削リニナツテ何以下トシタラトウテス
（南部）
今迄ノ例カ皆何以上トナツテ居ルカラ是レハカリソウスルコトハ出來ナイ
（渡）
五十錢ニシマシヨウ
（尾崎）
五十圓以下トスルカ良カラウ
（松岡）
十錢位ニシタラ良カラウ
（南部）
五十錢以上テ宜シイ
（渡）
十錢ニシヨウ
（淸岡）
上カ五十圓タカラ下ハ一圓位取ラナケレハナラン
（三好）
五十錢カ宜シイ
（委員長）
一遍ハ催吿シタノタカラ小サイ科料ナラ科サンカ宜シイ
（南部）
五十錢カ宜シイ
（箕作）
私ハ五十圓以下テ宜シイト思ヒマス
（委員長）
五十圓以下ト云フ說ニ御同意ノ方ハ
起立者六名
（委員長）
多數タカラ五十圓以下ニシマシヨウ
第二十三條ハ左ノ如ク改ム
裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ受クルモ此法律ニ規定シタル登記ノ申出ヲ怠タル者ハ一圓以上五十圓以下ノ過料ニ處ス但其命令ニ對シテハ抗吿ヲ爲スコトヲ得
于時午後第七時閉會