商法草案議事速記第十回
自第百六十八條至第百八十二條
明治二十年十二月廿二日午前第九時開會
○第百六十八條朗讀ス
（議案入）
（修正案）
本條ハ左ノ如ク修正ス
創業總會ニ於テハ又創業ノ爲メ發起人ノ爲シタル契約及出資ノ認否ヲ議定シ其他金錢ニアラサル出資ヲ差入シテ株式ヲ受クヘキモノアルトキハ其價額ヲ議定ス
前項ノ議定ハ少ナクトモ總申込人ノ半數ニシテ總株金ノ半額以上ニ當ル申込人出席シ其議決權ノ過半數ニ因テ之ヲ爲ス
（本尾）
之モ昨日ノ續キテ修正カ出テ居リマス
（村田）
又ト云フ字ハ大層目ニ立ツ樣タ
（渡）
又ハ刪ツテモ差支ナイ
（松岡）
ソレヲ云フナレハ創業總會ニ於テヲ刪ツテ又創業ノトスレハ宜シイ
（南部）
又カナイトイケナイ
（松岡）
次キニト云ツタ方カ宜シイ
（本尾）
西洋文ニ書キ直スト「又」ハアル方カ宜シイ
（箕作）
「立」テハナイカ報吿委員ノ方テ今一遍調ヘテ見テハトウテス
（本尾）
上ヘ「又」ト入レレハ大變翻譯シ良イノテス
（淸岡）
不審ヲ起スノハ金錢ニアラサル出資ト云フト勞力モ這入ツテ居ルモノト看做サレハシマスマイカ
（尾崎）
前ニ勞力ハイカントアリハシマセンカ
（本尾）
明文ニハアリマセンカ意味テ分リマス、勞力ヲ入レテ株劵ヲ貰ウコトハ出來マセン併シナカラ一ツノ家ヲ立テテヤル、其代ハリ株劵ヲ百枚吳レト云フノハ勞力ヲスルノテアリマスカ、勞力ヲ以テ一ツノ物ヲ成立タセルカラ宜シイカ、帳附ヲスルカラ株劵ヲ吳レト云フコトハ出來マセン
（淸岡）
勞力ノナイコトハ良ク分ツテ居リマスカ、此處ニ金錢ニアラサル出資ヲ差入レト云フト勞力モ良イカト云フ懸念カアリヤセンカ、併シソレハ此箇條々々ニ依ツテ勞力ハ這入ランモノト當然見ラレルト云ヘハ異論ハナイ
（松岡）
明文ハナイカ株劵ト云フコトハ此次キニモアルシ初メノ成立モ株式ニ分ツトアルシ勞力ハ書カストモ這入ラナイ
（本尾）
今｝ツ勞力カ這入レント云フノハ合名會社テモ勞力ハ資本ニ移スコトハ出來ナイ、ト云フコトハ明カテ御座イマス、ソウスルト理窟上テモ自カラ分ツテ來ルト思ヒマス
（淸岡）
實際カラ云ツテモ理窟上カラ云ツテモ這入ラナイコトハ分ツテ居ル
（鶴田）
ソウ云フコトカ何處カヘカ顏ヲ出シテ置ク方カ分リ良イ是レマテハ勞力ハ良カツタカネ
（本尾）
金錢又ハ有價物ヲト書キマシタ
（南部）
有價物ト云フコトハ這入ルマイ
（本尾）
這入リマセン
（南部）
金錢有價物ニアラサルト書イテハトウタ
（淸岡）
出來ンコトハナイ、工業會社ヲヤルトキハ我ハ金ハナイカ技術カアルカラ十株吳レト云フコトカアル
（村田）
百圓丈ケノ勞力ヲ漸テ取レハ宜シイカ、シナイ內ニ取ルノハ惡ルイ
（淸岡）
合名會社テモ同シコトタ
（本尾）
合名會社ハ人ト財產ト付イテ居ル、株或ハ其株劵ヲ人ニ賣ツテ無クナツテ仕舞ツテモ宜シイ其義務ヲ盡サン樣ニナル樣ナ都合カ生シマス、合名會社テハ人ト財產ト付イテ居ル
（淸岡）
合名會社テモ退社カ出來ル
（本尾）
其時ハ勞力カ消ヘテ仕舞ウ
（松岡）
創業ニ對シテ工業家ハ是レ丈ケノモノヲ拵ヘテ出セハ既ニ成ツタ以上ハ後チ々々ノ株ニナルカラ株式ヲ吳レト云フコトハ出來ナイ
（村田）
第一金ヲ募ラナケレハナラン
（松岡）
勞力ハナイコトハナイ、此處テ議決スルノハ工業發明物ト云フ樣ナモノテ形チニ現ハシタモノナラ出來ル
（村田）
百七十二條ニモアリマス、四分ノ一ヲ納メテ拂込ンタ金カアル
（鶴田）
其他金錢ニアラサル有價物ノ出資ヲ差入レトシテハトウテス
（本尾）
差支アリマセン
（鶴田）
合資會社ノ處テ有價物ト勞力ハ別ニシテアル
（南部）
百四十條ニハ有價物トアル
（箕作）
有價物ヲ入レテモ宜シイ
（淸岡）
議決權ハ此處ヘ初メテ出タ樣テス
（本尾）
元ト議決權ト云フ字ハ御座イマセンカ、其意味ハ矢張リ議決權ニ依リト云フノテ御座イマスト云フノハ二百八條ニ其意味カアリマス、株式ノ議決權ハ一株每二一箇［タルヲ通例トス、然レトモ十一株以上ヲ有スル株主ノ議決權ハ定款ヲ以テ其制限ヲ立ツルコホヲ得トアリマス、總テ會議ニハ議決權ヲ用ユルト云フコトテアリマスカラ用ヒマス
（松岡）
議決權ト云フト承認ヲ經テ確定スルトキ承認ノ員數ニ係ルテ御座イマシヨウカ
（本尾）
彼レハ認定丈ケテ議決權ヲ用ヒマセン
（松岡）
人數ト金數ヲ積ルノハ
（本尾）
頭數テ半數其半數ノ人間カ總株金ノ半額ヲ持チ持ツテ居レハ議決權ニ關係カアリマセン、決議ヲ取ル樣ニナツテ初メテ議決權カ現ハレテ來マス
（淸岡）
六十七條ハ確定テ六十八條ノ場合ヨリ先ツ輕イモノト見ナケレハナラン輕イモノト見レハ承諾シテ居ル、事件ヲ確定スル丈ケノコトテ輕イモノハ半數ノ承諾ヲ經ナケレハナラン、六十八條ハ事情重キモノナルニ拘ハラス、議決權ノ過半數トナルト其場ヘ出テ居テ議決權ノ過半數トナツテ仕舞ウカラ、假令ヘハ此處二十萬圓ノ會社テ其處ヘ出テ居ル丈ケノ八萬圓ノ株ヲ持ツテ居ル丈ケノコトタ跡二萬圓カ出ナイト云フト四萬圓ハ餘リテ決スル前ノ方ハ五萬圓テナケレハイケナイト云フコトニナル
（本尾）
ソレハ全體百六十七條ノ事柄ハ只自分ノ見テ置イタ丈ケノ物ヲ處分スル丈ケノコトテ事カ輕イ樣テ御座イマスカ決シテソウテナイト私ハ考ヘマス、會社ニ取ツテ見マスレハ會社ノ契約テ御座イマスカラ、全體云ヘハ株主ノ承認ヲ得テ確定スヘキ事柄ニ相違アリマセン、併シ株主ハ何レ丈ケノ人數カ集マルカ知レマセンカラ若シ總株主トスレハ認定ヲ受ケルコトカ出來マセン、ソレ程重大ナモノテアルケレトモ是レ丈ケノ人數テ宜シイト許シタノテ御座イマス、所作ハ輕イカ事柄カ重大テ御座イマスルテ出費ヤ何力ヲ議決スルヨリ重クシナケレハナリマセン「ロエスレル」モ其㸃ヨリ、假定款ヲ確定スルニハ頭敷四分ノ三テ半額ニ當ルモノカ認定シナケレハナラント云フ程鄭重ニ云ツテ居リマス
（淸岡）
「ロエスレル」ハ六十八條ト同シ樣ニシテアル
（本尾）
同シテハアリマセン
（松岡）
定款ト云フ字ヲ會社契約ト見テ置ケハ宜シイ、假定款ハ假契約タカラ其時議セント云フコトハナイ
（本尾）
初メニ之ヲ見テ御這入リナサイト云フテ這入ツタノテスカラ
（淸岡）
同時ニスルコトテアルカラ同一ノ決議法テ差支ナイ
（本尾）
其御論ナレハ株式會社ノ決議方法ヲ御覽ヲ願ヒマス、會社條例ノ百五十條ヲ御覽ヲ願ヒマス、同シク決議方法ニ議サセテ決スルコトニナツテ居リマス、只違ツテ居ルノハ定款ヲ確定スルモノ丈ケヲ違ヘル丈ケノコトテ御座イマス、之ハ頭數ノ半數株金ノ半數カ出テ確定スル之ハ取除ケニナリマシテ其上申込人ノ半數、半額ノモノカ出テ決スルコトニナツテ居リマス
（淸岡）
確定ト決議ト違ウト云フコトテアリマスカ六十七條ト八條トノ權衡ヲ見ルト原案テハ前條ニ揭ケタル決議ハ少ナクトモ云々トアツテ一ツニシテアル、之ヲ御變ヘニナツタノハ定メテ旨意ノアルコトテアリマシヨウカ、六十八條ノ決議ハ確定モ這入ツテアル一ツニシテアルノヲ貴君方カ別ニナスノテ段々ヤツテ見ルト別ニスル理由ハナイト思フ
（本尾）
昨日モ申シマシタカ事柄カ違ヒマス、元トノ「ロエスレル」ノ案テモ定款ヲ確定スル場合ト決シテ決ヲ綵ル場合ト違ヒマス、大元ノ百三十條テ申シテアリマス、之ハ決シテ決議テハアリマセン、見セテ認定ヲ受ケル丈ケテ御座イマス、處カ發起人カ爲シタ出費ヲ議決スルトカ或ハ他ノ者ヲ入レテ株劵ヲヤルトカ云フコトハ議場ヘ出シテ討論シテ決ヲ採リマス、ソレ丈ケノ違カアリマスカラ區別ヲ立テタノテアリマス、言ヲ換ヘテ云ヘハ認定ト議決ト區別ヲシナイノハ缺㸃テアロウト思ヒマス
（渡）
昨日ノ處テ論議カ二ツニ分レタノヲ決シタノハ承認スルニ止マルカラ是レテ決スル議定ノ處ハ八條テ決スルト云フコトニ決シタノタカラ此處テ昨日ノ事ヲ引起ス樣テハ際限カナイ昨日ノ主義ニ依ツテヤランテハイカン
（淸岡）
我々ノ昨日ノ處ヲ云フノテハナイ
（松岡）
私ハ先日ノコトヲ今議スルノテハナイカ、後ニ至ツテ前ニ撞着カアツテモ云フコトハ出來ント云フト可笑シナ法律カ出來ルテアロウ
（淸岡）
撞着シタノヲ通スト云フコトハ出來ンカ、七條ト八條ト撞着セント思フ
（村田）
六十八條ハ自カラ議シ終ツタ樣ナモノタ
（渡）
此處ヘ入レヨウト云フコトヲ議決シテアルノタカラ
（淸岡）
六十八條ヲ議スルニ當ツテ半數ニシテ半額ト云フモノハ違ウト云フコトニ氣カ付イタ昨日マテハ同シコトタト思ツテ居タ
（委員長）
修正說ヲ採ルカ採ランカト云フト御採用ノ方タロウ
（鶴田）
上モ權衡カ合ハン、之ハ議決權ノ過半數前ノハ議決權ノ過半數テハイケナイ
（委員長）
前ノハ議決テハナイ、人ノ揃ツタ處テ只承諾サヘ取レハ宜シイ、議事ハシナイノタ此方ハ議事テ斯ウ云フ契約ヲシマシタ、斯ウ云フ入費ヲ使ヒマシタト云フコトヲ議スルカラ議決權ノ過半數ヲ以テ決スル
（鶴田）
詰リ決スル處カ六十八條ハ頭數カ少ナクナル
（委員長）
多イカ少ナイカ知レン
（鶴田）
前條ハ重イモノタ、此カナケレハ檢査役、取締役ヲ選フコトハ出來ナイ、元ヲ定メレハ宜シイト云フヨリ外ニ仕方カナイ
（淸岡）
ソウナツテ來ルト少ナクトモ申込人半數ト云フノカ半數ハ少ナクテハナラント云フコトテ議決權ニ至ツテ初メテ頭數ハ算ヘント云フ議決權ヲ適用スルトキハ半數テナクテモ宜シイト云フコトニナル一株カ百人出レハ百株ニナルカ一人テ十株モ二十株モ持ツテ居レハ五人出レハ五十株ニナル
（委員長）
一人カ大キナ株ヲ持ツテ居レハソウナリマスカトウモ之ハ仕樣カナイ、資本カ元トニナルノタカラ
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決シ第一項中「金錢ニアラサル出資ヲ」トアルヲ「有價物ヲ」ト改ム
○第百六十九條朗讀ス
（議案入）
（本尾）
決議ノ方法ハ此商法ノ二百六條ニ御座イマス、ソウ六ケ敷イ議決權ヲ得マシタ、處カソレ丈ケノ要用カ御座イマセン、定款ニ任カシテ御座イマス、定款ノナイトキハ是レニ依リマス
（松岡）
前條テモナクテ宜シイ、總則テ見セレハ皆總則テ見セルカ宜シイ、細カク入レレハ皆細カク入レナケレハナラン
（委員長）
格別論カナケレハ先キヘヤリマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第百七十條朗讀ス
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
○第百七十一條朗讀ス
（議案入）
修正案本條中「百分ノ二十五」トアルヲ「四分ノ一」修正ス
（本尾）
是レニハ修正カ御座イマス
（委員長）
同シコトタ
（渡）
是レマテ民法ヤ何カテ速カニト云フコトハ幅カ分ラント云フコトテアツタカ、此處ハ「速カニ」トアリマスカ
（本尾）
是レマテ登記公吿ノトキハ速カニテハ分ラン十四日七日トシマシタ、此處テモ報吿委員テ論カアリマシタカ、會社ノ方テハ成可ク速カニ拂ヒ込マセルニ違ヒナイカラ三日テモ十日テモ速カニテ良カロウト云フ積リテ來マシタ
（南部）
ナイ方カ宜シイ
（松岡）
刪ツテ宜シイ
（鶴田）
ケレトモ之カアツタナラハ取締役ヲ促スノタカラ延期シテ罰ヲ當テルコトハナイカ只漠然ト云フト定マリカナイ
（渡）
若シ御說ノ樣ニスレハ外ノ法律モ速カニト云ヘハ早クスルト云ツテ速カニヲ置イテ宜シイ
（鶴田）
是レマテノハ速カニト云フ字ヲ刪ツテ日ニシタカ此處ハ法律テ日カ定メラレナイ
（渡）
一步讓ツテ速カニト云フ字ヲ場合ニ依ツテハ書キ、場合ニヨツテハ書カント云フニ樣ノ文例ナラ宜シイ
（本尾）
速カニハ「サンクシヨン」カナイ樣テ御座イマスカ、場合ニヨツテハ缺クヘカラサルコトテ御座イマス、翻譯局テハ原文ノ通リ譯セハ宜シイカ成ルヘク斯ウ云フ字ハ置イタ方カ宜シイト云フコトテ御座イマス、此處テハ取締役カ怠ラスニ成ルヘク速カニ成ルニハ違ヒ御座イマセンカ削ツテ仕舞ヘハ一月經ツテモ二月經ツテモ構ハナイ樣ニナル
（松岡）
ナイ方カ能ク分ル
（本尾）
場合ニ依ツテアリマスカラ成ル可ク置キタイ
（西）
アル方カ催促カシ易イ
（委員長）
四分ノ一ハ宜シウ御座イマシヨウ
（松岡）
之ハ宜シイ
（南部）
四分ノ一カ宜シイ
（淸岡）
刪ツタ方カ宜シイ
（村田）
「ノ」ノ字ヲ入レル方カ宜シイ百分ノ一ト云フトキ困ルカラ
（本尾）
二百六條ニモ四分一ト御座イマスカラ「ノ」ノ字ハナイ方カ宜シイ
（委員長）
「ノ」ノ字カナイ方テ置キマシヨウ
本條「百分ノ二十五」ヲ「四分一」ト改ム
○第百七十二條朗讀ス
（議案入）
修正案本條冒頭ニ「會社ハ前條ニ揭ケタル金額拂込ノ後」トアル下ニ「十四日以內ニ本店及ヒ支店ノ地ニ於テ」ノ十七字ヲ加ヘ定款ノ下ノ「及ヒ」ノ二字ヲ刪リ申込簿ノ下ノ「竝ニ」ヲ「及ヒ」ト修正シ及ヒ同條未項登記官吏ハ云々ノ一項ヲ左ノ如ク修正ス
會社ヨリ差出シタル書類ハ登記簿ニ添ヘ之ヲ保存ス
（本尾）
第七ノ「期限」ハ「時期」トナリマス、ソレカラ修正カ御座イマス、第一ノ「速カニ」ト云フ字ヲ刪リマシテ「十四日以內ニ本店及ヒ支店ニ於テ」ト致シマス其理由ハ百九十四條ニ「取締役ノ更迭ハ其度每ニ登記公吿ヲ受ク可シ」トアリマス、ソレヲ御刪リヲ願ヒマス、是レマテ合名會社合資會社ハ本店支店ノ內ニ於テ登記公吿ヲ受ケルトアリマス、株式ニ限リマシテ變更ヲ生シ又ハ變更ヲ加ヘマシタトキ登記公吿ヲスルト云フ條カ見ヘマセンソレ故ニ合名會社ノ例ニ倣ヒマシテ「十四日以內ニ」トスレハ百七十三條ヲ刪ルコトカ出來マス、刪リマシテ合名會社ノ八十條ヲ引キマス、斯ウスルト總テ整頓致シマス、ソレカラ「定款及ヒ」ヲ刪リ「並ニ」ト云フ處ヘ「及ヒ」ヲ入レマス、申込書ハ本書ヲ出ス樣ニ原案カ御座イマスカ、ソレテハ不都合テ御座イマス、總テ是レ丈ケノ謄本ヲ出スコトニ定メマシタ
（委員長）
皆謄本テスカ
（本尾）
皆謄本ニ致シマス、及ヒニ並ヒカアルト其物ヲ出サナケレハナランコトニナリマス
（委員長）
一ツ位本物カ出テモ良カロウ
（本尾）
其理由ハ終リニ保存ストアリマス、之ヲ登記役所ニ取ラレルト會社ニ證據カナクナツテ仕舞ヒマス
（松岡）
尤モ見セルコトハ見セナケレハナラン、ソウシテ其寫ト本紙ト違ヒノナイコトヲ認メテ貰ハナケレハナラン
（本尾）
今一ツ一番仕舞ニ登記官吏ハ保存スト御座イマス、草案ニ依リマスト十八條テ登記及ヒ之ニ關スル事務ノ取扱ハ裁判所ニ居ル官吏ノ常務トシテ之ヲ委任ストアリマス、處カ構成法テ登記官吏カ刪ツテ仕舞ヒマシタ、ソウ致シマスト登記官吏ヲ之ヘ入レマシテハ不都合テ御座イマスカラ會社ヨリ差出シタル書類ハ登記簿ニ添ヘ之ヲ保存スト云ヘハ十八條テ區裁判所テ保存スルコトニナリマス
（渡）
登記官吏ハト云フノヲ刪ルト會社ハ是レ々々ノ公吿ヲ受クヘシトアツテ保存スト云フト場所カ違ヒマス、會社カスルノテナイ、事柄テアルカラ此處ヘ打込ンテ仕舞ウ登記官吏ト云フコトカアレハ事カ違ウト云フコトカ分ルカ少シ丈ケノ氣ヲ付イタ樣ニナル
（南部）
裁判所ハトスレハ宜シイ
（松岡）
裁判所ハカ宜シイ
（鶴田）
一體何處ヘ謄本ヲ出スカ分ラン
（本尾）
ソレハ十八條以下テ分ツテ居リマス
（松岡）
上ハ本書ヲ出サセルコトニシテ謄本ヲ保存スルコトニシタイ、假令政府ノ許可ヲ受ケルニシロ何ニシロ商業ハ此登記公吿ヲ經ルコトニナツテ居ルカラ
（南部）
今テモ本書ヲ登記官吏カ見テ登記シテ居ル、會社ニ限ツテ謄本ハカリテスルコトハ出來ナイ、免許狀及ヒ其謄本ヲ添ヘテ登記公吿ヲ受クヘシトスレハ宜シイ
（松岡）
ソウスルト仕舞ノ裁判所ハ謄本ヲ保存スルコトニナルカラ、ソレカ宜シイ
（尾崎）
ソレカ宜シイ
（委員長）
併シ目錄書ハ謄本テ宜シイカ、設立ノ免許書ハ本書テナケレハナラン
（南部）
併シ定款モ見ナケレハナラン
（本尾）
實ハ其議論カ出マスル、此前モ其論カアリマシタ、ツイ隣リニ登記所ノアル時分ハ宜シイカ免許書ハ大切ナモノテアル、ソレヲ持チ運ンテ先ツテハ困ルテハナイカ、寫テ宜シイ、併シ自分ノ書イタ寫テハナランカラ、公證人ニ奧印ヲサセテ行ケハ差支ナイト云フ論モアリマシタ、目錄書ト定款ハ見易イモノテ御座イマス、會社ナレハ必ラス、印刷ニナツテ居リマスカラソレサヘ持ツテ行ケハ間違ヒナイコトハ定メラレマス、百七十條ニモ御座イマス
（松岡）
ソンナコトヲ云フト契約ハ皆ナ登記ヲ受ケルコトハ出來ナイカソウテナイ登記ハ極ク大切ナモノタカラ
（南部）
今テモ地劵テモ何テモ持ツテ行ツテ受ケテハ燒ケテモ外ニ出テ寫カ是非殘ツテ居ルカラ
（松岡）
紛失ノ爲メノ時ハ入用タ
（本尾）
私モ本條ハ宜シイト思ヒマシタカ反對論者ハ無記名公債證書ノ例ヲ出シマシタ、彼レハ本書ヲ持ツテ行カント吳レナイソウテス、私カ所有者テアルト云フコトヲ證スル爲メニ無記名證劵ヲ持ツテ行ツテ金ヲ貰ウ處カ始終ソレヲヤリマスカラ不便ヲ感スルト申シマシタ、ソレト同一テ此場合テモ本書ヲ擔キ出シテハ困ル
（松岡）
登記公吿ノ本書ノ性質ヲ知ラナケレハソウナルカ登記公吿ハ本當ノ性質ヲ確メルノテ之カ一番必要テアルカラ
（鶴田）
ソウスルト大阪支店ヲ開クトキハ兩方ニ分ケテ持ツテ行クコトハ出來マイ
（南部）
ソレハ登記濟ノ證テモ受ケテ來レハ宜シイ
（淸岡）
十四日以內ニト云フノハ本店支店テ屆出ルト云フコトテハナイカ
（本尾）
ソウテス
（鶴田）
金ヲ受取ツタレハ十四日以內ニ受ケナケレハナラン
（淸岡）
併シ函館カラ長崎マテ十四日テハ行ケナイ
（南部）
本店支店ト云フノハ具合カ惡ルクハナイカ原案カ宜シイ
（鶴田）
支店ハ別ニシテ本店テ公吿ヲシタモノハ全ク宜シイト云フ樣ナコトニナレハ宜シイ
（本尾）
ソウ致シマスルト會社支店ヲ設ケタトキハ所在地ニ於テ又ト云フト矢張リ十四日ニナリマス、尤モ百七十三條ヲ變ヘマスレハ、トノ樣ニモナリマス
（委員長）
銀行ヘ拂込ンテ支店モ十四日以內テ一方ハ支店ヲ設ケタルトキタカラ少シ違ウ
（本尾）
初メカラ支店ヲ設ケル場合カアリマスカラ、矢張リ同シコトニナリマス
（委員長）
共ニ出來レハ一所ニヤレハ宜シイ
（渡）
實際一所ニ開クコトハ出來ナイ
（松岡）
トウシテモ手續カ遲クナラナケレハナラン
（本尾）
目錄書定款ヲ寫スナレハ宜シウ御座イマスカ、本書ヲ持ツテ行クニハ變ヘナケレハナリマセン
（松岡）
本社ノ方テ登記公吿ヲ受ケタモノカナケレハ支店カ成立ツカラ
（委員長）
寫ヲヤレハ寫ヲ手拵ニスルコトハ出來ナイカラ寫ハ公證人カ保證シタモノテナケレハナラン
（松岡）
何事テモ事實ソウナリマス
（南部）
兎ニ角「十四日以內」丈ケヲ入レテ本店支店ヲ刪ル丈ケヲ決シテハトウテス
（松岡）
贊成
（渡）
贊成
（本尾）
次キハ「申込簿及ヒ設立免許書並ニ謄本ヲ添ヘテ」トナリマス
（渡）
間ニ及ヒカアルト設立免許書ノ謄本ノ樣ニナル
（本尾）
今迄ノ文例テハ「申込簿及ヒ設立免許書並ニ是等ノ謄本」トナリマス
（西）
並ニ其各謄本トシタラ良カロウ
（本尾）
末項ノ書類ハ謄本トナリマス
本條第一項左ノ如ク改ム
會社ハ前條ニ揭ケタル金額拂込ノ後十四日以內ニ目論書、定款、株式申込簿及ヒ設立免許書並ニ其各謄本ヲ添ヘテ登記公吿ヲ受クヘシ
末項「登記官吏」ヲ「裁判所」ト改メ「書類」ヲ「謄本」ト改ム
○第百七十三條朗讀ス
（議案入）
修正案本條ハ左ノ如ク修正ス
第百七十三條第八十條ノ規定ハ株式會社ニモ亦之ヲ適用ス
（本尾）
是レニハ修正カ御座イマス
（南部）
合名會社ノ處ニモ設立後十四日以內ニ本店支店ノ地ニ於テ登記公吿ヲ受クルトアリマス、此場合ニ於テモ契約書ヲ示スカト云フト契約書ハ出サナイト云フ、併シナカラ之モ契約書ヲ持ツテ行カント只今ハ行ハレント思ヒマス
（松岡）
後ニ至ツテモ契約書ヲ持ツテ行カント登記ノシ樣カナイ
（本尾）
「ロエスレル」ノ旨意ハ合名會社ハ一向商人ト變ハラン其契約ヲ持チ出シテ登記公吿ヲ受ケルニ及ハン併シ契約ヲ結ンタ要領ハ書イテ出サナケレハナラン一カラ七マテ御座イマスコトハ契約ノ要㸃ヲ擧ケタノテ御座イマス、其他ハ登記公吿ヲ受クルニ及ハント云フ只株式會社ハ關係カ多イカラソウ云フモノヲ添ヘテ持ツテ行カナケレハナラン
（松岡）
之モ此通リニシテ細カイコトハ書キ惡クイカラ登記ノ方ヘ定メタラトウタロウ登記ハ單行法律テ種々細カイモノマテ持ツテ來ナケレハナラン
（西）
併シ是非出サナケレハナラン
（南部）
前項ノ場合ニ於テハ公證人ノ調印シタル謄本ヲ以テ原本ニ代ハルコトヲ得ト云フ意味ヲ入レタカラ
（渡）
會社登記濟ノ上ハ登記濟ノ證ヲトシタラ良カロウ
（鶴田）
本店テハ支店ノ通リニシナイテモ良イテハナイカ
（村田）
私ハ原按ノ儘テ宜シイト思フ
（渡）
本支店共ニ設ケルコトハ出來ナイ
（委員長）
南部サンノ說カ一番良カロウ、同時ニシヨウト思ヘハセラルルカラ
（南部）
公證人ノ奧書ト云フ樣ナモノテス
（松岡）
公證人ト云フモノハ正本カアツテ其寫ヲ正シクシヨウト思フトキ此寫ハ違ヒナイト云フノカ公證テス
（委員長）
公證ノ寫ト云フト其寫ヲ拵ヘテ來タ樣ニナル
（西）
公認ヲ經タル謄本ナレハ宜シイ
（本尾）
報吿委員中テモ百七十三條ヲ修正シタコトニ付テ考カ變リマシタ成ル可クハ百七十三條ノ元トノ案トソレカラ報吿委員カラ出タ修正ト亷扱カナイ一應御下ケヲ願ヒマシテ充分講究ノ上立案致シマシテ提出スルコトニ致シマス
（委員長）
ソンナランウ致シマシヨウ
（松岡）
只御注意申シマスカ七十三條ハ裁判所ノ公證ヲ經タ寫ニシタラト云フ說カアリマシタ
本條ハ報吿委員ニ於テ講究シ立案ノ上提出スルコトニ決ス
○第百七十四條朗讀ス
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
○第百七十五條朗讀ス
（議案入）
（松岡）
ナセ發起人取締役株主ト分ケルカ知ラン、總株主テ良サソウナモノタ
（鶴田）
前テハ規定シトアルカ此處テハ承認ヲ經タルトナツテ居ル
（本尾）
認否ト變ヘマシタ
（委員長）
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第百七十六條朗讀ス
（議案入）
本條ハ原案ニ決ス
（委員長）
是レテ食事ニ致シマシヨウ
于時正午休憩
午後一時開會
（委員長）
ヤリマシヨウ
○第百七十七條朗讀ス
（議案入）
修正案商號ニハノ下コ人又ハ數人ノ」トアル七字ヲ刪ル
（本尾）
報吿委員ノ修正カ御座イマス
本條ハ報吿委員ノ修正ニ決ス
○第百七十八條朗讀ス
（議案入）
（淸岡）
株劵ト株式ト違ヒマスカ
（本尾）
同シテ御座イマス、ソレヲ場合ニ依リマシテ翻譯テ株劵ト株式トニ致シマシタ
（松岡）
得取移付ノ年月ト云フト後チ々々ニナルト一ツテ行ケルカ極ク初リノ時ハ一ツノ年月ニナル
（本尾）
株主名簿ハ是レテ御座イマシテ、初メハ申込簿テ御座イマス、ソレテ登記公吿モ終ツテ仕舞ヒマス
（松岡）
初マリノコトモ兼ネテ居ルカ
（本尾）
後チニ違同ノアル場合テス
（松岡）
一ツテハ濟マンカ
（本尾）
同シコトニナリマス、併シ殊更ニ書キマシタノハ帳簿ノ拵ヘ方ニ依リマシテ違ツテ參リマス、本尾ト云フ人ノ名ヲ書キマスト兩方違ツタ處ヘ書カナケレハナラン、株主ノ番號ヲ主トシテ書ケハ變ハリハ出テ來マセン何レニシテモ得取ト移付ト年月サヘ分ツテ來レハ宜シイト云フノテ御座イマス
（委員長）
先キヘ行キマシヨウ
本條ハ原案ニ決ス
○第百七十九條朗讀ス
（議案入）
（村田）
トウ云フ理由テシヨウ
（本尾）
十萬以上ニナリマスト數カ多クナリマシテ宜シクナイ
（村田）
ソンナコトハ隨意ニシテ置イテモ良カロウ
（本尾）
全体二十圓ナリ五十圓ナリト云フコトヲ置キマシタノハ餘リ額ヲ小サクスルト宜シクナイ、お婆サンガ巾着錢テ買ウ樣ナコトハシナイカ宜シイ隨分危險ナモノテアル買ハンガ宜シイ、十萬以上ノ會社ナレハ二十圓テモ小サイ、實ハ大キイコトヲ希望スルカラ
（村田）
お婆サンノ巾着錢テ買ヘン樣ニスルト云フナレハ同シテ良サソウナモノタ
（本尾）
成ル可ク高クシタイ五十圓ヨリ百圓ニシタイト云フ精神テアリマス、大元ノ案ニハ百圓ト御座イマス
（松岡）
十萬圓以上ナレハ五十圓テモ宜シイカ、隨分小サイ株式カ出來ントモ限ラン「ロエスレル」ノ案ニスルト半額カ適當スル二十圓二百圓トスルカ宜シイ、卽チ向ウノ百フランクハ日本テ云フト五圓カ三圓位ナモノタ
（淸岡）
大抵現在二十圓カ二十五圓位テ十圓ト云フノハナイ、二十五圓位ニシテモ宜シイ
（村田）
現在五圓トカ幾ラトカ細カイノカアリマス
（本尾）
彼レハ極宜シクアリマセン
（淸岡）
賴母子ニシテモ小サイノハ潰レ易クテイケナイ
（松岡）
分ケタルモノニシテヲ分ツトシテハイカンカ
（鶴田）
ソレテモ良イカ分リサヘスレハ宜シイ
（村田）
モノハアル方カ宜シイ
本條ハ「又其資本十萬圓以上ナルトキ」ヲ刪除スルコトニ決ス
○第百八十條朗讀ス
（議案入）
（本尾）
是レニハ報吿委員カラ參考ノ爲メニ出テ居リマス
（淸岡）
印影ナトハ餘リ良クナイ樣ニ思フ
（本尾）
前ノ方ニナルト且取締役署名捺印スヘシトアリマシテ何百枚ノ株劵ノ時分ハ名ヲ書イテ判ヲ捺サナケレハナラン、原案テハ紙幣ニ頭取何某トアリマス、彼レテモ宜シイト云フノテ御座イマス
（村田）
署名捺印スヘシト云フト自分テ書カナケレハナラン
（本尾）
歐文テハ自分テ書カナケレハナラント云フコトハアリマセ噌ン
（渡）
紙幣ニ池田章政トアルノハ池田章政サンノ自署ヲ判ニシタノタ、ソウスルト、ソレカ署名捺印ト云ヘナイカ知ラン
（本尾）
六ケ敷ウ御座イマシヨウ署名捺印ト云フト自分テ筆ヲ採ツテ書カナケレハナラン
（委員長）
物ニ依ツテ違ヒマシヨウ、是レ丈ケノモノハ是非自署捺印シナケレハナラン、是レ丈ケノモノハ豫ネテシテ置イテモ宜シイ、豫ネテシテ置イテモ宜シイモノハ判ニシテ置イテモ宜シイ、法律ニ署名捺印スヘシトアルカラ株劵ニ署名スルト一方ノ約束書ニ署名捺印シテアルカラ違ツテ來ル
（渡）
報吿委員ノ詭ニ氏名ヲ載スヘシト書イタカラ良サソウナモノタ
（本尾）
百六十五條ハ捺印サセル此處テ捺印スヘシト云フト皆ナ書カナケレハナラン
（渡）
報吿委員ノ意見テ百二十三條ノ樣ニスルト云フカラ署名捺印ヲ氏名ヲ載ストシタラ兩方カ行ハレハシマセンカ、書イテモ良シ判テ捺シテ置テモ良シトナルタロウト思フ
（淸岡）
氏名印影ヲ載スヘシト云フノハ事實カ纏マラン印影ハ普通印鑑ト云フヤウナモノテ此處ハ氏名ニシテ印形ヲ捺セトアルカラ印影ヲ載スヘシト云フト事實ニ適當セン樣タ
（村田）
現場テ見ルト頭取ハ取締役カラ出ルカ是レテ見ルト取締役カスル樣ニ見ヘル
（本尾）
取締役ハ卽チ頭取テス頭取ト云フコトハ「ロエスレル」ノ案テハ必ラスナクテハナラント云フコトハアリマセン、取締役ノ內カラ一人業務ヲ專ラニスルモノヲ擇ソテモ宜シイ、但其責任ハ取締役ト變ツタコトハナイ
（村田）
取締役カ五人アレハ皆書カナケレハナラン
（本尾）
ソウテス
（村田）
皆ナ書クノハトウ云フモノテスカ
（本尾）
若シ選ヘハ一人テモ宜シイ、ナケレハ皆書カナケレハナラン
（鶴田）
印影ヲ載スヘシハ可笑シイ
（本尾）
印影ト印鑑ト違ヒマス、印鑑ト云フト判鑑ノミノ樣ニ區裁判所ニ印鑑ヲ出スヘシト云フ印影ト云フトソレヲ載セレハ印ヲ捺シタノト同シテアルト云フ意味テ御座イマス
（鶴田）
前ニ彫リ込ンテモ影サヘアレハ良イト云フ樣テハ印ノ效能カナクナツテ仕舞ウ、其積リテハナイテシヨウカ印影ヲ載セルト云フト書物ニ印カ捺シテアル、彼レハ判木屋カ彫ルノテ、彼ア云ウニナルト印影ノ效能カナクナツテ仕舞ウ
（本尾）
其㸃ハ隨分六ケ敷ウ御座イマス、書物ニ大事ナ判カ捺シテアリマスカ、彼レノ如ク一枚ニハ本當ノ印ヲ捺シテソレヲ判木ニ彫ツテ株劵ニシテモ差支ナイト思ヒマス
（鶴田）
ソレテハ印ヲ捺シタト云フ證據ニハナリマセン
（本尾）
池田章政ノ下ニ到カアリマスカ彼レヲ捺シマスカ知ラン
（松岡）
捺スノタロウ
（鶴田）
札ナトニ大藏卿トアルノハ判テハナイタロウ
（村田）
役印テハナイカ
（本尾）
役印テハ御座イマセン
（淸岡）
銀行紙幣テモ池田章政ト云フ印カ捺シテアル、中ニハ頭取ノ印ト云フノカアル、淸岡カ頭取ニナツテ頭取ノ印カ淸岡ノ印ト定マレハ宜シイ、之ハ實印ト云フ處テハナイ、取締ノ役印タロウ
（本尾）
原案テハ實印テス、官名ヤラ役印カアルト云フ譯テハアリマセン
（松岡）
株劵ノ印ハ
（村田）
現場カ役印タカラ役印テ良カロウ
（淸岡）
大藏卿テモ紙幣ヘ捺ス爲メニ拵ヘテアル、此處テモ取締役ニナレハ株劵ニ捺ス爲メニ印ヲ拵ヘテモ宜シイ
（鶴田）
併シ法律テハ規定センカラ實印ヲ用イテモ構ハン
（松岡）
影ノ字ヲ刪ツテ仕舞ツタラ良カロウ
（淸岡）
ソウスルト署名ハ判テハ出來ナイ
（村田）
印影ヲ載スト云フ處ハナイテシヨウ
（本尾）
御座イマセン、是レカラ先キハアルカ知レマセン
（村田）
私印トシテハトウタ
（渡）
公印ト云フモノハナイ
（西）
決シテ認印ヲ捺スト云フモノハナカロウ
（尾崎）
氏名捺印及ヒトシタラ良カロウ
（鶴田）
影ノ字ヲ入レルト社印影ト入レナケレハナラン
本條ハ「印影」ノ「影」ノ字ヲ刪ル
○第百八十一條朗讀ス
（議案入）
（松岡）
此處モ記名ヨリサセン積リテスカ
（本尾）
「ロエスレル」ノ字テハ變ヘルコトカ出來ルト云ツテアリマスカ前ノ案テ無記名ヲ許スト良イコトテアルカ差當リ許シテハ危險テアル徹頭徹尾記名ニシヨウト云フノテ相談シマシタ處カ良カロウト云フノテ斯樣ニ致シマシタ無記名ニナレハ紙幣同樣ニナツテ類似紙幣ニナルカラ宜シクナイ、又無記名ニシテ會社ノ取締上ニ關係スルト云フ理由カ勢力ヲ得テ刪ツテ仕舞ヒマシタ
（松岡）
世界無比ノ株式ニナル凡ソ今日株式ヲ記名ニ限ルト云フノハ窮屈ナ話タ株劵テモ拂ヲ濟マセルト云フコトカ出來ナイ
（本尾）
前ノ二百四十九條ニ無記名ニ變更スルコトトアリマシタカ總會ヲ開カナケレハナラン、總會ヲ開クノハ二百四十一條ニ是レ是レノ爲メニ依ラナケレハナラント云フコトカ書イテアリマス
（松岡）
凡ソ普通ノ處カラ株劵ヲ拵ヘレハ記名ト無記名ト兩方出來ルコトニシテ置クノハ必然缺クヘカラサルコトテアロウト思ヒマス
（村田）
今ハ無記名ノモノハ一ツモナイ本尾サン是レテ定メルト二十圓ト云フ株ハ皆ナ二十圓テナケレハナラン、處カ現今ヤツテ居ルノハ百株トカ二百枚トカ一ツテヤツテ便利ノ樣テアルカ
（本尾）
一ツホカ出來マセン
（村田）
合ハセルノカ大變便利タ
（本尾）
便利ナトキモアリマスカ、不便ナトキモアリマス
（委員長）
之ハ記名無記名ノ處テハナイ、記名無記名ノ處ハ先キニアルカラ先キヘ行ツテ論スルカ宜シイ
本條ハ原案ニ決ス
○第百八十二條朗讀ス
（議案入）
（淸岡）
交付スルト云フノハ交付ステ良カロウ
（松岡）
得タカラ得スカ出テ來ル
（本尾）
初メテ得ルテ御座イマス
本條ハ原案ニ決ス
于時午後二時閉會