第十七條

本條ノ規定ハ二法律ノ間ニ於テ爭論アルニ方リ特別法ヲ以テ普通法ノ先キニスヘシトノ普通主義ニ基ス、而シテ商法ハ特別法ナルヲ以テ之ヲ民法ノ先キニセサルヘカラス又此規定ヲ必要トスル所以ハ他ナシ此規定アラサレハ裁判官ハ如何ナル法律ニ依リ裁判ヲナスヘキヤヲ知ラサレハナリ、若シ之ヲ被吿ノ行爲ニ任サシメタルトキハ裁判ハ偶生事項ノ爲メ左右セラルルニ至ルヘシ、加之銀行、航海會社、保險會社等ハ饒ヒ原吿タルヘキ場合ニ於テモ其一個人トノ取引ヲ民法ニ依リ判決スル事能ハサルヲ以テ右ハ必ス實行スルヲ得サルヘシ、卽チ此ノ如クニシテ其取引ハ悉ク不秩序ニ隔ルノ外アラス、今只商ヒノ本性及ヒ需要ヲ知ラサレハコソ本條ノ規定ニ對シ攻擊ヲナスヲ得ルナリ

又佛國商法第六十三條ニハ商事裁判所カ總テノ人ノ間ニ裁判ヲ下スヘシト定メタレトモ是レ商人間ノミニ止マラスシテ商事ニ關スル爭訟ニ於テモ亦然ルヘキナリ、伊國商法第五十四條モ右ニ均シキ規定ヲ設ケタリ、尤佛國商法第六百三十六條、第六百三十條ニ於ケルカ如ク各個ノ例外ヲ設ケ得ヘシト雖該例規ハ依然存立スヘキモノトス

本條ハ只商人ノミニ關スヘキ規定ニハ適用セラレサル事勿論ナリトス、是レ既ニ草案第十一條（十條）及ヒ第二十四條、第三十二條ニ於テ明言セラレタリ