○第二讀會第二十七回
明治廿年四月十二日
欠席 岸本委員
午前
○第八節 償還要求
○第八百三十六條
支拂人支拂期日ニ手形ヲ支拂ハサル時ハ手形所持人又ハ其代人ハ振出人又ハ裏書人ニ對シテ手形金及其利息ノ支拂並ニ其不拂ノ爲メニ生シタル諸費用ノ辨償ヲ要求スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百三十七條
承諾人ニ對スル手形上ノ權利ヲ保存スルニハ支拂期日ニ手形ヲ提示スルヲ要セス又拒證書ヲ作ルヲ要セス然レトモ他所拂手形ハ他所拂人ニ提示シ若シ他所拂人ヲ揭ケサルトキハ手形支拂地ニ於テ支拂人ニ提示シ其支拂ヲ得サルトキハ同地ニ於テ拒證書ヲ作ル可シ
（長森委員）
若シ他所拂人ノ支拂ヲ得サルトキ同地ニ於テ拒證書ヲ作ラサルトキハ承諾人ニ對スルモ要求スルノ權利ナキヤ
（本尾委員）
然リ
若シ他所拂ニシテ支拂人ヲ揭ケサルトキ支拂人其地ニ出張スルコト能ハサル場合ニ於テハ所持人ニ於テ支拂人ノ住地ニ於テ支拂ヲ受クヘキモノナリ
（箕作委員）
本條ヲ第八節中ニ揭ケタルハ如何
（本尾委員）
要スルニ償還要求ハ拒證書ヲ作ルニアラサレハ爲スコトヲ得サルヲ以テノ故ニ此ニ揭ケタルモノナルヘシ
○第八百三十八條
手形所持人ハ支拂期日ニ於テ支拂ノ爲メ手形ヲ提示ス可シ若シ支拂ヲ爲ササルトキハ支拂期日ノ翌日支拂拒證書ヲ以テ之ヲ證ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第八百三十九條
支拂拒證書ハ既ニ承諾拒證書ヲ作リタルモ又負債者死亡シ若クハ破產處分ヲ受ケ若クハ其所在不分明ナルモ必ス之ヲ作ラサル可カラス
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十條
承諾人破產處分ヲ受ケ其他不安全トナリテ手形支拂ノ爲メ二十分ノ保證ヲ立テサル時ハ支拂期日前ニ支拂拒證書ヲ作リ償還要求ヲ爲スコトヲ得
○第八百四十一條
手形所持人ハ振出人及裏書人ノ一員又ハ總員ニ對シ償還要求ヲ爲スコトヲ得又償還要求ヲ受ケタル裏書人ハ其以前ノ裏書人及振出人ニ對シテ同一ノ權利アリ
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十二條
償還要求權ハ第八百條ノ規定ニ依ルノ外其擇フ所ノ償還義務者ニ書面ヲ以テ其要求及支拂拒證書ヲ通知スルコトニ依リテ起ルモノトス其通知ハ所持人ハ拒證書ヲ作リタル日ノ翌日裏書人ハ其通知書ヲ受取リタル日ノ翌日ニ於テス可シ此通知ニ依リ其通知者及其以後ノ裏書人償還要求權ヲ得ルモノトス
○本條ハ「起ルモノトス」ヲ「生スルモノトス」ニ改ム
○第八百四十三條
償還要求ヲ起シタルカ爲メニ其要求ヲ受ケタル人ヨリ以後ノ裏書人ハ其償還義務ヲ免ルルコトナシ
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十四條
拒證書ノ免除ノ爲メニ拒證書ヲ作ルノ權利及全償還額支拂ノ義務ハ消滅スルコトナシ但其免除シタル者ヨリ以後ノ裏書人ハ之ニ對シ手形ノ謄本ヲ添ヘ書面ヲ以テ償還要求ヲ通知スルヲ以テ足レリトス
（細川委員）
免除シタルモノニ尙拒證書ヲ作ルノ權利ヲ與ヘタルハ如何
（本尾委員）
振出人ニ於テ免除シタルトキハ當然ナレトモ八人目ノ裏書人ニ於テ免除シタル時其八人ヨリ以前ノ人ニ償還要求ヲ爲サントスルニ拒證書ナカラサルヘカラス故ニ免除以前ノ人ニ要求ヲナスニ其旨ヲ支拂人ニ通吿シ免除アルニ拘ハラス拒證書ヲ作ラサルヘカラス然ラサレハ要求スルコトヲ得サレハナリ
○本條ハ「之ニ對シ」ヲ「免除シタル者ニ對シ」ニ改ム
○第八百四十五條
償還要求ノ訴訟ハ其要求權ヲ得タル者ヨリ其要求ヲ受ク可キ者ニ對シ期滿免除全期限中ニ於テ之ヲ起スコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十六條
償還要求權ハ手形資金ヲ支拂人領收シタリトノ抗辯ニ依リ效力ヲ失フコトナシ但手形資金ヲ備フルノ義務アル者ニ對シテハ未タ之ヲ領收セストノ抗辯ヲ爲スコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十七條
償還要求ハ左ノ金額ニ付テ之ヲ爲スコトヲ得
第一 手形金及支拂期日ヨリ起算シタル百分七ノ利息
第二 拒證書費用其他必要ノ立替金
第三 逆手形ヲ振出シタルトキハ其費用
○本條ハ異議ナシ
○第八百四十八條
償還要求權ヲ得タル者ハ償還義務者ニ對シ償還金額ヲ限トシ其所有ノ動產ニ付テ裁判所ニ假差押ヲ請求スルコトヲ得但十四日以內ニ償還訴訟ヲ起ササル時ハ其假差押解止ス
手形所持人ハ承諾人ニ對シ亦同一ノ權利アルモノトス
（周布委員）
解止トハ更ニ手續ヲ爲サスシテ自然ニ解クルモノナルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ「其假差押解止ス」ヲ「其假差押ハ解除スルモノトス」ニ改ム
○第八百四十九條
償還義務者ハ手形拒證書及受取ヲ記シタル償還計算書ト引替ニ支拂ヲ爲スノ義務アルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第八百五十條
總テ手形負債者ハ償還金ト引替ニ受取ヲ記シタル手形及不支拂拒證書ノ交付ヲ手形所持人ニ要求スルノ權アルモノトス
○本條ハ「總テ」ノ二字及「不支拂」ノ三字ヲ削ル
○第九節 拒證書
○第八百五十一條
總テ拒證書ハ裁判所ノ官吏又ハ公證人ニ依テ之ヲ作ル可シ若シ其地ニ此人員ナキトキハ丁年男子ノ證人一名ノ立會ヲ以テ被拒人若クハ其代人自ラ之ヲ作ル可シ但證人ハ成ルヘク商人ヲ要ス
（本尾委員）
本條ノ拒證書トアルニハ承諾ト支拂トノ兩樣ヲ包ム
○第八百五十二條
拒證書ハ拒證書相手方ノ店舖店舖ナキ時ハ其住居ノ屋內若クハ屋外ニ於テ之ヲ作ル可シ但其拒人不在ナルトキ又ハ其臨場ヲ肯ソセス若クハ來入ヲ拒ムトキニ於テモ亦同シ
○本條ハ「拒證書拒人」ヲ單ニ「拒人」ニ改ム
○第八百五十三條
拒證書拒人ノ店舖又ハ住居分明ナラス地方官署ニ間合スルモ知ル可カラサル時ハ其官署ニ於テ拒證書ヲ作ル可シ
○本條モ亦「拒證書」ノ三字ヲ削ル
○第八百五十四條
法律上定メタル地ニ非サル所ニ於テハ假令拒人ノ承諾ヲ得ルモ拒證書ヲ作ルコトヲ得ス
○本條ハ異議ナシ
○第八百五十五條
日曜日又ハ公認ノ休日ニハ拒證書ヲ作ルコトヲ得ス但尋常ノ取引時間外ニ於テスルハ之ヲ禁セス
○本條ハ異議ナシ
○第八百五十六條
第八百五十二條乃至第八百五十五條ノ規定ハ承諾又ハ支拂ノ爲メノ提示、手形別通ノ請求、其他手形法ニ從ヒ某者ノ許ニ於テ爲ス可キ手續ニ就テモ之ヲ適用ス
○本條ハ手形法ニ從ヒ「以下」ヲ左ノ如ク改ム
手形ニ關シ一定ノ人ニ就テ爲スヘキ手續ニ於テモ之ヲ適用ス可シ
于時十二時十分過中止
午後一時開會
○第八百五十七條
拒證書ニハ左ノ事項ヲ記載ス可シ
第一 最後ノ裏書ニ至ル迄手形ノ全文謄寫
第二 承諾、支拂又ハ保證ノ要求
第三 拒人ノ在不在
第四 承諾、支拂又ハ保證ノ拒絕及其理由
第五 榮譽承諾又ハ榮譽支拂アルトキハ其承諾又ハ支拂
第六 日附及現出席人ノ署名
若シ拒人署名ヲ肯セス又ハ能クセサル時ハ其旨ヲ證書面ニ記シ證人二名ノ署名ヲ以テ之ヲ證ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第八百五十八條
第七百七十二條及第七百七十三條ノ場合ニ於テハ拒證書ニ成ル可ク詳密ニ手形ノ文言ヲ記載シ其關係ノ事情ヲ附記シ以テ手形全文ノ謄寫ニ代フ可シ
○本條ハ異議ナシ
○第八百五十九條
裁判所官吏及公證人ハ其作リタル拒證書ノ全文ヲ日々簿冊ニ登錄シ且被拒人ノ要求ニ依リ之ヲ數通ニ作ルノ義務アリ
拒證書費用ハ被拒人之ヲ立替フ可シ
（本尾委員）
文字上ニ於テハ不都合ナキモ其精神ニ於テハ現行法ト異ナリトス
（鶴田委員）
現行法ニ於テハ本案ノ原本ヲ正本トセリ然レトモ其施行上ニ於テハ强チ不都合ナキカ如シ
（本尾委員）
然リ
○第十節 逆手形
○第八百六十條
手形所持人ハ償還金額ニ付キ償還義務者ニ對シ逆手形ヲ振出スコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百六十一條
逆手形ノ費用ハ仲買人又ハ仲立人ノ手數料、郵便稅、印紙稅及支拂地ヨリ償還義務者ノ住地ニ宛テ振出シタル一覽拂手形ノ相場差額ニ依テ定マルモノトス此相場ハ假令逆手形數次遞發ノトキト雖トモ支拂地ヨリ原手形振出人ノ住地ニ向テ振出シタル一覽拂手形ノ相場ヲ超過スルコトヲ得ス但此ニ樣ノ相場ハ仲立人ノ認證ヲ經可シ
（長森委員）
相場差額ニ依テ定マルモノトハ解釋上甚タ易カラス故ニ原案ノ如ク相場ヲ合算シタルモノトシテハ如何
（本尾委員）
原文ニ反スル而已ナラス前ニ記載シタル件々ヲ一々合算スルカ如ク見ユ原案ノ意タル前顯ノ件々ノ內ニシテ盡クル有ル儘ト否ラサル場合トアルヲ以テ特ニ「定マルモノ」ト爲シタルカ如シ
○本條ハ一覽拂手形ノ相場ノ下ニ「差額」ノ二字ヲ加フ
○第八百六十二條
逆手形ニハ原手形拒證書、償還計算書及ニ樣ノ相場認證ヲ附ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第八百六十三條
逆手形ヲ支拂フタル者ハ自己以前ノ裏書人及振出人ニ宛テ更ニ逆手形ヲ振出スコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第十一節 手形資金
○第八百六十四條
支拂人ニ對シ手形資金ヲ備フルノ義務アル者ハ振出人自己ノ計算ヲ以テ手形ヲ振出サシメタル者及手形資金ヲ備フルノ義務ヲ擔當シタル裏書人トス
○本條ハ「義務ヲ擔當シタル」ヲ「義務ヲ明言シテ擔當シタル」ニ改ム
○第八百六十五條
現金交付ノ外手形資金義務者ヨリ支拂人ニ對シテ有スル要求及信用ハ總テ手形資金ニ供スルコトヲ得
（委員長）
信用ト雖モ之ニ對スル物件又ハ貸借上ノ關係アルヘシ
（鶴田委員）
否此場合ハ信用ノミニ關シ空物ナルヘシ
（本尾委員）
然リ
（鶴田委員）
若シ空物トスルトキハ訴訟ヲ起ス場合ニ於テ如何
（本尾委員）
信用ト雖モ當然訴訟ヲ爲シ得ルモノトス但信用契約ナルモノハ雙方間ニ存立スルモノト見サル可カラス
○第八百六十六條
手形ノ承諾アルトキハ假令法式ニ依ラサルモ手形資金義務者ト承諾人トノ間ニ手形資金ヲ授受シタリト推測ス可シ但立入人又ハ情誼ニ出ル承諾ニ於テハ此限ニ在ラス
（箕作委員）
本條ノ推測ニハ反對ノ證ヲ立ルコトヲ許スヤ
（本尾委員）
本條ノ場合ハ反對ノ證ヲ擧クルコトヲ許サス何ントナレハ法律上ノ推測タルヲ以テナリ
○第八百六十七條
振出人ト手形所持人トノ間ニ於テハ手形ノ承諾ニ由テ手形資金ヲ備ヘタリト推測ス可カラス
（本尾委員）
本條ハ前條ノ反對ヲ示ス何ントナレハ前條ハ支拂人承諾ヲ爲シタル時ハ手形資金ヲ授受シタルモノト見ルモ本條ハ假令支拂人承諾アルモ振出人ニ要求スル場合ニ於テハ授受シタリトハ推測スルコトヲ得ス故ニ振出人資金ヲ送付シタル後ト雖モ之カ請求ヲ受クル時ハ再ヒ之ヲ支拂ハサルヘカラス
○本條ハ「授受」ヲ「備ヘ」ニ改ム
○第八百六十八條
手形ヲ支拂フタル支拂人ハ手形法ニ從ヒ手形資金ノ要求ヲ爲スコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百六十九條
支拂人ニ代テ手形ヲ支拂フタル者ハ支拂人又ハ償還義務者ニ對シ手形所持人ノ權利ヲ施行スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百七十條
振出人及裏書人ハ手形資金ヲ渡シ又ハ之ヲ取戾シタルト否トヲ論セス其署名ニ由リ爲替ノ承諾及支拂ニ付キ連帶ノ責任ヲ有スルモノトス但特約ヲ以テ其責任ヲ制限又ハ廢止スルコトヲ得
○本條ハ「資金ヲ渡シ」ノ下ニ「タルト否ト」ノ五字ヲ加フ
○第八百七十一條
手形資金ヲ領收シ又ハ振出人或ハ其他ノ手形資金義務者ニ對シ明ニ手形承諾及支拂ノ義務ヲ引受ケタル支拂人ハ其承諾又ハ支拂ヲ爲ササルカ爲メニ生シタル損害ヲ之ニ償フノ責アリ但此辨償ノ要求ハ預メ支拂人ニ通知スルヲ要セス
○本條ハ「或ハ」ノ二字「之ニ償フ」ノ「之ニ」ヲ削ル
○第十二節 手形訴訟
○第八百七十二條
手形ニ署名シタル者ハ皆連帶義務ヲ負フモノトス手形訴訟ハ其總員ニ對シ又ハ其一員ニ對シ之ヲ起スコトヲ得但其一員ニ對シ起ス場合ニ在テハ他ノ諸員ニ對スル要求權ハ消滅スルコトナシ
總員ニ對スル訴訟ハ原吿ノ隨意ヲ以テ其內一員ノ管轄裁判所ニ於テスルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百七十三條
手形訴訟ニ於テハ手形法ニ基キ且直チニ證明シ得ヘキ抗辯又ハ反訴ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
支拂又ハ其他ノ方法ニテ原吿ノ要求ヲ辨償シタリトノ抗ノハ總連帶義務者ノ爲メ效力アルモノトス
手形授受ノ行爲ニ付キ强制詐僞又ハ反法アリトノ抗辯ハ其事ヲ爲シタル者ニ對シテノミ之ヲ申立ルコトヲ得
○本條ハ第一項左ノ如ク改ム
手形訴訟ニ於ケル抗辯及反訴ハ手形法ニ基キ且直ニ證明シ得可キモノニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
第三項ノ「强制」ヲ「脅迫」ニ改ム
○第八百七十四條
手形訴訟ニ於テ許ササル抗辯及反訴ハ通常訴訟法ニ依リ同一ノ裁判所ニ於テ之ヲ主張スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
于時二時牛閉會