○第四節　榮譽承諾

○第八百四條

支拂人承諾ヲ拒ミタル手形ニ同地ニ於ケル豫備支拂人ヲ揭ケタルトキハ其手形ニ拒證書ヲ併セ承諾ノ爲メ速ニ之ニ提示ス可シ

○第八百五條

支拂人及第三者ハ豫備支拂人ヲ揭ケサルトキニ於テモ振出人又ハ裏書人ノ榮譽ノ爲メニ拒證書ヲ添ヘタル手形ヲ承諾スルコトヲ得但所持人ハ此ノ如キ立入ヲ許諾スルノ義務ナシ

○第八百六條

立入人數名アル時ハ義務者ノ義務ヲ免レシムル最モ多キモノヲ以テ先トス若被立入人ヲ揭ケサルトキハ振出人ヲ以テ被立入人ト看做ス可シ

○第八百七條

豫備支拂人ノ承諾其他手形所持人ノ許諾ヲ受ケタル立入人ノ承諾ハ被立入人及其人以後ノ被裏書人ヲシテ保證ヲ與フルノ義務ヲ免レシムルモノトス

○第八百八條

榮譽承諾ハ支拂人ニ於テ支拂ヲ爲ササルトキ立入人ヲシテ支拂期日後手形金ヲ支拂フノ義務アラシムルモノトス

○第八百九條

榮譽承諾ハ立入人ニ於テ之ヲ手形ニ記載シ且拒證書又ハ其附箋ニ之ヲ記註ス可シ

○第八百十條

拒證書ハ拒證書費用ノ支拂ト引替ニ之ヲ立入人ニ交付シ立入人ハ拒證書ヲ作リタルノ翌日マテニ之ヲ被立入人ニ送リ且併セテ其榮譽承諾ノ旨ヲ通知ス可シ若シ立入人之ヲ遲延スルトキハ之カ爲メニ生スル損害ニ付テ責任アルモノトス

○第八百十一條

保證ヲ立シムルノ權利ハ被立入人又ハ其人以前ノ裏書人ニ在テハ制限ナク之ヲ施行スルコトヲ得手形所持人ニ在テハ榮譽承諾ヲ拒絕スル權利アル時ニ限リ之ヲ施行スルコトヲ得

○第五節　手形保證

○第八百十二條

手形ニ於テ手形義務者ノ署名ニ連署スル第三者ハ該義務者ト連帶責任ヲ負フモノトス

○第八百十三條

前條ノ連帶義務ハ別段ノ書面ヲ以テ負擔スルコトヲ得

○第八百十四條

保證義ハ明約ヲ以テ之ヲ制限スルコトヲ得但其約ヲ結ヒタル人ニシテノミ其效力アリトス

○第六節　支拂

○第八百十五條

手形金ハ手形ニ記シタル貨幣ヲ以テ之ヲ支拂フ可シ若シ手形ニ貨幣ノ種類ヲ記セサルトキハ支拂地ニ於テ商人間ニ流通スル貨幣ヲ以テ支拂フ可キ趣意ナリト推測ス可シ

○第八百十六條

支拂ハ支拂人ニ於テ承諾シタルト否トヲ論セス第八百三十七條ノ場合ノ外支拂期日ニ於テ支拂人ニ付テ之ヲ受ク可シ猶豫日アルヲ許サス但其地慣習ノ支拂日ハ之ヲ守ラサル可カラス

○第八百十七條

支拂期日恰モ日曜日又ハ公認ノ休日ニ當ルトキハ其前日ヲ以テ支拂期日ト爲ス

○第八百十八條

一覽拂手形ニ在テハ提示ノ日ヲ以テ支拂期日トス若シ二年以內ニ提示セス又ハ二年以內ノ提示期限ヲ手形ニ定メサルトキハ日附後二年ヲ以テ支拂期日トス提示其時ヲ失フトキハ手形所持人ハ振出人及裏書人ニ對シテ償還要求權ヲ失フモノトス

○第八百十九條

支拂期日ニ手形金ヲ受取ラサルトキハ支拂人ハ債主ノ費用及危險ヲ以テ之ヲ裁判所又ハ銀行ニ預クルコトヲ得此場合ニ於テ支拂人ハ大過ニ付テノミ責任アルモノトス

○第八百二十條

支拂期日前ノ支拂ハ債主之ヲ受取ルノ義務ナシ如斯支拂ハ負債者其危險ヲ負擔ス可シ

○第八百二十一條

支拂期日又ハ期日後ニ於テ手形所持人ニ支拂フタルトキハ負債者其責ヲ免ル但其際負債者ニ於テ大過アルトキハ此限ニ在ラス

○第八百二十二條

支拂ハ受取證ヲ記シタル手形ヲ引渡スニ非サレハ之ヲ受ルコトヲ得ス一部分ノ支拂ト雖モ債主之ヲ受取ラサル可カラス此場合ニ於テハ其旨ヲ手形ニ記シ負債者ニハ別ニ受取證ヲ交付ス可シ

○第八百二十三條

手形ヲ數通ニシテ振出シタルトキハ負債者ハ其一通ノ支拂ヲ以テ責ヲ免ルルモノトス別ニ支拂人ノ承諾アル一通又ハ裏書アル一通ヲ所有スル者ノ權利ハ之カ爲メニ害セラルルコトナシ但第七百七十二條及第七百七十三條ハ一手形ヲ數通ニシテ振出シタルモノノ返却及紛失ニ付テモ之ヲ適用ス

○第八百二十四條

承諾人ハ保證ヲ立テシメタル上ニ非サレハ自己ノ承諾ヲ記セサル手形ニ對シ支拂フノ義務ナシ其數通ニ承諾ヲ與ヘタル場合ニ於テ悉皆之ヲ引渡ササル時亦同シ但保證ヲ申入ルルモ承諾人仍ホ支拂ヲ拒ムトキハ手形所持人ハ拒證書ヲ作ルコトヲ得

○第八百二十五條

支拂期日又ハ期日後ニ於テ手形上正當ナル所持人ニ對スル支拂ハ其所持人破產シタルトキ又ハ第七百七十二條及第七百七十三條ノ場合ニ限リ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ差留ルコトヲ得

○第八百二十六條

前條ニ定ムルモノヲ除クノ外支拂ニ對スル故障申立又ハ負債者ノ知ラサル人ニ封スル支拂ニ就テハ第四百五十九條ヲ適用スルコトヲ得

○第八百二十七條

第七百七十二條及第七百七十三條ノ場合ニ於テ手形ノ所有權ヲ證明シ裁判所ノ命令ヲ得タル者ハ確定裁判ヲ受クル前ニ保證ヲ立テテ手形金ノ支拂ヲ請求スルコトヲ得又保證ヲ立テスシテ之ヲ裁判所又ハ銀行ニ預ク可キコトヲ請求スルコトヲ得此場合ニ於テハ第八百十九條ノ規定ヲ適用ス可シ

○第八百二十八條

支拂人法律上ノ理由ナクシテ支拂期日ニ於テ手形金ヲ支拂ヒ又ハ預クルコトヲ拒ムトキハ所持人ハ翌日拒證書ヲ作リ之ヲ其擇フ所ノ償還義務者ニ通知ス可シ但拒證書ハ其免除ヲ手形ニ明記シアルトキニ限リ之ヲ作ルコトヲ要セス

○第七節　榮譽支拂

○第八百二十九條

拒證書ヲ付シタル手形ハ振出人若クハ裏書人ノ榮譽ノ爲メニ榮譽承諾人、及支拂人ハ勿論何人タリトモ之ヲ支拂フコトヲ得

○第八百三十條

豫備支拂人其他立入人ノ承諾ヲ記シタル手形ハ拒證書ヲ作リタル後直チニ支拂ノ爲メ榮譽承諾人ニ之ヲ提示ス可シ其支拂又ハ支拂ノ拒絕ハ拒證書又ハ其附箋ニ之ヲ記ス可シ

○第八百三十一條

榮譽支拂若クハ其申出ハ必ス之ヲ拒證書ニ記載シ且此證書ハ手形ト共ニ拒證書費用ト引換ニテ之ヲ榮譽支拂人ニ交付ス可シ

○第八百三十二條

榮譽支拂人ハ承諾人、振出人及裏書人ニ對シ手形所持人ノ權利ヲ有ス但此權利ヲ實行スルニハ所持人ト同一ノ義務ヲ盡ササル可カラス

○第八百三十三條

榮譽支拂ハ總テ其被立入人ヨリ以後ノ裏書人ヲシテ其責ヲ免レシムルモノトス

○第八百三十四條

榮譽支拂ヲ申出テタル者數人アルトキハ支拂人ヲ以テ先トツ次ニ最多數ノ義務者ヲ免レシムルモノヲ以テ先トス

○第八百三十五條

手形所持人榮譽支拂ヲ拒ミタルトキハ被立入人及其以後ノ裏書人ニ對シ償還要求權ヲ失フモノトス