○第二讀會第二十五回
明治廿年四月八日
欠席 箕作委員
仝 岸本委員
午前
○第二節裏書
○第七百八十三條
手形受取人及其後ノ所持人ハ手形面ニ反對ヲ記スルニ非サレハ裏書ヲ以テ之ヲ他人ニ移轉スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第七百八十四條
裏書ヲ爲スニハ手形二日附及裏書人ノ署名並ニ被裏書人ノ指定アルヲ要ス但白地ヲ以テ裏書ヲ爲スコトヲ得
（委員長）
讓受人又ハ讓渡人トアルハ少シク語弊アルカ如シ
（本尾委員）
第一讀回ニ於テハ裏書人被裏書人トナスノ說アリシカ前條及本條ト勿論總テ讓渡讓受ヲ裏受被裏書人トナス時ハ原語ニモ適シ又實際ニ於テモ不都合ナキカ如シ
（委員長）
裏書被裏書人ト改メテハ如何
（周布委員）
名詞丈ハ改ムルモ可ナレトモ讓渡讓受ノ文字ハ全ク用ヒサルニハ至ラサルヘシ
讓渡人讓受人ヲ裏書人被裏書人ニ改ムルニ決ス以下之ニ倣フヘシ又前條以下ノ讓渡ヲ移轉ニ改ム
○第七百八十五條
裏書ニ於テ過去ノ日附ヲ記スル者ハ僞造ヲ以テ之ヲ論ス
（鶴田委員）
僞造トアルハ變造ニ爲ス方可ナリ（之ニ決ス）
○本條ハ「僞造」ヲ「變造」ニ改ム
○第七百八十六條
無記名ニテ振出シタル手形又ハ白地裏書ヲ爲シタル手形ハ其引渡ノミヲ以テ移轉スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第七百八十七條
手形ハ支拂期日ノ後ト雖モ之ヲ讓渡スコトヲ得又代理ノ爲メ若クハ抵當ノ爲メニ幾回トナク之ヲ移轉スルコトヲ得可シ（變體裏書）
（鶴田委員）
幾回トナクトアルトキハ代理又ハ自己ノ爲メニハ否ラストスルカ如キ疑ヒアリ故ニ削除スヘシ
（本尾委員）
原文ニハ幾回ノ文字ヲ揭ケタリ
（細川委員）
代理ノ爲メトハ如何
（本尾委員）
例ヘハ甲ナルモノ乙ハ手形ヲ渡シ之ヲ丙ニ移轉スヘキコトヲ代理セシムルヲ云フ又金員ヲ受取リ他ヘ支拂ハシムル場合ニ於テモ同一ナリトス
（周布委員）
幾回トナクノ文字ハ必要ナルヤ
（本尾委員）
否必要ノ文字ニアラス
○本條ハ左ノ如ク改ム
手形ハ支拂期日ノ後又ハ代理若クハ保證ノ爲メト雖モ幾回トナク之ヲ轉移スルコトヲ得
○第七百八十八條
事情ニ依リ既ニ拂受ケノ爲メニ提示スルノ時及拒證書ヲ作ルノ時ヲ失フタル手形ノ裏書ハ支拂期日ヲ過キタル手形ノ裏書ニ同シ
○本條ハ異議ナシ
○第七百八十九條
支拂期日ヲ過キタル手形ノ裏書ハ該裏書人ノ權利義務ノ、ヲ其被裏書人ニ移轉スルノ效力アルモノトス但其被裏書人ハ支拂期日ヲ過キタル後手形ニ裏書シタル者ニ對シ一モ法式ニ檢束セラレサル獨立ノ償還要求權ヲ得ルモノトス
○本條ハ「手形ヲ讓渡シタル者」トアルヲ「手形ニ裏書シタル者」ニ改ム
○第七百九十條
代理ノ爲メ又ハ抵當ノ爲メニスル裏書ハ其旨趣ヲ手形ニ明記スルニ非サレハ第三者ニ對シ純粹ノ裏書ト同一ノ效力アルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第七百九十一條
代理ノ爲メニスル裏書ハ被裏書人ヲシテ裏書人ノ權利義務ヲ實行スルノ權ヲ得セシメ特ニ手形ニ返封ノコトヲ記セサルトキハ更ニ純粹ノ裏書ヲ爲スノ權ヲ得セシムルモノトス
出席岸本委員
（細川委員）
代理ノ裏書ニ反對ノコトヲ記スルハ如何
（本尾委員）
反對ノコトヲ記スルハ代理ノ旨ヲ記入スルヲ云フモノナリ
（長森委員）
然ルトキハ前條ニ於テ明瞭ナリ故ニ本條ハ代理ノコトハ勿論他人ニ向テ隨意ニ移轉等ヲ爲スコトヲ得サルモノヲ云フナルヘシ
（本尾委員）
然リ隨意ニ他ニ裏書スルコトヲ禁スル旨ヲ示スモノナリシ
（細川委員）
然ルトキハ前條ト照應シテ明瞭ナリシ
○第七百九十二條
保證ノ爲メニスル裏書ハ手形負債者ヨリ其被裏書人ニ對シ其保證セラレタル負債ヲ支拂ヒ又ハ其他償却シタリトノ故障ヲ述フルコトヲ得ルノ外純粹ノ裏書トス
（本尾委員）
本條ノ保證ハ第八百十二條ノ保證トハ別異ナリトス
于時正午中止
午後一時開會
（岸本委員）
例ヘハ甲ナルモノ乙ノ保證トナリテ丙ニ甲ヨリ支拂ヲ爲シタルトキハ丙ノ手形ハ甲ニ移轉スヘシ然ルトキハ毫モ尋常ノ裏書ト同一ナルヘシ何ントナレハ保證ノコトヲ記載シナケレハナリ然レトモ又一步ヲ進メテ保證ノ明記ナシト見ルモ毫モ異ナラサルナリ何ントナレハ之ヲ明記サルモ甲ノ手ヲ經テ移轉セサレハ流通スルコトヲ得サルヲ以テ其明記アルトナキトニ關セス一應甲ノ手中ニ入ルモノナレハ實際上ニ於テハ敢テ區別ナキナリ
（本尾委員）
保證ナキトキハ通常ノ裏書人ト同一ナレトモ若シ之ヲ記入スル時ハ支拂ノ場合ニ至テ其保證者ハ自己ハ保證ノ爲メナレハ直ニ支拂フコトヲ得ス故ニ本人ナル乙ニ支拂ヲ求メ若シ支拂フコト能ハサル場合ニ至テ支拂ノ順序トナルヲ以テ保證ヲ記スト否ラサルトハ大ナル相違アルモノトス
○本條ハ第七百八十七條第七百九十條及本條冒頭ノ保證ヲ「抵當」ニ改ム
○第七百九十三條
裏書ハ其被裏書人ニ至ルマテ裏書ノ順序ニ間斷ナキトキニ非サレハ其被裏書人ノ爲メニ效力ナキモノトス代理又ハ抵當ノ爲メニ裏書シタル手形ハ其裏書人ニ於テモ被裏書人ニ於テモ更ニ之ヲ裏書スルコトヲ得
（鶴田委員）
裏書人ニ於テハ更ニ裏書スルコトアリト雖モ被裏書人ニ於テ更ニ裏書スルトハ如何ナル場合ナルヤ
（岸本委員）
第七百九十一條ノ更ニトアルニ同一ナリト雖モ詳ニ之ヲ云フトキハ被裏書人ニ對シテハ「更」ノ文字ハ全ク該當セサルカ如シ
○第七百九十四條
裏書ノ效力ハ手形ニ裏書ヲ禁スルノ旨ヲ記載スルカ爲メニ消滅スルニ非ス唯之ヲ禁シタル者ニ對シ償還要求ヲ爲スコトヲ得サルニ止マル
（長森委員）
假令ハ丁ニ於テ裏書ヲ禁シタルトキハ己以下ノモノハ其丁ニ向テハ要求ヲ爲スコトヲ得サレトモ丁ノ外甲乙丙等ニ向テハ之ヲ求ムルコトヲ得ルヤ
（岸本委員）
然リ丁一人ヲ除ク然レトモ戊ヨリ丁ニ向テ請求スルコトヲ得ルナリ何ントナレハ丁カ戊ニ讓渡ストキ以後ノ裏書ヲ禁シタルヲ以テ戊ヨリ丁ニ對シ要求シ得ルモノナリ
（委員長）
本文ニ於テ見ルトキハ禁止シタル者ヨリ讓受ケタルモノモ亦要求シ得サルカ如シ故ニ直接讓受ケタルモノノ外ハ償還要求ヲ爲スコトヲ得サル旨ニ修正セハ如何先ツ其意味ヲ以テ質問スヘシ（之ニ決ス）
（本尾委員）
諾
○第三節 承諾
○第七百九十五條
手形所持人ハ別ニ手形ニ記載スル所アルニ非サレハ支拂期日前ニ支拂ノ爲メニ之ヲ支拂人ニ提示シ若シ承諾ヲ受ケサルトキハ其翌日拒證書ヲ受クルコトヲ得殊ニ他所拂手形ノ振出人ハ承諾ノ爲メニ提示スルコトヲ爲ササルトキハ償還要求權ヲ失フ可キ旨ヲ記載スルコトヲ得
○本條ハ「別ニ手形ニ記載スル所」ヲ「手形ニ反對ノ記載」ニ改ム
○第七百九十六條
一覽後定期拂ノ手形ハ別ニ短キ提示期限ヲ揭クルニ非サレハ日附後二年以內ニ承諾ノ爲メ之ヲ提示ス可シ若シ之ヲ提示セサルトキハ振出人及裏書人ニ對シテ償還要求權ヲ失フモノトス又支拂人ニ於テ其承諾又ハ其日附ヲ記載スルコトヲ肯セサルトキハ其翌日ニ拒證書ヲ作ル可シ此場合ニ於テハ拒證書ヲ作リタル日ヲ以テ提示ノ日ト爲ス若シ拒證書ヲ作ラサリシトキハ提示期限ノ末日ヨリ支拂期日ヲ起算ス可シ
（細川委員）
又ハ一覽ヲ削リシハ如何
（本尾委員）
此場合ハ質問シテ決セシモノナリシカロエスレル氏ノ意見ハ始メハ承諾ト一覽トハ別樣ニセシカ一覽モ承諾ト同一樣ニシテ一覽スルモ承諾セサルトキハ其手形ニ何等ノコトモ記載セスシテ拒絕スヘシ故ニ承諾ノミニテ可ナルヘシヲ削除セラレタルナリ
○本條ハ承諾ノ「其」ヲ削ル
○第七百九十七條
承諾ハ支拂人ノ既ニ手形資金ヲ領收シタルト否トヲ論セス之ヲシテ支拂期日ニ手形金額ヲ手形所持人ニ支拂フ可キ義務アラシムルモノトス又承諾ノ旨ヲ記シタル手形ヲ所持人ニ還付シタル後ハ强制或ハ詐僞ニ出ルモノヲ除クノ外之ヲ取消ス可カラサルモノトス
○本條ハ「强制」ヲ「脅迫」ニ改ム
○第七百九十八條
承諾ヲ爲スニハ支拂人其旨ヲ手形ニ明記シ或ハ唯タ之ニ署名ス可シ其他ノ承諾方法ハ總テ支拂人ニ對シ手形資金ヲ領收シタルコトノ推則ヲ起スニ止マルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第七百九十九條
卽日ニ承諾ヲ與ヘス又ハ制限ヲ立テテ承諾ヲ與ヘタルトキハ承諾人ニ對シテ其效力アリト雖トモ所持人ニ於テハ之ヲ拒絕ト看做スコトヲ得可シ若シ唯手形金ノ一部分ニ付テ承諾ヲ與ヘタルトキハ他ノ部分ニ付テハ拒絕ト看做ス可シ
○本條ハ左ノ如ク改ム
卽日ニ與ヘサル承諾又ハ條件ヲ付シテ與ヘタル承諾ハ承諾人之ヲ守ラサル可カラスト雖モ所持人ニ於テハ之ヲ拒絕ト看做スコトヲ得可シ若シ唯タ金ノ一部分ニ付テ承諾ヲ與ヘタルトキハ他ノ部分ニ付テハ拒絕ト看做ス可シ
○第八百條
支拂人全部又ハ一部分ノ承諾ヲ拒絕シ或ハ第七百九十八條及第七百九十九條ニ從ヒ拒絕ト看做ス可キトキハ所持人ハ延滯ナク拒證書ヲ振出人又ハ裏書人ニ交付シ已ヲ得サレハ訴訟ニ由リ手形金ニ拒證書及逆手形ノ費用ヲ加ヘ支拂期日ニ支拂フ可キノ保證ヲ請求スルコトヲ得各裏書人ハ既ニ自ラ保證ヲ與ヘタルト否トヲ論セス振出人及自己以前ノ裏書人ニ對シテ右ノ權利ヲ有スル拒證書ヲ通知スルニ時ヲ失フタルトキハ之カ爲メ其通知ヲ受ケサリシ者ニ對シテ償還要求權ヲ失フ但關係者ノ一人ヨリ爲シタル通知及其受ケタル保證ハ其人以後ノ被裏書人ノ爲メニモ效用アルモノトス
○本條ハ「人ヨリ」ヲ「人ノ」ニ改ム
○第八百一條
振出人及裏書人ハ保證ヲ與フルニ代ヘテ前條ニ記載シタル金額ヲ直チニ所持人ニ支拂ヒ又ハ之ヲ裁判所若クハ銀行ニ預ケ置クコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第八百二條
差入レタル保證又ハ預ケ金ハ後日手形ノ承諾ヲ受ケ又ハ手形金若クハ償還金ノ支拂ヲ受ケ又ハ期滿免除若クハ怠慢ノ爲メニ所持人其手形上ノ權利ヲ失フタルトキハ費用ヲ扣除シテ之ヲ還付ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第八百三條
第八百一條ニ從ヒ手形金ニ諸費用ヲ併セ之ヲ所持人ニ支拂フタル者ハ其所持人ニ對シ手形ニ裏書ヲ爲シ請取ヲ記シタル償還計算書ヲ添ヘテ交付スルヲ要求スルコトヲ得
○本條ハ異議ナシ
于時午後第三時十五分閉會