○第二讀會第二十四回
明治廿年四月七日
欠席 箕作委員
○午前第十時開會
○第六款 保險營業ノ公行
○第七百五十二條
各保險會社ハ其領收スル所ノ保險料及其他ノ收入ヲ年々積立テ年々支拂フ可キ平均保險額ノ二倍以上ニ當ル準備金ヲ作ル可シ此準備金ハ安全ナル證劵トナシ之ヲ裁判所ニ預ケ置ク可シ但此金額ヨリ生スル收入ハ會社ニ歸スルモノトス
（細川委員）
公行トハ行フノ意ニシテ店舖ノ意味ニアラサルヘシ
（本尾委員）
反譯ハ銀行等ノ意味ヲ以テ公行ト云ヒシナルヘシ卽チ公ケナル營業ト云フ義ナリ
（細川委員）
保險ヲ爲スハ必ス公行ト云フコトヲ得ルヤ
（本尾委員）
保險ノ公行トハ必ス之ヲ營業トシテ爲ス場合ヲ云ヒ一己人ノ臨時本法ニ依リテ保險ヲ爲スカ如キハ公行ト云フコトヲ得サルナリ
（鶴田委員）
然ラハ保險ヲ公行ニテ又ハ營業者ニアラスシテモ爲スコトヲ得ヘシト解セサルヘカラス
（周布委員）
公行ハ之ヲ營業ト云フコトヲ得ヘシ何トナレハ營業ニシテ公行ニアラサルモノナケレハナリ
（本尾委員）
公ケトハ衆人ニ對スル公ケニアラスシテ官ノ監督ヲ受クヘキコトヲ云フナリ
（細川委員）
公行トハ會社ト云フ意味ニモ解スルコトヲ得何トナレハ各條ニ會社ハトアレハナリ
（周布委員）
會社トアルハ營業者ト改メハ其疑ヲ解クコトヲ得ヘシ何トナレハ營業者ト云ヘハ一己人タルト會社タルトヲ問ハサレハナリ
（委員長）
歐米ニ於テハ保險營業ヲ一人ニテ爲スモノ稀ナルニ依リ本款ノ如キ會社ヲ基本トシテ規定セシナルヘシ
（細川委員）
安全ナル證劵トアルハ原語ニ適當スルヤ
（本尾委員）
安全ナル方法ニテ確實ナル證劵ニナシト云フ意アリ
（長森委員）
然ラハ「安全ナル證劵ニ換ヘ」トセハ如何（之ニ決ス）
（本尾委員）
公行ノ文字ヲ削除スルコトヲ質問センカ
（委員長）
質問スヘシ
○第七百五十三條
各保險會社ハ每年一回以上其年ノ收入支出槪算書及貸借對照表ヲ製シテ之ヲ廣吿シ且之ヲ各社員及各被保險者ニ送付スルノ義務アリ
○第七百五十四條
裁判所ハ何時ニテモ被保險者若クハ官廳ノ請求ニ依リ鑑定人一名若クハ數名ヲシテ各保險會社營業ノ狀況取引ノ盛衰貸方借方ノ比例及保險業ヲ營ムノ原則ヲ檢査セシメ其檢査ノ結果ヲ被保險者ニ通知シ及之ヲ公吿スルノ權利アリ但裁判所ニ於テ右ノ請求至當ノ理由ニ出テタリト認ムル時ハ保險會社ニ於テ其檢査及吿知ノ費用ヲ擔當ス可シ
○異議ナシ
○第七百五十五條
一種ノ保險業ノ外ニ尙ホ他種ノ保險業若クハ他ノ業ヲ營ム會社ハ其各保險業ヲ別異シテ之ヲ營ミ其收入ハ專ラ其業每ニ積立及使用ス可シ
此規定ハ保險會社破產ノ場合ニ於テモ適用ス
殘餘ノ財團ハ第千五十三條ノ規定ニ從テ分配ス可シ
（長森委員）
第二項及ヒ第三項ハ破產法ニ記スルヲ正當トス
○第七百五十六條
保險會社ニ於テ第七百五十二條ヨリ第七百五十五條ニ至ル規定ヲ犯シ又ハ豫メ總被保險者ノ承諾ヲ經スシテ同業若クハ他業ノ會社ト合併シ又ハ一旦確定シテ被保險者ニ吿知シタル保險業ノ原則ヲ變更シ若クハ實際犯ス時ハ各被保險者ハ豫吿ヲ爲サスシテ隨時保險契約ヲ廢シ且其拂込期日以來ノ法律上ノ利息ヲ要求スルノ權利アリ
○本條ハ期日以來ノ「日」ヲ削ル
○第七百五十七條
被保險者ハ將來義務ヲ履行シ能ハサルコトヲ豫期シ得可キ狀況ニ至リタル保險會社ニ對シ支拂停止ヲ爲スヲ俟タス破產處分ヲ請求スルコトヲ得
○異議ナシ
○第七百五十八條
本店ノ所在地外ニ商業取次人ヲ置キ保險契約ヲ取結フ保險會社ハ其契約ニ付テハ其商業取次人ノ商號又ハ住所ヲ有スル地ノ裁判所ノ管轄ヲ受ケ其裁判所ニ差出ス可キ代人ヲ定メ置ク可シ若シ之ヲ定メサル時ハ其商業取次人ヲ以テ代人ト看做ス可シ
○異議ナシ
○第七百五十九條
第七百七條ニ從ヒ獨立シテ保險契約ヲ取結ハシメンカ爲メニ外國ノ保險會社ヨリ日本國內ニ置キタル商業取次人ハ該保險會社ノ支店ト看做シ支店ニ關スル一般ノ規定及本款ノ規定ヲ適用ス可シ
（細川委員）
取次人ヲ支店ト見ルハ如何
（本尾委員）
若シ支店ト看做ササルトキハ外國ノ本店地ノ裁判所ニ出頭セサルノ不便アリ故ニ支店ト看做スモノトス
（委員長）
本條ハ條約改正後ニアラサレハ實施スルコト能ハサルヘシ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
本條ハ國際條約上ニ大關係ヲ有スルモノナリ
○第七百六十條
本款ノ規定ハ一箇人ニシテ他人ト保險取引ヲ爲シ及組合ニシテ他人又ハ其組員ト保險取引ヲ爲スモノニモ之ヲ適用ス可シ
○異議ナシ
○第十三章 手形及切手
○總則
○第七百六十一條
爲替手形及約束手形ハ差圖又ハ無記名ニテ一定ノ金額ヲ相違ナク支拂フ可キ證劵ニシテ其權利ノ原由ヲ自カラ有スルモノトス
○異議ナシ
○第七百六十二條
手形義務ハ商事ヲ爲シ得ル者皆之ヲ引取ルコトヲ得可シ
○異議ナシ
○第七百六十三條
手形上ニ無能力者ノ署名アルカ爲メニ他ノ署名ノ效力ヲ變スルコトナシ
○異議ナシ
○第七百六十四條
手形ニ記載シタル要件唯外觀ニ止マルアルトキハ其情ヲ知リタル者ニ對シテハ手形ト看做ス可カラス
（細川委員）
外觀ニ止マルトハ如何
（本尾委員）
自己ノ知ラサル三井ヲ以テ支拂人ト爲スカ如シ而シテ其情ヲ知ルトハ此三井ヲ以テ支拂人トシタルハ詐僞ニ出ルコトヲ知リタル場合ヲ云フ
（周布委員）
情ヲ知ルト否トヲ論セス三井ニ於テ支拂ヲ拒ムヲ以テ差支ナカルヘシ
○本條ハ「手形ノ效力ナキモノトス」ニ改ム
正午十二時中止
午後開會
○第七百六十五條
他人ノ委託ヲ受クルコトナク又ハ其代人タル事實ヲ明記スルコトナクシテ他人ニ代リ手形ニ署名スル者ハ自カラ其責ニ任ス
○異議ナシ
○第七百六十六條
手形受取人ハ直チニ振出人ヨリ總テ之二次テ手形ヲ所持スル者ハ前所持人ヲ經由シテ振出人ヨリ番號ヲ附シタル同文面ノ手形數通ヲ請求スルコトヲ得
總テ手形ノ所持人ハ需用ニ隨ヒ自ラ手形ノ騰寫書ヲ製スルコトヲ得
出席岸本委員
（長森委員）
裏書モ亦數通ニ同樣爲スモノナルヘシ
（本尾委員）
然リ
○第七百六十七條
手形法律又ハ商ヒノ慣習ニ依テ例外ト爲ス可キモノ外其文面ノミヲ以テ直接ニ效力アルモノトス
○異議ナシ
○第七百六十八條
法律上ノ要件ヲ闕キ又ハ法律上ノ要件ノ外ニ法ニ戾ルノ條件ヲ加ヘタル手形又ハ文面互ニ牴觸シ法律上許ス所ノ方法ヲ以テ其牴觸ヲ除ク能ハサル手形ハ無效トス
○異議ナシ
○第七百六十九條
法律上ノ要件ニ適合スル手形ノ文面ハ重要ナラサル事件ノ附記ノ爲メニ其效ヲ變セス又其附記ニ由テ手形上ノ義務ヲ生セサルモノトス
○異議ナシ
○第七百七十條
僞造又ハ變造ノ爲替ト雖トモ爲替タルノ效力ヲ失ハス然レトモ僞造變造ノ爲メ義務ヲ生スルコトナク又既ニ生シタル義務ハ之レカ爲メ變スルコトナシ其僞造又ハ變造ニ付キ其情ヲ知リタル各人ニ對シ異議ヲ述ルコトヲ得
（本尾委員）
本條ハ例ヘハ玆ニ手形アリ其手形ハ先ツ有效ノ手形ト看做ス而シテ其手形面ニ僞名ヲ記セラレタルモノハ一向義務ヲ生スルコトナシ卽チ其手形ニハ毫モ關係ナキモノトス然レトモ其爲替ニ裏書シタル義務者ハ爲替カ變造ナリシトキト雖モ翫ニ爲シタル承諾ニ付テハ其義務ヲ免レサルモノトスルナリ尤モ其僞造變造ヲ知リタル者ニ對シテハ皆異議ヲ述ルコトヲ得ルナリ
（細川委員）
手形ハ僞造又ハ變造タルトキト雖モ效アリト云フ方適當スルナリ
（本尾委員）
效力ノ文字ハ原語ニ適當セス原文ハ「義務セラレテアル」ト云フ義ナリ
○第七百七十一條
手形義務ノ負擔ニ付テハ手形ニ記載シタル地ノ法律ニ從ヒ若シ其地名ノ記載ナキトキハ負債者住地ノ法律ニ從ヒ又其履行ニ就テハ履行ス可キ地ノ法律ニ從テ之ヲ定ム可シ
手形權利ヲ執行又ハ保護スル爲メノ處置ハ若シ其手形面ニ別段他ノ地ヲ定ムルニ非サレハ其處置ヲ爲ス地ノ法律ニ從テ之ヲ爲ス可シ
（鶴田委員）
各地ニ於テ法律ノ異ナル例ハ如何
（細川委員）
重モニ外國トノ關係ニ就テ云フナリ
○第七百七十二條
手形又ハ切手ノ現有主ハ正當ノ方法ニ依テス若クハ大過ニ出テテ之ヲ所得シタルトキ又ハ自己ノ爲シタル手形返却ノ訴訟ニ對シ故障ヲ述ヘ得ヘキ事實アルトキニ限リ其返却ヲ爲スノ義務アルモノトス
（細川委員）
本條甚タ了解シ難キ條ナリ
○第七百七十三條
紛失シタル手形ニ付テハ其所有者ヨリ支拂地ノ裁判所ニ申出テ裁判所ハ公吿手續ニ依リ期日ヨリ六ケ月以上ノ期限ヲ定メテ之ヲ無效トスルノ手續ヲ爲スコトヲ得
○第七百七十四條
爲替手形ノ承諾人又ハ約束手形ノ振出人ニ封スル手形上ノ要求權ノ期滿免除ハ支拂期日ヨリ三年トシ所持人若クハ裏書人ヨリ振出人又ハ前裏書人ニ對スル償還要求權ノ期滿免除ハ拒證書ヲ作リタル日又ハ償還要求通知ノ日ヨリ三年トス
期滿免除ハ訴訟ヲ起シ又ハ其他裁判上ノ手續ヲ爲スニ由テ中斷シ裁判所ノ判決ニ由リ又ハ書面ニテ新負債トシテ承認スルニ由テ終ルモノトス
○第七百七十五條
一覽拂ノ手形及一覽後定期拂ノ手形ニ在テハ若シ提示期限前ニ提示セサルトキハ其提示期限ノ經過ノ時ヨリ期滿免除ノ期限ヲ起算ス
○第七百七十六條
期滿免除ニ由リ又ハ法律上ノ行爲ヲ怠リタルニ由テ手形上ノ要求權ヲ失フタルモノハ手形資金ヲ支拂ハサルカ爲メ又ハ其償還ヲ受ケタルカ爲メニ己レヲ利シタル支拂人、振出人、又ハ裏書人ニ對シ第百七十三條ノ場合ニ於テモ其要求權ヲ執行スルコトヲ得
○第一款 爲替手形
○第一節 爲替手形ノ振出
○第七百七十七條
爲替手形ニハ明瞭詳密ニ左ノ事項ヲ揭載ス可シ
第一 振出ノ年月日
第二 手形ノ金額
第三 支拂人ノ氏名
第四 受取人ノ氏名及差圖人又ハ所持人拂ノ旨、支拂ノ期日及場合
第五 手形ト引換ニテ拂渡ス可キ旨
第六 振出人ノ署名
○第七百七十八條
振出人ハ自己差圖ニ手形ヲ振出スコトヲ得又振出ノ地ニ非サル地ニ於テ支拂ヲ爲ス可キトキハ自己ニ宛テ之ヲ振出スコトヲ得
○異議ナシ
○第七百七十九條
手形金額二十五圓以上ニ非サレハ所持人拂ニテ振出スコトヲ得ス
（周布委員）
所持人拂トハ卽チ無記名劵ヲ云フ故ニ無記名トセハ如何
（岸本委員）
無記名ト云フヨリハ所持人拂ト云フ方適當ナリ
（鶴田委員）
然リ此手形所持人ニ御拂被下ト云フモノナレハ全ク記載ナキモノト稱スルヲ得サルナリ
（細川委員）
異字ノ方原文ニ適合スルナリ
○第七百八十條
支拂期日ハ某ノ日又ハ日附後幾日又ハ一覽ノ時又ハ一覽後幾日ト定ム可シ但支拂期日ヲ記セサルトキハ一覽ノ時ヲ以テ支拂期日トス
○第七百八十一條
支拂人ノ住地又ハ他ノ地ヲ以テ支拂地ト爲スコトヲ得但他ノ地ヲ以テ支拂地ト爲シタル場合ニ在テハ手形面ニ別ニ支拂フ可キ人ヲ記スルニ非サレハ支拂人該地ニ於テ支拂ヲ爲ス可シ
○第七百八十二條
爲替手形ハ白地ニテ之ヲ振出シ所持人惡意ナク之ニ振出シ所持人惡意ナク之ニ嗔記スルヲ得可シ
于時午後三時閉會