第五百四十四條

運送狀ハ反對ノ明記アルニ非サレハ差圖證劵トス又無記名ニテ發行スルモ妨ナシ

○第五百四十五條

差立人ハ運送狀一通又ハ數通交付ヲ要求スル事ヲ得

○第五百四十六條

本條ハ異議ナシ其取結ヒタル運送受負契約ヲ日々特設ノ帳簿ニ記入シ且日々之ヲ終結シテ署名ス可シ各運送狀ハ帳簿記入ノ文ト同一ナラサル可カラス

○第五百四十七條

運送狀中ノ記載ニシテ運送受負契約、現行ノ法律命令及諸規程又ハ並日通伸ノ法理ニ背戾スルモノハ無效トス

○第五百四十八條

運送受負人ハ左ノ諸項ノ金額ヲ要求スル事ヲ得

第一　運送受負人ニ於テ運送品ヲ抵當ト爲シタル前貸及全部若クハ幾分立替タル運送賃ノ償還及其利息

第二　運送品ニ關シ運送受負人ノ支拂ヒタル必要若クハ有益ナル立替金

第三　地方ノ慣習若クハ契約上ニテ定マリタル運送受負ヒ手數料但運送賃額ヲ定メタル場合ニ於テハ明約アル時ニ限ルモノトス

運送受負人ハ右要求權ニ付キ第四百四十四條及第四百四十五條ニ從ヒ運送品ノ留置權ヲ有スルモノトス

○第五百四十九條

運送受負人ノ要求權ハ特約アルニ非サレハ到達地ニ於テ運送品ヲ引渡ス時運送受負人若クハ之二次クノ遞送者若クハ運送ノ全部若クハ幾分ヲ執行シタル者ヨリ始テ之ヲ主張スル事ヲ得

○第五百五十條

要求及抗辨ハ運送受負人ニ對シテモ其運送受負人ノ要求權ヲ有スル各人ニ對シテモ之ヲ爲ス事ヲ得

○第五百五十一條

本款ニ規定シタル原則ハ旅客、新聞紙、電報、印刷物及其他各物品ノ運送廣吿ノ取次及其他ノ運送事業ヲ常業トシテ營ム所ノ各人ニ適用ス可キモノトス然レ供運送仲立人、商業取次人、商況聞合所等ニハ之ヲ適用ス可カラス

○第七款　運送人

○第五百五十二條

運送人ハ陸上又ハ內地水上ニ於テ商品其他物品ノ運送ヲ營業トスルモノニシテ運送ノ爲メ物品ヲ引受ケタル時ヨリ其物品ノ紛失損害及延着ニ付キ責任アルモノトス但差立人ノ過失又ハ其物品ノ性質又ハ抗拒ス可カラサル威カニ依テ生シタルモノハ此限ニ在ラス

○第五百五十三條

確定ノ期限內ニ送達セサルカ或ハ其約定ナキ場合ニ當リ通例其運送ニ要スル期限內ニ送達セサル時ハ其物品ハ延着シタルモノトス右期限ハ總テ運送狀ノ日付若クハ運送引受ノ日ヨリ起算ス可シ

○第五百五十四條

物品延着ノ損害賠償ハ運送賃ノ三分一トス但特約アル時又ハ不相當ト認ム可キ時ハ此限ニ在ラス

○第五百五十五條

運送品中ノ一部分紛失又ハ損傷シタル時ハ之カ爲メ減少シタル價額ヲ賠償シ若シ其殘部分ノ使用シ又ハ賣却シ得可カラサル時ハ其全部ノ價額ヲ賠償ス可シ

○第五百五十六條

延着シタルカ爲メ又ハ一部分ヲ紛失若クハ損傷シタルカ爲メニ運送品ノ全部ヲ使用シ又ハ賣却シ得可カラサル時或ハ其價額少ク供四分ノ三ヲ減少シタル時ハ其限品ヲ運送人ノ計算ニ放任シテ全部價額ノ賠償ヲ要求スル事ヲ得

○第五百五十七條

賠償額ハ何レノ場合ヲ問ハス商品ニ在テハ之ヲ引渡ス地ノ商ヒ價額ニ從ヒ其他ノ運送品ニ在テハ之ヲ引渡ス地ノ普通價額ニ從ヒ第三百七十四條ニ規定シタル原則ニ準據シテ之ヲ算定ス可シ但運送狀中ニ之レヨリ高キ價額ヲ記載シタル時ハ此限ニ在ラス

○第五百五十八條

價額又ハ損害ノ範圍ニ係リ關係者間ニ爭論起ル時ハ鑑定者ノ判定ニ付ス可シ鑑定者ハ關係者雙方ニ於テ之ヲ選擧ス可シ若シ關係者互ニ其撰任ニ同意セサル時ハ裁判所ヨリ之ヲ命ス可シ

○第五百五十九條

金銀貨弊、貴重ノ鑛屬、有價證劵及證書類、寳石、金銀ノ器物其他ノ高價物ニ在テハ運送差立ノ際其物品ノ性質及其實價額ヲ吿ケ且適當ニ廣吿シタル別段ノ運賃表ニ從ヒ高額ノ運賃ヲ拂フ可キ事ヲ約シタル時ニ限リ實價ニ從テ賠償ヲ要求スル事ヲ得

○第五百六十條

其他ノ物品ニ付テハ運送人豫メ適當ニ廣吿シタル確定ノ運賃表ヲ以テ荷物一箇若クハ量目ニ隨ヒ某金額マテ單純ナル價額賠償ヲ爲スノ規約ヲ立ツル事ヲ得

○第五百六十一條

普通ノ賠償額ハ明約及至當ノ理由アルニ非テハ之ヲ增減スル事ヲ得ス

○第五百六十二條

甚シキ怠慢又ハ惡意アリシ運送人ハ何レノ場合ヲ論セス第三百八十條及第三百八十一條ニ從ヒ充分ノ損害賠償ヲ爲ス可キ義務アルモノトス

○第五百六十三條

運送人ハ其使役人及其他自己ノ引受ケタル運送ニ從事シタル諸人ニ代テ責任ヲ負フモノトス

○第五百六十四條

一運送人ノ引受ケタル運送ヲ次ノ運送人ニ於テ執行スル時ハ各運送人全責任ヲ負フモノトス

○第五百六十五條

各運送人ハ運送ノ委託ヲ受ケタル物品ニ付テハ之ヲ差立人又ハ受取人ノ取次人ト看做シ其差立人又ハ受取人ニ對シ其物品ヲ保存シ且遲延ナク運搬スルカ爲メニ要スル所ノ注意ヲ怠ラサルノ責任ヲ負フモノトス

○第五百六十六條

第五百四十二條ヨリ第五百五十條ニ至ルマテノ規定ハ其運送受負人ニノミ效力アルモノヲ除クノ外運送人ニモ亦之ヲ適用ス可キモノトス

○第五百六十七條

差立人又ハ受取人ハ運送前又ハ運送中約定ノ運送ヲ中止若クハ變更スル事ヲ得但之カ爲運送人ニ損害ヲ生セシメタル時ハ之ヲ賠償ス可シ

○第五百六十八條

抗拒ス可ラサル威カ其他偶然ノ事變ニ由テ約定ノ邏送ヲ始メ又ハ續行スル事ヲ妨ケラレ之ヲ爲ス能ハス又ハ其危險ナル時ハ契約者雙方ニ於テ前條ノ權利ヲ有スルモノトス但此場合ニ於テ運送人ハ唯タ既ニ爲シタル運送ニ封スル運送賃ノ支拂ト諸費用及立替金ノ辨償トヲ要求スル事ヲ得

○第五百六十九條

運送人其過失若クハ其所爲ニ依リ約定ノ運送ヲ爲サス若クハ中止シテ別ニ相當ノ運送人ヲ立サル時ハ差立人受取人又ハ其代理人ハ解約シ又ハ賠償ヲ要求スル事ヲ得

○第五百七十條

差立人ハ約定ノ運送執行前又ハ執行中ハ其運送品ニ付テ約定外ノ處分ヲ差圖スル事ヲ得運送人ハ其物品又ハ運送狀ヲ最初ニ定メタル受取人ニ交付セサル間ハ其差圖ニ從ハサル可カラス

○第五百七十一條

運送人ハ其委託運送ニ特別ノ危險アルカ或ハ其運送營業ノ區域外ナル時ノ外法律上ノ理由ナクシテ運送委託ノ引受ヲ拒ミ又ハ其引受ニ付テ困難ナル約束ヲ立ツルノ權利ナキモノトス殊ニ運送人ハ非常ノ狀況アルニ非サレハ運送具又ハ運送上設置ノ不完全ナルヲロ實トスル事ヲ得ス

○第五百七十二條

運送狀中又ハ其他ニ指定シタル受取人ハ自己ノ名義ヲ以テスルト他人ノ名義ヲ以テスルトヲ問ハス運送狀到達地ニ到着シル後運送狀ニ照ラシ運送契約上ノ要求ヲ爲ス事ヲ得

○第五百七十三條

運送狀中又ハ其他ニ指定シタル受取人ニ於テ運送品ノ引受或ハ差立人ヨリ定メタル約束ノ履行ヲ拒ミ或ハ運送賃及其他運送人ノ當然ナル要求金ノ支拂ヲ爲サス又ハ受取人ノ所在ヲ知リ能サル時ハ運送人其運送品ヲ公ケノ倉庫又ハ裁判所ニ預ケ第四百五十一條ノ規定ニ從ヒ全要求金額ニ滿ルマテヲ限トシテ之ヲ賣却スル事ヲ得

○第五百七十四條

受取人別ニ異議ヲ述ヘスシテ運送品ヲ領收シ且運送人ニ支拂ヲ爲シタル時ハ運送人ニ對スル要求權ハ總テ消滅スルモノトス

○第五百七十五條

運送品ノ紛失、損傷又ハ延着ニ係リ運送人ニ對シテ爲ス可キ訴訟及抗辨ハ其物品ヲ引渡シタル日若シ全部紛失ノ時ハ其引渡ス可キ日ヨリ起算シ滿一ケ年ヲ以テ其期滿免除トス

○第八款　旅客運送

○第五百七十六條

陸上又ハ內地水上ニ於テ運送賃ヲ受ケ旅客ヲ運送スル者ハ其運送中至密ノ注意ヲ爲ス可キノ義務アリ之ヲ怠リ旅客ノ身ニ傷害ヲ加ヘタル時ハ賠償セサル可カラス若シ之ニ付テ爭論起ル時ハ其過失ナキノ證據ヲ擧ク可シ

○第五百七十七條

傷害賠償ハ其災害ニ由リ被害者ニ生セシメタル治療費及特別ノ給養費ノ賠償額ト慰籍金トヲ以テ成ルモノトス慰籍金ハ其傷害ノ輕重、日數結果並ニ被害者ノ營業上ノ關係ニ從ヒ之ヲ算定ス可シ若シ協議調ハサル時ハ裁判所ノ判決ニ依ル可シ

○第五百七十八條

災害ノ爲メニ死亡シ又ハ廢疾不具若クハ永久營業無能力トナリタル時ハ慰籍金ノ額ヲ定ムルニ當リ併セテ其被害者ノ家族ノ養料ヲモ算入セサル可カラス

○第五百七十九條

旅客旅行李及其他ノ行李ヲ旅客運送人ニ交付シ又時宜ニ依リ之ヲ明吿シタル時ハ旅客自ラ其荷物ヲ携帶スルト否トヲ問ハス又其行李ノ爲メニ別段ノ運賃ヲ拂フ可キト否トヲ問ハス旅客運送人ハ其行李ニ付テ普通ノ運送人ト同一ノ責任アルモノトス

○第五百八十條

旅客運送人ノ旅客手行李ニ付テ責任アルハ其手行李直ニ相當ノ旅行需要ニ充ツ可キモノニシテ且過失ノ旅客運送人ニ歸ス可キ時ニ限ル

○第五百八十一條

旅客ノ旅用行李ハ若シ他ノ委託アルニ非サレハ到達ノ時之ヲ旅客ニ交付シ若クハ三日間貯藏ス可シ此期限經過後ハ第三百五十三條ニ規定シタル原則ニ從テ旅客運送人ノ責任ヲ定ム可シ

○第五百八十二條

旅客及其行李ノ運送ニ付テハ本款諸條ノ外前款ノ諸條ヲ準用ス可シ但旅客ノ身體衣類ニ對シテハ留置權ヲ執行スル事ヲ得ス

○第五百八十三條

旅客及其行李ニ對シテハ乘客賃又ハ行李運賃ヲ前拂シタルト否トヲ問ハス又或ル場合ニ於テ之ヲ支拂フヲ要セサル時ト雖モ旅客運送人其責任ヲ免レサルモノトス

○第九款　郵便、鐵道、電信

○第五百八十四條

本章ノ規定ハ公ケノ郵便、鐵道、及電信ニモ亦適用ス可キモノトス但法律命令又ハ公ケノ規則並ニ國際條約ニ於テ別ニ定ムルモノハ此限ニ在ラス