○第二讀會第十四回
明治二十年三月廿四日
欠席 箕作委員
仝 周布委員
仝 岸本委員
午前
○第四百四十條
負債主ヨリ債主ニ對シ支拂又ハ其他方法ヲ以テ辨償ス可キノ申立ヲ爲シ速ニ之ヲ實行スル事ヲ得可キ場合ニ於テハ裁判所ハ其質物ノ賣却ヲ停止スル事ヲ得
（細川委員）
「又ハ」ノ二字ヲ削除スヘシ（之ニ決ス）
（委員長）
本條ハ前數條ト連續セス突然ニ云フモノヽ如ク甚タ順序ヲ得サルナリ
（本尾委員）
第四百二十六條及第四百二十八條等ニ連絡ヲ持ツモノナリ
（細川委員）
本條ハ第四百二十九條ノ次ニ移スヲ適當トス
（委員長）
然リ就テハ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
○第四百四十一條
質物ヲ現有スルモノハ質入主ニ對シ其亡失損傷ノ責ニ任ス可キ者トス但其現有者ノ過失ニ歸ス可ラサル場合ハ此限ニ在ラス
○本條ハ異議ナシ
○第四百四十二條
要求權ノ質入ハ差圖證劵又ハ無記名證劵ヨリ生スルモノヲ除キ書面ヲ以テ讓渡ノ手續ヲナシ又ハ負債主ニ報知スルニ非サレハ之ヲ爲ス事ヲ得ス
要求權ヲ質ニ取リタル債主ハ賣却ニ代ヘテ自ラ其權ヲ執行スル事ヲ得金錢ニ非サル要求權ナル時ハ其物品ヲ質物トシテ取扱フ事ヲ得可キモノトス
（本尾委員）
「セツシヨン」ノ手續ヲ爲スハ手形ニ在テ裏書ヲ爲スニ等シキモノトス
（鶴田委員）
賣却ニ代ヘテノ語ハ如何ナル理由アリテ記スルヤ
（本尾委員）
凡ソ質物ハ賣却スルヲ原則トスルニ依リ卽變則トシ賣却ニ代ヘト爲シタル所以ナリ
○第四百四十三條
政府及ヒ公ケノ國立銀行其他ノ公設場ノ質權ニ關スル法律上ノ特權ハ前諸條ノ爲ニ妨ケラル工事ナシ
（細川委員）
第三百二十二條ノ文例ヲ一定シ本條ト同シク前項ノ爲メニ妨ケラル工事ナシト爲スヘシ（之ニ決ス）
○第十款 留置權
○第四百四十四條
商業取引上ヨリ他人ノ所有物ヲ現有シ又ハ之ヲ發見シテ現有シ之カ爲メ勞力、費用、立替其他支拂又ハ手數料ヲ要シタルニ依リ要求權利ヲ得タル者ハ其要求ノ期限ニ至リ相手方要求ノ全額ヲ支拂ヒ又ハ其他辨償方法若クハ擔保ノ方法ヲ立テサル時ハ其物件又ハ代價ヲ留置クノ權アルモノトス
（細川委員）
「又ハ」ヲ削ルヘシ（之ニ決ス）
（長森委員）
商業取引ハ商ヒノ所爲ト改ムルナルヘシ
（本尾委員）
先ツ原案ノ通リニセハ如何（之ニ決ス）
○第四百四十五條
交互計算上ノ差引殘額ニ對シ又ハ負債主支拂ヲ停止シタル時未タ支拂期限ニ至ラサル商業取引上ノ要求權ニ對シ拂主ハ正當ニ得タル負債主ノ各種所有物ニ付キ留置權ヲ執行スル事ヲ得
（長森委員）
本條ハ破產債主ノ普通債主ノ權ヲ害スルモノトナルナリ
（本尾委員）
然リ然レ供商事上ニ於テハ民事ト異ナリテ自己ニ保有スルモノハ總テ留置權ノ目的トナリテ特權アル債主トスルナリ之レ債主ヲ保護スルノ意ニ出タルナリ
（細川委員）
殘額ノ下ニ「要求」ノ字ヲ挿入スヘシ（之ニ決ス）
○第四百四十六條
留置權ハ物件ノ現有ヲ失フト共ニ消滅スル者トス但權利者自己ノ便宜ノ爲ニ其物件ヲ移轉シ新現有主ニ自己ノ留置權アル事ヲ示シタル時ハ此限ニ在ラス
○本條ハ異議ナシ
○第四百四十七條
物件ノ一部ヲ交付スト雖モ其殘餘ノ部分ニ對シ充分ナル留置權ノ執行ヲ爲ス事ヲ得
（細川委員）
「他ニ」ノ字ヲ存スルヲ可トス（之ニ決ス）
又充分ハ十分ト爲スヘシ第三百八十條モ亦同シ（之ニ決ス）
○第四百四十八條
留置權ノ全部又ハ一部ハ明約又ハ默約ヲ以テ之ヲ抛棄スル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
出席岸本委員
○第四百四十九條
留置權ハ要求權ノ期滿免除又ハ其他要求權ノ消滅ニ由テ共ニ消滅スルモノトス然レ供負債主ノ意ニ出ルト否トヲ問ハス其物件ノ所有權他ニ移轉スルニ由テ消滅セサルモノトス
○第四百五十條
留置權ハ債主ヨリ之ヲ他人ニ讓渡ス事ヲ得ス
○本條ハ異議ナシ
○第四百五十一條
債主留置權ノ執行負債主ニ報知シ相當ノ期限內ニ支拂又ハ其他ノ方法ヲ以テ辨償若クハ擔保ヲ受ケサル時ハ第四百二十六條及第四百二十八條ノ規定ニ從ヒ留置ノ物件ヲ賣却シ其代價ヲ以テ辨償ニ充ル事ヲ得
（細川委員）
「報知」ヲ「通知」ニ改メ「又ハ」ヲ削ルヘシ（之ニ決ス）
○第四百五十二條
雙務ノ契約ニ由テ相手方ノ契約履行ヲ要求スルノ權利アル者ハ其相手方ニ於テ履行スル迄自己ノ義務ニ係ル物件ヲ留置ク事ヲ得但反對ノ約定又ハ反對ノ商ヒノ慣習アル時ハ此限ニ在ラス
（岸本委員）
雙務ノ契約ハ「雙務契約」トシ「反對ノ」ヲ削レハ如何（之ニ決シ「反對ノ」ヲ削ル）
正午第十二時中止
同第三十分開會
○第十一款 差圖證劵及無記名證劵
○第四百五十三條
金額又ハ物件ノ交付ヲ要求シ得ル契約書ノ權利ハ其書中ノ明文又ハ商ヒノ慣習ニ由テ差圖ヲ以テ移轉スルモノニ限リ裏書ヲ以テ之ヲ第三者ニ移轉スル事ヲ得
（岸本委員）
「契約書ノ權利ハ其書中」トアルヲ「權利ハ其契約書中」ト改ムルヲ可トス（之ニ決ス）
（細川委員）
商業慣習ノ文字ハ不用ナルカ如シ
（本尾委員）
否荷預リ證書等ハ明文ナキモ差圖ヲ以テ移轉スル事ヲ得ルノ類アリ故ニ決シテ不用ト認ムル事ヲ得ス
○第四百五十四條
差圖證劵ノ發行者又ハ裏書人ハ其劵面ニ差圖ヲ以テ移轉スル事ヲ得サル旨ヲ記載シ裏書流通ヲ止ムル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第四百五十五條
差圖證劵及各裏書ニハ年月日ヲ記載シテ發行者各裏書人署名ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百五十六條
發行又ハ裏書ノ原由ハ劵面ニ記載スルヲ要セス但第四百二十五條ノ場合ハ此限ニ在ラス
○本條ハ異議ナシ
○第四百五十七條
差圖證劵ハ略式ヲ以テ之ヲ發行シ又ハ裏書スル事ヲ得
（岸本委員）
略式トハ白地裏書ヲ以テトセハ如何（之ニ決ス）
（細川委員）
第七百八十二條等ニテハ白地トセリ又白地ヲ以テ裏書スルトハ如何
（本尾委員）
以後ノ權利者ニ於テ時ニテモ其氏名ヲ記入スル事ヲ得ル方法ニ爲セシモノヲ云フ
○第四百五十八條
差圖證劵ノ發行者ハ豫メ承諾ヲ爲サスト雖モ劵面ニ記載シタル金額又ハ物件ヲ其裏書讓受人ニ交付スルノ義契アルモノトス但其義契ハ領收證ヲ記シタル差圖證劵ノ呈示及交付ヲ受ケ且第四百四十四條ニ依リ留置權アル時ハ其要求ヲ充タシメタルニ非レハ之ヲ書スヲ要セス
（細川委員）
「物品」ヲ「物件」ニ改メ「蓋」ノ下ニ「ク」ヲ加フヘシ（之ニ決ス）
又引受ハ爲替ニ於テ承諾トセシニ依リ原案ニ復シ「承諾」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
（本尾委員）
「其裏書讓受人」ヲ「被裏書人」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
退席長森委員
○第四百五十九條
差圖證劵ノ發行者ハ呈示者ノ正否ヲ檢査スルノ權利アルモ其義務ナキモノトス然レ供甚シキ怠慢又ハ惡意ニ出タル時ハ損害ヲ受ケタル者ニ對シ其責ヲ負フ可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百六十條
差圖證劵ノ發行者ハ前二條ノ旨趣又ハ其劵面ニ基ツキタル抗辨ヲ爲スノ外其義務ノ履行ヲ拒ム事ヲ得ス
○本條ハ異議ナシ
○第四百六十一條
裏書ニ依テ交付セラレタル物件ニ對スル讓受人ノ權利ハ其讓受人讓渡人トノ契約ニ由テ定マルモノトス
○本條ハ文例ニ依リ「讓受人」ヲ「被裏書人」ニ「讓渡人」ヲ「裏書人」ニ改ム
（細川委員）
契約ニ由テ定マルトハ如何
（本尾委員）
雙方ノ間ノ關係ハ賣買ナルヤ贈與ナルヤ此性質ニ從ヒ雙方ノ關係ヲ定ムルヲ云フ
（委員長）
然ラハ「契約ノ性質」ニ由テト爲スヘシ（之ニ決ス）
（岸本委員）
契約ノ條件トセハ如何何トナレハ性質ノミナラス有期又ハ條件付ナル事アレハナリ若シ條件ノ二字ニ改ムルヲ不可トセハ寧ロ單ニ契約トシ置クニ如カス
○第四百六十二條
盜難遺失其他紛失シタル差圖證劵ハ裏書シタルト否トヲ問ハス其權利者ニ於テ之ヲ廢棄ノ手續ト爲ス事ヲ得
（細川委員）
第七百七十三條ト同ク「無效トスル事ヲ得」トセハ如何
（委員長）
無效トスルノ手續ヲ爲ス事ヲ得トセハ如何（之ニ決ス）
○第四百六十三條
切手切符其他無記名證劵ハ授受ノミヲ以テ移轉スル事ヲ得其所持人ノ發行者ニ對シテ有スル要求權ハ其劵面ニ記載シタル規約特別ノ法律命令又ハ慣例若クハ商ヒノ慣習ニ從テ定マルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第八章 取次人、仲立人、仲買人、運送受負人、運送人
○第一款 總則
○第四百六十四條
取次人、仲立人、仲買人及ヒ運送受負人ノ權利義務ニシテ下諸條ニ於テ規定セサルモノハ第七章第六款ニ依ル可シ
○本條ハ異議ナシ
○第二款 商業取次人
○第四百六十五條
商業取次人トハ他人ノ商事ニ付代理ヲ爲スヲ以テ營業トスル商人ヲ云フ
○本條ハ異議ナシ
○第四百六十六條
取次人ハ自己ノ計算ヲ以テ商業又ハ其他ノ職業ヲ營ミ又數人ノ代理ヲ擔當スル事ヲ得但一箇ノ取引ニ付同時ニ雙方ノ代理タルヲ得サルヲ通例トス
○本條ハ異議ナシ
○第四百六十七條
取次ノ契約ハ一個ノ取引ナルト「種類若クハ數種類ノ取引ナルト又定期ナルト無定期ナルトヲ問ハス明約又ハ默約ヲ以テ之ヲ取結フ事ヲ得又一方ノミノ意見ヲ以テ何時ニテモ之ヲ解除スル事ヲ得然レ供契約中ヨリ生スル權利及契約解除ニ依テ一方ニ被ラシメタル損害ヲ賠償スルノ義務ハ消滅セサルモノトス
（委員長）
一事トハ佛語ノ「セルテソ」ニ當ルナリ
（岸本委員）
然ラハ一個トセハ如何（之ニ決ス）
○第四百六十八條
取次人ハ別段ノ請求ヲ受ケサルモ委託事業ノ全體ニ付委託者ノ利益ヲ謀ルノ義務アルモノトス然レ供己レノ受ク可キ金圓ノ拂渡ヲ其期限ニ至リ尙ホ受ケサル時ハ委託ノ事業ヲ繼續スルノ責ナキモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第四百六十九條
取次人ノ委託者ニ對スル代理ノ權限ハ其委託又ハ後ニ附與シタル認諾ニ依テ定マルモノトス常置ノ商業取次人委託者ノ認諾ヲ得タル時ハ其情況又ハ本人ノ明言ニ依リ反對ヲ表スルニ非サレハ之ヲ以テ繼續ノ委託ト看做スヘシ
（細川委員）
前請求ハ常置ト否ヲ問サル取次人ニ就キテ云フ
（本尾委員）
然リ
（鶴田委員）
常置トハ「賴ミ付」ト云フ意ナルヘシ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ「附與シ」ヲ「與ヘタル」ニ「常置ノ取次人委託者ノ認諾ヲ得タル時ハ」ヲ「其認諾ヲ得タル場合ニ於テ常置ノ取次人ハ」ニ改ム
○第四百七十條
取次人ハ明言ノ委託（第四百六十九條）ヲ受ルニ非レハ契約ノ取結ヲ爲ス事ヲ得サルヲ通例トス
○本條ハ例ニ依リ（第四百六十九條）ヲ削ル
于時午後第二時四十五分