○第二讀會第十三回
明治二十年三月廿五日
欠席 箕作委員
仝 岸本委員
○午前
○第四百十一條
雙方每期限ノ末ニ計算ヲ完了シ契約上ノ期限又ハ相當ノ期限內ニ其計算書ヲ相手方ニ送付シテ其承認又ハ異議ノ申出ヲ求ム可シ
（細川委員）
契約上ノ期限又ハ相當ノ期限トハ每期限トハ別ナルヤ
（本尾委員）
然リ每期限ノ終期前ニ計算ヲ送付シテ幾日マテニ故障ヲ申出テヨト云フノ意ナリ故ニ每期限ヨリ幾分カ先キニ延ヒルナリ
○本條ハ異議ナシ
○第四百十二條
異議ヲ申立テス或ハ依然交互計算ノ關係ヲ繼續スル時ハ其計算ヲ默認シタルモノト看做ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百十三條
交互計算ニ屬スル事件ニ付各一個ノ要求權利ハ交互計算ノ關係ヲ廢スルカ或ハ計算ニ對シ爭論アル時ニアラサレハ之ヲ主張スル事ヲ得ス
出席岸本委員
（細川委員）
交互計算ノ要求ハ雙方ノ計算ヲ合セタル差額ニ對シテノミ爲スヲ得ストアレ供其之ヲ爲スニ付テハ矢張幾分カ互ニ要求ヲナス事ナシトセス
（本尾委員）
然リ互ニ其要求ヲナス事アルヘシ併シ其中ノ一個又ハニ個ヲ交互計算上ヨリ拔キテ要求スル事ヲ得ス此場合ニ於テハ必ス交互計算ヲ廢シタル後ニアラサレハナス事ヲ得サルヲ云フ
○本條ハ左ノ如ク改ム
交互計算ニ屬スル事件ニ付テハ交互計算ノ關係ヲ廢スルカ或ハ計算ニ對シ爭論アル時ニアラサレハ一個ノ要求權利ヲ主張スル事ヲ得ス
○第四百十四條
計算ノ承認ヲ經タル上甲者若クハ乙者ニ屬ス可キ差引殘額ハ單ニ其計算ニ憑據シテ之ヲ要求スル事ヲ得ス
（長森委員）
計算トハ計算書ヲ云フヤ
（本尾委員）
否單ニ計算ノ事ヲ云フ可シ併シ實際ハ計算書ニ付テ要求スルモノトス
（長森委員）
若シ承認ヲ得タル後訴訟ノ起リシ時ハ其計算書ノミヲ以テ證據トナス事ヲ得ルヤ
（本尾委員）
然リ其場合ニ於テハ差引殘額ノミヲ以テ證據トナス事ヲ得ヘシ
○本條ハ異議ナシ
○第四百十五條
反對ノ契約アルニアラサレハ每期限ノ末ニ生スル差引殘額ハ新負債額トシテ後期ノ計算ニ移ス事ヲ得可シ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
每期ノ末ニ生スル差引殘額ハ反對ノ契約アルニ非サレハ新負債額トシテ後期ノ計算ニ移ス事ヲ得
○第四百十六條
他ノ契約若クハ慣習ナキ時ハ總テ商事ノ相互ノ權利義務ハ交互計算法ヲ以テ之ヲ處理スル事ヲ得可シ
（岸本委員）
本條ハ交互計算ヲ爲サシムルトスルモ必ス一方ニ於テ承諾スルニアラサレハ爲シ得サルモノナリ若シ果シテ然ル時ハ本條ヲ揭クルモ必要ナキカ如シ
（周布委員）
否反對ノ契約ナキ以上ハ商事上ノ權利義務ハ必ス本條ニ據ラシムルノ精神ナルヘシ
（本尾委員）
然リ雙方ノ承諾ノ有無ニ關セス必ス交互計算法ニ據ラシムルノ精神ナリ
（岸本委員）
然ラハ雙方ノモノハ勿論裁判官ト雖トモ隨分ニ此處分ヲ爲ス事ヲ得ヘシ
（鶴田委員）
然リ
○本條ハ「他」ヲ「反對」ニ改ム
○第四百十七條
取引上甲者常ニ權利ヲ得乙者ハ時 割拂ヲ以テ支拂ヲ爲シ之ニ依テ交互計算ノ關係ヲ以テスル時ハ其要求權利ハ交互計算ノ方法ニ憑據シ其期限ニ依テ之ヲ主張スル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第四百十八條
交互計算中ノ要求權利ニ付テハ延滯ノ有無ニ拘ハラス又契約上ノ取極ナキモ相當ノ利息ヲ付ス可キモノトス
（鶴田委員）
延滯ノ有無トアリテハ延滯セサルモ利息ヲ付スルト云フニ解セラル故ニ要求權利ノ生シタル時ハ直ニ利息ノ生スルモノト改ムル方可ナルカ如シ
（本尾委員）
契約シテ直ニ拂込ミタル時ハ其日ヨリ利息ノ生スルヲ云フ卽チ權利ノ成立タル日ヨリ直ニ利息ヲ付スルヲ云フ敢テ延滯ノ有無ヲ問ハサルナリ
（周布委員）
ロエスレル氏ノ商法主義ニ於テハ延滯スル時ハ直ニ利息ヲ生セシムルノ精神ナリシヤ
（本尾委員）
然リ延滯ノ場合ニ於テハ直ニ利息ヲ生スルノ精神ナリト思意セリ
○本條ハ異議ナシ
○第四百十九條
每期限ニ生スル計算ノ差引殘額ニ就テハ其期限ノ末日ヲ以テ其支拂期日ト看做ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百二十條
交互計算ノ關係ハ其中ニ在ル要求權利及負債ニ付キ第三者ニ對シテ其效ナキモノトス
○本條ハ左ノ如ク改ム
第四百二十條交互計算中ニ在ル要求權及負債ニ付キ交互計算ノ關係ハ第三者ニ對シ其效ナキモノトス
○第四百二十一條
交互計算ノ關係ハ何時ニテモ一方ヨリ隨意ニ之ヲ辭スル事ヲ得ルノ外一方ノ死シテ又ハ破產ニ依テ自ラ解クルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第九款 質入法
○第四百二十二條
商業取引上ノ要求權ヲ鞏固ナラシムル爲メノ動產ノ質入ハ總テ書面ヲ以テ其契約ヲ爲ス可シ其契約書ニハ要求權成立ノ年月日金額及原由並ニ質入ノ年月日特ニ其物件ヲ記載シタルニ非サレハ契約ノ效ナキモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第四百二十三條
債主ハ質物ヲ賣却シ其要求額ヲ補償スルノ權利アルモノトス但其質物債主又ハ其代理者ノ現有ニ歸シタル時ニ限ル可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百二十四條
積荷證書、藏荷證書又ハ其他裏書ヲ以テ記載ノ物品ニ對スル處分權讓受人ニ移轉スル事ヲ得可キ證書ノ裏書交付ハ物品ノ現有ヲ移轉シタルト同一ナリトス
○本條ハ「又ハ」ノ二字ヲ削ル
○第四百二十五條
差圖證書ヲ質物トスル時ハ其裏書ニ質入ノ關係ヲ登記シ之ヲ質取主ニ交付ス可シ
○本條ハ「關係」ヲ「旨」ニ改ム
○第四百二十六條
負債主其辨償ヲ延滯スル時ハ債主ハ質入契約書ヲ裁判所ニ差出シ質物賣却ノ差圖ヲ受ケテ之ヲ賣却スル事ヲ得其負債主ニ對シ別段ニ訴訟ヲ起スヲ要セス
裁判所ノ差圖ハ遲滯ナク債主之ヲ負債主ニ通知ス可シ
○本條ハ差圖ヲ命令ニ改ム
○第四百二十七條
質入契約中ニ承諾ノ旨ヲ明記シ又ハ差圖證劵ヲ質入シタル場合ニ於テハ總テ裁判上ノ手續ヲ爲サスシテ其質物ヲ賣却スル事ヲ得
○第四百二十八條
前三條ノ場合ニ於テハ官ヨリ命セラレタル商業仲立人又ハ競賣營業人ヲシテ競賣セシメ又其物品ノ相場所ニ於テ賣買ス可キモノナル時ハ相場所ニ於テ之ヲ公賣セシム可キ事ハ遲クモ賣却期日ヨリ八日以前ニ之ヲ負債主ニ通知ス可キモノトス
○異議ナシ
○第四百二十九條
前條ニ記載シタル期限內ニ於テハ負債主ハ債主ニ對シ負債ヲ辨償シテ質物ノ還付ヲ請求スルノ權利アルモノトス
○本條ハ「於テハ」ヲ「在テハ」ニ改ム
○第四百三十條
元金及利息其他必要ナル實費ヲ質物賣拂代價ヨリ引去リ剩餘アル時ハ之ヲ負債主ニ還付ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四百三十一條
負債主ハ質入ヲ爲シタルニ由テ質物ヲ賣却スルノ權利ヲ失フ事ナシ之ヲ賣却シタル時ハ債主ニ對シ其代價ヲ以テ質入負債ノ全額ヲ辨償ス可キモノトス之ニ反スル時ハ刑法第三百九十條ニ依リ處分ス可シ
第三百九十條ヲ第三百九十五條ニ改ム
○第四百三十二條
第三者ニ質入トナリタル物品ナルヲ以テ之ヲ購買スル者ハ其代價中ヨリ質入負債ノ全額ニ及フ迄ノ金額ヲ質取主ニ對シ直接ニ辨償ス可シ之ニ反スル時ハ前條ノ罰ニ處ス可シ
○第四百三十三條
數人ニ質入トナリタル一箇ノ物件ニ付テハ脅迫隱匿ノ所爲又ハ隨時返還ノ約ニ非ラスシテ正當ニ之ヲ現有スル者其賣却ノ先權ヲ有ス
○第四百三十四條
質取主ノ內甲者ハ物件ヲ所持シ乙者ハ其處分證書ヲ所持スル時ハ甲乙ノ內最初ニ物件又ハ證書ヲ領收シタル者其賣却ノ先權ヲ有ス
○第四百三十五條
物件ノ所有主又ハ所有主ヨリ物件處分ノ委託ヲ受ケタル代理者又ハ何人タリ供盜品遺失ニアラサル物件ヲ正當ノ方法ニ依テ物件ヲ現有スル者ノ爲シタル動產質入ハ債主善意ナル時ニ限リ之ヲ有效トス
○第四百三十六條
所有主外ノ者ヨリ質入シタル物件ハ其未タ賣却セラレサル間ハ所有主ヨリ債主ニ對シ負債全額ヲ償却シ其還付ヲ要求スル事ヲ得
○第四百三十七條
有效ノ質入物件賣却セラレ其代金拂濟トナリタル時ハ其物件ニ對スル舊所有權及質權ハ總テ消滅スルモノトス
○前數條異議ナシ
○第四百三十八條
負債者ノ爲メ第三者ヨリ質入ヲ爲ス事ヲ得
（細川委員）
第三者カ質入ヲナシ甲者ノ負債ヲ乙ニ辨償シタル時ハ其債權ハ第三者ニ移轉スルヤ
（本尾委員）
否貸借ノ關係ハ甲乙間ニ止マルモノナリ第三者ハ單ニ質入主ト云フニ過キサル此ヲ以テ第三者ヨリ爲シタル辨濟ノ爲メ乙者ノ債權第三者ニ移轉スルト云フニハアラサルナリ
○本條ハ異議ナシ
○第四百三十九條
未來ノ要求權ノ爲メニ質權ハ成立セサルモノトス
○本條ハ異議ナシ
于時午後二時半閉會