○第二讀會第十二回
明治二十年三月廿二日
欠席 箕作委員
仝 周布委員
午前
○第三百八十九條ノ續キ
（細川委員）
本條ハ前條ノ疑ヒアル時ニ適用スルモノニシテ若シ疑ヒナキ時ハ兩者共ニ請求スル事ヲ得ルノ精神ナリト果シテ然ラハ前條但書ニテ充分ナリトス
（委員長）
然リ再考案ト爲シ置クヘシ
○第三百九十條
義務者ハ違約金ヲ納ムルヲ以テ契約履行及ヒ損害賠償ノ義務ヲ免ルニ事ヲ得サルモノトス
（鶴田委員）
第三百八十八條ト本條トハ如何ナル差異アルヤ
（細川委員）
第三百八十八條ハ權利者ヨリ言ヲ立テ本條ハ義務者ニ對シテ云フノ區別アルニ過キサルナリ
（委員長）
孰レカ一方ニテ充分ナルヘシ
（細川委員）
然リ本案ハ只鄭寧ニ之ヲ云フニ過キサルナリ
（鶴田委員）
前條ノ質問ト同時ニ此重復ノ事ヲ質問セハ如何且又契約履行ヲ免レストアルハ違約金ノ性質ニ反スルカ如シ
（細川委員）
本條ハ契約ノ條件ノ違約金ト解スヘシ否ラサレハ違約金ノ性質ニ反スレハナリ
（委員長）
本條モ亦再考案ノ內ト爲スヘシ
○第三百九十一條
違約罰金ノ額ハ雙方ノ隨意ニ約定シ得ルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第三百九十二條
空相場、博奕又ハ賭射ヲ蔽ハントスル目的ヲ以テ違約金ノ契約ヲ爲シタル時ハ其取引ハ全ク無效ニ屬スルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第三百九十三條
主タル契約ノ無效ナル時ハ其從タル違約金ノ契約モ亦併セテ無效ニ屬スルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第六款 代理
○第三百九十四條
商業取引ニ付テノ委托ハ委任者明言シテ制限ヲ立テサル以上ハ何レノ場合ニ於テモ皆代理ヲ委托シタルモノト看做ス可シ代理者ハ委任執行ノ際特別ノ注意ヲ爲スノ義務アルモノトス
（細川委員）
代務者トハ支店ノ業務ヲ引受クルモノ業ヲ云ヒ代理者トハ一事業ノ爲メ代辨スルモノヲ云フノ區別ナルヤ
（本尾委員）
然リ代理ハ尤モ廣汎ナルモノトス卽チ一般ニモ適用スル事ヲ得ト雖モ代務ハ特別ノ場合ニ限ルモノトス
出席周布委員
（委員長）
代理ハ槪子臨時ノ事柄ニ限ル之ニ反シ代務ハ定期ナキモノトスルノ區別アルカ如シ
（本尾委員）
然リ又區別ノ一部分ナリ
○本條ハ「立テサル以上」ヲ「立ルニアラサレハ」ニ「商業取引」ヲ「商ヒノ行爲」ニ改メ「皆」ヲ削除ス
（本尾委員）
原文ニハ「商ヒノ行爲ヲ爲シ又ハ結了スル事ニ付テ」トアリ譯文ニ於テハ少シク意義ヲ狹少スルノ恐レアリ
○本條ハ「代理ニ委托シ」ヲ「其行爲ニ付キ全權ヲ委托シ」ニ改ム
（周布委員）
委任執行云々ハ別行ト爲スヘシ何トナレハ全權代理ト否ヲ問ハサルモノナレハナリ（之ニ決ス）
○第三百九十五條
代理委任者ノ爲ニ爲シタル商業取引ニ付テハ委任者ノ名ヲ知ルト否トヲ問ハス委任者ノミ第三者ニ對シテ直接ニ權利義務ヲ得ルモノトス
○本條ハ「商業取引」ヲ「商ヒノ行爲」ニ改ム
○第三百九十六條
委任ヲ受タル事ナク又後ニ於テ其認諾ヲ得ル事ナクシテ第三者ノ爲ニ商業取引ヲ爲シタル者ハ其相手方ニ對シ自己ニ責任ヲ負フモノトス
○本條ハ「商業取引」ヲ「商ヒノ行爲」ニ「第三者」ヲ「他人」ニ改ム
○第三百九十七條
代理者委任者ノ取引ヲ爲ス時其委任ノ權限ヲ犯シ若シ相手方ニ於テ現ニ其情ヲ知ラス又ハ知ル事能ハサル時ハ代理者ハ委任者ニ對シテ權限犯冒ノ責任ヲ負フル者トス
（岸本委員）
前條ト位置ヲ變換スル方適當ナルヘシ
（細川委員）
然リ
（周布委員）
相手方ニ於テ橲限外ノ事ヲ知ル時ハ代理者ハ委任者又ハ相手方ニ對シ責任ナシトス故ニ「代理者ノミ委任者ニ對シテ」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
正午第十二時中止
同十ニ時三十五分開會
（本尾委員）
「代理者ノミ」トセシカ原文ニ依ル時ハ不都合ナルニ依リ「ノミ」ヲ削ル方可ナリ（之ニ決ス）
（細川委員）
本條ハ他ノ質問ト同時ニ一應質問セラレタシ相手方ノ情ヲ知リタル時ハ其相手方モ亦自己ニ責ヲ負フヘキハ當然ナリ然ルニ本條ニ於テハ相手方ノ情ヲ知ル時ノ事ト毫モ見ヘサルハナリ
（本尾委員）
諾
○第三百九十八條
第三者ノ名ヲ以テ爲シタル取引ニ付代理者獨リ其責任ヲ受ケサル可ラサル場合ニ於テハ相手方ヨリ直接ニ第三者ニ對シ其不當ニ得タル物件ノ還付ヲ要求スル事ヲ得
（細川委員）
本條ハ前條ノ場合ヲ云フナルヘシ
（長森委員）
否第三百九十六條及前條トノ場合ヲ云フナルヘシ
（鶴田委員）
前條ノ場合ナラサル時ハ不都合ナラスヤ
（本尾委員）
第三百九十六條ノ場合ニノミ就テ云フナリ何トナレハ代理者獨リ相手方ニ對シテ義務ヲ云フハ該條ノ外ニハナケレハナリ
（細川委員）
第三百九十六條ノ他人トアルハ本條ニ第三者トセリ然ル時ハ一定ニ之ヲ爲サヽルヲ得ス就テハ第三百九十六條ノ方ヲ「第三者」ニ復センカ
○本條ハ「受クヘカラサル」ヲ「受クヘキ」ニ改メ「得」ヲ「得ス」ニ又第三百九十六條ノ「他人」ヲ「第三者」ニ復ス
○第三百九十九條
代理者第三者ノ名ヲ以テ爲シタル商業取引ニ付若シ相手方自己ノ過失ニ非スシテ其代理タル事實ヲ知ラス又委任者ノ何人ナルヲ知ラサル時ハ其相手方ハ委任者契約不履行ノ爲メ受ケタル損害ヲ代理者ニ對シ要求スルノ權利アルモノトス
○本條ハ「商業取引」ヲ「商ヒノ行爲」ニ改ム
○第四百條
商事上ノ委任ハ委任者若クハ受任者ノ死亡ニ由テ消滅セサルヲ通例トス
（周布委員）
受任者トハ代理者ナルハ勿論ナリ然ルニ本條ニ限リ受任者トセシ理由如何
（細川委員）
原文ニ於テモ代理者ノ文字ヲ用ヒスシテ受任者ノ語用ヒタリ
（委員長）
受任者ノ死亡ニ依リ消滅セストアルハ穩當ナラサルナリ又之ヲ消滅セスト爲ス時ハ如何ナル結果ヲ生スルヤ
（周布委員）
結果ノ事ヲ云フニ在ラス只民法ノ原則ト反スル事ヲ示シタルニ過キサルナルヘシ
（細川委員）
委任ニテ執行セシ事柄ハ受任者ノ死亡ニテ消滅セスト云フニ過キサルナリ
（委員長）
然ル時ハ民法ノ原則ト毫モ異ナラサルナリ特揭スル程ノ價格ヲ有セサルモノト云フヘシ
（本尾委員）
獨法ニハ受任者ノ事ヲ揭ケス故ニ案スルニ受任者ノ死亡シタル時ハ特ニ解任ノ手數ヲ爲スヘキモノトシ死亡ニ依テ直ニ解任セシモノトセサルノ意ナラン
（委員長）
受任者ノ死亡ニ由テ消滅セサル原由如何ヲ質問スヘシ
（岸本委員）
受任者ノ相續人其委任ヲ繼續スルモノトス若シ相續人幼年者ナル時ハ其後見人其委任ヲ執行セサルヘカラサルナ屮
○本條ハ受任者ノ事ヲ質問スル事ニ決セリ
○第四百一條
委任ハ委任者ノ明諾又ハ情況ニ依テ推測ス可キ承諾アルニアラサレハ之ヲ第三者ニ移轉スルヲ得ス
○本條ハ異議ナシ
○第四百二條
第三者ノ委任又ハ認諾ヲ得テ商業取引ヲ爲シ又ハ其手配ヲ爲シタル者ハ假令咀約アラサルモ計算書ヲ委任者三不シテ其正當ニ拂出シタル立替金及ヒ費用ヲ償還セシメ又慣習上匹利息口錢手數料ヲ拂ハシムルノ權【利アルモノトス
○本條ハ「商業取引」ヲ「商ヒノ行爲」ニ改ム
○第七節 期滿免除
○第四百三條
商事上要求權利ノ期滿免除ハ履行期日ヨリ其期日ノ定メナキ時ハ要求權利ノ生シタル日ヨリ六ケ年トス但シ法律ニ於テ他ノ期限ヲ定ムルモノハ此限ニ在ラス
（細川委員）
本款ヲ領布スル時ハ現行ノ出訴期限規則ハ改正セラレタルモノトスルナルヘシ
（本尾委員）
然リ商事上ニ付テハ改正セラレタルモノトスルナリ但書ハ長期ニ係ラス短期ニ付テノミ云フナリ
（長森委員）
說明ニ依ル時ハ但書ハ短期ノミヲ云フナリ
（本尾委員）
何分明瞭ナラサルニ依リ質問スヘシ
○第四百四條
期滿免除ハ義務者ニ對シ明言シテ契約履行ノ督促ヲ爲シ又ハ要求ノ執行若クハ擔保證ノ爲メ裁判上或ハ裁判外ノ處置ヲ爲シ又ハ義務者ニ於テ書面ヲ以テ支拂ノ約定ヲ爲シ又ハ本件若クハ附屬件ニ於テ一部分ノ支拂ヲ爲スニ由テ其經過ヲ中斷スルモノトス
（細川委員）
中斷ハ中止ト異ナリテ中斷セラレタル前ノ日數ハ無效トナルナリ然レ供文字上ニテハ容易ニ之ヲ解スル事ヲ得サルナリ又時トシテ中斷ニ於テモ前日數ヲ通算スル事ナキニアラサレハナリ例ヘハ治罪法第十四條ニ依リ前後ヲ通算シテ二倍ヲ超ユヘカラストアル之レナリ
○第四百五條
請取證アルト否トヲ問ハス勘定書ヲ送付スルノミニテハ未タ催促ノ所爲ト看做ス可ラス
（細川委員）
第四百二條ノ計算書ト本條ノ勘定書ト同一ナリ孰レカ一定ニスヘシ
○本條ハ第四百二條ノ「計算書」ヲ「勘定書」ト爲ス
○第四百六條
期滿免除ノ經過中斷シタル時ハ其時ヨリ更ニ期滿免除ノ期限ヲ起算スルモノトス
○本條ハ異議ナシ
第四百七條
期滿免除ノ效力ハ本件及附屬件ニ付テノ要求權利消滅シ權利者直接ト間接トヲ問ハス其權利ヲ主張スル事ヲ得サルニ在リ
○本條ハ異議ナシ
○第八節 交互計算
○第四百八條
平常相互ニ取引ヲ爲シ之カ爲メ交々權利ヲ得又ハ義務ヲ負フ者ハ期限ヲ定テ互ニ差引計算ヲ爲ス事ヲ得
○本條ハ「交々」ヲ「互ニ」ニ改メ「相」ヲ削除ス
○第四百九條
交互計算ノ關係ハ明約又ハ默約ニ依テ成立ツモノ但假令ヒ長期ト雖供單一ナル與信ニ依テハ成立ツモノニアラス
（細川委員）
與信云々ハ原案ノ方解シ易シ
（本尾委員）
第六百五十八條ニ依ル時ハ「單一ナル信用約束ニ依テハ成立セス」ト爲セハ一定スルナリ
○本條ハ「一ナル與信ニ依」ヲ「ニ信用ヲ與フルノミニ」ニ改ム
于時午後第三時