○第二讀會第十一回
明治廿年三月十八日
欠席 箕作委員
仝 委員長
午前
○第三百四十五條
見本、直段付、其他提供ヲ勤ムルカ爲メノ書類及物品ハ提供ト共ニ送付スルト別個送付スルトヲ論セス其提供ヲ承諾セサル時ト雖供之ヲ受タル者ノ手ニ留ムル事ヲ得其他商品ハ提供者ニ於テ處分ヲ爲ス迄ハ適當ノ方法ヲ以テ之ヲ貯藏セサル可カラス然レ供貯藏上ニ要シタル費用及手數料ハ相當ノ時內ニ第四百二十八條ニ隨ヒ其商品ヲ賣却シテ之ヲ償還スル事ヲ得ヘシ
（周布委員）
其他商品トアル其他ハ必要ナラサルカ如シ
（細川委員）
提供ヲ勤ムル爲メトアルハ矢張原案ノ通「介スル」トナス方可ナリ（之ニ決ス）
本條ハ勤ムルヲ介スルニ改メ其他商品トアルヲ其他ノ商品ニ改ム
○第三百四十六條
手付金ハ契約又ハ其他ノ慣例アル時ニ限リ解約金ト看做ス其他ノ場合ニ於テ手付金ノ交付ハ契約取結ヲ確定シタルモノトス其額ハ契約履行ノ時之ヲ引去リ若シ契約ヲ解除スル時ハ之ヲ交付者ニ還付ス可シ
（長森委員）
契約取結ヲ確定シタルモノトアル時ハ手付金ナキ時ハ解約スル事ヲ得ルカ如ク見ユルヲ以テ他ニ修正スル方可ナルヘシ
（岸本委員）
已ニ契約ノ成立チシモノヲ確ムル爲ノ手付金ナレハ確定トアルハ不可ナルカ如シ
（長森委員）
確定シタルヲシタルニ改メタシ
（周布委員）
手付金ハ契約ヲ確ムル爲メノモノナレハ確定トナシ不可ナルナキカ如シ
○本條ハ「其他ノ」三字ヲ削リ慣例ヲ慣習ニ解約ヲ違約ニ看做スヲ看做シニ改ム
○第三百四十七條
商事上ノ契約ニ付キ脅迫、詐僞又ハ宥恕スヘキ錯誤ニ依リ抗スル事ヲ得可シト雖供甚シキ損耗殊ニ代價其他報酬ノ不當ヲ以テ對抗スル事ヲ得ス
○本條ハ「上ノ」二字ヲ削リ「宥恕セラル」ニ改ム
○第三百四十八條
承認シ又ハ拂渡タル計算ト雖供其計算上ニ錯誤又ハ詐僞アル時ハ何時ニテモ之ニ付キ對抗ヲ爲ス事ヲ得
○第三節 契約ノ履行
○第三百四十九條
凡ソ契約ノ履行ハ一方ノ者相手方ノ承諾ヲ得テ明約又ハ默約ニ依リ引受ケタル義務ヲ盡シ終ルニ在リ
○本條ハ異議ナシ
○第三百五十條
甲者乙者ニ對シ義務ヲ負ヒタリト雖供契約ニ依リ丙者ニ對シテ其義務ヲ盡ス事ヲ得此場合ニ於テハ乙者ヲ以テ債主ト爲ス可キ歟又ハ丙者ヲ以テ債主ト爲ス可キ歟ハ事實ノ景況ト契約者ノ意思トニ從テ之ヲ定ム可シ
○本條ハ異議ナシ
○第三百五十一條
契約ノ目的ニアラサル物件ヲ以テ義務ヲ盡ストキハ權利者之ヲ以テ契約ノ履行ト認ムルニアラサレハ義務者其義務ヲ免レサルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第三百五十二條
義務者ノ負擔スル義務ノ要旨、區域殊ニ義務ヲ盡ス可キ物件ノ性質及品位ニ付明言ノ約定ナキ時ハ履行地ニ行ハルヽ例規ニ依リ之ヲ定ム可シ
○本條ハ異議ナシ
○第三百五十三條
義務者權利者ニ對シ當然ノ方法ヲ以テ完全ニ義務ヲ盡サン事ヲ提供シ權利者之ヲ拒ミタル時ハ義務者ハ權利者ノ計算及員險ヲ以テ其提供シタル物件ヲ處置スル事ヲ得可シ但義務者ニ於テ反法ノ意思アルカ又ハ甚シキ怠慢アル時ハ其處置ニ付責任ヲ免レサルモノトス
○本條ハ「員險」ヲ「危險」ニ改ム
○第三百五十四條
一部分ノ履行又ハ遲延シタル履行ハ權利者之ヲ承諾スルヲ要セス但割拂ノ約定又ハ其慣習アル時ハ此限ニ在ラス
○本條ハ其慣習トアル「其」ヲ削ル
○第三百五十五條
契約上又ハ其他ニ定マリアル期日ノ終ルマテニ義務ヲ盡サニル時ハ契約履行ヲ遅延シタルモノトス
○本條ハ契約上ノ「上」ヲ削ル
○第三百五十六條
期日ハ日ヲ指シテ之ヲ定メ又ハ期限ヲ設テ之ヲ定ムル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第三百五十七條
日數ヲ以テ期限ヲ定メタル時ハ其期限ノ末日ヲ以テ期日トシ週數、月數年數ヲ以テ期限ヲ定メタル時ハ其數ニ滿チタル週、月、年ノ內最初結約ノ日ニ値ル日ヲ以テ期日ト看做ス可シ
○第三百五十八條
日數ヲ以テ期限ヲ計算スル時ハ結約ノ日ヲ數フ可ラス
○第三百五十九條
半ケ月ヲ以テ期限ト爲シタル時ハ十五日ト看做ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第三百六十條
契約履行ノ日恰モ日曜日又ハ一般ノ祭日ニ値タル時ハ其次ノ日ヲ以テ期日ト看做ス可シ
○本條ハ日曜日ノ上ニ「若シ」ノ二字ヲ加ヘ「祭日」ヲ「休日」ニ改ム
○第三百六十一條
契約履行上一日ハ特別ノ事情アルニアラサレハ其履行地慣習ノ營業時間トス
○本條ハ異議ナシ
○第三百六十二條
定期限內ニ履行ス可キ約ヲ立テル時ハ其期限內何レノ營業日ニテモ義務者ハ之ヲ盡シ權利者ハ之ヲ要求スル事ヲ得可シ
○本條ハ結文ノ「可シ」ヲ削ル
○第三百六十三條
第三百六十二條ノ場合ニ於テアル時ハ其期限ノ爲ニ利益ヲ受クル一方ニ於テ履行日ヲ撰定ス可シ卽チ物品取引上ニ在テハ物品請取人、金錢取引上ニ在テハ負債者ヲ以テ利益ヲ受クルモノト看做ヲ通例トス
○本條ハ「第三百六十二條」ヲ「前條」ニ改ム
○第三百六十四條
期限ヲ延ハシテ其起算ノ日ヲ定メサル時ハ舊期限ノ經過シタル時ヨリ起算ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第三百六十五條
務約又ハ其他ノ方法ニテ履行時日ノ定メナキ場合ニ於テ相當ノ時日內ニ履行セサル時ハ債主ニ於テ其期日ヲ定ムル事ヲ得可シ
○本條ハ「債主」ヲ「權利者」ニ改メ結文ノ「可シ」ヲ削ル
○第六百六十六條
履行地ヲ定メス又ハ取引ノ性質若クハ務約者ノ意思ニ因ルモ履行地ノ分明ナラサル時ハ權利者或ハ領收者ノ權利アルモノノ指定スル地又ハ其任地若クハ其營業場ニ於テ履行ス可シ
○本條ハ「因」ヲ「依」ニ改ム
○第六百六十七條
義契者負債スル送付義契ハ權利者ノ指定シタル運搬所又ハ相當ノ運搬所ニ交付スルニ由テ之ヲ盡シタルモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第三百六十八條
務約者雙方一地方內ニ住居シ別段ノ務約ナキ時ハ義契者其物件ヲ權利者ニ送付ス可キ歟又ハ權利者之ヲ取寄ス可キ歟ヲ其地方ノ慣習又ハ取引ノ性質ニ據テ定ム可シ
○本條ハ「地方」ノ「方」ヲ削リ「據」ヲ「依」ニ改ム
○第三百六十九條
義契者ノ過失又ハ其使用人ノ過失ニ因リ義契者ニ責任アル場合ノ外物件送付中ノ危險ハ權利者之ヲ負擔スルヲ通例トス但特約アル時ハ此限ニ在ラス
○本條ハ「但」以下ヲ削リ「場合ノ外」ノ下ニ「特約アルニアラサレハ」ノ數字ヲ加フ
○第三百七十條
度量衡、路程ノ距離、期限、祭日、貨弊ノ本位及種類其他履行上ノ細目ハ履行地ニ行ハルヽ例規則ニ依ル可シ但別段ノ商ヒノ慣習又ハ特約アル時ハ此限ニ在ラス
○本條ハ「祭日」ヲ「休日」ニ改ム
○第三百七十一條
金錢拂渡ハ前條ニ揭載シタル規定ノ範圍內ニ在テハ正貨ニテモ又ハ履行地ニ流通スル所ノ差額ナキ紙弊又ハ銀行紙弊ニテモ之ヲ爲シ得可キモノトス
○第三百七十二條
槪括義務擇一義務其他不定ノ義務ニ在テ其物件ノ尙ホ現在シテ疑ヲ生スル時ハ義務者ノ撰擇ヲ以テ物件ヲ定ム可シ
○本條ハ異議ナシ
正午時中止
午後第一時開會
○第四款 價額補償、損害賠償、割引
○第三百七十三條
義務者當然ノ時期ニ於テ其義務ヲ盡サヽル時ハ權利者ハ其契約ヲ解除スルト價額補償ヲ要求スルトノ一ヲ撰擇スル事ヲ得但場合ニ依リ損害賠償ヲ要求スル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第三百七十四條
價額補償ハ金錢ノ義務ニ在テハ償還期日ヨリ現ニ償還スル日マテノ延帶利息ヲ納付スルニ在ルモノトス其他ノ義務ニ在テハ其引渡ス可キ物件ノ引渡期日以後ニ有シタル最高價額ト其價額ヲ有シタル日ヨリ現ニ償還スル日迄テノ延滯利息トヲ納付スルニ在ルモノトス但權利者ニ於テ其物件ノ引渡シ期日ニ有シタル價額ト其日後ノ延滯利息トノ納付ヲ以テ滿足スル時ハ此限ニ在ラス
（本尾委員）
最高價額ニ對スル利息ヲ得ルト但書ノ利息ヲ得ルトハ權利者ノ隨意ナツトス又但書以下ノ滿足ハ欲スルニナス方可ナリ（之ニ決ス）
○本條ハ「價額補償」ヲ「價額辨償」ニ改ム已下之ニ倣フ
○第三百七十五條
價額補償ニ付キ權利者ハ義務者ノ過失ヲ證明シ又ハ其怠慢ニ依テ受ケタル損害ヲ證明スル事ナクシテ要求スル事ヲ得ルト雖モ義務ノ性質及區域ニ因テ義務者其責任ヲ負フ時ニ限ルモノトス
○本條ハ左ノ如ク改ム
權利者ハ義務者ノ過失ヲ證明シ又ハ其怠慢ニ因テ受ケタル損害ヲ證明スル事ナクシテ價額辨償ヲ要スル事ヲ得ルト雖モ義務ノ性質及區域ニ因テ義務者其責任ヲ負フ時ニ限ルモノトス
○第三百七十六條
第三百七十四條ニ從テ定ムル物件ノ價額ハ普通ノ市價トシ相場所ニ於テ賣買スル物件ニ在テハ其相場上ノ價ナリトス但延滯ニ依テ權利者ニ生セシメタル費用ヲ併算ス可キモノトス
○第三百七十七條
領收ヲ拒ミタル權利者モ亦之レカ爲メ義務者ニ生セシメタル費用ヲ償却セサル可ラス
○第三百七十八條
費用、立替其他ノ支出並ニ損害ヲ償却セシムル時ハ其辨償ス可キ日ヨリ起算シテ其額ニ對スル相當ノ利息ヲ拂ハシムル事ヲ得
○本條ハ異議ナシ
○第三百七十九條
延滯利息及其他ノ利息ニシテ法律上又ハ契約上ニテ其步合ノ定マリナキ時ハ槪シテ原額ノ百分ノ七トス
○本條ハ「槪シテ」ノ三字ヲ削ル
○第三百八十條
故意ニ出テタルト又ハ怠漫ニ出テタルトヲ問ハス違法ノ所爲ヲ以テ他人ニ損害ヲ被ラシメタル者ハ十分ノ賠償ヲ爲サヽル可カラス
○本條ハ「十分」ヲ「充分」ニ改ム
○第三百八十一條
損害賠償ハ現ニ受ケタル損失ニ止マラス尙其阻歇セラレタル利益額ニマテ及フ可キモノトス
○本條ハ異議ナシ
○第三百八十二條
利益トハ豫知ス可キト否ト通常ナルト否トヲ問ハス相手方ニ於テ加害所業ヲ爲サヽリシ時ハ被害者ニ於テ收メ得可キ事ノ確實ナル利益ヲ云フ
○本條ハ「加害所業ヲ爲サヽリシ時」ヲ「加害ノ所爲ナキ時」ニ改ム
○第三百八十三條
豫メ細期シ難キ損益推測シ難キ損益將來ノ損益又ハ他ノ狀況ノ加ハルニ依テ生ス可キ損益ハ損害賠償ノ額ヲ査定スルニ當テ之ヲ計算ス可カラス
（本尾委員）
本條ハ將來ノ事ヲ指シ前條ハ豫知スヘカラサル事件ト雖モ已ニ過キ去リタル後ノ事ヲ云フ故ニ確實ナル利益ノ計算ヲナス事ヲ得ヘキモ本條ハ未タ確實ト云フヲ得ス何ントナレハ利益ヲ得ルナラント推測スルニ止マルモノナレハナリ
○本條ハ異議ナシ
○第三百八十四條
價額補償又ハ損害賠償ニ就キ雙方豫メ約定ヲ立テタル時ハ其約定ニ從ヒ事實ニ憑據シテ其約定額ヲ增減スルヲ得サルヲ通例トス
○本條ハ異議ナシ
○第三百八十五條
金錢ノ義務ヲ期日前ニ償却スルノ約又ハ商業上ノ慣習ニ因テ負債者ハ其期日ニ先チタル日數相當ノ割引ヲ要求スル事ヲ得
○本條ハ「商業上」ヲ「商ヒ」ニ「因」ヲ「依」ニ改ム
○第三百八十六條
義務者ニ於テ其義務ヲ履行セサルカ爲メ權利者其契約ヲ解除シタル時ハ義務者ハ既ニ權利者ニ交付シタル若干ノ物件ヲ現在ノ儘ニテ取戾シ權利者ヨリ受ケタル物件ハ其全部又ハ全價ヲ償還セサル可ラス
○本條ハ異議ナシ
○第五款 違約金
○第三百八十七條
契約ノ履行ヲ鞏固ナラシムル爲メ不履行ノ場合ニ於テ若干ノ違約金ヲ交付ス可キ義務ヲ負擔セシメタル時ハ其違約ノ要求損害賠償ノ要求ト關係セサルモノトス
（本尾委員）
本款ニ違約金トアルヲ以テ第三百四十六條ノ解約ヲ違約トセシハ不可ナリ何ントナレハ其成立ニ於テ大ナル相違アレハナリ
（岸本委員）
成立ハ異ナルモ其結果タル本款ト同一ナリ故ヲ以テ同一ノ文字ヲ用ユルモ不可ナシ
第三百四十六條ノ違約金ト看做シトアルヲ解約金トスニ改ム
○本條ハ異議ナシ
○第三百八十八條
權利者其契約ノ履行若クハ損害賠償ヲ要求スル權利ハ違約金ノ爲メニ廢止セサルモノトス但シ疑惑アル場合ニ於テハ違約金ト損害賠償トヲ併セテ要求スル事ヲ得ス
○本條ハ「但」ヲ削リ「ト雖モ」ノ三字ヲ挿入ス
○第三百八十九條
契約ノ不履行ノ由テ權利者ニ被ラシメタル損害額ノ違約金額ニ超過スル時ハ其超過額丈ケノ損害賠償ヲ罰金ト共ニ要求スル事ヲ得
（周布委員）
本條ハ前條ノ疑ヒアル場合ノ規定トハ解スルヲ得ス故ニ契約不履行云々ヲ前條ノ場合ニ於テ損害云々ト修正セハ如何
（細川委員）
少シク明了ヲ缺クカ如シ故ニ疑ヲ存シ置再考トセハ如何（之ニ決ス）
于時第三時