○第二讀會第八回
明治廿年三月十五日
欠席 箕作委員
仝 周布委員
仝 岸本委員
午前
○第三十四條
四季又ハニ季ニ利息又ハ益金ヲ社員ニ配當スル會社ハ每半年ニ前條記載ノ義務ヲ盡ス可シ
（細川委員）
本條ハ商社法ニ記載セシモノナルヘシ
（本尾委員）
然リ商社法ノ總則ハ皆本法ニ繰込ムヲ以テ商社法ノ總則ノ方ハ削除スルナリ
（細川委員）
四季又ハニ季トアリ共ニ每半年トスルハ如何
（本尾委員）
四季ノ會社二四季每ニ爲サシムルハ煩雜ナリトノ意思ヨリ之ヲ寬ニ爲セシナリ之ヲニ季ノモノト同一樣ニセシムルモ實際差支ナキナリ
出席岸本委員
○第三十五條
各商人ハ十年間商業帳簿ヲ貯藏シ火災其他ノ災禍ニ由テ亡失又ハ毀損セサル事ニ注意スルノ義務アリトス
○本條ハ異議ナシ
○第三十六條
商人ノ商業上ノ爲メ設備シタル帳簿ハ其本人ノ所有ニシテ破產ノ場合ノ外職權ヲ以テ之ヲ呈示又ハ交付セシムル事ヲ得ス
（細川委員）
見合セシ條ハ削除スルヤ
（本尾委員）
然リ參照ノ條ハ總テ削除スルノ決議ナリシ
（細川委員）
職權トハ裁判所ノ職權ヲ云フ故ニ裁判所ノ職權ヲ以テスラ呈示セシムル事ヲ得サルモノナレハ他ノ官吏職權ヲ以テ呈示セシムル事ヲ得サルハ勿論ナリトノ誤解ナキヲ保セサルナリ
（本尾委員）
他ノ法律規則ニ於テ取除ヲ付スル時ハ毫モ差支ナキナリ
出席周布委員
（鶴田委員）
破產ノ場合ノ外トアレ供治罪法ニ從ヒ家宅搜索ノ場合ノ如キハ既ニ取除法ナリトス
（委員長）
破產ノ場合ノ文字ヲ削リテ代フルニ法律ニ定メタヲ場合ノ外ト爲セハ充分ナルナリ
（長森委員）
然リ如此改案スル時ハ大ニ整頓スルナリ
○本條ハ修正ナシ
○第三十七條
財產相續財產共通財產分配ニ關スル事件並ニ業務取扱ノ爭論ニ於テ相手方ヨリ請求スル時ハ總テノ商業帳簿ヲ檢閱セシメサル可カラス
○第三十八條
訴訟中相手方ノ請求アル時ハ裁判所ハ商業帳簿ヲ呈示セシメ所有主ノ目前ニ於テ其訴件ニ關スル記入ヲ檢閱シ又時宜ニ依リ之ヲ寫取ル事アルヘシ若シ其帳簿他ノ地ニ在ル時ハ掛裁判所ヨリ其地ニ就キ又ハ其地ノ調裁判所ニ依ツテ其檢閱又ハ寫取ヲ爲サシム可シ
（委員長）
財產分配トハ如何
（本尾委員）
親族財產ノ分配又ハ會社ノ益金分配ノ如キモノヲ云フ
（長森委員）
本條ハ帳簿ノ全部ヲ差出スヘキ場合ヲ云ヒ第三十八條ハ帳簿中入用ノ部分ノミヲ差出スヘキ場合ヲ云フナリ
（細川委員）
如此區別アル事ハ一見シテハ明瞭ナラサルナリ
（岸本委員）
財產相續トアリ然ルニ家名相續ノ場合ニ於テハ如何ナルヤノ疑ヒナキヲ保セサルナリ
（長森委員）
家名ノミナル時ハ此爭論ナシ若シ少シニテモ財產アル時ハ本條ヲ適用スルヲ得ルナリ
業務取扱上ノ場合ハ代理人又ハ使用人若クハ取締役ヨリ檢閱ヲ請求スル場合ナルカ如シ社員相互間ナル時ハ共有權アルモノナレハ請求ヲ爲スニ及ハサレハナリ
（本尾委員）
否取締役ノ取扱不正當ナリトテ訴訟ヲ爲シタル時株主ヨリ取締役ノ帳簿ヲ檢閱セン事ヲ請求スルノ場合トス
（岸本委員）
此場合ニ於テハ株主ハ請求スルニ及ハス何トナレハ會社ノ所有ナル帳簿ナレハナリ
（周布委員）
說明ニ依レハ長森委員ノ說ノ如ク解セラルヽナリ
（本尾委員）
說明ノ原文ヲ案スルニ株主又ハ取締役共ニ請求權アルノ場合ナリ故ニ一方ノミニ偏スヘカラス
（細川委員）
原文ニハ相手方ヨリ請求スル時ハ裁判官ハ總テ商業帳簿ヲ檢閱セシメサルヘカラストアリ
（委員長）
裁判所ノ文字ヲ挿入スルヲ可トス
（本尾委員）
別段挿入セサルモ精神ニ於テ發見スル事ヲ得ルナリ
（細川委員）
第三十八條ハ第三十七條ト區別ヲ爲サシムル爲メ「總テ訴訟ニ付キ相手方」ト爲シ又「記入ノ檢閱又ハ時宜ニ依リ寫取ヲ爲サシム可シ」ト改正セハ如何（之ニ決ス）
○第三十九條
裁判所ノ命ヲ受ケ仍ホ商業帳簿ヲ呈示セサル者ハ自己ノ過失ニアラサルコトヲ證明スルニアラサレハ之ヲ以テ證據ト爲ス可シ訴訟事件ニ付キ自己ノ不利ト爲ル可キ推測ヲ受クルコトヲ免レサルモノトス
（周布委員）
「證明スル」ヲ「證明シ得ル」ニ改ムヘシ（之ニセリ）
○第四十條
商業帳簿中ノ記入ノ證據カニ付テハ判事其事情ヲ斟酌シテ之ヲ裁決スヘシ然レ供其記入ノミヲ以テ記入者一方限リノ利益ニ歸ス可キ十分ノ證據ト爲スヲ得ス、但第一相手方ニ於テモ亦之ヲ證據ト爲シタル時第二相手方商人ニシテ自己帳簿ノ記入ヲ以テ之ニ對抗シ能ハサル時第三相手方ニ於テ之ヲ不正トスル理由ヲ僅カニテモ證認セシメ能ハサル時ハ此限ニ在ラス
第一ノ場合ニ於テ相手方ノ憑據ト爲シタル記入ト連絡セル記入アル時モ亦同シ
○本條ハ異議ナシ
○第四十一條
原被雙方ノ商業帳簿中ノ記入相牴觸シテ解明シ難キ時ニ在テモ亦判事ハ事情ヲ斟酌シテ其證據ヲ全ク擲棄スルト否ト又ハ一方ノ商業帳簿一二段ノ信用ヲ置クト否ト又ハ一方ニ宣誓ヲ以テ帳簿中ノ記入事件ヲ確證スル事ヲ許スト否トヲ裁決ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第四十二條
商業帳簿十分ノ證據トナラサル總テノ場合ニ於テハ宣誓又ハ他ノ證據ヲ以テ補充スル事ヲ得可シ之ヲ補充セシムルト否トハ其時々ノ事情ヲ斟酌シテ判事之ヲ裁決ス可シ
○本條ハ異議ナシ
○第五章 代務者及商業使用人
○第四十三條
商業ヲ營ム者ハ營業ノ爲メ本店又ハ支店ニ明言ノ委任ヲ以テ代務者一名又ハ數名ヲ置ク事ヲ得但シ其委任ハ別ニ定式ヲ要セス代務ノ委任及解任ハ商業登錄簿ニ登記ス可シ
（細川委員）
原文ニハ「營業ノ爲メ」トナル文字ナシ故ニ削除セハ如何（之ニ決セリ）
○第四十四條
代務ハ何時ニテモ之ヲ解キ又ハ代務者ヨリ豫吿シテ辭スル事ヲ得又委任期限ノ經過ニ依リ又ハ代務者雇入契約ノ滿期ニ依リ又ハ委任ヲ受ケタル營業ノ賣讓若クハ廢止ニ依リ自ラ消滅スルモノトス然レ供商業主人ノ死亡ニ依テ消滅スル事無シ
代務者其代務ノ終ハリタル後ニ爲シタル取引ハ自己ニ其終リタル事ヲ知ラサル時ニ限リ有效トス
（細川委員）
雇入契約ノ滿期トハ如何
（本尾委員）
代務者ニシテ元來雇人ナリシ時其主タル雇入契約ノ滿期シタル事ヲ云フナリ
○第四十五條
數人ノ共同ニ委任セラレタル代務ハ總員共同ニアラサレハ之ヲ執行スルコトヲ得ス此代務ハ其一員ニ於テ消滅シタル時ハ他ノ役員ニ於テモ亦消滅スルモノトス
（委員長）
本條ハ實際ノ適用如何ナルヤ或ハ不便宜ナル事ナシトセス
（本尾委員）
否一員ノ缺ケタル時尙ホ餘員ニテ執行權アルトスル時ハ却テ害ヲ遺ス事アルナリ
○第四十六條
代務委任ニハ主人ノ商號ヲ用ヒ及主人ニ代テ裁判上ト裁判外トヲ論セス其營業ニ關スル總テノ商賣行爲及ヒ權利行爲ヲ爲シ得可キ權利ヲ含有スルモノトス
代務權ニ制限ヲ立ツルモ第三者ニ對シテ法律上ノ效ナキモノトス但第三者其制限アル事ヲ知リタル時ハ此限ニアラス
（細川委員）
「商賣」ハ「商ヒ」ト改ムヘシ（之ニ決ス）
○第四十七條
代務ハ無期又ハ有期ヲ以テ之ヲ委任シ又ハ未必條件若クハ偶生條件ノ生スルヲ限リトシテ之ヲ委任スル事ヲ得ヘシ但シ解任ノ權利及ヒ豫吿辭退ノ權利（第四十四條）ハ之カ爲ニ妨ケラルヽコトナシ
（委員長）
未必ト偶生トノ區別如何
（本尾委員）
未必條件ト云ヘハ「コンチシヨン」ナル事ハ今日既子世人ノ解スル所ナリ而シテ意味ハ時ノ發生ト事件ノ發生トヲ云フナリ
（岸本委員）
民法ノ所謂未必條件トハ異ナルナリ
何トナレハ未必條件トハ未來且不定ノ事件ヲ云フモノナレハナリ
（本尾委員）
原文ニハ「コンチシヨン」ノ語ナシ
（岸本委員）
然ラハ條件ノ文字ヲ削ルヘシ
○本條ハ「未必」ヲ「未定」ト改ム
○第四十八條
代務者ハ代務權ノ全部又ハ一部ヲ他人ニ移轉スルコトヲ得ス然レ供商業使用人ヲ任免スルノ權アルモノトス
（岸本委員）
任免トアリ免ノ文字ハ然レ供ニ對シ適用セサルナリ（之ニ決シ「免」ノ字ヲ削ル）
于時午後第二時五十分散會