○第二讀會第二回
明治廿年三月一日
欠席 箕作委員
午前
先回決議セシ第四條ニ付種々議論アリタレ供之ヲ略ス但シ「產生物」ヲ「產物」ニ「貨物」ヲ「天產物」ニ改正ス
○第五條
左ノ事項モ亦商ヒノ行爲トス
第一 店舖帳場其他營業所ヲ設ケ又ハ廣吿シテ營ム兩替及利息付其他報酬付ノ貨弊貸付
第二 新聞紙及定時印刷物ノ發行
第三 商事上各種ノ代理
第四 公ナル依賴引請所及取次所ノ營業
第五 公ナル集會場及遊娛場ノ營業
第六 請負ヒ仕事
（鶴田委員）
預吿シテノ文字ハ以下ニ皆冠ラスルモノナルヤ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
要スルニ民事ノ貸付ノ外ヲ總稱スルナリ
（委員長）
貸付ハ前條ノ貨弊流通ノ內ニ包含スルナリ
（本尾委員）
貨弊流通トハ銀行營業ト解スルナリ
（委員長）
商事ノ範圍ニ付テハボアソナード氏ノ立案トハ大ニ異ナル所アリ
（本尾委員）
甚シキ立案ニアラス卽チ第四條ノ「ウムサツツ」卽チ移轉ナル語ハ自己ニ消費アル爲メ賣買スル事ヲ包含セサルナリ故ニ殆ントボアソナード氏ノ立案トモ異ナラサルナリ
（細川委員）
百姓カ米ヲ賣ル事ハ「ウムサツツ」ノ語中ニ包含スルヤ尤モ農業ハ取除ナル事ハ正條アリ
（本尾委員）
然リ
（長森委員）
移轉ノ原語ノ意義ハ產生者ヨリ之ヲ受ケ需用者又ハ仲買人等ニ移轉スルノ精神ナリト之ニ依レハボアソナード氏ノ立案ノ精神ト大差ナカルヘシ
（細川委員）
百姓カ米ヲ賣ルヲ主旨ト爲スカ如キハ「ウムサツツ」スルヲ以テ趣旨ト爲ストアル內ニ包含セシムルハ穩當ナラサルナリ
（委員長）
移轉スルヲ以テ趣旨トアルハ買受ル場合ニハ適用スルヲ得ルモ賣ル場合ニハ適用スルヲ得サルナリ
（本尾委員）
ロエスレル氏カ商社法ノ原案ニ本條ヲ略シテ立案セラレタリ其趣旨ハ「貨殖ノ爲メ」ト記ス故ニ本案ヨリハ實際大ニ適用スル事容易ナリトス
（岸本委員）
百姓カ耕作スルハ民事ナリトス其收獲米ヲ賣却スルノ所爲ヲ商事ト爲ス但シ之ヲ賣却スル事ヲ常ト爲スモ商業トセサルナリ卽チ第十一條ノ農業ヲ商業トセスト爲スハ如斯解釋スヘキモノトス
第四條ハ要スルニ「賃貸」トアルニ依リ「賣買」ヲ「賣却」ト改ムヘシ然ル時ハ之ヲ圓滑ニ解釋スル事ヲ得ヘキナリ
（本尾委員）
「ウムサツツ」トハ流通運轉ト云フ文字ナリ其運轉ニ付テハ裁判官契約者ノ意思ニ依リテ商事ナルヤ又ハ民事ナルヤヲ探究スヘシト云フニ異ナラス獨法第二百七十八條ニハ如此正條ヲ示スニ依リ本案ノ如キ困難ヲ來ス事ナシ
（周布委員）
百姓カ自己ノ收獲米ハ何千石賣却スルモ商事トセサル事ニセハ如何尤モ賣ル爲メ買入レ更ニ賣却ストハ格別ナリトス
（委員長）
然リ其精神ニ改正スル時ハ實際大ニ適用シ易キナリ
（鶴田委員）
假令ヒ如何ナル主旨ニ出ルモ自己ノ土地ヨリ生スル收獲物ヲ賣却スルハ多少ニ拘ハラス總テ民事ト爲セハ商事トノ區域判然トナリ大ニ便宜ナリトス
（委員長）
明日尙ホボアソナード氏ノ立案精神ヲ審査シ然ル後第三條以下ノ決議ヲ爲ス可シ
于時午後第三時二十分散會