○第一讀會第七十五回
明治十九年十一月廿五日
欠席 細川委員
仝 周布委員
仝 岸本委員
○午前第十時三十分開會
（本尾委員）
商法ノ各卷ヲ分テ條ヲ起ス事ニ付キ質問セシ處商社法ハ總理大臣ノ命令ニ依リ之ヲ分離セリ然レトモ各卷二條ヲ起スノ要用ハ商社法ヲ商法中ニ合併シテ發頒スルトキハ細分スルニ及ハサルナリ又若シ之ヲ區別シテ條ヲ起ストキハ之ヲ援引スルニ當リ第何章ノ第何條ト云ハサルヘカラス是レ援引上甚タ不便ナル事トス況シテ商法ノ如キハ僅ニ第千百餘條ノモノナレハ强ヒテ之ヲ分離スルノ必要ナカルヘシトノ答辯ナリシ
○第四編 商事ニ係ル爭論
○第一卷 仲裁々判人
○第千百十九條
商事ニ係ル爭論ハ普通ノ訴訟手續ヲ以テ通常裁判所之ヲ判決ス但期限ヲ短クシ且必要ナル場合ニ於テハ商事鑑定人ヲ立會ハシム
（長森委員）
本條ハ商事裁判ノ總則ノ如シ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第千百十九條商事ニ係ル爭訟ハ普通ノ訴訟手續ニ依リ期限ヲ短縮シテ通常裁判所之ヲ判決ス但必要ナル場合ニ於テハ商事鑑定人ヲ立會ハシム可シ
出席細川委員
（鶴田委員）
本條ハ仲裁々判ニ關セサルモノナレハ第一章ノ題目ヲ商事裁判ト改メ以テ本章中ニハ通常裁判ト仲裁裁判トヲ包含セシムル事トセハ如何
（本尾委員）
本案中ニハ往々如比例アルヲ以テ原案ノ儘ニテモ不可ナカルヘシ
○第千百二十條
相場會所ニ於テ取結タル取引ニ關スル爭論ハ相場會所規則ニ從ヒ仲裁々判人之ヲ判決ス其他商事ニ關スル爭論ハ法律、商業習慣、契約或ハ官權ヲ以テ仲裁々判人ノ判決ニ付スル事ヲ得
○本條ハ「關ス」ヲ「係」ニ「論」ヲ「訟」ニ「或」ヲ「又」ニ改ム
○第千百二十一條
仲裁契約ハ書面ヲ以テシ又ハ裁判所ニ於テ取結ヒ相手雙方ノ氏名爭論ノ事件及ヒ仲裁裁判人ノ氏名ヲ之ニ揭クヘシ
（細川委員）
書面トアレトモ裁判所ニテ筆記スルトキハ卽チ書面契約ト看做スモノナルヤ
（本尾委員）
然リ
（箕作委員）
裁判所トハ仲裁々判所ナルヤ
（本尾委員）
否通常裁判所ヲ指スナリ
○本條ハ「論」ヲ「訟」ニ改メ「相手」ヲ削ル
正午十二時中止
零時三十分開會
○第千百二十二條
所管裁判官ハ自己ノ裁判ニ付セラレタル事件ニシテ專ラ商業上又ハ營業上ノ性質ヲ有シ或ハ專ラ權宜ニ依テ判スヘキモノナルトキハ官權ヲ以テ仲裁々判所ニ移スコトヲ得
（箕作委員）
仲裁々判所ニ移ス方法如何
（本尾委員）
商業上ノ性質ノ關係大ニシテ法律ノ關係多カラサルニ依リ仲裁々削刋ヲ受クヘシト云フニ在リ
（委員長）
商業上ト營業上トノ區別ハ如何
（本尾委員）
營業上トハ工業上ニ關スル事多シ
○本條ハ「事件」ノ上ニ「爭訟」ヲ加ヘ「或」ヲ「又」ニ改メ「所」ヲ削リ「移」ヲ「付」ト爲ス
又第千百二十條ノ末尾「人ノ判決」ヲ刪除ス
（鶴田委員）
權宜トハ都合ト解シ裁判官ノ隨意ニ依テト見ル事ヲ得ヘシ
（箕作委員）
權宜トハ權利義務ノ爭㸃ニアラスシテ事柄ノ爭訟ナルトキハ其事情ニ依テ判スヘキモノ小ナルナリ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
然ルトキハ事實上ノ爭論ト解スルトキハ裁判ヲニケ所ニテ爲ササルヘカラス
（本尾委員）
否仲裁々判人纏メテ之ヲ判決スルナリ
○第千百二十三條
別ニ定ムル所アルニ非サレハ相手各一名ノ仲裁々判人ヲ撰任スル事ヲ得若シ相手ノ一方ニシテ他ノ一方ノ撰任シタル旨ノ通知ヲ得タル日ヨリ三日內ニ撰任セサルトキハ他ノ一方ニテ他ノ一名ヲ撰任スル事ヲ得
數名ノ仲裁々判人ノ間可否決セサルトキハ共ニ上席人一名ヲ任シ其決スル所ニ從フ
（細川委員）
裁判人ハ二人ヲ要スルヤ
（本尾委員）
特約ナキトキハ雙方ヨリ一人宛出スナリ若シ他ノ一方ヨリ出サヽルトキハ一方ニテ二人ヲ撰任スルナリ
（委員長）
二名ノ仲裁々判人ノ間ニ可否ヲ決セサルトキハ如何スルヤ
（本尾委員）
此場合ニ於テハ上席人ヲ任シ以テ決ヲ取ルナリ
○本條ハ「相手」ヲ「雙方」ニ改メ「相手ノ」ヲ削リ「ニシテ」ヲ「ノ者」ニ改メ「辻ハニ」ヲ耐削除ス
○第千百二十四條
仲裁々判ノ判決ハ裁判人撰任ノ日ヨリ三月內ニ宣吿シ其宣吿書ヲ相手雙方ニ下付シ且判然タル條理及公然タル秩序ニ悖ルコトナク又法律ニ背馳スルコトナクシテ成リタルニ非サレハ無效トス
○本條ハ「二月內」ヲ「三ケ月以內」ニ改メ「相手」ヲ削リ「下」ヲ「交」ニ改メ「然タル」ヲ削リ「北目馳スル事ナキトキニ限リ有效トス」ト改ム
○第千百二十五條
仲裁々判ノ判決ハ確定裁判ノ效力ヲ有シ之ヲ相手雙方ニ申渡シタル後三日ヲ經テ裁判所ノ執行ニ付スルモノトス但其效力ニ異議ヲ唱フルノ權ヲ放棄スル旨ヲ表示スルヲ得ス
異議ハ右申渡ノ日附ヨリ一ケ月內ニ申立ツヘシ
（長森委員）
但書ハ「之レカ爲メ異議ヲ唱フルノ權ヲ失フ事ナシ」ト云フ意義ナルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ「相手」ヲ削リ「モノトス」ヲ「事ヲ得」ニ「放棄云々トヲ「失ハシムルモノニアラス」ト改ム
○第千百二十六條
仲裁々判人ノ職ハ商人ノ榮譽職トス其爭論ニ直接又ハ間接ノ關係アル者ハ仲裁々判人トナルヲ得ス
（細川委員）
裁判人報酬ヲ求ムル事ヲ得ルモノナリ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
第千百二十四條ノ宣吿ハ申渡ト改ムヲ可トスス之ニ決ス）
○本條ハ「論」ヲ「訟」ニ改ム
○第二卷 裁判執行
○第千百二十七條
商事ノ裁判々決ニ對スル控訴提出ノ期限ハ其判決ヲ相手雙方ニ申渡シタルヨリ十日間トス
○本條ハ「相手」ヲ削ル
○第千百二十八條
負債者保證ヲ立テス又ハ負フ所ノ金額或ハ物件ヲ裁判所ニ預ケサルトキハ債主ニ著大ノ損害ヲ被ラシメサラン爲メ債主ノ申立ニ依リ判決ノ假執行ヲ爲スコトヲ得
（本尾委員）
本條ハ控訴期限內ハ勿論控訴ノ判決アラサル前ニ於テ假執行ヲ求ムルヲ得ルヲ云フナリ
（箕作委員）
現行法ト同=一シテ控訴期內ハ假執行ヲ爲スモノニアラスシテ控訴ヲ爲シタルトキ其判決ノアラサル前ニ於テ假執行ヲ爲スヲ云フモノナルヘシ
（本尾委員）
否控訴期內小雖モ假執行ヲ爲ス事ヲ得ルノ精神ナリ（）レ本條ハ百崢安衆ノ愚叫
○第千百二十九條
外國裁判所ノ判決及ヒ外國ニテ取結ヒタル契約ヲ日本裁判所ニテ執行スルハ日本國ノ公然タル秩序ニ背馳セサルトキニ限ル
（箕作委員）
例ヘハ支那人カ支那ニテ阿片契約ヲ結ヒ之ヲ我邦ニテ裁判施行ヲ爲スヲ許サヽルカ如シ
○本條ハ「公然タル」ヲ「公ケノ」ニ改ム
○第千百三十條
負債者失踪スルトキ或ハ其財產ヲ浪費シ若クハ隱匿シ若クハ外國ニ送出スルトキ或ハ負債者ニ對スル判決ヲ外國ニテ執行スヘキトキハ勿論其他ノ場合ニ於テモ債主ノ申立ニ因リ其辨償ヲ保スル爲メ負債者ノ財產ヲ差押ヘ必要ノトキハ其身ヲ拘留スル事ヲ得
○本條ハ「失踪スル」ヲ「失畭セントスル」ニ「或」ヲ「又」ニ「因」ヲ「依」ニ改メ「身」ヲ「身體」ト爲ス
○第千百三十一條
差押或ハ拘留ノ時日ハ其目的ヲ達スルマテヲ限トス但拘留ハ一年ヲ超ユルヲ得ス
○本條ハ原案ノ儘
○第千百三十二條
差押或ハ拘留令狀ニハ未タ訴訟ヲ起サヽル場合ニ於テハ之ヲ起ス期限ヲ揭ク若シ之ヲ犯ストキハ差押若クハ拘留ヲ止ム
（箕作委員）
之ヲ犯ストキトハ如何
（本尾委員）
令狀ニ揭タル期內ニ起算セサルトキハ差押又ハ拘留ヲ廢止スルナリ
○本條ハ「或」ヲ「又」ニ「令狀」ノ上ニ「ノ」ヲ加フ
○第千百三十三條
債主ハ必要ナル場合ニ於テハ差押或ハ拘留ノ費用殊ニ拘留シタル負債者ノ給養費ヲ假拂ス可シ
○本條ハ「或」ヲ「又」ニ「給養費」ヲ「賄料」ニ改ム
（長森委員）
假拂ハ前拂ニシテ假拂ト解スルヤ
（本尾委員）
然リ
于時午後三時二十分閉會