○第一讀會第七十一回
明治十九年十一月十八日
欠席 岸本委員
○午前十時開會
○第九百九十一條
救得シタル船舶或ハ積荷ヲ後ニ喪失或ハ損害シタルトキ又ハ更ニ海失或ハ救得ノ爲メ共擔義務ヲ課セラレタルトキハ其殘ル所ノ價額ニ從ヒ共擔義務ヲ算定スヘシ
（本尾委員）
例ヘハ救濟シタル船舶ヲ後ニ復タ難故ニ遭ヒ其船舶ヲ喪失シタルトキハ其喪失ノ場合ニ救得シタル物件ニ於テ共擔義務ヲ算スルナリ故ニ全ク殘リタル物ニ付テ共擔義務ヲ負フナリ
（箕作委員）
又ハ更ニ海失トハ如何
（本尾委員）
又ハ以下ハ共擔義務ヲ科セラレタル場合ヲ云フ
（長森委員）
本條ハ初メ下第二度トヲ指スヤ
（本尾委員）
再度ノ場合ニ付キ規定スルナリ再度ノ海失ノ爲メニ共丿擔義務ヲ負フハ再度ノ節ニ救得シテ殘リタル所ノ價額ニテ擔當スルヲ云フナリ
之ヲ例ヘハ甲物全部乙物ノ年部ヲ投入シタルトキハ其他ノ安全ヲ得タル物件等ニテ之ヲ共擔スルナリ然ルニ其歸途中復タ難故ニ遭フテ丙物ノ全部ト丁物ノ半部トヲ投入シタルトキハ甲物ハ既ニ存セサルヲ以テ義務ナシト難トモ乙物ノ半部ト丁物ノ半額ト其他安全ヲ得タル物件等ニテ之ヲ共擔スルモノトス
（委員長）
之ヲ要スルニ再度ノ海失ヲ合シテ現ニ殘ル所ノ物件ニテ共擔義務ヲ負擔スルヲ云フナルヘシ果シテ然ラハ法文ヲ簡略ニ記スル事ヲ得ヘキナリ
（細川委員）
說明ニ依ルトキハ餘程意義深重ニ考ヘラルニト雖トモ現存物件ニテ共擔スルヲ以テ精神ト爲スカ如シ
（箕作委員）
佛法ニ依レハ最初ノ海失モ亦再度ノ海失ニテ救得セラレタル物件ニテ之ヲ共擔スルモノト爲スナリ故ニ第一第二トモ合シテ現存物件ニテ共擔スルナリ
（本尾委員）
之ヲ要スルニ第一第二回ノ海失ヲ合拜シテ現存スル所ノ物件ニテ共擔スルヲ云フナリ
（箕作委員）
本條ノ場合及適用方法ハ質問セサレハ明瞭ナラサルナリ
（本尾委員）
然ラハ質問セン
于時正午十二時中止
午後第一時開會
（本尾委員）
更ニ適例ヲ示サンニ例令ハ甲船（一萬圓）乙物件（千圓）丙物件（二千圓）丁物件（三千圓）ノ時最初ノ海失ニテ乙物件ノ全部及ヒ丙物件ノ半額（千圓）ヲ投入シタリ故屬合計二千圓ノ海失トス此損失額ハ他ノ物件卽一萬四千圓ニ於テ割合ニ從ヒ之ヲ分擔ス然ルニ第二ノ難海失ニテ甲船ヲ破損失額五千圓トス丙物件ハ無難ナリシ（但最初ニテ半額ヲ損ス）カ丁物件ヲ投入シタリ（三千圓ノ價）此場同ニ於テハ損失ハ最初ノ海失ヲ合シテ一萬圓トス此一千圓ノ海失ハ現存スル物件卽チ六千圓船五千圓丙ノ現存物ノ額千圓ニテ之ヲ甲丙間ニテ分擔スルナリ
（委員長）
說明ヲ見ルモ何分不明了ナレハ質問スヘマ
（本尾委員）
諾
（箕作委員）
ヘタリヨホニ係ル添キハ第一第二ノ海失ヲ合并シテ現存シタル物件ノ價額ニ應シテ共擔義務ヲ擔當スルナリ本案ソ精神モ亦同一ナルヘシ唱一
又說明ニ「奪フヘカラス」トハヘタリーホノ說ニ依ル手キハ箪ニソ海失擔當ヲ十圓トセラレタル十キハ第二ノ海失ニテ其十圓ノ上ニ之ヲ增加スルヲ得サル事ヲ稱シテ權利ヲ奪フヘカラスト云フカ如シ一甲ニ
（本尾委員）
第ナノ海失ノ費用ハ到達港ニ至リ其港ノ相場ヲ以テ算「スヘシ丕テル然ルニ歸途中第二一ノ海失アリタルトキハ第二ノ場合二一ア投入シタル物件ノ代價ハ之ヲ如何シテ定ムルヤ到着港ニ至ラサル內ノ海失ナレハ其物件ノ代價ヲ積ル事ヲ得サルナリ其見積ル方法ハ質問セサレハ詳カナラサルナリ
（周布委員）
第一第二ノ海失ヲ合計スルニ於テハ第一ノ海失ノ割合ハ第二ノ海失ノ爲メ變更ヲ生スル事アリ然ルニ變更ヲ生セストスルハ穩當ナラサルナリ
○本條ハ質問ノ上修正スル事ニ決ス
○第九百九十二條
海中ニ投シ又ハ其他抛棄シタル貨物ハ後ニ生シタル大海失ヲ共擔スルノ義務ナシ又船舶後ニ沈沒シ或ハ廢物トナリタルトキハ積荷ノ其船舶ニ對スル共擔義務消滅ス
（細川委員）
前條ハ大小海失ニ付キ規定ス本條ハ大海失ノミ規定スルナリ
（本尾委員）
然リ尤モ汰海失ヲ共擔セサルニ依リ小海失ハ勿論共擔セサルナリ
（周布委員）
積荷ノ船舶ニ對スル共擔義務消滅スルハ如何ニ
（本尾委員）
昌船舶ノ沈沒スル仆キハ積荷ハ之レカ共擔ヲ負ハサルヲ云フナリコ
（鶴田委員）
後ニ生シタル海失ヲ共擔スルノ義務ナウトアルニ依丿其並剛ノ海失ニ就テハ共擔義務ヲ右咽スルカ如ク見ユルナリ
（本尾委員）
然リ
（長森委員）
果ツテ然ルトキハ前條ノ海失算計ノ方法ナハ異ナル場合ヲ生スルナリ
（箕作委員）
船舶ノ沈沒シタル場合ハ小海失ニ就テノ規定ナルヤ佛法ハ此場合ニ於テハ小海失トセリ
（細川委員）
本條ノ場合ハ總テ大海失ニ就テノ規定トモ解釋スルヲ得ルナリ
（箕作委員）
本條ハ佛法ト同一ノ精神ナルヤ否ヲ質問シ同一ナリトソ答辯ナルトキハ船舶沈沒ノ場合ハ特別海失ト爲ス事ヲ明瞭ニ記載セラレ度シトノ旨趣ニテ質問アラン事ヲ望ム
○本條モ亦質問フ上改正スルニ決スト
于時午後三時閉會