旧商法(明治23・26年)

商法編纂委員会 商法第一読会会議筆記 第69回

参考原資料

備考

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○第一讀會第六十九回
欠席 箕作委員
仝  岸本委員
○第九百六十四條
運漕狀ハ積荷ヲ終リタル時ヨリ二十四時間內ニ之ヲ交付ス可シ
積荷ノ關稅受取書及ヒ關稅明細書ヲ船長ニ交付スル亦タ同時間內ニ於テスヘシ
(長森委員)
交付トハ船長ヨリ交付スル事ヲ云フヤ
(本尾委員)
前條ノ規定ニ依リ互ニ交付スルノ時間ヲ云フナリ
(細川委員)
第二項ハ何人ヨリ船長ニ渡スヤ
(本尾委員)
荷主ヨリ之ヲ船長ニ渡スナリ
(長森委員)
明細書トハ如何
(本尾委員)
物件ノ種類及量目等ヲ記シタルモノヲ云フナルヘシ尤モ場合ニ依リテハ稅ノ蛇塑取書中ニ其明細ヲ合記スル事アルヘシ
(細川委員)
受取書ノ外ニ明細書ヲ要スル理由アルヤ
(本尾委員)
明細書ナキトキハ何レノ物件ニ稅ヲ受取リタルカ照應スルモノナキヲ以テナリ
○本條ハ「問」ノ字ヲ削ル
○第九百六十五條
成規ニ從ヒ作リタル運漕狀ハ關係者間及關係者ト保險者トノ間ニ充分ノ證據トナル但反對證ヲ擧クル事ヲ許ス
船長ハ包裝若クハ閉蓋シタル樽ノ儘引渡シタル積荷ノ種類及ヒ積量ニ就テハ明約ヲ以テ其責任ヲ引受ケタルニ非サレハ責任ナシ但外部ニ破損アリテ引渡シタル者ハ此限ニ在ラス
紛失又ハ破損責任ハ第五百五十二條ニ記載シタル事情ノ外火災盜難其他罪過ニ出テサル變故ノ爲メニ之ヲ免ルヽモノトス
船長ハ契約ヲ以テ自己ノ罪過ニ出ツル責任ヲ免ルヽ事ヲ得ス
(鶴田委員)
反對證ヲ許ストスルハ如何
(本尾委員)
證劵ニ依リテハ反對證ヲ許サヽルモノアリ例ヘハ爲替ノ如キ日疋レナリ是等ト異ナルヲ示サンカ爲ハメナリ
(委員長)
樽トハ丸キモノヲ云フ原文ハ四角ナルモノヲモ包ムナリ
(周布委員)
第二項ノ但書ハ船長ヨリ受取人ニ引渡ス時ヲ云フナリ
(細川委員)
引渡シトハ荷主ヨリ船長ノ受取ルトキヲ云フナルヘシ蓋シ破損アルヲモ引受ケタルトキハ之ニ責任ヲ負フヘキモノナレハナリ
(本尾委員)
第二項ノ但書ハ荷主ヨリ船長ニ引渡シタルトキヲ云フナリ而シテ破損物ヲ受取リタルトテ船長ニ貴任ナキヲ云フナリ
(細川委員)
然リ原文ノ意義ハ包裝ノ儘又ハ閉蓋シタル用器ノ儘ニテ其外部ニ破損ナク引渡サレタル物ハ船長ニ於テ責任ナシト云フニ在リ
(鶴田委員)
第二項ノ引渡シタルトハ荷主ヨリ引渡シタル事ニ係リ其但書ノ引渡シタルトハ船長ヨリ引渡シタルト見解スルハ未タ以テ正當ナリトスヘカラス原案者ノ意見ハ如何ナルヤ一應質問アラン事ヲ望ム
(本尾委員)
諾然ラハ包裝ノ儘又ハ閉蓋シタル用器ノ儘外部ニ破損ナクシテ引渡サレタル時ハ明約ヲ以テ責任ヲ負フタルニ非サレハ責任ナシトストノ意義ナルヤ如何ヲ質問セン
(鶴田委員)
第五百五十二條トハ但書ヲ指示スルナリ
○本條ハ第一項ハ原案ノ儘第三項ハ「破損」ノ下ニ「ノ」ヲ加ヘ「罪過」ヲ「過失」ニ改ム第二項ハ左ノ如シ
「船長ハ包裝ノ出儘若クハ閉藝皿シタル用器ノ儘外部ニ破損ナク引紘假サレタル云々」ト爲シ但壷日ヲ削ル
○第九百六十六條
船長ハ到達港ニ於テ運漕賃、別途謝金、海失費、其他立替ヘタル費用ノ支拂及受取證ト引替ヘテ其運漕狀ノ所持人ニ積荷ヲ引渡スノ義務アリ但其所持人數人アリテ申出タルトキハ裁判所又ハ安全ノ方法ヲ以テ他ノ場合ニ預ケ置クヘシ
(細川委員)
別途謝金トハ如何
(本尾委員)
船長ノ港ニ着シタルトキ取調ヘラレタル費用ノ如キモノヲ云フ之ヲ謝金ト云フハ穩當ナラサルナリ
○本條ハ「謝周金」ヲ「手數料」ニ「ヘテ」ヲ「ヘソ」ニ改ム
○第三款 運漕賃
○第九百六十七條
運漕賃ノ額ハ契約ニ據リ又ハ時ノ習用額ニ從ヒ之ヲ定メ船舶借切契約若クハ運漕狀ヲ以テ之ヲ證明ス
荷物世話料ノ如キ船長ノ別途謝金或ハ海失費其他別途ノ費用ハ契約上ノ許諾又ハ商業習慣ニ因ルニ非サレハ之ヲ支拂フヲ須ヒス
(本尾委員)
習用額ハ例ヘハ本年ハ何物件若クハ量目ニハ何程ノ料ヲ要ヲ云フナリ
(細川委員)
第二項ハ船長ノ取ルヘキ事アリ又船長ノ立替ヘタル事アルナリ
○本條ハ「謝金」ヲ「手數料」ニ「借切」ヲ「借入」ニ敏ム
○第九百六十八條
船長ノ陳造シタル船舶ノ積載力ニシテ實ノ積載力ヨリ大ナルトキハ船長ハ之カ爲メニ荷主ニ加ヘタル損害ヲ償フノ義務アリ且運漕賃ヲ相當ニ低減スヘシ
但其陳造官ノ測量證書面ト符合シ又ハ其差四十分一以下ナルトキハ此限ニアラス
(本尾委員)
例ヘハ五百噸ノ船ナリト吿タル胴ニ二百噸ノ船ナルトキハ他船ニ積入レタル損害ヲ受クル事アルナリ
○本條ハ「積載カ其實ニ超エタルトキハ船長ハ」ト改ム
○第九百六十九條
荷主ハ借切契約ノ場合ニ於テ契約上定メタル積荷ノ全量ヲ積入レサルモノ運漕賃ノ全額ヲ支拂フノ義務アリ過量ノ荷積ニ就テハ相當ノ運漕賃ヲ支拂フ可シ船長ハ荷主ノ承諾ヲ經テ他ノ積荷ヲ以テ不足ノ積荷ヲ補ナフ事ヲ得但其運漕賃ハ荷主ニ歸ス
○本條ハ「切」ヲ「入」ニ「モノ」ヲ「モ」ニ改メ「船長ハ荷主」以下ヲ別項トス
○第九百七十條
箇々ノ積荷ハ航海ヲ始ムル前ニハ運漕賃ノ半額及ヒ其生シタル費用ヲ支辨シテ荷主之ヲ取戾ス事ヲ得已ニ航海ヲ始メタル後取戾ス積荷ニ在テハ運漕賃ノ全額及ヒ之カ爲メニ生シタル費用ヲ支辨ス可シ
右兩場合ニ於テモ船長ハ自己ノ罪過ニ起因スル責ヲ免ルヽ事ヲ得ス
○本條ハ「及ヒ其生」ヲ「之レカ爲メ」ニ「罪過」ヲ「過失」ニ「箇々」ヲ「各會匚ニ改ム
(鶴田委員)
旅客ハ之ヲ積荷ト同樣ニ論スルヲ得サレトモ航海ヲ始メル前ニ乘船ヲ廢スルトキハ切符ハ旅客ノ損失ト爲スヤ
(本尾委員)
然ルナラン別段明條ナキヲ以テ之ヲ確定スル事ヲ得ス
○第九百七十一條
目錄ナク若クハ其實ニ非サル目錄ヲ以テ積入タル荷物ハ船長之ヲ陸揚シ又ハ海中ニ投シ又ハ最モ貴キ運漕賃ヲ之ニ付スル事ヲ得
(鶴田委員)
目錄トアリ此目錄ヲ作リテ初メニ船長ニ渡スヘキ規定ナカル可カラス
(本尾委員)
然リ尤モ稅關ノ明細書ヲ以テ目錄三貸用スル事ヲ得ルナリ
○本條ハ「目錄ナク」ヲ「陣吿ヲ爲サス」ニ「目錄ヲ以テ」ヲ「隲陣吿ヲ爲シテ」ニ改ム
○第九百七十二條
船舶航海ニ堪ヘサルトキ或ハ契約書面ニ記シタル屬籍ヲ有セス若クハ之ヲ失フタルトキハ荷主其契約ヲ解ク事ヲ得又船長ハ運漕費要求ノ權ヲ失ヒ之カ爲メ荷主ニ加ヘタル損失ヲ償フヘシ
○本條ハ「屠匚ヲ「國」ニ「藩只」ヲ「賃」ニ改ム
○第九百七十三條
航海中船舶ノ修復ヲ必要トスルトキハ荷主ハ運漕賃ノ全額ヲ支辨シ契約ヲ解ク事ヲ得
相當ノ期限內ニ船舶ヲ修復スルヲ得サルトキハ船長他ノ船舶ヲ以テ之ニ代ヘサル時ニ限リ荷主ハ唯タ其地迄ノ運漕賃ヲ拂フヘシ
(委員長)
前條トノ區別如何
(細川委員)
前條ハ未タ出航セサル以前ニシテ本條ハ出航途中ニ係ル規定ナリ-
(本尾委員)
然リ尤モ出航後ト雖トモ適用スルノ場合ナキニアラサルナリ例ヘハ航海途中ニテ國籍ヲ有セサル事ヲ發見シタルカ如キトキ是レナリ
○本條ハ原案ノ鱠甌
○第九百七十四條
第九百五十七條ノ場合ニ於テハ大海失ノ原則ニ從ヒ碇泊ノ費用ヲ定ム
○本條ハ原案ノ儘
○第九百七十五條
航海前若クハ航海中若クハ到達港ニ於テ荷主若クハ船長ノ起シタル滯留ノ費用ハ其滯留ヲ記シタル者之ヲ負擔シ且之カ爲メニ生シタル損失ヲ償フヘシ
○本條ハ原案ノ儘
○第九百七十六條
荷主ノ罪過或ハ偶事或ハ自然ノ品質ノ爲メ損失シタル貨物及第九百三十六條ニ從ヒ賣却シタル貨物又ハ共同ノ危險ヲ免レン爲メ海中ニ投シタル貨物ニ就テハ運漕賃ノ全額ヲ支拂フヘシ但海中ニ投シタル場合ニ於テハ右運漕賃ヲ以テ共擔金ノ割前ヲ支拂フヘシ
(委員長)
本條ノ例ハ如何
(本尾委員)
例ヘハ航海中已ムヲ得サル場合ニ於テ千圓ノ價アル物件ヲ投シタルトキハ之レカ爲メ救ハレタル所ノ物件ハ其千圓ノ價ヲ共擔スルヲ云フ但シ運賃ハ全部ヲ仕拂フモノトス尤モ其投セラレタル物件所有者カ共擔金ヲ擔當スルニハ其運賃ノ割合ニテ共擔金ヲ分擔スヘキヲ云フ
(長森委員)
運漕賃ヲ以テ共擔金ノ割合ヲ支拂フニアラスシテ運漕賃ノ割合ニテ共擔金ヲ分擔スヘシトノ意義ニ解セサルヘカラス
○本條ハ但書ハ運賃ノ割合ニテ共擔金ヲ分擔スルヤ又ハ運賃ヲ以テ共擔金ノ割合ヲ拂フモノナルヤ否詳カナラサルヲ以テ質問スル事ニ決ス尤モ其共擔ノ事ハ海失ノ編ニ至リテ尙ホ之ヲ論スル事ニ議決セリ