○第一讀會第六十五回
明治十九年十一月十日
欠席 箕作委員
仝 岸本委員
○午前第十時開會
前條ノ續キ第九
（本尾委員）
船長又ハ所有者ヨリ保險會社ニ保險セシメタル場合ヲ云フ而シテ其保險料ヲ支拂ハサルトキ保險會社ヨリ其保險料ヲ要求スル場合トス
（委員長）
船長ノ起シタル負債ヲ船舶カ負擔スルハ穩當ナラサルナリ
（本尾委員）
船長タル權利ノ內ニハ船長ハ船舶二負債ヲ負擔セシムル亠事ヲ得ルハ普通ナリトス
（周布委員）
白耳義商法ニ於テハ航海ノ保險ニ就テハ最後ノ航海ニ限リ一期保險ナレハ最後ノ保險期トアリ
第十
○本項ハ異議ナク罪過ヲ過失ニ改メタルノミ
第十一
○本項ハ「罪過」ヲ「過失」ニ改ム
第十二
（本尾委員）
登記ノ手續ハ第九百十六條ニ在リ而シテ書入質トセスシテ質物トセシハ蓋シ各國ノ法ハ本項ノ場合ハ之ヲ不動產ニ准スルヲ以テナリ然レトモ元來船舶ハ動產ト看做スニ依リ質物ト爲ヲ穩當ト爲シタルナリ
第十三
○本項ハ船舶ニ關スル要求ノミナルヤ他ノ要求ヲモ包含スルヤ之ヲ質問スル事ニ決ス
末項
（委員長）
各項內ニ於テモ事項ノ異ナルアリ假令ハ第十ノ如キ場合ニ於テハ三ケノ別アリ此三ケノ債主ハ皆平等ノ割合ト爲スハ穩當ナラサルナリ
（本尾委員）
第一ヨリ第十三ノ內ニテ事項異ナルモ同級ノ債主ナレハ同一ノ割合ヲ受クルナリ
○「各項」ヲ「同各項」ニ改メ「皆」ヲ削ル
正午十二時中止
午後第一時開會
○第九百十四條
運漕賃ノ責ハ最後ノ航海ニ係ルモノヲ以テ限トス一航海ノ爲メ又ハ一航海中ニ生シタル要求ニ就テハ該航海ニ係ルモノヲ以テ限トス
（本尾委員）
運漕賃ノ負擔スヘキ責任卽チ前條ニ於テ責ニ任スル額ヲ云フナリ
（周布委員）
前條ノ運漕賃トナセハ明瞭ニ至ルヘシ一航海云々ハ要スルニ最後ノ航海トナルカ如シト雖トモ然ラス一航海ノ爲メ生シタル要求ハ其航脚拇ニ係ル運漕賃ヲ以テ負擔スヘク最後ノ運漕一賃ヲ以テ員檐スヘキモノニアラサルナリ
（本尾委員）
然リ一航海ノタメ生シタル要求ハ最後ノ航海ノ賃ニ封セスシテ其要求ヲ生セシメタル航海中ノ蓮漕賃ニ對シテハ之レカ辯僕ヲ受クル事ヲ云フナリ
（周布委員）
十年以前ノ要求ト雖トモ今日ニ至リ之ヲ要求スルニハ最後ノ運漕賃モ亦之カ責ヲ負擔スヘキモノトス
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第九百十四條義務ヲ負フヘキ運漕賃ハ最後ノ航海ニ係ル運漕賃ヲ以テ限トス一航海ノ爲メ又ハ一航中ニ生シタル要求ニ付テハ其航海ニ係ル運漕賃ヲ以テ限トス
（鶴田委員）
第七ニ於テハ出航セサルトキニ限ルトアリ本條ニ依レハ其航海ノ爲メニ生シタル要求ナルヲ以テ出航シテ得タル未牧ノ運漕賃ニ對シテ要求ヲ爲スヲ得ルニ至ルナリ然ルトキハ第七トノ關係如何
（本尾委員）
第七ノ內ニアル最後ノ航海云々ハ質問ノ條件ナルヲ以テ答辯ヲ得タル上ニアラサレハ判然セサルナリ
○第九百十五條
無登記ノ要求ニ對スル船舶及運漕賃ノ責ハ契約上ノ賣却ノ場合ニ於テハ新所得者ノ名義及計算ヲ以テシ且賣主ノ債主ノ異議ヲ受ケスシテ定繫港ヨリ發港シ且發航後六十日ヲ過キタル後ニ消滅スル者トス
（本尾委員）
例ヘハ船舶所有主ナル甲ニ其船ヲ抵當トシテ金圓ヲ貸渡シタル然ルニ之カ登記ヲ爲サヽリシ此場合ニ於テ甲ハ其船ヲ丙ニ賣渡シタリ乙ナル賣主ノ債主部先キニ抵當ニテ貸金シタル者別段異議ヲ申述フル事ナク發航シタル日ヨリ六十日ヲ經ルトキハ其船及運賃ノ負擔スヘキ義務ハ消滅スルヲ云フナリ
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第九百十五條無登記ノ要求ニ對スル船舶及運漕賃ノ義務ハ其船舶賣讓ノ場合ニ於テ新所有者ノ名義及計算ニテ且賣主ノ債主ヨリ異脚議ヲ受ケス定鑿揶港ヨリ一發航シ勵蟹航後六十日ヲ過キタルトキハ消滅スルモノトス
○第九百十六條
船舶ニ係ル要求ノ登記ハ第九百二十一條ニ記載シタル場合ヲ除クノ外登記シタル船舶ニ限リ特別ノ質入證書ニ依リテ之ヲ爲ス事ヲ許ス但其登記シタル事ハ特別ノ質登記簿船舶登記簿登記證書及質入證書中ニ附記ス可シ
（本尾委員）
第九百二十一條ニアル築造中ノ船舶ハ未登記ノ船舶ナルヲ以テ取除タルナリ
（委員長）
登記證トハ如何
（本尾委員）
登記シタル證書ハ船中ニ備置クモノトス
○第九百十七條
登記ハ船舶登記簿ヲ執ル官廳ニ於テ之ヲ爲シ其登記スル事件ハ左ノ如シ
一 債主ノ氏名及住地
二 其要求ノ額及事由
三 質入證書ノ日附及署名
四 登記ノ時日
（本尾委員）
登記ハトハ船舶ニ係ル要求ノ登記ハト云フ意ナリ
○本條ハ「件」ヲ「項」ニ「地」ヲ「署」ニ改メ「其要求ノ金額及事由」ト爲ス
○第九百十八條
登記シタル事ニ就テハ證書ヲ下付ス若シ其已前ニ登記シタル要求アルトキハ併セテ之ヲ記ス可シ此證書ハ裏書ヲ以テ他人ニ讓渡ス事ヲ得此裏書讓渡ハ質登記簿ニ登記スルニ非サレハ他人ニ對シテ無效トス
（本尾委員）
若シ其以前云々トハ二人以上ノ債主アルトキヲ云フ
○本條ハ「已」ヲ「以」ニコ讓渡」ヲコ買讓」ニ下ノ他人ヲ第三者ニ下ノ讓渡ノ二字ヲ削ル
○第九百十九條
登記シタル要求ハ債主ノ承諾書又ハ裁判所ノ判決ニ由テ消滅ス此場合ニ於テハ登記證書ハ登記官廳ニ還納シ該官廳ハ其消滅ノ旨ヲ其證書中ニ付記ス可シ
（鶴田委員）
登記證書トハ船舶ノ登記證書ト差異アラシムル樣改正スヘシ
（周布委員）
「其要求ノ登記證書」ト爲スヘシ
○本條ハ原案ノ儘
○第九百二十條
各船舶債主ハ其要求ニ相當ノ明證アルトキニ限リ裁判所ノ命令ニ因テ船舶ヲ糶賣スル事ヲ得其法律上ノ特權（第九百十三條）ハ之カ爲メニ變スル事ナシ但其要求唯タ船舶ノ持部所有者ニ對スルトキハ其持部船舶所有權全部ノ半額ニ超ユルトキハ除クノ外唯該持部ヲ糶賣スル事ヲ得
（委員長）
（第條）トアルヲ削リタルトモ之ヲ存スル方實際便宜ナルヘキヲ以テ存置スルモノトセハ如何ナルヤヲ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ「持部「所一有者」ヲ「持分」ニ「持部」トアルハ皆コ持分」ト改ム
于時午後三時閉會