○第一讀會第五十九回
明治十九年十月廿二日
欠席 細川委員
仝 周布委員
午前十時開會
○第八章 償還要求
○第八百三十六條
支拂人支拂期日ニ爲替ヲ支拂ハサル時ハ爲替所持人又ハ其代人ハ振出人又ハ裏書讓渡人ニ對シテ爲替金及ヒ其利足ノ支拂並ニ其不支拂ノ爲メニ生シタル諸費用ノ辨償ヲ要求スル事ヲ得
○本條ハ「讓渡」ヲ削除シタルノ
○第八百三十七條
承諾人ニ對スル爲替上ノ權利ヲ維持スルニハ支拂期日ニ爲替ヲ提示スルヲ要セス又拒證書ヲ作ルヲ要セス但他所拂爲替ハ他所拂人ニ提示シ若シ他所拂人ヲ揭ケサルトキハ爲替支拂地ニ於テ支拂人ニ提示シ其支拂ヲ得サルトキハ同地ニ於テ拒證書ヲ作ルヘシ
（本尾委員）
承諾人ニシテ資力アルモノナルトキハ所持人支拂期日ニ支拂人ニ爲替ヲ提示スル事ヲ要セサル變則ヲ揭クルナリ尤モ償環要求權ヲ執行セントスルニ於テハ拒證書ヲ作ラサルヘカラス否ラサレハ償還要求權ヲ失フモノトス
（鶴田委員）
本條ハ償還要求ニハ關係ナキカ如シ
（本尾委員）
否本條ハ償還要求權ハ支拂人ニ提示セサルカ爲メ裏書人ニ對シテ償還要求權ヲ失フモノナレハ關係ヲ有セスト云フ事ヲ得サルナリ
（箕作委員）
但書ハ本文ニ關係ヲ有セサルカ如シ
（本尾委員）
然リ但書ハ單ニ提示ト拒證書ヲ作ラサルヘカラサル事ヲ示スニ過キサルナリ何トナレハ他所拂爲替ニ承諾人アル事ハ蓋シ聞カサルナリ
（岸本委員）
注ニ依レハ他所拂爲替ニ付テモ提示ト拒證書ヲ作ラサレハ承諾人ニ對シテモ亦爲替上ノ權利ヲ失フトアリ
（本尾委員）
然ラス他所拂爲替ニ承諾人アル事ナケレハナリ
（鶴田委員）
承諾人アル場合ニアラサレハ之ヲ示スニ及ハサルナリ何トナレハ是レ普通ノ場合ト異ナラサレハナリ
出席細川委員
同周布委員
（本尾委員）
說明ニ依レハ承諾人アル他拂爲替ニ付テモ之ヲ適用スルカ如ク見ユレトモ之レ承諾人ノ有無ヲ論セス他所拂爲替ニ付キテハ本條ノ手續ヲ爲サヽルヲ得サルハ勿論ナリトス
○本條ハ「維持」ヲ「保存」ニ「但」ヲ「然レトモ」ニ改ム
○第八百三十八條
爲替所持人ハ支拂期日ニ於テ支拂ノ爲メ爲替ヲ提示スヘシ若シ支拂ヲ爲サヽルトキハ支拂期日ノ翌日不支拂拒證書ヲ以テ之ヲ公證スヘシ
（細川委員）
本條ハ本節三記載スルヲ要スルヤ
（本尾委員）
償還要求ヲ爲スニハ本條ノ手續ヲ爲スニ非サレハ能ハサル事ヲ示スナリ
（鶴田委員）
公證ス可シトアルハ穩當ナラサルナリ
（箕作委員）
然リ原文ハ證明ス可シノ精神ナリトス
○本條ハ「不支拂」ヲ「支拂」ニ改メ「公」ヲ削ル
○第八百三十九條
不支拂ノ拒證書ハ既ニ不承諾ノ拒證書ヲ作リタルモ又負債者死亡シ若クハ倒產處分ヲ受ケ若クハ其所在不分明ナルモ必ス之ヲ作ラサル可ラス
○本條ハ「不支拂ノ」ヲ「支拂」ニ「不承諾ノ」ヲ「承諾」ニ「倒」ヲ「破」ニ改メタルノミ
○第八百四十條
承諾人倒產處分ヲ受ケ又ハ其他不安全トナリテ爲替支拂ノ爲メニ充分ノ保證ナキ時ハ支拂期日前ニ不支拂ノ拒證書ヲ作リ償還要求ヲ爲ス事ヲ得
（箕作委員）
保證ナキ時トハ保證ノ請求アルモ之ヲ立テサルトキヲ云フヤ
（本尾委員）
然リ想像ヲ以テ之ヲ斷スル事ヲ得ス保證ノ請求アルモ之ニ應セサル時ヲ指スモノナリ
○本條ハ「倒」ヲ「破」ニ改メ「又」ハヲ削リ「ナキ時」ヲ「ヲ立テサル時」ニ「不支拂ノ」ヲ「支拂」ニ改ム
○第八百四十一條
爲替所持人ハ振出人及裏書讓渡人ノ各個又ハ總員ニ對シ償還要求ヲ爲ス事ヲ得又償還要求ヲ受ケタル裏書讓渡人ハ其以前ノ裏書讓渡人及振出人ニ對シテ同一ノ權利アリ
○本條ハ「讓渡」ヲ削リ「各個」ヲ「一員」ニ改ム
○第八百四十二條
償還要求權ハ第八百條ノ規則ニ依ルノ外其擇フ所ノ償還義務者ニ書面ヲ以テ其要求ヲ通知シ且不支拂拒證書ヲ通知スル事ニ依リテ起ルモノトス其通知ハ所持人ハ拒證書ヲ作リタル日ノ翌日裏書讓渡人ハ其通知書ヲ受取リタル日ノ翌日ニ於テスヘシ但此通知ニ依リ其通知者及其以後ノ裏書讓受人償還要求權ヲ得ルモノトス
（本尾委員）
第八百條ノ規定ヲ履行セスシテ本條ノ手續ヲ爲スヘシトノ意味ナリ
（周布委員）
本條ニ依レハ第八百條ノ規定ヲ履行シタル上本條ノ手繪一ヲ爲スカ如ク見ユルノ嫌アリ
（本尾委員）
第八百條ノ償還要求權ヲ失フトアルハ保證請求權ヲ失フ事ヲ云フナリ
（細川委員）
然ラン然レトモ一應原語同一ナレハ質問アラン事ヲ望ム
（本尾委員）
諾
○本條ハ「則ニ依ルノ外」ヲ「定ニ拘ハラス」ニ「通知シ且不」ヲ「及」ニ改メコ讓受」コ謖渡」「但」ヲ胴削除ス
于時正午第十二時中止
○第八百四十三條
償還要求ヲ起シタルカ爲メニ其要求ヲ受ケタル人ヨリ以後ノ裏書讓渡人ハ其償還義務ヲ免ルヽ事ナシ
（本尾委員）
本條ハ五人目ノ人ニ償還要求ヲ爲シタルトモ其五人目以下ノ裏書人ト雖モ其義務ヲ免ル事ヲ得サルヲ云フナリ尤モ五人目ノ人ニ於テ義務ヲ盡シタルトキハ其人以下ノ者ハ義務ヲ免ルニ事ヲ得ルナリ
○本條ハ「讓渡」ヲ削ル
○第八百四十四條
拒證書ノ免除ノ爲メニ拒證書ヲ作ルノ權利及ヒ全償還額支拂ノ義務ハ消滅スル事ナシ但其免除シタル者ヨリ以後ノ裏書讓渡人ハ之ニ對シ爲替ノ謄本ヲ添ヘ書面ヲ以テ償還要求ヲ通知スルヲ以テ足レリトス
（周布委員）
但書ハ拒證書ヲ作ラサル場合ナルヘシ
（本尾委員）
然リ
（周布委員）
然ラハ拒證書ヲ作ラサルトキハノ文ヲ挿入スルヲ可トス
（本尾委員）
但書ハ例之ハ五人目ノ裏書人ニ於テ拒證書ヲ免除シタルトキハ其人以下ノ讓受人モ亦其免除ノ記載ヲ利用スルヲ得ルニ依リ第十人目ニ至リ支拂ヲ求メタルニ支拂人之ヲ拒ミタルトキハ第十人目ノ者卽チ所持人ハ拒證書ヲ作ラスシテ第五人目ノ者卽チ免除シタル者又ハ其免除シタル者以下ノ讓渡人ニ對シ≠手形ノ謄本ヲ添ヘテ通知スレハ償還要求ヲ爲ス事ヲ得ルナリ蓋シ普通ノ場合ニ於テハ拒證書ナケレハ償還ヲ要求スルヲ得サルヲ原則ト入ルニ依リ第四人目以上ニ對シテハ之ヲ要求スル事ヲ得サレハナリ尤モ「之ニ對シ」ノ原語ハ免除シタル者ヲ指示スレトモ理論上ヨリ云フトキハ免除シタル者ヨリ以下ノ讓受人モ亦包含スルモノト爲ハス
○本條ハ「讓渡」ヲ削タルノミ
○第八百四十五條
償還要求ノ訴訟ハ其要求權ヲ得タル者ヨリ其要求ヲ受ケタル者ニ對シ期滿得免全期限中ニ於テ之ヲ起ス事ヲ得
（長森委員）
要求ヲ受ケタル者トハ要求ヲ受クヘキ者ト云フ意ナルヘシ
（周布委員）
要求ヲ受ケタル者トハ第八百四十二條ニ依リテ通知ヲ受ケタル者ヲ云フナルヘシ～
（本尾委員）
一要求ヲ受ケタル者及其者以下ノ裏書人三對シテモ時效中ハ之ヲ請求スル事ヲ得ルナリ卽チ第八百四十三條ニ於テ要求ヲ受ケタル人ヨリ以後ノ裏書人ト雖モ償還義務ヲ免ル工事ヲ得サルナリ」
（箕作委員）
本條ハ單ニ時效ノ至ラサル間ニ權利者ヨリ義務者ニ對シ要求ヲ爲ス事ヲ得ヘキヲ云フニ過キサルナリ
○本條ハ「期滿得免全期」ヲ「期滿免除期」ニ改ム
○第八百四十六條
償還要求權ハ支拂人ニ於テ爲替備金ヲ領收シタリトノ故障申立ヲ以テ效力ヲ失フ事ナシトス但爲替備金ヲ爲スノ義務アル者ニ對シテハ此者ヨリ之ヲ領收セストノ故障ヲ申立ル事ヲ得
（本尾委員）
拒證書ヲ添ヘテ裏書人ニ償還要求ヲ求メタルトキ裏書人ハ支拂人ニ於テ資金ヲ領收セルニ依リ支拂人ニ至ルヘシトテ自己ノ償還義務ヲ拒ム事ヲ得サルヲ云フ但書ハ爲替資金ヲ送付スルノ義務アル者之ヲ送付セサルニ其手形ニ對シ支拂ヲ求メタルトキハ支拂人ハ資金ヲ領收セサルヲ以テ之カ支拂ヲ爲ストノ故障ヲ述フル事ヲ得ルナリ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第八百四十六條償還要求權ハ手形資金ヲ支拂人領收シタリトノ抗辯ニ依リ效力ヲ失フ事ナシ但手形資金ヲ備フルノ義務アル者ニ對シテハ未タ之ヲ領收セストノ抗辯ヲ爲ス事ヲ得
○第八百四十七條
償還要求ハ左ノ金額ニ就テ之ヲ爲ス事ヲ得
一 爲替金但支拂期日ヨリ算シテ百分七ノ利子ヲ付ス
二 拒證書費用其他必要ノ立替金
三 逆爲替ヲ振出シタルトキハ其費用
（周布委員）
百分ノ七ハ商社法ニ從ヒ百分ノ八ト爲スヘシ
○本條ハ第一ヲ左ノ如ク修正セラレタルノミ
第一手形金及支拂期日ヨリ算シタル百分七ノ利息
○第八百四十八條
償還要求權ヲ得タル者ハ償還義務者ニ對シ償還金額ヲ限トシ其動產ノ所有物ニ就テ裁判所ノ差押ヲ請求スル事ヲ得但十四日以內ニ償還訴訟ヲ起サヽル時ハ其差押解止ス
爲替所持人ハ承諾人ニ對シ亦同一ノ權利アルモノトス
○本條ハ「其動產ノ所有物」ヲ「其所有ノ動產」ニ「差押」ヲ「假差押」ニ改ム
○第八百四十九條
償還義務者ハ唯タ爲替拒證書及ヒ受取ヲ記シタル償還計算書ト引替ニ支拂ヲ爲スノ義務アリ
○本條ハ「唯タ」ヲ削リ手形ノ傍ニ「、」ヲ付ス
○第八百五十條
總テ爲替負債者ハ償還金ト引替ニ受取ヲ記シタル爲替及不支拂拒證書ノ交付ヲ爲替所持人ニ要求スルノ權アリ
○本條ハ「不」ヲ削リタルノミ
○第九章 拒證書
○第八百五十一條
總テ拒證書ハ裁判所ノ官吏又ハ公證人ヲシテ之ヲ作ルヘシ若シ其地ニ此人員ナキトキハ丁年男子ノ證人二名ノ立會ヲ以テ本人若クハ其代人自ラ之ヲ作ル可シ但證人ハ成ルヘク商人タルヲ要ス
（本尾委員）
本人トアルハ被拒人ヲ云フ
（委員長）
被拒人ト爲シ又裏書讓受人及ヒ裏書讓渡人ヲ總テ「被裏書人及ヒ裏書人」ト改正セハ如何
○本條ハ「ヲシテ」ヲ「ニ依テ」ニ「本人」ヲ「被拒人」ニ改メ末尾ノ「タル」ヲ湘割ル
○第八百五十二條
拒證書ハ拒證書相手方ノ店舖店舖ナキ時ハ其住居ノ內若クハ傍ニ於テ之ヲ作ル可シ但其相手方不在ナルトキ又ハ其臨席ヲ肯ンセス若クハ來入ヲ拒ムトキニ於テモ亦タ同シ
（箕作委員）
傍トハ搆ヘ內ト云フ意義ナリ
（本尾委員）
本條ノ場合ニ於テハ官吏及公證人ハ證書ヲ作ル場所ニ出張セサルヘカラサルナリ
○本條ハ「內若クハ傍」ヲ「屋內若クハ屋外」ニ「相手方」ヲ「拒人」ニ改ム
于時午後第三時ナリキ