○第一讀會第五十八回
明治十九年十月廿一日
欠席 細川委員
仝 長森委員
○第八百二十一條
拂渡期日又ハ該期日後ニ於テ爲替所持人ニ支拂フタルトキハ負債者其責ヲ免ル但其際負債者ニ於テ太過アルトキハ此限ニ在ラス
（本尾委員）
本條ハ前條ノ反對ナリ
本條ハ體支一拂期目ニ拂フヘキモノト一雖トモ一拂フヘカラサル場合ニ於テハ支拂フ事能ハス卽チ盜難ノ通知アリシトキ之ニ拘ハラス支拂ヲ爲タル如キハ卽チ質貝債者ノ大過ナリトス
○本條ハ「拂渡」ヲ「支拂」ニ「爲替」ヲ「手形」ニ改メ「該」字ヲ削リ「太」ヲ「大」ニ改ム
○第八百二十二條
支拂ハ請取證ヲ記シタル爲替ヲ引渡スニ非サレハ之ヲ受ルヲ得ス一部分ノ支拂ト雖トモ債主之ヲ許諾セサルヘカラス此場合ニ於テハ其旨ヲ爲替面ニ記シ負債者ニハ別ニ請取書ヲ交付ス可シ
（箕作委員）
一部分ノ支拂トハ如何
（本尾委員）
假令ハ千圓ノ手形ヲ持參スルニ支拂人ニ於テ五百圓丈支拂フ事ヲ云フ
（箕作委員）
此場合ハ拒證書ヲ作ル事ヲ得ルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ左ノ如ク改ム
支拂ハ受取證ヲ記シタル手形ヲ引渡スニ非サレハ之ヲ受ル事ヲ得ス一部分ノ支拂ト雖トモ債主之ヲ受取ラサル可カラス此場合ニ於テハ其旨ヲ手形ニ記シ負債者ニハ別ニ受取證ヲ交付ス可シ
○第八百二十三條
數通ニシテ爲替ヲ振出シタルトキハ負債者ハ唯タ其一通ノ支拂ヲ以テ責ヲ免ルヽ者トス若シ別ニ支拂人ノ承諾及ヒ裏書アル一通ヲ其所有者トシテ所持スル者ノ權利ハ之カ爲メニ害セラルヽ事ナシ但第七百七十二條及ヒ第七百七十三條ハ一爲替ニ於ル數通ノ交付及ヒ紛失ニ就テモ之ヲ適用ス
（本尾委員）
七百七十二條七百七十三條ヲ揭ケタル故障ヲ申立テ取戾ス事ヲ得ヘキ場合ヲ示シタルナリ
（箕作委員）
若シ云々トハ數通ヲ振出シタルトキ承諾アル手形ヲ併セテ呈示セサルトキニ支拂ヲ爲シタルトキハ其裏書ノ爲メニ再度支拂ヲ爲サヽルヘカラサルヲ示スモノナルヤ
（本尾委員）
然リ再度拂ヲ爲サヽルヘカラス何ントナレハ初メニ支拂ヲ爲シタルハ支拂フヘカラサルニ支拂ヒタルモノハ自己ニ其危險ヲ皿貝擔スルモノナリ
（箕作委員）
裏書トハ支拂人ノ裏書トスルノ意ナルヤ
（本尾委員）
否裏書トハ他人ニシテ支拂人ニ係ルモノニアラス故ニ支拂人ノ承諾ト裏書アル一通トハ格別ナリ
（周布委員）
所有者トアルハ尤モ緊要ナリヤ
（本尾委員）
然リ間斷ナキ裏書アルニアラサレハ眞ノ所有者ト爲サヽルカ如ク尤モ必要ナルモノトス
（箕作委員）
但以下ハ如何ナル意味ナルヤ
（本尾委員）
假令ハ數通ノ書面ニシテ乙ノミヲ以テ請求スルモノハ必ス甲ヲモ持參セサレハ請求スル事ヲ得ス又其甲ハ質入シタル場合ニ於テハ之ヲ取戾サヽルニ於テハ支拂人ニ於テハ支拂ハサルナリ要スルニ本條ハ手形上ノ要求權ヲ消滅セシムルノ一手段ナリトス
（岸本委員）
本條ノ場合ハ支拂人ハ數通ノ承諾ヲ與ヘタルトキハ皆之ヲ持參セサレハ支拂フ義務ナキカ如シ
（本尾委員）
本條ノ場合ハ裏面ハ數通皆一同ニ持參セサレハ支拂フノ權ナシト雖モ若シ所持人ニシテ之ヲ持參スル事能ハサルトキハ保證ヲ立テシメテ後支拂フ事ヲ得ルナリ故ニ支拂ノ義務ナシトハセサルナリ而シテ保證ヲ立テシムル場合ハ多クハ第二號以下ノ手形ニ限ルモノナリ第一號ノトキハ直ニ支拂フモノナリ何ントナレハ承諾ハ第一號婁與フルヲ通例トスレハナリ
（岸本委員）
次條ニ於テ見ルトキハ數通ノ手形ニ承諾ヲ與ヘタルトキハ皆之ヲ持參セサレハ支拂人ハ之レカ支拂ヲ拒ム事ヲ得ルカ如シ
（本尾委員）
否本條ニ於テハ數通ヲ持參セサレハ支拂フ事能ハサル旨ヲ定メタルニアラサルナリ假令一通ヲ持參シタルトキト雖モ支 拂人ニ於テ之ヲ承諾スルトキハ支拂ヲ爲シ得ヘキモノナリ
于時正午時中止
午後十二時四十分開會
（委員長）
本條ハ質問スヘシ
（本尾委員）
數通承諾シタルトキト雖モ一回ノ支拂ニテ差支ナキヤ又ハ數通ナルトキ最初ニ支拂其後ニ至リ承諾シタル所持人持參スルトキハ尙之ニ對シ支拂フモノナルヤ又雨三回ニテモ支拂フモノトセハ第八百二十四條ノ亦同シトアルノ意味明瞭ナラス此㸃ニ付質問スルトセハ如何
（委員長）
然リ
右ノ理由ニ依リ本條及ヒ次條ハ質問ノ上修正スルニ決ス
○第八百二十五條
支拂期日又ハ該期日後ニ於テ爲替面上正當ナル所持人ニ對スル支拂ハ其所持人倒產シタルトキ又ハ第七百七十二條及ヒ第七百七十三條ノ場合ニ限リ裁判所ノ命令ヲ以テ之ヲ差留ル事ヲ得
○本條ハ左ノ如ク改ム
「該」ヲ削リ「爲替面上」ヲ「手形上」ニ「倒產」ヲ「破產」ニ改ム
○第八百二十六條
前條ニ定ムルモノヽ外支拂ニ對スル故障申立或ハ負債者ノ知ラサル人ニ對スル支拂ニ就テハ第四百五十九條ヲ適用スル事ヲ得
（鶴田委員）
負債者ノ知ラサル人トハ孰レヲ指スヤ
（本尾委員）
支拂ハ何人ニ對スルモ支拂ハサルヘカラサルヲ示ス
（鶴田委員）
故障申立ハ如何
（本尾委員）
例ヘハ所持人ト第三ノ人ト爭論ヲ起シ其手形上ニ付故障申立ヲ爲ス事ヲ云フ此時ハ支拂人ハ手形債主上ノ資格ヲ有スル人ニ手形金ヲ支拂ノ義務アルモノニシテ太過ナキニ於テハ毫モ故障申立ニハ關係セサルナリ
（鶴田委員）
然ラハ前條ニ定ムルモノニ外トハ或以下ニハ關係セサルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ「或」ヲ「又」ニ「就」ヲ「付」ニ改ム
○第八百二十七條
第七百七十二條及ヒ第七百七十三條ノ場合ニ於テ爲替ノ所有權ヲ證明シ裁判所ノ命令ヲ得タル者（第八百二十五條）ハ確定裁判ヲ受クル前ニ保證ヲ立テヽ爲替金ノ支拂ヲ要求スル事ヲ得但保證ヲ立テサルトキハ之ヲ裁判所又ハ銀行ニ預ク可キ事ヲ請求スル事ヲ得ヘシ此場合ニ於テハ第八百十九條ノ規則ヲ適用スヘシ
（箕作委員）
第八百十九條ヲ適用スルハ危險ニ付テナルヤ
（本尾委員）
然リ
（委員長）
裁判所ノ命令ヲ得タル者トハ如何
（本尾委員）
例ヘハ所有權アリト云フヲ以テ裁判所ニ訴ヘタルトキ其原吿タルモノ一時モ速ニ其手形金ヲ入レソトスルトキハ裁判所ノ命令ヲ以テ其金員ノ支拂ヲ受クルヲ云フ
○本條ハ「爲替」ヲ「手形」ニ「但」ヲ「又」ニ「立テサルトキハ」ヲ「立テスシテ」ニ「規則」ヲ「規定」ニ「要求」ヲ「請求」ニ改メ請求ノ下ノ「可シ」ヲ削ル
○第八百二十八條
支拂人法律上ノ理由ナクシテ支拂期日ニ於テ爲替金ヲ支拂ヒ又ハ預クル事ヲ拒ムトキハ所持人ハ翌日拒證書ヲ作リ之ヲ其擇フ償還義務者ニ通知スヘシ但爲替面ニ明記シテ拒證書ヲ作ル事ヲ免除スルヲ得
（箕作委員）
償環義務者ニ通知スヘシトアレトモ原文ニテハ義務者中ニ直ニ要求權ヲ行フ可キ旨ヲモ指示セリ
（委員長）
拒證書ハ手形ニ作ラサル事ヲ明記スルトキハ別ニ之ヲ作ル事ヲ免除スルヲ云フヤ
（鶴田委員）
然リ
○本條ハ左ノ如ク改ム
其擇フノ下ニ「所ノ」ニ字ヲ加ヘ但以下ハ左ノ如ク改ム
但拒證書ハ其免除ヲ手形ニ明記シアルトキニ限リ之ヲ作ルヲ要セス
○第七章 榮譽支拂
○第八百二十九條
拒證書ヲ付シタル爲替ハ振出人若クハ裏書讓渡人ノ爲メニ榮譽承諾人及支拂人ハ勿論何人タリトモ之ヲ支拂フ事ヲ得
○本條ハ「七章」ヲ「七節」ニ「裏書讓受人」ヲコ「裏書人」ニ「爲メ」ノ上ニ「榮譽ノ」三字ヲ加フ
○第八百三十條
豫備支拂人其他立入人ノ承諾ヲ記シタル爲替ハ拒證書ヲ作リタル後直ニ支拂ノ爲メ榮譽承諾人ニ之ヲ提示スヘシ其支拂又ハ支拂ノ拒絕ハ不支拂拒證書又ハ其附箋ニ之ヲ記ス可シ
（鶴田委員）
支拂拒證書トハ最初ノ證書ヲ云フヤ
（本尾委員）
後ノ拒證書モ入ルヘシト雖モ後ノ證書ハ先ノ證書ニ附記スルヲ以テ足レリトス
（委員長）
榮譽承諾人トハ何レヲ指スヤ
（本尾委員）
豫備支拂人承諾シタルトキハ榮譽承諾人ト改名スルナリ
○本條ハ「不支拂」ノ三字ヲ削ル
○第八百三十一條
榮譽支拂若クハ其申出ハ必ス之ヲ拒證書ニ記載シ且此證書ハ爲替ト共ニ拒證書費用ト引換ニテ之ヲ榮譽支拂人ニ交付スヘシ
（本尾委員）
申出トハ支拂フヘキトノ旨ヲ榮譽支拂人ヨリ申出ヲ云フ若シ之ヲ拒絕シテ支拂ヲ拒ミタルトキモ亦拒證書ニ記載スヘシ此場合ニ於テハ所持人拒絕シタルヨリ以後ノ讓受人ニハ要求權ナシ
○本條ハ「爲替」ヲ「手形」ニ改ム
○第八百三十二條
榮譽支拂人、振出人及裏書讓渡人ニ對シ爲替所持人ノ權利ヲ有ス但此權利ヲ實行スルニハ所持人ト同一ノ義務ヲ盡サヽル可ラス
（岸本委員）
承諾人トアレトモ榮譽支拂人ニ對スル承諾人ハナカルヘシ
（本尾委員）
支拂人於テ一度之ヲ拒ミタルモ後ニ至リ榮譽トシテ支拂ヲ承諾シタルトキ他人其支拂ヲナシタルトキハ支拂人ハ卽チ承諾人トナルナリ
○本條ハ「讓渡」ノ二字ヲ削ル
○第八百三十三條
榮譽支拂ハ總テ其支拂ヲ受ケタル者ヨリ以後ノ讓受人ヲシテ其責ヲ免レシムル者トス
○本條ハ左ノ如ク改ム
榮譽支拂ハ總テ其被立入人ヨリ以後ノ裏書人ヲシテ其責ヲ免カレシムルモノトス
○第八百三十四條
榮譽支拂ヲ申出テタル者數人アルトキハ支拂人之ニ當ル之ニ次テハ最多數ノ義務者ニ其責ヲ免レシムル者之ニ當ル
○本條ハ左ノ如ク改ム
榮譽支拂ヲ申立テタル者數人アルトキハ支拂人ヲ以テ先トシ次ニ最多數ノ義務者ノ義務ヲ免レシムル最モ多キ者ヴ以テ先トス
○第八百三十五條
爲替所持人榮譽支拂ヲ拒ミタルトキハ被立入人及其以後ノ讓受人ニ對シ償還要求權ヲ失フ者トス
○本條ハ異鮎議ナシ