○第一讀會第五十七回
明治十九年十月廿日
欠席 長森委員
午前十時開會
○第八百一條
振出人及ヒ裏書讓渡人ハ保證ヲ爲スニ代ヘテ前條ニ記載シタル金額ヲ直ニ所持人ニ支拂ヒ或ハ之ヲ裁判所又ハ銀行ニ預ケ置クコトヲ得
○本條ハ「讓渡」ヲ削リ「爲ス」ヲ「與フル」ニ「或」ヲ「又」ニ「又」ヲ「若ク」ニ改ム
○第八百二條
差入レタル保證又ハ預ケ金ハ後日爲替ノ承諾ヲ受ケ或ハ爲替金若クハ償還金ノ支拂ヲ受ケ或ハ期滿得免又ハ怠慢ノ爲メニ所持人其爲替上ノ權利ヲ失フタルトキハ費用ヲ扣除シテ之ヲ還付スヘシ
（箕作委員）
何人ヨリ還付スルヤ
（本尾委員）
所持人ヨリ之ヲ保證ヲ差入レタル人ニ還付スルナリ
（委員長）
後日承諾ヲ受クルコトアルヤ
（本尾委員）
例之ハ爲替資金ノ送付ナキヲ以テ承諾ヲ拒ミシニ後日「資金ノ送付アリタル爲メ更ニ支拂ヲ承諾スルカ如キヲ云フ
（箕作委員）
又或ハ名譽承諾人其支拂ヲ承諾シタル場合モ亦同ナシ
○本條ハ「ヽ」ヲ「若ハ」ニ「或」ヲ「又」ニ「得免」ヲ「免除」ニ改メタルノミ
○第八百三條
第八百一條ニ從ヒ爲替金ニ諸費用ヲ併セ之ヲ所持人ニ支拂フタル者ハ其所持人ニ對シ爲替ニ裏書ヲ爲シ之ニ請取ヲ記シタル償還計算書ヲ添ヘテ交付スルコトヲ要求スルヲ得
○本條ハ「之ニ」ノ二字ヲ削除ス
○第四章 榮譽承諾（立入）
○第八百四條
支拂人承諾ヲ拒ミタル爲替ニ同地ニ於ケル豫備支拂人（レコンマンタータール）ヲ揭ケタルトキハ其爲替ニ拒證書ヲ併セ承諾（アンナーメ、スフラ、フロテスト）ノ爲メ速ニ之ニ提示スヘシ
（細川委員）
本條ハ名譽承諾ヲ爲スコトニ關係スルヤ
（本尾委員）
豫備支拂人トハ卽チ名譽承諾人ヲ云フヤ
（岸本委員）
名譽承諾ハ保護承諾トセハ如何又本條ニ依レハ豫備支拂人ノ支拂ヲ承諾スルトキハ之ヲ名譽承諾トセリ然ラハ普通ノ支拂人ニ於テ承諾シタルトキモ亦名譽承諾人ト云ハサルヘカラス故ニ佛法ニ於テハ豫備支拂人ハ名譽承諾人トセサルナリ
（本尾委員）
法律ノ規定ニ依リテ名稱ヲ異ニスルヲ得ルニ依リ敢テ本案ニ於テ之ヲ名譽承諾ト爲スモ差支ナカルヘシ
（周布委員）
說明ニ依ルニ豫備支拂人ハ保證人シテ此保證人ニ依リ而シテ支拂ヲ得サルニ至リ初メテ名譽承諾人ニ支拂ヲ求ムトアリ然ラハ豫備支拂人ハ名譽承諾人ト稱スルヲ得サルカ如シ
（本尾委員）
獨法第五十七條及第五十八條ニ依レハ豫備支拂人ニ於テ承諾ヲ爲シタルトキハ之ヲ名譽承諾人トスルナリ本條モ亦同一ナリ
（周布委員）
「榮譽」ハ「立入」トセハ如何
（岸本委員）
「千涉」又ハ「保護」ト爲スヲ可トス
（箕作委員）
原案ノ「榮譽」ノ方可ナリ
（本尾委員）
英華字與ニ依レハ「仲保」トアリ
（細川委員）
先ツ原案ノ榮譽ヲ以テ可決ス可シ
○本條ハ原證照ヲ削除シタルノミ
○第八百五條
支拂人及他人ハ豫備支拂人ヲ揭ケサルトキニ於テモ振出人又ハ裏書讓渡人ノ爲メニ拒證書ヲ添ヘタル爲替ヲ承諾スルヲ得可シ但所持人ハ此ノ如キ立入ヲ許諾スルノ義務ナシ
（細川委員）
他人及支拂人ノ立入ルハ卽榮譽承諾ト爲スナリ
（鶴田委員）
豫備支拂人ヲ揭ケタルトキハ勿論揭ケサルトキニ於テモト解スルヲ得ヘシ
（本尾委員）
揭ケタルトキハ卽豫備支拂人ハ卽チ榮譽承諾人トナルヲ云フナリ
○本條ハ「他人」ヲ「第三者」ニ改メ「讓渡」ヲ削リ「爲メ」ノ上ニ「榮譽ノ」三字ヲ挿入ス
退席岸本委員
正午第十二時中止
○第八百六條
立入人數名アル時ハ最多數ノ義務者ノ爲メニスル者ヲ以テ先トス若シ被立入人ヲ揭ケサルトキハ振出人ノ爲メニスルモノト視做ス
（本尾委員）
例令ハ十人ノ手ヲ經タル手形ニ何人ノ爲メナルコトヲ云ハスシテ榮懇印鼠 諾ヲ爲シタルトキハ黑朕多數ノ義務擊者ノ爲メニスル者ヲ以テ先トスルトアルニ依リ卽振出人ノ爲メニ承諾シタル者トスルナリ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第八百六條立入人數名アル時ハ義務者ノ義務ヲ免レシムル最モ多キモノヲ以テ先トス若シ被立入人ヲ揭ケサルトキハ振出人ヲ以テ被立入人ト視做ス可シ
○第八百七條
豫備支拂人又ハ其他爲替所持人ノ許諾ヲ受ケタル立入人ノ承諾ハ其指シタル被立入人及此人以後ノ讓受人ヲシテ保證ノ義務（第八百條）ヲ免レシムル者トス
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第八百七條豫備支拂人ノ承諾其手形所持人ノ許諾ヲ受ケタル立入人ノ承諾ハ被立入人及此人以後ノ裏書人ヲシテ保證ヲ與フルノ義噺扮ヲ免レシムルモノトス
○第八百八條
榮譽承諾ハ支拂人ニ於テ支拂ヲ爲サヽルトキ（第八百三十條）立入人ヲシテ支拂期日後爲替金ヲ支拂フノ義務アラシムル者トス
○本條ハ（第八百三十條）ヲ削除シタルノミ
○第八百九條
榮譽承諾ハ立入人ニ於テ之ヲ爲替ニ記載シ且拒證書又ハ其附箋ニ之ヲ記注ス可シ
（本尾委員）
榮譽承諾ハ爲替ニ記シ且拒證書ニ若シ拒證書ニ餘白ナケレハ拒證書ニ附箋ヲ爲シテ之ヲ記スルヲ云フナリ
○本條ハ原案ノ儘ニ決セリ
○第八百十條
拒證書ハ拒證書費用ノ支拂ト引替ニ之ヲ立入人ニ交付シ立入人ハ拒證書ヲ作リタルノ翌日マテニ之ヲ被立入人ニ送付シ且併セテ其榮譽承諾ノ旨ヲ通知ス可シ若シ立入人之ヲ遲延スルトキハ之レカ爲メニ生スル損害ニ就テ責任アリ
（箕作委員）
費用ノ支拂ハ何人之ヲ爲スヤ
（本尾委員）
立入人其費用ヲ支拂フナリ
（細川委員）
豫備支拂人ノ定メアルトキハ拒證書ヲ作リタル翌日之ヲ被立入人ニ送付スルコトヲ得ヘキモ其定メナキ場合ニ於テ立入リタルニ於テハ翌日トアルハ短期ニシテ實際爲スコトナキカ如シ
（本尾委員）
豫備支拂人ナキ場合ニ於テ支拂人ノ拒ミタルニ依リ拒證書ヲ作ルノ時第三者立入リテ承諾ヲ爲スコトアリ此場合ニ於テハ拒證書ヲ作リタル翌日被立入人ニ送付スルナリ
○本條ハ原案ノ儘ニ決セリ
○第八百十一條
保證ヲ立シムルノ權利ハ被立入人又ハ其以前ノ讓渡人及振出人ニ在リテハ制限ナク之ヲ施行スルコトヲ得爲替所持人ニ在リテハ榮譽承諾ヲ拒絕スル權利アル時（第八百五條）ニ限リ之ヲ施行スルコトヲ得可シ
（箕作委員）
「及振出人」ノ語ハ原文ナキヲ以テ削除スヘシ
（細川委員）
本條ハ獨逸爲替法第六十一條ト同一ノ精神ナリ
○本條ハ「其以前ノ讓渡人及振出人ニ」ヲ「其人以前ノ裏書人ニ」ニ改メ（何條）及ヒ「可シ」ヲ削除ス
○第五章 爲替保證
○第八百十二條
爲替面ニ於テ他ノ爲替負債者ノ署名ニ連署スル者ハ該負債者ト連帶責任ヲ負フ者トス
（箕作委員）
爲替保證ハ單ニ保證ト爲スヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第八百十二條手形面ニ於テ手形義務者ノ署名ニ連署スル第三者ハ該義務者ト連帶責任ヲ負フモノトス
○第八百十三條
前條ノ連帶義務ハ別段ノ書面ヲ以テ負擔スルコトヲ得
○本條ハ原案ノ儘ニ決ス
○第八百十四條
保證義務ハ明約ヲ以テ之ヲ制限スルヲ得可シ但其約ヲ結ヒタル人ニ對シテノミ此權アリ
（細川委員）
本條ハ要スルニ契約者間ニ於テハ其特約ノ效アリト雖モ第三者ニ對シテ效ナキヲ示スニ過キサルナリ
（本尾委員）
手形面ニ保證ヲ制限シタルコトヲ記シタル時ハ其以後ノ讓受人ハ其制限ノ敷力ヲ受クルモノトス若シ手形面ニ記セサルトキハ之ヲ契約シタル者ノ間ニ止マリテ第三者ニ對シテハ效力ナキモノトスルナリ
（細川委員）
本文ハ手形面ニ記シタル場合但書ハ手形面ニ記セサル場合トハ解軍樺スルコトヲ得サルナリ
（箕作委員）
果シテ其精神ナレハ相當ノ改案ヲ求メラレソコトヲ望ム
（本尾委員）
諾
○本條ハ質問ノ上修正スルコトニ決ス
○第六章 支拂
○第八百十五條
爲替金ハ爲替面ニ記シタル貨幣ヲ以テ之ヲ支拂フ可シ若シ爲替面ニ貨幣ノ種類ヲ記セサルトキハ支拂地ニ於テ商人間ニ流通スル貨幣ヲ以テ支拂フ可キ趣意ナリシト思料ス可シ
○本條ハ原案ノ儘ニ決セリ
○第八百十六條
支拂ハ支拂人ニ於テ承諾シタルト否トヲ論セス第八百三十七條ノ場合ノ外支拂期日ニ於テ支拂人ニ就テ之ヲ受ク可シ猶豫日アルヲ許サス但其地習慣ノ支拂日ハ之ヲ守ラサル可カラス
（周布委員）
第八百三十七條ヲ援引シタルハ如何
（本尾委員）
支拂期日ニ至ルモ之ヲ流通セシムルノ意ナルトキハ提示スルヲ要セス又ハ拒證書ヲ作ルニモ及ハサルヲ云フ又猶豫臼アルヲ許サストセシハ外國ノ法律ニ之ヲ許スモノアルニ依リ若シ之ヲ揭ケサルトキハ許否ノ疑ヲ免レサルカ故ニ之ヲ示シタリ習慣ノ支拂日モ亦同一ノ理由ニ基クナリ
○本條ハ原案ノ儘ニ決セリ
○第八百十七條
支拂期日恰モ日曜日又ハ公認ノ休日ニ當ルトキハ其前日ヲ以テ支拂期日ト爲ス
（箕作委員）
現行法ニテハ翌目ト爲スナリ
（本尾委員）
獨法亦同ク翌日トセリ
○本條モ亦原案ノ儘ニ決ス
○第八百十八條
一覽直拂爲替ニ在テハ提示ノ日ヲ以テ支拂期日トス若シ二年以內ニ提示セス或ハ二年以內ノ提示期限ヲ爲替面ニ定メサルトキハ其日附後二年ヲ以テ支拂期日トス提示其時ヲ失フトキハ爲替所持人ハ振出人及ヒ裏書讓渡人ニ對シテ償還要求權ヲ失フ者トス
○本條ハ「直」「其」及ヒ「讓渡」ヲ削除シタルノミ
○第八百十九條
支拂期日ニ爲替金ヲ請取ラサルトキハ支拂人ハ債主ノ費用及ヒ危險ヲ以テ之ヲ裁判所又ハ銀行ニ預クルコトヲ得ヘシ此場合ニ於テ支拂人ハ唯タ太過ニ就テ責任アリトス
（細川委員）
債主ノ費用トハ如何
（本尾委員）
手形金ヲ要求スル者卽チ所持人ヲ云フナリ
○本條ハ「義繭」ヲ「受」ニ「就テ」ヲ「付テノミ」ニ改メ「ヘシ」「唯タ」ヲ削ル
○第八百二十條
債主ハ支拂期日前ニ支拂ヲ受クルノ義務ナシ若シ支拂フタルトキハ負債者其危險ヲ負擔ス
（本尾委員）
負債者其危險ヲ費擔ストハ支拂人支拂ヲ爲シタルトキハ後日正當ノ所持人ノ出ルコトアルトキハ再ヒ支拂ヲ爲スノ責ヲ召 擔スルヲ云フ
○本條ハ「受クル」ヲ「受取ル」ニ改メ末尾ニ「可シ」ヲ加フ
于時午後三時ナリキ