○第一讀會第五十六回
明治十九年十月十九日
欠席 長森委員
午前第十時開會
○第三章 承諾
○第七百九十五條
爲替所持人ハ別ニ爲替面ニ記載スル所アルニ非サレハ支拂渡期日前ニ支拂ノ爲メニ之ヲ支拂人ニ提示シ若承諾ヲ受ケサルトキハ其翌日拒證書ヲ受クルヲ得殊ニ他所拂爲替ノ振出人ハ承諾ノ爲メニ提示スルコトヲ爲サヽルトキハ償還要求權ヲ失フ可キ旨ヲ記載スルコトヲ得
（細川委員）
承諾ニハ一ノ要件ナキヤ
（本尾委員）
然リ單ニ其承諾ノ冒ヲ記載スレハ可ナリ
（周布委員）
別ニ爲替面ニ記載ストアリ如何ナル旨ヲ記スルモノナルヤ
（本尾委員）
劵面上ニ提示等ノ事ヲ記載セサルヲ云フ卽チ一覽拂ノ如キ是ナリ何ントナレハ一覽拂トハ直ニ支拂ヲ爲スヘキモノナレハナリ一覽定期拂ノ如キハ別ニ記載アルモノニ內ニ包含スルモノトス
（箕作委員）
拒證書ハ提示翌日ヲ限リトスルヤ
（本尾委員）
然リ
（鶴田委員）
他所拂ノ手形ニハ承諾ノ爲メ提示スヘキ旨ヲ記載セシトキニ所持人之ヲ提示セサルトキハ償還要求權ヲ失フヤ
（本尾委員）
否之ヲ提示セサルトキハ普通ノモノトナルナリ之ヲ爲サヽルカ爲メニ要求權ヲ失フニアラサルナリ
○本條ハ「爲替面」ヲ「手形」ニ受クルノ下ニ「コト」ヲ加フ
○第七百九十六條
一覽後定期拂ノ爲替ハ別ニ短キ提示期限ヲ揭クルニ非サレハ日附後二年以內ニ承諾又ハ一覽ノ爲メ之ヲ提示スヘシ若シ之ヲ提示セサルトキハ振出人及ヒ裏書讓渡人ニ對シテ償還要求權ヲ失フ者トス又支拂人ニ於テ其承諾又ハ一覽ノ日附ヲ記載スルコトヲ肯セサルトキハ其翌日ニ拒證書ヲ作ル可シ但此場合ニ於テハ拒證書ヲ作リタル日ヲ以テ提示ノ日ト爲シ若シ拒證書ヲ作ラサリシトキハ提示期限ノ末日ヲ以テ支拂期日ト爲ス
（委員長）
若シ拒證書ヲ作ラサルトキハ如何
（本尾委員）
拒證書ヲモ作ラサルトキハ所持人自己ニ之ヲ作ルモノトス然レトモ此際ニ於テハ裁判官カ立會ヲ要スルナリ其詳細ハ第八百五十一條以下ニ規定セリ
（岸本委員）
本條ヲ見ルニ拒證書ヲ作ルモノ却テ金圓受取ノ期日ヲ延ハスノ恐レアリ何ントナレハ例ヘハ十月廿日ヲ以テ提示期限ノ末日トナス然ル二十九日ニ提示シテ承諾ヲ得ルトキハ是ヨリ六ケ月後ノ支拂ナレハ尙其ヨリ六ケ月ヲ待タサルヘカラス若シ之ヲ提示セサルトキハ廿日ヲ以テ支拂期限トスルニ依リ直ニ支拂ヲ受ルニ到ルヘケレハナリ
（箕作委員）
末日迄遷延提示セサルモノハ自己ノ不注意ナレハ自ラ罰ヲ附シタルモノナリ
（本尾委員）
提示期限ヲ以テ支拂末日トスルハ承諾ヲ與ヘス又ハ日附ヲ記セサルトキハ期限起算ノ㸃ニ於テ何レヨリスルヤ其期限ヲ定ムルコト能ハサルヲ以テ此場合ニ於テハ提示セサル手形ト同一ニ提示期限ヲ以テ支拂期日ト定メタルモノナリ
（本尾委員）
若シ期日迄ニ呈示セサルトキハ要求權ヲ失フモノナリ然レトモ其提示前裏書人ニ於テ例ヘハ十人目ノモノ要求權ヲ失ヒタルトキハ自己ニ於テ爲セルモノナレハ致方ナシト雖モ九人目ニ付テハ要求權アルヤ
（箕作委員）
已ニ要求權消滅シタルモノナルヲ以テ九人目ノ裏書人ニモ亦要求權ハ淌 滅一シタルモノナリ
于時十二時中止
午後零時三十分開會
（岸本委員）
提示期限ノ末日トアル提示期限ニハ法律上ノ期限ハ勿論私ニ定メタル期限ヲモ亦包含スルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ償還要求ノ期滿免除ニ付質問ニ決ス
○第七百九十七條
承諾ハ支拂人ノ既ニ爲替備金ヲ領收シタルト否トヲ論セス之ヲシテ支拂期日ニ爲替金額ヲ爲替所持人ニ支拂フ可キ義務アラシムル者トス又承諾ノ旨ヲ記シタル爲替ヲ所持人ニ還附シタル後ハ强制或ハ詐僞ニ出ルモノヲ除クノ外之ヲ取消スヘカラサルモノトス
○本條ハ爲替備金ヲ手形資金ニ爲替ヲ手形ニ改ム
○第七百九十八條
承諾ヲ爲スニハ支拂人其旨ヲ手形面ニ明記シ或ハ唯タ之ニ署名ス可シ其他ノ承諾方法ハ總テ支拂人ニ對シ爲替備金ヲ領收シタルコトノ推測ヲ起スニ止マル者トス
（箕作委員）
推測トハ法律上ノ推測ヲ云フヤ
（本尾委員）
然リ
（細川委員）
承諾方法トハ何ヲ云フヤ
（本尾委員）
口上又ハ書面ヲ以テシタルコトヲ云フ此場合ニ於テハ手形上ニ付テハ效力ナシト雖モ民事上ノ推測ヲ以テ手形資金ヲ領收シタルコトハ推測シ得ラルヽヲ示ス
○本條ハ爲替備金ヲ手形資金ニ改ム
○第七百九十九條
卽日ニ承諾ヲ與ヘス或ハ他ニ制限ヲ立テヽ承諾ヲ與ヘタルトキハ承諾人ニ對シテハ其效力アリト雖トモ所持人ニ於テハ之ヲ拒絕ト視做スコトヲ得可シ若シ唯タ爲替金ノ一部分ニ就テ承諾ヲ與ヘタルトキハ他ノ部分ニ就テハ拒絕ト視做ス可シ
（箕作委員）
例ヘハ所持人ニ於テ制限ヲ立テタルヲ承諾シテ其制限內ヲ以テ要求シタルトキハ拒絕ト一看做サヽルモノナルヘシ
（本尾委員）
此場合ハ都テ拒絕ト看做スヘキモノナリ
（箕作委員）
假令ハ未必條件付ニ制限シタルトキ其制限ヲ承諾シタルトキハ其制限ハ效力アルモノナラスヤ
（本尾委員）
然ラス註解ニハ其例ヲ詳載シタリ
○本條ハ「或ハ」ヲ「▽〈ハ」ニ改メ「他ニ」ノニ堂ヲ削ル
○第八百條
支拂人全部又ハ一部分ノ承諾ヲ拒絕シ或ハ第七百九十八條及ヒ第七百九十九條ニ從ヒ拒絕ト視做ス可キトキハ所持人ハ延滯ナク拒證書ヲ振出人又ハ裏書讓渡人ニ交付シテ已ヲ得サレハ訴訟ニ由リ爲替金ニ拒證書入費及ヒ逆爲替ノ費用ヲ添ヘ支拂期日ニ至リ支拂フ可キノ保證ヲ請求スルコトヲ得ヘシ各裏書讓渡人ハ既ニ自ラ保證ヲ爲シタルト否トヲ論セス振出人及自己以前ノ讓渡人ニ對シテ右ノ權利ヲ有ス其拒證書ヲ通知スルニ時ヲ失フタルトキハ其通知ヲ受ケサリシ者ニ對シテ償還要求權ヲ失フ但關係者ノ一人ヨリ爲シタル通知及ヒ之ニ與ヘタル保證ハ其人以後ノ讓受人ノ爲メニモ效用アル者トス
（箕作委員）
已ヲ得サレハ訴訟ニ由リトハ保證ヲ可立コトヲ裁判所ニ訴フルコトナルヤ
（本尾委員）
然リ
時ヲ失フトハ第八百四十二條ノ規定ヲ云フ而シテ通知ヲ受クルモノニ付テモ該條ニ明瞭ナリ然トモ之ヲ發スルモ事故アリテ達セサルトキハ要求權ヲ失フナリ
（箕作委員）
關係者ノ一人トハ何人ヲ云フヤ
（本尾委員）
振出人ヨリ裏書人迄ヲ云フ其順序ハ所持人ヨリ裏書人ノ一人ナル五番目ノモノニ通知シタルトキハ所持人ヨリ以下ニモ效力アリ又五番目ノモノ保證ヲ出シタルトキハ其以下ハ皆效アルナリ
（岸本委員）
其人以後トハ通知ヲナシタル人ノ以後讓受ケタルト云フノ意味ニシテ通知ヲ受ケタル人ノ以後ノ讓受人トスルニハアラサルヘシ
（本尾委員）
否所持人ニ於テ例ヘハ第三人目ニ保證ヲ立テシメタルトキハ其三人ヨリ以下ノ裏書人ハ其效用ヲ以テ更ニ保證ヲナスノ義務ナキヲ示シタルモノナリ
（岸本委員）
否例ヘハ第五ノ者支拂人ノ承諾ナキヲ察シ振出人ニ向テ保證ヲ立テシメタルトキ第八ノ所持人ヨリ支拂人ニ對シ支拂ヲ請求シタルトキ之ヲ承諾シタルモ支拂ヲ爲スコト能ハス又承諾人モ亦破產シテ支拂フコト能ハサルトキ第八ノ所持人ヨリ第五ノモノヽ立テシメタル保證人ヲ以テ支拂ハシムルモノナリ
若シ本條但書ナキトキハ保證人ニ係ルトキニ其保證人ハ自分ハ第五ノ裏書人ニ對シ保證ニ立ツモ第八ノ所持人ニ對シテハ保證セシコトナシトテ之ヲ拒ムコトナシトセス
○本條卽チ之レカ爲メニ規定シタルモノナル可シ
○本條但書以下ハ解釋方ニ付質議スルニ決ス
但以上ハ左ノ如シ「裏書讓渡人」ヲ「裏書人」ニ改ヲ交付シテノ「テ」ヲ削リ「拒證書入費及逆爲替」ヲ「拒證書及逆手形」ニ改メ「添ヘ」ヲ「加ヘ」ニ改メ「至リ」ヲ削リ「保證ヲ爲シ」ヲ「保證ヲ與ヘ」ニ「讓渡人」ヲ「裏書人」ニ改メ「其通知」ノ上ニ「之レカ爲メ」ノ五字ヲ加フ
于時三時閉會