○第一讀會第四十一回
明治十九年九月廿八日
○第六百四十二條
負債者ノ爲メ又ハ其計算ヲ以テ前貸若クハ支拂ヲ爲シ又ハ義務ヲ引受ルコトハ直接ノ約定ヲ以テシタルト雙方間ニ存立スル契約上ノ關係ニ由ルトヲ論セス總テ貸付ト同視ス
（本尾委員）
本條ハ他人ニ金圓又ハ爲替ヲ引渡ストキハ其者ヨリ他人ヲ信用シタルモノト認ムルヲ云フナリ
（長森委員）
本條ハ必ス三人ノ場合ナルカ如シ
（本尾委員）
然リ尤モ說明ニ依レハ必スシモ三人ニアラサルモ可ナルカ如シ
（岸本委員）
町貝債者トアルハ膏ハ倍〔者トナルヘキ者ノ爲メノ意義ナルヘシ
（本尾委員）
然リ
（箕作委員）
二人ノ場合ノ事ハ法文ニ於テ明瞭ナラサルノミナラス說明ニ依ルモ實ニ雜煩ニシテ不明ナレハ法文改案ノ質問ヲ爲セハ如何
（本尾委員）
然リ說明ニ田舍ヨリ荷爲替ヲ迭付シ來リタルトキ之ニ前貸ヲ爲スモ亦本條ノ場合トアリ然レトモ法文面ニテハ此意義ヲ見出スコト難ケレハ質問シテ改案セシムル方適當ナルヘシ
（委員長）
負債者トナルヘキ者ヲ負債者ト云フハ穩當ナラサルカ如シ故ニ或人ノ爲メ又ハ其計算ヲ以テ云々ト爲シ且ツ二人直接ノ場合ヲ法文ニ明示スル 樣質問ヲ爲スヘシ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ質問ノ上修正スルコトニ決ス但シ宋文ヲ「消費付ト同視ス可シ」ト改ム
○第六百四十三條
負債者ハ貸付品ノ領收ニ依リテ唯タ常ニ同種類及ヒ同數量ノ償還ヲ爲ス可キ義務ヲ負フ者トス但雙方ノ意旨ニ從ヒ償還スルヲ要セス又ハ償還シ能ハサルトキハ此限ニ在ラス
（本尾委員）
償還スルヲ要セストハ永代貸ノ如キモノ又ハ年金契約等ヲ云ヒ償還シ能ハサルトハ同種同質量ヲ償還スルコト能ハサルトキヲ云フ
（岸本委員）
償還スルヲ要セストハ同種類及同數量ヲ償還スルヲ要セサルコトヲ雙方ノ意旨ニテ定メタルトキヲ云フモノナルヘシ
（本尾委員）
第六百四十七條ノ注第五十七丁五行以下ニ依レハ償還スルヲ要セストハ年期年金等ヲ一例トシテ援引セリ又償還シ能ハサルトキトハ次條ノ場合ヲ云フナリ尤モ一應質問ノ上之ヲ決定スヘシ
○本條ハ但書ニ付各員見解異ナルヲ以テ質問スルコトニ決セリ于時正午第十ニ時ナルヲ以テ中止
○第六百四十四條
商品其他有價物件ノ貸付ニ於テ他ノ約定アリ又ハ其受ケタルモノ特定品タルニ非レハ負債者其領受ノ時及地ニ於ケル價額ヲ償還セサル可ラス
（本尾委員）
反譯穩當ナラサルナリ卽チ「他ノ約定ナク又ハ其受ケタルモノ特定品ナルトキハ」ト譯スヲ正當トス
（細川委員）
他ノ約定トハ時ト地ト一一於ル價額ニ付特別ノ契約ヲ爲シタルフ云フナルヘシ
（本尾委員）
他ノ約定トハ同種同數量ヲ還スヘキ約ヲ云フ
（細川委員）
然ラハ換用物貸借ノ普通ノ場合トナルナリ
（本尾委員）
然リ只本條ハ物件ニシテ前條ハ金圓ノ場合ナリトス
（長森委員）
消耗物件ヲ借受ケタル者其同種同量ヲ返スヘキ約定ナケレハ金翻額ニテ返還スルヲ得花場合ナルヘシ
（岸本委員）
然リ故ニ他ノ約定トハ時ト地トノ價額ノ約定ト爲ス方穩當ナルカ如シ
（本尾委員）
前條ト本條トニ適用スル物件ノ範圍ヲ明瞭ナラシムル爲メ質問ヲ爲サン
（箕作委員）
他ノ約定トハ如何ナル約定ヲ云フヤ併セテ質問アランコトヲ望ム
（本尾委員）
孝叩
○本條ハ質問ノ上修正スルコトコ決セリ
○第六百四十五條
負債者名ヲ記シ又ハ負債者ノ計算ヲ以テ振出シタル債劵ニシテ負債者若シ其負債額ヲ償還スル義務アルトキハ負債者ニ於テ又ハ負債者ノ計算ヲ以テ之ヲ賣却シ或ハ其他引渡スニ必ス其劵面額ヲ以テスヘシ但割引ヲ算入スルハ禁スル所ニ非ラス
（箕作委員）
債劵トハ如何
（本尾委員）
爲替手形約束手形小切手等ヲ云フ
（細川委員）
本條ノ例ハ如何
（本尾委員）
例令ハ枚一圓ノ債劵ヲ一萬枚振出ストキハ劵面一枚一圓ノ毛ノハ必ス劃圓ニテ之ヲ移轉スヘキモノトス但割引卽チ利息ヲ前引キスルハ禁スル所ニアラサルヲ示スナリ
（委員長）
劵面額コテ通用スヘシト云フモ義務者ノ信用如何ニ依ルモノナレハ法後凵ニテ之ヲ埜ハスルモ其效カナカルヘシ
（本尾委員）
然リ商業社會ヲシテ隋笠思昌取扱フコトヲ得セシムルノ精神ナレハ本條ノ如キハ規定スルフ不可トス
（委員長）
就テハ幽應質問シテ意見ヲ陳述セシムヘシ
（箕作委員）
本條ハ消費付ノ款ニ之ヲ記スルノ必用アリヤ
（本尾委員）
債劵ヲ發行スレハ卽チ其債劵所持者ハ發行者コ對スル權利者トナルヲ以テ發行者ハ卽チ消費貸ヲ受ケタル者部負債者トナルヲ示スモノナレハ太款中ニ記載スルモ適瞥田ナルヘシ
（箕作委員）
割引ヲ爲スニハ利息制限法ニ依ラサルモ不可ナキモノトス
（本尾委員）
本條質問ノ要點ハ凡ソ左ノ如クナルヘシ
第一 發行スル場合ニ依リ再賣以上ニ之ヲ劵面額以下ニ賣買スルヲ許スハ鴇囂貝者ハ之ア高價ユ購求セサルヘカラサルノ嫌アリ是レ如何ナル理由ナルヤ
第二 本條ハ實際其效力ナキモノト認ムルカ如何
（委員長）
可ナリ
○本條ハ質問ノ上修正スルコトニ決セリ
于時午後第三時十分前ナリキ