○第一讀會第二十八回
明治十九年五月十日
欠席 長森敬斐
第四百七十六條
商業取次人其爲シタル取引又ハ其他ノ措置ニ付他人ヨリ手數料又ハ謝金又ハ賠償金ヲ受クルトキハ之ヲ囑託者ノ利益ニ歸ス可キ者トス之ニ反スル時ハ囑託者ニ於テ其取引又ハ措置ニ付テ責任ナシトスルコトヲ得
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百七十六條取次人其取引又ハ其他ノ行爲ニ付第三者ヨリ手數料又ハ謝金又ハ償金ヲ受クルトキハ之ヲ委托者ノ計算ニ歸ス可シ之ニ反スル時ハ委托者ニ於テ其取引又ハ行爲ニ對シ責任ナシトスルコトヲ得
第四百七十七條
商業取次人ハ自己ノ拂受ク可キ手數料、前貸金、利子及ヒ賠償金（第四百二條）ニ就キ第四百四十四條及ヒ第四百四十五條ニ從ヒ囑託者ニ對シテ留置ノ權利ヲ有スル者トス又其現ニ支拂ヒタル看貸金及ヒ立替金ニ係リテハ其支拂フ可キ商業慣習アル時又ハ實際已ムヲ得サル時又ハ囑託者ノ利益ヲ計ルカ爲ニ必要ナル時ノ外之ヲ囑託者ノ負擔ニ歸スルコトヲ得ス
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百七十七條取次人ハ自己ノ受取ル可キ手數料、立替金、利息及ヒ償金（第四百二條）ノ爲メ第四百四十四條及第四百四十五條ニ從ヒ委託者ニ對シ留置權ヲ有スル者トス其現ニ支拂フタル立替金及費用ニ付テハ其支拂フ可キ商業慣習アル時又ハ實際已ムヲ得サル時又ハ委託者ノ利益ヲ計ルカ爲メニ必要ナル時ノ外之ヲ委託者ノ負擔ニ歸スルコトヲ得ス
第三款 商業仲立人
第四百七十八條
商業仲立人ハ官准ヲ經公信ヲ得テ他人間ノ商業取引ヲ媒介スルヲ以テ營業トスル商人ニシテ物品有價證劵金銀貨幣及ヒ爲換手形ノ相場ヲ斷定シ且ツ之ヲ公吿スルノ專權ヲ有スル者トス
（本尾委員）
今日ノ株式取引所仲買人ト略ホ同一ナルカ如シ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百七十八條仲立人ハ官准ヲ受ケ公衆ノ信用ニ依リ他人間ノ商業取引ヲ媒介スルヲ以テ營業トスル商人ニシテ物品、有價證劵、貨幣及爲替ノ相場ヲ定メ且ツ之ヲ公吿スルノ專權ヲ有スルモノトス
第四百七十九條
商業仲立人ヲ任スルハ商業一般ノ爲メニシ又ハ商業取引ノ一種類ニ限ルコトヲ得
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百七十九條仲立人ヲ任スルハ一般商業ノ爲メ又ハ或ル種ノ商業ノ爲メ之ヲ准許スルコトヲ得
第四百八十條
商業仲立人ニ任セラルヽコトヲ得ルハ齡二十五歲ニ滿チ五年以上其商業ニ從事シ且ツ聲聞瑕瑾ナキ者タルヲ要ス又倒產シタル者ハ聲聞回復宣吿ノ後ニ非サレハ之ニ任セラルヽコトヲ得ス
（鶴田委員）
其商業トハ如何
（本尾委員）
仲立人タル者カ反物商ニ付仲立人タラント欲スルトキハ反物商ニ從事スルヲ云フ
（周布委員）
一般商業ノ爲メ仲立人トナラントスルニハ何商業ニ從重帶スルヲ要スルヤ預メ質問セラレタシ
（細川委員）
例令ハ米茶絹等各種ノ仲立ヲ爲サントスル者ハ之ヲ般商業ノ爲メト爲ストキハ五年以上何商業ニ從事スルヲ要スルヤ又ハ或ル種商業ノ爲メニ茶米絹商ニ各五年宛ヲ要スルヤ否明瞭ナラサルナリ
（本尾委員）
各商二五年宛ト解スルハ甚タ酷ナリ
（鶴田委員）
或ハ其商業ト云フハ仲立人ノ業體ニ見習トシテ五年以上從事スルモノヲ云フ歟
（本尾委員）
菟ニ角質問スルコトトセン
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百八十條仲立人ノ准許ヲ受ルハ年齡二十五歲ニ滿チ且五年以上其商業ニ從事シ聲聞、瑕瑾ナキ者タルヲ要ス又破產者ハ復權ノ後ニ非サレハ准許ヲ受クルコトヲ得ス
午後開會
第四百八十一條
各商業仲立人ハ其擔任事業ニ從フノ前硬貨ヲ以テ身元金ヲ納ム可シ其額ハ各地及ヒ各商業ニ從ヒ布達ヲ以テ特ニ之ヲ定ム可キ者トス但一萬圓ニ上ル可ラス
（鶴田委員）
何レノ官ニ納ムルヤ
（本尾委員）
夫レハ特別法ニテ規定セラルヘシ
（細川委員）
正貨トアリ公債證書ニテモ可ナルヘシ又正貨ヲ納メタル者ニ對シテハ利息ヲモ生セサルヘカラサルナリ其手續等ハ如何スルヤ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百八十一條仲立人ハ其開業ノ前正貨ヲ以テ身元金ヲ納ム可シ其額ハ各地及ヒ各商業ニ從ヒ命令ヲ以テ特ニ之ヲ定ム可キモノトス但一萬圓ヲ超過ス可ラス
第四百八十二條
商業仲立人ノ員數ハ各地及ヒ其地ノ各種商業ニ從ヒ需求ニ應シテ之ヲ定ム可シ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百八十二條仲立人ノ員數ハ各地及ヒ各商業ニ從ヒ其需用ニ應シテ之ヲ定ム可シ
第四百八十三條
商業仲立人ハ其資格アル者（第四百八十條）ニ自己ノ營業ヲ賣渡讓渡ヲ爲スヲ得ルト雖トモ其買受讓受人ニ在テハ官准ヲ經且ツ成規ノ身元金（第四百八十一條）ヲ納メタル後ニ非サレハ其營業ニ從事スルコトヲ得ス
○本條ハ「賣渡讓渡ヲ爲ス」ヲ「賣讓スルコト」ニ「經」ヲ「受」二改タルノミ
第四百八十四條
一地ニ於テ商業一般又ハ各種商業ニ就キ商業仲立人十名以上アルトキハ政府ノ許可ヲ得テ相互ニ組合ヲ成スコトヲ得其組合ニハ總員中ヨリ一年ヲ期シテ三名以上ノ頭取ヲ撰擧スヘシ此場合ニ於テハ同地又ハ同商業ノ各商業仲立人ニシテ官准ヲ經且ツ成規ノ身元金ヲ納メタル者ハ皆此組合ニ加入スルノ權利及義務アル者トス
（周布委員）
一地トハ一聚落ヲ云フナルヘシ第四百八十二條モ亦同一ナラン又組合ヲ爲スコトヲ得トアリ然ラハ組合ヲ爲スト否トハ隨意タルカ如シ
（本尾委員）
文字上ヨリ云フトキハ組合ヲ爲スト否トハ隨意ナルカ如シト雖トモ精神ハ必ス組合ヲ爲スヲ望ムモノナリ又十名ト限リタルハ委員ニ於テ實際ヲ斟酌シテ何名ニ爲スモ差支ナシト
○「商業一般」ヲコ般商業」ニ「商業仲立人」ヲ「仲立人」ニ改メ「ニシテ」ヲ創園リ「經」ヲ「受ケ」ニ「納メタル者」ヲ「納メタル後」ニ改ム
第四百八十五條
商業仲立人組合ノ人員ハ何等ノ場合ト雖トモ共同費用ヲ以テ仲立營業ヲ爲スコトヲ得ス之ヲ爲シタルトキハ組合ヲ解散シ且ツ其營業權ヲ剝奪ス可シ但仲立人規則ノ規定ニ從ヒ各員ノ爲ニ共同ノ保證ヲ引受ルコトヲ得
（細川委員）
共同ヲ以テ仲立營業ヲ爲スヲ禁スルハ物價ヲ申合セテ一定スルコトナキニアラサレハ其弊害ヲ防クカ爲メナリ
（本尾委員）
然リ而シテ但書ハ共同ノ保證ヲ引受クルコトヲ許セリ蓋シ共同ノ保證ハ連帶義務ヲ擔當スルニ依リ共通計算ニテ營業スルモノト相類スルヲ以テ之ヲ特ニ示シタルモノナリ
（鶴田委員）
一人保證人トナルコトヲ包ムヤ
（本尾委員）
組合ノ名ヲ以テ共同保證ヲ爲スヲ云フ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百八十五條仲立人組合ノ人員ハ何等ノ場合ト雖トモ共通計算ヲ以テ仲立營業ヲ爲スコトヲ得ス之ヲ爲シタルトキハ組合ヲ解散シ且其營業權ヲ失ハシム可シ然レトモ仲立人組合定款ソ規定ニ從ヒ各員ノ爲メニ共同保證ヲ爲スコトヲ得
第四百八十六條
一地又ハ一商業上ノ仲立人組合ハ同地商法會議所ノ認可ヲ得多數決ヲ以テ其營業ヲ執行スル爲メノ共通規則ヲ立ツヘシ此規則ハ時々改正スルコトヲ得而シテ各員ハ之ヲ守ル可キ義務アル者トス
此仲立人規則ハ現行ノ法律布令幷ニ普通公認ノ法理及ヒ商業慣習ニ背戾スルコトヲ得ス且其規則ノ設立及ヒ改正ハ政府ノ認可ヲ受ルコトヲ要ス但シ第五百七條ハ仲立人規則及ヒ仲立人頭取ノ指令ニ付テモ亦適用スヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正ス
第四百八十六條一地又ハ各種商業ノ仲立人組合ハ多數決ヲ以テ其營業ヲ執行スル爲メ組合定款ヲ設ケ商業會議所アル地ニ在テハ其認定ヲ受ク可シ此定款ハ時々改正ヲ爲シ各員遵守スルノ義務アル者トス
此定款ハ現行ノ法律命令幷ニ普通ノ法理及商業慣習ニ背戾スルコトヲ得ス且其定款ノ設定及改正ハ政府ノ認可ヲ受ルコトヲ要ス此定款及組合頭取ノ差圖ニ付テハ第五百七條ヲ適用ス可シ
于時午後第三時閉會