○第一讀會第十九回
明治十九年四月十九日
午前開會
○第四款 價額補償、損害賠償、割引
○第三百七十三條
義務者若シ當然ノ時期ニ於テ其義務ヲ盡スコトヲ怠リタルトキハ權利者ハ其契約ヲ解止スルト義務者ニ對シ其物件ノ價額補償若クハ損害賠償ヲ要求スルトノ一ヲ撰擇スルヲ得
（本尾委員）
價額補償ト損害賠償トノ區別ハ全ク故意ナクシテ怠リタルト故意ヲ以テ怠リタルトノ區別ヲ以テセリ則一ハ元金ト利息ヲ納付スルニ止メ一ハ之ニ加フルニ損害賠償ヲ以テスルモノナリ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百七十三條義務者當然ノ時期ニ於テ其義務ヲ盡サヽルトキハ權利者ハ其契約ヲ解除スルト價額補質ヲ要求スルトノ一ヲ撰擇スルコトヲ得且場合ニ依リ損害賠償ヲ要求スルコトヲ得
○第三百七十四條
價額補償ハ負債義務ニ在テハ償還期日以後現ニ償還スル日マテノ延滯利足ヲ納付スルニ在ル者トス其他ノ義務ニ在テハ其引渡ス可キ物件ノ引渡期日以後ニ有シタル最上價額ト其價ヲ定メタル時以後現ニ償還スル日マテノ延滯利息トヲ納付スルニ在ル者トス但權利者ニ於テ其償還ス可キ物件ノ償還期日ニ有シタル價額ト此日以後ノ延滯利足トノ納付ヲ以テ滿足セサルトキニ限ル
○第三百七十五條
價額補償ノ要求ハ義務者ノ過失ヲ證明シ又ハ其怠慢ニ依テ受ケタル損害ヲ證明スルヲ要セスト雖トモ義務ノ性質及ヒ區域ニ因テ義務者其責任ヲ帶フル時ニアラサレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
○第三百七十六條
第三百七十四條ニ從テ定ムル義務物件ノ價額ハ普通ノ市價若シ相場所ニ於テ賣買スル物件ニ在テハ其相場上ノ價ト延滯ニ依テ權利者ノ爲シタル費用トヲ併セタル額トス
○第三百七十七條
領收ヲ拒ミタル權利者（第三百五十三條）モ亦之レカ爲メ義務者ノ爲シタル費用ヲ償却セサル可ラス
右ノ諸條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百七十四條價額補償ハ金錢ノ義務ニ在テハ償還期日ヨリ現ニ償還スル日マテノ延滯利息ヲ納付スルニ在ル者トス其他ノ義務ニ在テハ其引渡ス可キ物件ノ引渡期日後ニ有シタル最高價額ト其價額ヲ有シタル日ヨリ現ニ償還スル日マテノ延滯利息トヲ納付スルニ在ル者トス但權利者ニ於テ物件ノ引渡シ期日ニ有シタル價額ト其日ノ延滯利息トノ納付ヲ以テ滿足スルトキハ此限ニ在ラス
第三百七十五條價額補償ニ付キ權利者ハ義務者ノ過失ヲ證明シ又ハ其怠慢ニ依テ受ケタル損害ヲ證明スルコトナクシテ要求スルコトヲ得ルト雖モ義務ノ性質及區域ニ因テ義務者其責任ヲ負フ時ニ隅隊ルモノトス
第三百七十六條第三百七十四條ニ從テ定ムル物件ノ價額ハ普通ノ市價トシ相場所ニ於テ賣買スル物件ニ在テハ其相場上ノ價ナリトス但延滯ニ依テ權利者ニ生セシメタル費用ヲ併算ス可キモノトス
第三百七十七條「義務者ノ爲シタル」トアルヲ「義務者ニ生セシメタル」ト改ム
○第三百七十八條
費用立替金並ニ損害（第三百八十條）ヲ償却セシムルトキハ其辨償ス可キ日ヨリ起算シテ其額相當ノ利足ヲ拂ハシムルコトヲ得可シ
（本尾委員）
本條ハ反譯適當ナラス且原文ノ落脫セシ所アリ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百七十八條費用、立替金其他ノ支出並ニ損害ヲ償却セシムルトキハ其辨償ス可キ日ヨリ起算シテ其額ニ費スル利息ヲ拂ハシムルコトヲ得
○第三百七十九條
延滯利足及ヒ其他ノ利足ニシテ法律上又ハ契約上ニテ其步合ノ定マリナキトキハ槪シテ原額ノ百分ノ七トス
（箕作委員）
法律上トスルトキハ現今行ハルヽ百分ノ六ノ利息トナルヲ以テ步合ノ定マラサルコトナケレハ百分七ハ明文ヲ揭クルモ其實之ヲ用ユルニ所ナカルヘシ若シ又本條ノ利息ヲ採用スルトセハ百分六ノ制規ハ廢止セサルヘカラス
（岸本委員）
延滯利足其他ノ利足ニシテ步合ノ定メナキトキハ百分ノ七トスルトキハ假令一割ノ利息ナルモ延滯利足ノ定メナキカ爲メ義務者ハ期目以後利益ヲ受クルニ至ルヘシ何トナレハ一割ノ利息ナルモ延滯ニ依テ百分ノ七トナレハナリ
（本尾委員）
商事上ニ付テハ全ク民事ノ利息制限トハ區別ヲ設クルヲ以テ相當トスルニヨリ本法モ亦發令ノトキハ商事上利息ハ民事ト異ナル旨ヲ公布セハ不可ナカルヘシ
（委員長）
本條ハ質議スヘシ其㸃ハ其他ノ利息中ニハ一般金錢ノ貸借ノ利子モ包含スルヤ否ヤ法律上トハ何ヲ指スヤ
（本尾委員）
諾
○本條ハ質議ノ上修正ニ決ス
○第三百八十條
凡ソ不正ノ所爲ヲ以テ又ハ故意ヲ以テ又ハ怠慢ニ由テ他人ニ損害ヲ被ラシメタル者ハ十分ノ賠償ヲ爲サヽル可ラス
（箕作委員）
原文ヲ案スルニ故意又ハ怠慢ニ依テ不正ノ所爲ヲ以テ「他人ニ損害ヲ被ラシメタル者」ト見ヘ之ヲニケノ場合トセリ然ルニ譯文ニ於テハ之ヲ三ケノ場合ト爲セリ如何
（本尾委員）
原文ノ如クニケノ場合ト爲サ竺レハ不可ナリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百八十條故意ニ出テタルト又ハ怠慢ニ出タルトヲ問ハス適法ノ所爲ヲ以テ他人ノ財產ニ損害ヲ被ラシメタル者ハ十分ノ賠償ヲ爲サヽルヘカラス
○第三百八十一條
損害賠償ハ現ニ爲シタル損失ニ止マラス尙其阻歇セラレタル利益額ニマテ及フ可キモノトス
○第三百八十二條
利益トハ相手方ニ於テ加害所業ヲ爲サヽリシトキハ被害者ニ於テ收メ得ヘキコトノ確實ナル利益ヲ云フ但シ其收益ハ豫知スヘキト否ト又ハ通常ナルト否トヲ論セス
○第三百八十三條
豫メ期シ難クシテ時宜ニ依リ或ハ生スル損失又ハ利益、生スヘシト推測スル損失又ハ利益、將來生ス可キ損失又ハ利益、他ノ狀況ノ加ハルニ依テ生ス可キ損失又ハ利益ハ損害賠償ノ額ヲ査定スルニ當テ之ヲ計算ス可カラス
右ノ諸條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百八十一條本條ハ「爲シタル」ヲ「受ケタル」ニ改メタルノミ
第三百八十一條利益トハ豫知スヘキト否ト通常ナルト否トヲ問ハス相手方ニ於テ加害所業ヲ爲サニリシトキハ被害者ニ於テ收メ得ヘキコトノ確實ナル利益ヲ云フ
第三百八十二條豫期シ難キ損益推測ノ損益將來ノ損益又ハ他ノ狀況ノ加ハルニ依テ生ス可キ損益ハ損害賠償ノ額ヲ査定スルニ當テ之ヲ計算スヘカラス
午後第三時閉會