○第一讀會第十七回
明治十九年四月十五日
欠席 周布委員
仝 岸本委員
午前第時開會
○第三百五十條
契約ニ因テ權利者ニ非サル他人ニ對シテ義務ヲ盡スコトヲ得此場合ニ於テハ甲者ヲ以テ債主ト爲スヘキ歟乙者ヲ以テ債主ト爲ス可キ歟ハ其事實ノ景況ト契約者雙方ノ心思トニ照依シテ之ヲ判斷ス
○第三百五十一條
契約外ノ物品ヲ以テ義務ヲ盡ストキハ權利者之ヲ以テ契約ノ履行ト認メタルニアラサレハ義務者其義務ヲ免レサル者トス
○第三百五十條第三百五十一條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百五十條甲者乙者ニ對シ義務ヲ負ヒタリト雖トモ契約ニ依リ丙者ニ對シテ其義務ヲ盡スコトヲ得此場合ニ於テハ乙者ヲ以テ債主ト爲ス可キカ又ハ丙者ヲ以テ債主ト爲ス可キ歟ハ事實ノ景況ト契約者ノ意思トニ依リ之ヲ定ム可シ
第三百五十一條契約外ノ物品トアルヲ契約ノ目的ニアラサル物件ヲト改メ認メタルニアルヲ認ムルト改メ他ハ原案ニ同シ
○第三百五十二條
明言ノ約定ナキトキハ履行地ニ行ハルヽ所ニ依リ義務者ノ負擔スル義務ノ要旨區域並ニ義務ヲ盡スヘキ物件ノ性質ヲ判決スヘシ
（本尾委員）
明言ノ約定トハ明約トハ相異ナリ帥米ノ約束ヲ爲シタルトキハ其米ハ肥後米ナリト明言シタル如キヲ云フ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百五十二條義務者ノ負擔スル義務ノ要旨ヘ區域殊ニ義務ヲ盡ス可キ物件ノ性質及品位ニ付明言ノ約定ナキトキハ履行地ニ行ハルヽ例規ニ依リ之ヲ定ム可シ
正午十二時中止
午後一時開會
○第三百五十三條
義務者權利者ニ對シ當然ノ方法ヲ以テ完全ノ償還ヲ爲サンコトヲ申入レ而シテ權利者之ヲ承諾セサルトキハ義務者ハ權利者ノ計算ヲ以テ其酬與物件ヲ處置スルヲ得ヘシ但權利者ニ對シ非法ノ故意アルカ又ハ甚シキ緩慢ヲ爲セシトキハ其責任ヲ免レサル者トス
○第三百五十四條
一部分ノ履行又ハ遲延シタル履行ハ權利者之ヲ承諾スルヲ要セス但計算上別段ノ約定アルトキ又ハ習慣アルトキハ此例ニ在ラス
○第三百五十五條
契約履行ノ遲延トハ契約上又ハ其他ニ定マリタル期日ノ終ルマテニ償還セサルヲ云フ
右ノ諸條ハ左ノ如ク修正ス
第三百五十三條義務者權利者ニ對シ當然ノ方法ヲ以テ完全ニ義務ヲ盡サンコトヲ提供シ權利者之ヲ拒ミタルトキハ義務者ハ權利者ノ計算及負檢ヲ以テ其提供シタル物件ヲ處置スルコトヲ得但シ義務者ニ於テ反法ノ意志アルカ又ハ甚シキ怠慢アルトキハ其處置ニ付責任ヲ免レサルモノトス
第三百五十四條但書以下ヲ左ノ如ク改ム但割拂ノ約定又ハ其慣習アルトキハ此限ニ在ラス
第三百五十五條契約上又ハ其他ニ定マリアル期日ノ終ルマテニ義務ヲ盡サルトキハ契約履行ヲ遲延シタルモノトス
○第三百五十六條
期日ハ日ヲ指シテ之ヲ定ムルコトヲ得可ク又ハ日ヲ指サスシテ之ヲ定ムルヲ得可シ
（本尾委員）
日ヲ指シテトハ何日ノ後ト云ヒテ來ル何日トテ確カ二月ロヲ示サヽルヲ云フ
（箕作委員）
田ノミナラス年又ハ月モ此內ニ包含スヘシ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百五十六條期日ハ日ヲ指シテ之ヲ定メ又ハ期限ヲ設ケテ之ヲ定ムルコトヲ得
○第三百五十七條
日數ヲ以テ期限ヲ定メタルトキハ其期限ノ末日ヲ以テ期日トシ週數月數又ハ年數ヲ以テ期限ヲ定メタルトキハ其數ニ滿チタル週月又ハ年ノ內最初結約ノ當日ヲ以テ期日ト視做ス可シ
（本尾委員）
當日トハ結約ノ日ニ當日ルト云フノ意ナリ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百五十七條兩所ニアル「又ハ」ノ二字ヲ削リ結約ノ當日トアルヲ「結約ノ日ニ値ル目ヲ以テ」ト改メ他ハ原案ニ決ス
退席寺島委員長
○第三百五十八條
日數ヲ以テ期限ヲ計算スルニ當テハ結約ノ日ヲ數フ可ラス
○第三百五十九條
半ケ月ヲ以テ期限ト爲シタルトキハ十五日ト視做スヘシ
○第三百六十條
若シ其契約履行ノ日恰モ日曜日又ハ一般ノ祭日ニ該タルトキハ其次ノ日ヲ以テ期日ト視做ス可シ
○第三百六十一條
契約履行上ニ於テ一日トハ特別ノ事情アルニアラサレハ其履行地習慣ノ營業時間ト解スヘシ
右ノ諸條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百五十八條「計算スルニ當テハ」トアルヲ「計算スルトキハ」ト改メ他ハ原案ニ決ス
第三百五十九條原案ニ決ス
第三百六十條契約履行ノ日日曜日又ハ一般ノ祭日ニ値ルトキハ其次ノ日ヲ以期日ト看做ス可シ
第三百六十一條契約履行上ノ一日ハ特別ノ事情アルニアラサレハ其履行地慣習ノ營業時間トス
○第三百六十二條
定期限內ニ履行ス可キ約ヲ立タルトキハ該期限內何レノ營業日ニテモ義務者ハ之ヲ盡スヲ得可ク權利者ハ之ヲ要求スルヲ得ヘシ
（細川委員）
定期限內ニ履行ス可キ云々ハ普通ノ場合ト區別センカ爲メ定期內何時ニテモ履行ス可キ云々トナス方可ナリ（之ニ決ス）
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百六十二條定期限內何時ニテモ履行ス可キ約ヲ立タルトキハ其期限內何レノ營業日ニテモ義務者ハ之ヲ盡シ權利者ハ之ヲ要求スルコトヲ得可シ
○第三百六十三條
第三百六十二條ノ場合ニ於テ疑惑ヲ生スルトキハ其期限ノ爲ニ利益ヲ被ムル一方ニ於テ履行日ヲ撰定ス可シ卽チ通例物品取引人金錢取引上ニ在テハ拂渡人ヲ以テ右利益ヲ被ムル者ト視做ス可シ
（箕作委員）
本條ヲ熱讀スルトキハ前條ニ「何時ニテモ」ト加フルハ少シク不都合ナルカ如シ何トナレハ前條ニ加ヘサルモ之ヲ加ヘタルト同一ノ結果ヲ來シ若シ履行上ノ期限ニ付疑ノ生シタルトキハ本條ニ於テ判定セラル丶モノナレハナリ
（細川委員）
履行日ハ裁判所外ニ於テ定ムルコトヲ得可キヤ
（本尾委員）
然リ
本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第三百六十三條第三百六十二條ノ場合ニ於テ疑アルトキハ其期限ノ爲ニ利益ヲ受クル一方ニ於テ履行日ヲ撰定ス可シ卽チ物品取引上ニ在テハ物品請取人ヘ金錢取引上ニ在テハ負債者ヲ以テ利益ヲ受ル者ト看做スヲ通例トス
○第三百六十四條
期限ヲ延ハシテ其起算ノ日ヲ定メサルトキハ舊期限經過後ヨリ起算ス可シ
本條ハ舊期限經過後ヨリトアルヲ舊期限ノ經過「シタル時ヨリト改メ他ハ原案ニ同シ
于時午後三時三十分閉會