○第一讀會第六回
明治十九年三月三十一日
午前開會
○第二卷 商業登錄簿
○第十八條
屋號、未丁年者婚姻契約代理及會社ニ關スル各種ノ登錄簿ハ本人住居地方ノ商事初審裁判權ヲ有スル裁判所內ニ之ヲ設備スヘシ登記及簿冊ノ取扱ハ常ニ裁判所內ノ一官吏ニ委任スヘシ該官吏若シ登記上疑義ヲ生スルトキハ速ニ裁判所ノ決議ヲ取ルヘシ
（本尾委員）
一體本條ノコトタル他ノ諸條ニ於テ一々登記スヘキ旨ヲ記載シタルモノヲ以テ此ニ其大網ヲ示シタルナリ
（鶴田委員）
商事初審裁判權ヲ有スルノ語不用ナリ單ニ商事初審裁判所ニト爲スモ不可ナカルヘシ
（本尾委員）
昨日ロエスレル氏ニ質議ノ時登記上ノ件アリシ該時同氏ノ陳辯スル所ニ依レハ矢張裁判所ニ於テ爲スヘキモノト爲ス方可ナリト而シテ登記上ノ事タル會社ノ一部ニ限ルモノニアラサレハ他日商法ヲ發布セラルニ時ニ至リ敢テ大ナル變更ヲ爲サヽルモ差支ナキ樣改ムヘシト然リ尤モ現今ノ有樣ニ依レハ我邦始審裁判所ノ數僅少ニシテ會社ノ設立ハ事重大ニ屬スルモノナレハ數里ノ外ニ登記ヲ求ムル敢テ不可ナカルヘシト雖モ一商人ニシテ五六十里ノ外ニ之ヲ求ムル實ニ酷ト云フヘシ故ニ始審裁判所ノミトスルヨリ何トカ他ニ方法ヲ求メサレハ途ニ其目的ヲ達スルコト能ハサルヘシ曰ク然ラハ裁判所又ハ郡區役所ニ於テ取扱フモノトスヘシ何トナレハ餘リ法律ヲ變更スルハ不可ナルヲ以テ此ニ雙方俱ニ其取扱ノ權利ヲ與ヘテ其便利ニ從ハシムヘシ後日若シ登記ニ關スル命令アラハ其規定ニ從ヒ處理スヘシト雖モ先其マテハ始審廳ニ近キ所ハ該廳ニ於テ之ヲ管シ否ラサル所ハ郡區役所ニ於テ取扱フモノトセハ不可ナカルヘシトノコトナリシ
（鶴田委員）
何レニ據ラシムルモ不都合ナシト爲サヽレハ先ツ本則ハ始審裁判廰トシ其便宜法ハ別ニ勅令ヲ以テ定ムルコトトセハ不可ナカルヘシ
（箕作委員）
然リ其取除法ハ別ニ法律ヲ以テ定ムヘシ
（委員長）
初審裁判權云々ハ一應質議シテ其意義ヲ定ムヘシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ左ノ如ク改ム
第十八條 商號、未丁年者、婚姻契約、代理及會社ニ鬪スル登錄簿ハ本文住所ノ商事始審裁判權ヲ有スル裁判所ニ之ヲ設備スヘシ
○登記及之ニ關スル事務ノ取扱ハ常ニ裁判所ノ一官吏ニ委任スヘシ該官吏登記ニ付疑義ヲ生スルトキハ速ニ裁判所ノ決ヲ取ルヘシ
○第十九條
裁判所ハ登記スル每ニ其地ニ於テ發行スル所ノ新聞紙ヲ以テ速ニ之ヲ公吿スヘシ之レカ爲メ一層年ノ間其公吿スヘキ新聞紙ヲ預メ定メ置クヘシ又登錄簿ハ各人ニ縱覽ヲ許ルシ且ツ謄寫料ヲ納メテ裁判所ノ證印アル其登記ノ謄寫ヲ要請スルコトヲ許ルス
登記及ヒ公吿スル每ニ手數料ヲ納メルヘシ其額ハ布達ヲ以テ平等ノ準率ヲ定ムヘシ
（本尾委員）
譯文ニハ原文ノ官報ニ登載スヘキコトヲ脫セリ
（鶴田委員）
一々官報ニ廣吿スルハ實ニ爲シ納ハサルコトナリ
（箕作委員）
佛ニ於テモ官報ニテ廣吿スルナリ
（委員長）
獨乙ニ於テモ官報ニ記載スルヤ
（本尾委員）
ナシ
（委員長）
然ラハ暫ク之ヲ官報ニ記載セサルコトト爲スヘシ
（周布委員）
官報ノコトヲ記シ當分實行セサル部分ニ入ルコトニ爲スヘシ（之ニ決ス）
本日ハ此ニ於テ閉ツ