○第一讀會第五回
明治十九年三月三十日
欠席 岸本委員
○第十四條
商業ヲ營ム者有夫ノ婦ハ商事上ニ於テ獨立人タル各種ノ權利義務ヲ有ス夫ノ同意又ハ協力ヲ要セスシテ商業取引ニ依リ有效ノ義務ヲ負擔シ及ヒ獨立シテ裁判所ニ出ツルコトヲ得ヘシ殊ニ自己ノ所有タル不動產ヲ書入ニシ又ハ販賣讓與シ及爲替ヲ取結フコトヲ得ヘシ
有夫ノ婦ハ夫ニ屬スル財產管理權入額所得權又ハ其他婚姻上ヨリ生シタル夫ノ諸權利ニ關セスシテ自己ノ所有タル全財產ヲ以テ其商業上ノ負債ニ應スヘキモノトス夫ノ許諾ヲ得テ商業ヲ營ム場合ハ共通財產ヲ以テ之ニ應スヘキモノトス但シ夫婦間ニ財產共通ノ約ヲ立テサルトキハ此例ニ在ラス
（本尾委員）
有夫ノ婦ハ夫ニ屬スル管理權ハ負債ノ爲メ他ニ讓賣スルトキハ夫ハ其權ヲ失フト雖モ入額所得權ハ之ヲ失フコトナシ
（箕作委員）
本員ハ夫ハ之ヲ失フモノト信ス如何トナレハ負債ヲ爲スニハ夫ノ明許又ハ默許ヲ得テ爲スヘキモノニシテ又商業ヲ爲スヲ夫ニ於テ許諾シタルハ已ニ管理權及ヒ入額所得權ヲ抛棄スルノ覺悟ナカルヘカラサレハナリ
（鶴田委員）
後文ニ夫ノ許諾云々トアリ前文ハ夫ノ許諾ヲ得サル場合ナルヤ
（箕作委員）
夫ノ許諾ヲ得テ商業ヲ爲ストキハ夫婦間ニ共通財產ヲ以テ負債ヲ辯償スルヲ得ヘシト云ヘトモ若シ否ラサルトキハ自己ノ財產ノミヲ以テ負債ニ應スヘシト定メタルモノナルヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第十四條 商業ヲ營ム有夫ノ婦ハ商事ニ付キ獨立人タル各種ノ權利義務ヲ有ス
○其婦ハ夫ノ同意又ハ協力ヲ要セスシテ商賣ノ行爲ニ依リ有效ニ義務ヲ負擔シ及ヒ獨立シテ裁判所ニ出ツルコトヲ得ヘシ殊ニ自己ノ不動產ヲ抵當ト爲シ又ハ賣讓シ及ヒ爲替義務ヲ負擔スルコトヲ得ヘシ
有夫ノ婦ハ自己ノ財產ニ對スル夫ノ管理權、入額所得權其他婚姻ヨリ生スル夫ノ諸權利アルニ係ハラス其全財產ヲ以テ商業上ノ負債ニ應スヘキモノトス夫ノ許諾ヲ得テ商業ヲ營ム場合ニ於テ夫婦間ニ財產ヲ共通シタルトキハ亦共通ノ財產ヲ以テ之ニ應スヘキモノトス
○第十五條
夫婦ノ內一方ニ限リ商業ヲ營ミ夫婦財產ヲ共通セサルトキ又ハ共通ノ約ヲ廢スルトキハ其事由ヲ商業登錄簿ヘ登記ノ爲メ其契約取結ノ後直ニ之ヲ届出ツヘシ
夫婦ノ間ニ在テハ商社ハ成立セサルモノトス
（周布委員）
ロエスレル氏ハ共通財產ヲ以テ普通ノ原則ト爲シ共通セサル場合ヲ例外ト爲シタルカ如シ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第十五條夫婦ノ內一方ノ者商業ヲ營ミ財產ヲ共通セサル約ヲ爲シ又ハ共通ヲ廢スル約ヲ爲シタルトキハ商業登錄簿ニ登記ノ爲メ其旨ヲ直ニ届出ツ可シ
夫婦ノ間ニ在テハ商社ハ成立セサルモノトス
○第十六條
公務ヲ擔任スル者ノ商業ヲ營ムトキ公務擔任者タルノ故ヲ以テ其爲シタル取引ニ對シ無効トスル故障ヲ述フルヲ得ス但シ法律上ニ禁シタル商業取引又ハ法律上ニ定メタル特別ノ性質ヲ有セサル者ノ爲シタル商業取引ハ總テ無效トス
（細川委員）
公務擔任トハ官吏ノミナルヤ醫師ノ如キハ如何
（本尾委員）
此場合ニ於テハ官吏ノミナリ
（長森委員）
契約者雙方ノミナラス何人ト雖モ故障申立ヲ爲スコトヲ得サルカ如シ
（箕作委員）
但書以下ハ削除セハ如何ナルヤ餘リ丁寧ニ過クルノ法文ト云ハサルヲ得サレハナリ
（鶴田委員）
但書削除ヲ質問セハ如何
（本尾委員）
諾
○本條ハ質問ノ上修正スルコトニ決ス
退席本尾委員
○第十七條
一方ノ者ノミノ商業取引ニシテ其相手方ノ者ニ於テハ商業取引ナラサルトキト雖トモ其相手方ノ者ハ亦此商法ノ規則ニ從テ其取引ヲ處分スヘシ
（細川委員）
「其相手方ノ者ハ亦」ハ原文ニ「其雙方ノ者ハ此商法云々」トアリ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第十七條一方ノ者ニ付キ商賣ノ行爲ト爲スヘキモノニ於テハ雙方ノ爲メ此商法ノ規定ヲ適用スヘシ
于時午後第三時三十分閉會