○第一讀會第四回
明治十九年三月廿九日
欠席 岸本委員
午前開會
前回ノ續キ
（箕作委員）
民法草案第五百七十二條ハ商法ニ記載セルヲ適當トスルモノヽ如シ
（長森委員）
說明ニ依ルトキハ商業ヲ營ムコトヲ得ルノ能力ヲ有スルトキハ獨立ノ活計ヲ立テサルヲ得ス其活計ヲ立ルニ付テハ父又ハ後見人ノ許諾ヲ受ケサルヲ得ス然レトモ商業ヲ營ムコトニ就テ廳ハ敢テ許諾ヲ受ケサルモ差支ナキカ如シ
（本尾委員）
一體商法ノ上ヨリ論スルトキハ十八歲以上ニシテ商業ヲ營ムニ付キ許諾ヲ受クヘキコトハ商法ノ本則ニシテ獨立ノ活計ヲ立ルコトニ付テノ規定ハ民法ニ於テ定ムヘキモノナリ故ニ本條ハ矢張商業ヲ爲スニ付テハ許諾ヲ受クヘキモノナリ
又本條ノ精神ハ商事ニ付キ後見ヲ免カレ獨立シテ商業ヲ營ムヘキモノニシテ凡商事ニ付テハ總テ丁年者ト同樣ナリト雖モ民事ニ就テハ尙ホ後見ヲ脫スルコト能ハサルヲ以テ民事ニ付テハ後見人ノ管口理ヲ受クルモノトス
（箕作委員）
獨立ノ活計ヲ立テトハ佛ニテ所謂「ヱマソシハシヨン」卽チ冤蛻後見人ト云フノ精神ナルヘシ
（本尾委員）
「民事ノ後見冤脆ヲ受ケタル者ハ直ニ商業登錄簿ニ登記スルヲ以テ商業ヲ營ムコトヲ得ヘシ若シ商事ニ付後見ノ菟脫ヲ得ソト欲セハ父又ハ後見人ノ許諾ヲ受ケ且ツ十八歲以上ニシテ獨立ノ活計ヲ立ル者ハ商業ヲ營ムコトヲ得ヘシ」トセハ如何ナルヤヲ質問セン
（委員長）
先ツ其見込ノ如ク歐文ヲ起草スヘシ
于時十二時中止
午後一時開會
（委員長）
獨立活計云々ノ件ハ先ツ質問スヘシ
（本尾委員）
諾
（鶴田委員）
母ハ後見人規則ニ於テ規定スルノ見込ナルヤ
（本尾委員）
然リ
○本條ハ「男女ヲ問ハスヨリ營ムコトヲ得ヘシ」迄ハ一應質議シテ後修正スルニ決シ而シテ右等ノ者以下ハ左ノ如ク改ム
第十二條男女云々
○右等ノ者商業ヲ營マソト欲スルトキハ法律上ノ要件ヲ明記シ且自己及父又ハ後見人ノ署名シタル届書ヲ管轄裁判所ニ差出スヘシ裁判所ニ於テハ此届出ヲ商業登錄簿ニ登記スヘシ右未丁年者ハ其登記ノ日ヨリ商事ニ於テ各種權利義務ニ關シ總テ丁年者ト同等ナルモノトシ未丁年者ニ附與シタル法律上ノ恩惠ヲ受クルコトヲ得ス
○其未丁年者ハ殊ニ爲替義務ヲ負擔シ商業負債ノ爲ニ所有ノ不動產ヲ抵當ト爲シ及之ヲ賣渡スルコトヲ得可シ
○第十三條
有夫ノ婦ハ夫ノ明許又ハ默許ヲ得テ商業ヲ營ムコトヲ得ヘシ但シ法律ニ從テ夫ト別居シ又ハ夫ヨリ置去ニセラレ又ハ需要ノ給養ヲ受ケサルトキハ其許諾ヲ受クルヲ要セス唯夫ノ商業ヲ手傳スルノミノ婦ハ商婦ト視做スヘカラス
（鶴田委員）
法律ニ禁セスシテ今日別居シタルモノアリ法律ナキ以上ハ之モ本條ニ別トアル內ニ包ムヤ
（長森委員）
十二條ト同シク本條モ當今實施セサルノ部分ナリ
○本條ハ左ノ如ク改ム
「又ハ夫ヨリ置去ニセラレ」トアルヲ「夫ニ遺棄セラレ」ト改メ「唯」ヲ削リテ「○」トシ夫ノ商業ヲ手傳スル云々ヲ「夫ノ商業ノ補助ノミヲ爲ス婦ハ商人ト看做スヘカラス」ト改ム
于時三時半閉會