○第一讀會第三回
明治十九年三月廿六日
欠席 細川委員
○第六條
其他左ノ事項モ亦此商法中ニ謂ヘル商ヒノ取引ト同視スルモノトス
一 店ヲ開キ又ハ帳場ヲ構ヘ又ハ其他ノ營業所ヲ設ケ又ハ公吿シテ營ム兩替及ヒ利足付又ハ其他ノ報酬付ノ貨幣貸付
二 新聞紙及雜誌ノ發行
三 商事上各種ノ代理
四 公ナル依賴引請營業及ヒ取次營業
五 諸公集場營業及ヒ遊戱場營業
六 請負ヒ仕事
（本尾委員）
第五條中殊ニ以下ノ所ト本條ノ場合トハ性質同一ナレハ若シ前條殊ニ以下ヲ別項ト爲スコトニ決セハ本條ヲ前條中ニ移スモ可ナリ
本條第一兩替及貸付トアル內ニハ銀行ヲ包含セス銀行ハ前條中貨幣流通云々ニ包ムモノトス而シテ本條笛ニノ場合ハ一時ノ兩替及貸付ヲ云ハサルハ前條貨幣流通云々ハ平常職業トスルト一時ノ爲スコトトヲ問ハスシテ云フモノナルニ依ル
（鶴田委員）
縱令ヒ商人ニアラサルモ一ノ爲替ヲ振出シタルニ其振出ニ關シ爭議ヲ生スルトキハ是レ商事ナルヲ以テ互ニ商事裁判所ノ判決ヲ仰カサルヲ得サルヘシ
（本尾委員）
然リ商法ニ從ヒ商事裁判所ニ出ルト雖モ商人ニアラサルヲ以テ商人タルノ義務ヲ行フ責任ナシ
（長森本尾岸本委員）
第五條以下第十一條迄ハ委員ニ於テ更ニ案ヲ起シロエスレル氏ノ意見ヲ聽クコトト爲セハ如何
（箕作委員）
第四條モ亦委員ニ於テ起稿セハ如何
（委員長）
書籍發行ハ商事ナルヤ
（本尾委員）
若シ殖利ノ爲メ特ニ著書ヲ作リ又ハ之ヲ發行スルハ商事ナリトス
（委員長）
商事ノ區別ニ就テハ實ニ容易ナラサルヲ以テ委員ニ於テ更ニ起稿スル前ニ當リ先ツ原案ノ精神ヲ硏究スルヲ良トス
（本尾委員）
質問ノ㸃各委員ニ於テ同一ナラサルニ依リ之ヲ質問スルハ容易ナラサルナリ
（箕作委員）
質問ノ㸃種々アリト雖モ之ヲ要スルニ第五條中ノ「フロトクチヤソ」ノ字義如何ヲ問ヘハ可ナリ若シ「フロトクシヨン」ノ內ニ勞力ヲ包含セスト爲ストキハ第八條ナキモ勿論商事ニアラサルコト明瞭ナリ若シ又勞力ヲ包含ストセハ第八條ハ其取除ケ法ト云ハサルヲ得サルナリ
（鶴田委員）
第三ノ代理云々ハ之ヲ揭ケサルモ商事ナルコト勿論ナリ何トナレハ商事上ニ關スル契約ナルノミナラス第四條ニ於テモ此法ニ規定シタル各事項トアレハ充分ナルヲ以テナリ
○第一卷追テ議スルコトトシ先ツ第二卷ヲ議決スヘシト云ヒ又ハ第十二條ヨリ先ツ議スヘシトノ論アリシカ途ニ第十二條ヨリ議スルコトトナレリ
○第十二條
男女ヲ問ハス未丁年ニシテ年齡十八歲ニ滿チ且父又ハ後見人ノ許諾ヲ得テ獨立ノ活計ヲ立ル者ハ商業ヲ營ムコトヲ得ヘシ右等ノ者獨立シテ商業ヲ營マント欲スルトキハ法律上ノ要件ヲ明記シ且自己及ヒ父又ハ後見人ノ署名シタル届書ヲ管轄裁判所ニ差出スヘシ
裁判所ニ於テハ此届出ヲ商業登錄簿ニ登記スヘキ然ルトキハ右未丁年者ハ其登記ノ日ヨリ商事ニ於テ各種權利義務ニ關シ總テ丁年者ト同等ナルモノトス然レトモ未丁年者ニ附與シタル法律上ノ德惠ヲ仰クヲ得ス又未丁年者ハ殊ニ爲替義務ヲ負擔シ商業上ノ負債ノ爲ニ所有ノ不動產ヲ書入シ及ヒ之ヲ賣却スルコトヲ得ヘシ
（箕作委員）
未丁年者及ヒ有夫ノ婦ニ關スル規定ハ今暫ク削除セラレンコトヲ希望スルナリ何トナレハ我邦ノ慣習上ニ於テハ到底之ヲ實行スル
○ト能ハサルモノナレハナリ
（周布委員）
未丁年者及ヒ有夫ノ婦ニ關スル規定ハ治罪法ノ如ク單行布吿ヲ以テ當分之ヲ實行セス從前ノ慣習ニ任スルコトトセハ本案ノ儘ニテ差支ナシ
（岸本委員）
十八歲未滿ノ幼者ニ就テハ特別ノ法律ヲ設ケ後見人ヲ選ソテ慣習ノ如ク幼者ノ名ヲ以テ商業ヲ爲サシメ其後見人ニ關スル責任ノ法律ハ特ニ之ヲ設クルコトトシ十八歲以上ハ本法ノ規定ニ據ラシムルコトトセハ今日ノ慣習ヲ遽ニ破壞セス最モ便益ナル處分ナリトス
（本尾委員）
本法ニ先ツ原則トシテ丁年ニ至リタル者ハ獨立シテ商業ヲ爲スコトヲ得ヘシトノ一條ヲ揭ケ本條ヲ其次項小爲スヲ必要トス
（鶴田委員）
本條二十八歲未滿ノ者ノ商業ヲ爲シ得ヘキ規定ヲ揭ケ以テ本案ヲ施行セハ不可ナカルヘシ
（岸本委員）
丁年者ニアラサレハ獨立シテ商業ヲ爲スコトヲ得ストノ原則ハ本法領布ノ際民法ニ於テ此規定ナキトキニ至リ本法ニ追加スルコト下爲スヘ一シ（之ニ決ス）
（委員長）
當分實地セサル單行布吿ヲ發スルトキハ原案モ完全ニシテ又慣習ヲ損セサルノ便宜アリ
○本條未定