○第四讀會第四回
明治十九年五月二日
○第六十六條
（本尾委員）
修正案ニテハ契約/無期有期ナルニ拘ハラストナセシニロエスレル氏ハ有期ハ自己ヨリ之ヲ束縛スルモノナレトモ無期ナルトキニ總社員ノ承諾ヲ得ルハ苛酷ナリ故ニ之ノ場合ハ豫吿ヲ以テ退社ヲ許サヽルヘカラサルナリ
又其豫吿ニ付テハ六ケ月前ニナスハ法律ニ於テ定ムルコトニ關シテハ種々議論モアリシカ先ツ社員ハ此規定ヲ示サヽルモ必スナスヘシトハ云ヒナカラ事業上ニ關係スル所アルヲ以テ法律ニ於テ之ヲ定メ置クヲ可トス
（岸本委員）
重要ノ事由ノ有無ニ拘ハラス總社員カ承諾ヲ與フルトキハ六ケ月前ノ豫吿ヲナサスシテモ退社スルコトヲ得ルモノナルヘシ
（箕作委員）
若シ社員ノ承諾ヲ得テ退社スルモ債主ニ於テ之ヲ拒ムトキハ其效ナカルヘシ
（本尾委員）
承諾ノ上ハ隨意ニ退社スルコトヲ得ヘシト雖モ退社後第七十一條ニ於テ二年間責任ヲ負擔セシムルヲ以テ差支ナシ
○本條ハ「承諾ヲ得」トアルヲ「承諾ヲ要シ」ト改ム
○第六十七條
（本尾委員）
精神ハ異ナラス止タ文字ヲ修正シタルノミ則チ除名セラレタル者トアル時ハ人ヲ以テ主トスルカ如シ此場合ハ事柄ヲ以テ主トセサルヘカラス
第二項ハ原文ニハ權利承繼者トノミアレトモ反譯ニテハ相績者必用トセハ之ヲ記入スルモ差支ナシ又第四十三條ニ云々トアルヲ以テ旁相照應セシムル於テ相續人ナル文字ヲ加フル精神上於テ故障アルコトナシトノコトナリシ
（周布委員）
第五項ハ此ニ明載セサルモ官吏タルモノハ商業ヲ爲スコトヲ得サルコトハ別ニ制裁スル所アルヲ以テ削除スル方可ナルカ如シ
（細川岸本委員）
然リ削除スルヲ可トス
（本尾委員）
ロエスレル氏モ之ヲ加フルハ餘リ好マサル所ナリ然レトモ之ヲ加ヘタルハ官吏トナリシ時ハ如何トノ疑ヒヨリシテ之ヲ揭ケタルモノナレハ素ロエスレル氏モ必要トセサル所ナリ
（長森委員）
第三十九條ノ資格ヲ失ヒタル社員ハ本條第一項ノ除名中ニ入ルヤ
（細川委員）
然リ本員ハ其除名中ニ入ルヘキモノト信ス
（岸本委員）
否除名ニ入ルヘキモノニアラス尤モ其結果ハ除名ト同一ナルニ至ルモノナレトモ本條ノ除名トハ別異ナルモノトス
（本尾委員）
然リ其事柄ハ異ナルモ其結果タル除名シタルト同一ニスルモノナリ
○本條ハ第一項ハ第三十九條ノ社員モ包含スルヤ否ハ質問ニ決シ第二項ハ「嗣員タル」ノ下ニ「可キ」ノ二字ヲ加ヘ第五項ハ削除セリ
○第六十八條
（本尾委員）
本條ハ理由ノ二字ヲ加ヘタリ其意タル隨意ノ退社ナルヤ又ハ前條ノ第一項ナルヤヲ明カニセサルヘカラサルヲ以テナリ
○本條ハ原案ニ決ス
○第六十九條
（本尾委員）
本條ハ修正案ノ「淸算書」ヲ「貸借對照表」ト改メ但書以下ヲ削除シタリ其理タル負債ノ貸方ニ越ユルハ則破產ノ場合ニ至ルヘキヲ以テ此ニ之ヲ揭ケサルモ別ニ差支ナキヲ以テナリ午後開會
○第七十條
（本尾委員）
出資又ハ使用權ト爲シ使用權云々ヲ挿入セラレタリ蓋シ此使用權ハ退社ト共ニ終止スルモノヲ云フ否ラサル使用權ハ前項ニ依リ普通物件ト同一ニ之ヲ處分スルモノトス
○第二項ハ左ノ如ク修正ヲ加ヘタリ
「出資勞力ヲ勞力出資ト改メ出資又ハ退社ト共ニ終止スル使用權ニ付テハ其價格ヲ償フノ義務ナキモノトス」
○第七十一條
（本尾委員）
原案然レトモ以上ハ之ヲ揭ケサルモ勿論ナルノミナラス却テ繁雜ヲ來スノ恐レアルヲ以テ然レトモ以下ノミニ改正セラレタリ
又退社後「一年」トアリシヲ「二年」ト改メラレタリ
○本條ハ異唱議ナシ
○第七十五條
（本尾委員）
「第二條ニ揭ケタル場合ノ外」ナル文字ヲ加ヘラレタリ其理ハ第二條ニ示シアルモノニ外ナルコトヲ此ニ記載スルハ頗ル要用ナルヲ以テナリ
（箕作委員）
本條ノ除名ハ第四十條及第五十二條ノ場合ヲ云フヤ
（本尾委員）
否右ノ兩條トハ別異ナリ本條ノ除名ハ社員中ニテ折合ノ付カサル場合ナリ
（岸本委員）
然レトモ到底ハ第五十二條ノ場合ニ陷ルモノナリ
（細川委員）
除名スルモ會社云々ハ之ヲナスモ會社ヲ維持スルコト能ハサルニ至ルヲ以テ裁判所ニ訴フルノ意ナルカ如シ
（本尾委員）
ロエスレル氏ノ精神ハ已ニ除名シタルモ會社ノ保續スルコト能ハサル場合ニ至テ出訴スルノ意見ナリ
○本條ハ「會社ノ地位」トアルヲ「會社々員間ノ關係」ト改メ其他ハ原案ニ異議ナシ
○本條ニ關シ箕作委員ヨリ呈出シタル修正說ハ左ノ如シ（否決）
箕作委員ノ呈出
第二條ニ揭ケタル場合ノ外會社其目的ヲ達スルコト能ハサル事由アル時若クハ會社ノ地位ヲ維持スルコト能ハサル事由アリテ或ル社員ノ除名ニ依リ之ヲ排除スルコトヲ得サル時一名又ハ數名ノ社員覃リ其事由ニ依テ解散ヲ由上並ルニ於テハ云々