第四讀會第二回
明治十九年四月廿九日
○第二章
○第一節
○第十八條
（本尾委員）
本條ヲ修正シタル所以ハ此場合ニ於テハ連帶無限トハ記載スルコト能ハス共通計算ト改メサルヘカラス卽チ之ヲ極ムルトキハ共通計算モ連帶無限トハ同一ナレトモ先ツ共通ノコトヲ示シテ後ニ責任其出資ニ止マラサルコトヲ示サヽレハ不可ナリト本條ハ之ニ決ス
第十八條 二人以上七人以下金圓其他有價物件或ハ勞力ヲ集合シテ共有資本ト爲シ共通計算ヲ以テ商業ヲ營ミ責任其出資ニ止ラサルモノヲ合名會社トス
○第十九條
（本尾委員）
本條ハ總社員ノ三字ヲ入レタリ之ハ一名又ハ數名ノ外總社員ノ氏名ヲ用ユルコトヲ得サル力ノ疑ヒアルヲ以テナリ
本條ハ社名ノ下ニ「總社員又ハ」ヲ加ヘ一名又ハ數名トアルヲ「一員又ハ數員」ト改ム
○第二十二條
（本尾委員）
本條ハ質問ノコトニ決セシモノナリ其ハ代務者ヲ任免スルトキハ登記公吿ヲナスヘキヲ至當ナリトスルカ如シトノ答辯ニ此場合ハ代務者ヲ入ルニハ不可ナリ然ラハ第三十四條モ亦削除セサルヘカラサルカ如シ否該條ハ擔當者ニ於テ任免スルモノニシテ擔當者ハ已ニ登記ヲ受クレハ責任該者ニ止ラレハ代務者迄ヲ登記スルニハ及ハス且商法ノ頒布ニ付テハ自カラ定マル所アルヲ以テ此ニ之ヲ記入スルニ不及ト
（箕作委員）
實ニ然リ付テハ第三十四條ヲ擔當者ハ之レ々ヲ任免スルノ權アルモノトセハ如何（之ニ決ス）
第三十四條ハ左ノ如ク改ム
業務擔當者ノ任アル社員ハ代務者ヲ任免スルノ權アルモノトス
（本尾委員）
第二項ノ業體ヲ目的トシタリ之ハ原語ニ適スル所アルヲ以テナリ
第六項ニ存立期限ノ有無トアレトモ全體無期ナルモノハ記載スルニ及ハサルナリ故ニ原案ノ如ク期限アルトキハ其期限ヲ記スル旨ヲ示スヲ以テ足レリトス
第二項ハ目的ト改メ第六項ハ「存立期限ヲ定メタルトキハ其期限」ト改メ第三項ハ「及」ヲ加フ
○第二十三條
（本尾委員）
原案ニテハ自然ト人爲ノ變更共ニ包含スルノ精神ナレトモ譯文ニテハ之ヲ區別セス依テ譯文ニテハ兩方ノ變更共ニ包ムノ意ナレハ差支ナケレトモ原文ニテハ之レカ區別ヲ設ケ置カサルヘカラスト
（細川委員）
修正ノ如ク別ニ加ヘスシテ包含スルモノト認定セラルヘシ
右ニ決ス
○第二節
○第二十六條
（本尾委員）
本節ハ先第一ニ契約變更ノコトハ示サヽルヘカラス修案ノ如ク權利義務ノ節中ニ加フルハ不可ナリ矢張一節ヲ設ケサルヘカラス又第二十七條ヲ削除セランタレトモ實際上ニ於テハ往々アルモソニシテ法律上ヨリ云フトキハ或ハ不用ナルカ如シト雖モ實際ニ至テハ往々生スルモノナレハ之ヲ設ケテ第二十六條ト第二十七條トノ兩條ヲ一節トシ矢張契約變更ノ一節ヲ設ケテ權利義務ノ節中ヨリ分離セサルヘカラスト
本節ハ之ヲ加フルコトニ決ス
（細川委員）
第二十七條ノ爾後トアルハ一度實行シテ其後之ヲ止タル場合ヲモ云フナルヘシ
（箕作委員）
否一回モ實行セサル場合ナルヘシ
（細川委員）
契約ノケ條ニシテ實行セサルモノヲ以テ契約シタルトキハ其契約ハ廢滅トナルヤ
（本尾委員）
否廢滅トハナラサルナリ何トナレハ其後之ヲ實行スルノ場合ニ至ルトキハ其契約ハ再ヒ成立ツモノニシテ實行セサリシ間無效トナルモノナリ
（長森委員）
然ラハ爾後ノ二字ハ削ルヘシ（之ニ決ス）
本節ハ之ヲ加フルコトニ決シ爾後ノ二字ヲ削ル
○第二十九條
（本尾委員）
本條ハ原案第五十一條ニシテ修正案ニテハ事業ヲ擴張シトアレトモ其事柄タル全ク擴張セサル事業モアルヘシ故ニ目的ニ異ナルカ或ハ目的ヲ踰ユル云々ト爲サヽルヘカラストテ之ヲ改メタリ而シテ修正案ニテハ施行ニ關スルヲ第一ニ置カレタレトモシ之ヲ前ニ遣クハ順序其當ヲ碍ス故ニ泪的ニ興ナルカ踰ユル場合ヲ第一トシ而シテ其次ニ施行ニ關スル一條ヲ置クヲ適當トナセリト
本條ハロエスレル氏修正ニ決ス左ノ如シ
第二十九條 會社ノ目的ニ異ナル歟或ハ其目的ヲ踰ユル事項ニ付テハ總社員ノ承諾ヲ要ス
○第三十條
（本尾委員）
之ニ第二十六條云々ヲ加ヘタルハ總社員ノ承諾ヲ要セスシテナスコトヲ得ヘキ旨ヲ示ス則變更ニアラサルヲ云フナリ
（岸本委員）
之ノ修正ハ不可ナリ却テ議論ノ種子トナリ且之レナキモ精神ニ異ナルコ手ナケレハ削除スヘシ（之ニ決ス）
本條ハ「第二十六條ノ規定外ニシテ」ノ數字ヲ削除ス
○第三十六條
（本尾委員）
單ニ利益配當云々ハ不適當ナレハ削除スヘシ否之ヲ削ル小キハ勞力モ亦評價セサルヘカラスト答ヘタレハ否之ヲ加ヘサルモ明瞭ナレトモ是非之カ區別ヲ設クルトセハ社員金圓其他有價物件トスヘシ然レトモ有價トセハ金圓モ包含スルニアラスヤト尋ネシニ否或ハ外國ノ貨幤ヲ以テ出資トスルコトナキニアラス然ルトキハ之ヲ評價セサルヘカラストノ論ナリ
（周布委員）
金圓トハ日本ノ紙幣金圓ヲ限リ云フモノナルヘシ
（鶴田委員）
然レトモ紙幤ノ價格ニ相違ヲ生スルトキハ其差ハ之ヲ計算セサルヘカラス
○本條ハ異議ナシ
第四十條
（本尾委員）
相當ノ利息トアレトモ此場合ハ確カニ金額ヲ定メ置カサンハ不可ナ丿故二百分ノ八トナセリ
（周布委員）
若シ會社契約ニテ定ムル所アルトキハ敢テ百分八ノ利息ノ規定ニ從ハサルモ不可ナカルヘシ
（岸本委員）
契約ニ於テハ隨意ニ定ムルヲ得ヘシ
（箕作委員）
若シ契約ニ依テ定ムル所ナケレハ裁判上ニ於テハ百分ノ八トナスヘシト解セハ不可ナカルヘシ
（本尾委員）
其場合ニ至テハ百分ノ六ノ制限利子アルヲ以テ之ニ依ルコトナシトセス
（鶴田委員）
故ニ契約ナキトキハ百分ノ八ニ定ムルモノト精神ヲ極ムルトキハ不可ナカルヘシ何トナレハ會社ノ利息ハ一般トハ格別ナリト知ラハ差支ナカルヘシ
○本條ハ異議ナシ
于時第十二時中止
午後第一時開會
第四十三條
（本尾委員）
相續人ノミニテハ或ハ相續人ニアラスシテ縫承者アルトキニ至リ必ス疑ヲ生スルコトアラン故ニ權利繼承者ハ相績人ノ次ニ加フヘシト
○承繼者ノ下ニ「ニ於テ」ノ三字ヲ加フ
○第四十四條
（本尾委員）
本條ハ原案第四十七條第四十八條ヲ合併シタリシカロエスレル氏ノ意見ニ依レハ之ヲ合併スルハ不可ナリ故ニ原案ノ如ク兩條トナスヘシト
（周布委員）
賣渡讓渡ハ賣讓トスヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ異議ナシ
○第四十五條
（本尾委員）
本條ハ共算商業ニ入ルヘキモノナルヲ以テ共算商業ノ規定ニ依ルヘシトナセリ
（箕作委員）
商業ノ下ニ組合ノ二字ヲ加フヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ「組合」ノ二字ヲ加フ
○第四十六條
（本尾委員）
單ニ會社ノ爲メニト云フヨリ前貸又ハ契約上ノ出資額云々ト爲ス方明一瞭ナリト
（箕作委員）
前貸トスルハ假令ハ會社出資ノ集合セサル內ニ他ニ金圓ノ入用アルトキハ社員ヨリ立替ヘタルモノナラン故二百分ノ八ヲ加皿フルモノナルヘシ
（本尾委員）
然リ故ニ前貸ニテハ少シク不都合ナルカ如シ
（箕作委員）
拙資額ヲ超ヘテトアルハ會社ノ爲メニ支拂ヒタルトキニ限ルモノニシテ立替金ノコトハ毫モ出資額ニハ係ハラサルナリ
（本尾委員）
原案ノ本文ニテ見ルトキハ或ハ箕作委員ノ說ノ如シト雖モ註解ヲ見ルトキハ出資額ヲ超ヘテトハ立替金モ支拂ノコトモ俱ニ含ムモノナリ故ニ契約上ノ出資額ヲ超ヘテ會社ニ立替ヲナシ又ハ會社ノ爲メニト改メサルヘカラス
若シ其見解ニ於テ不安心トナラハ質議スヘシ
（箕作委員）
可相成ハ立替金モ亦出資額ニ關係スルヤ否ヲ質議セラレタシ
（本尾委員）
諾
○本條ハ出資額ノ立替金ニ係ルヤ否ニ付質議ノ上修正ニ決ス
第四十八條
（本尾委員）
會社ニ引渡サヽルトキハトアルヲ元原案ニアル如ク社金ヲ私用ニ供シタルトキハノ一句ハ加ヘサルヘカラス何トナレハ實際差掛入用ノトキ自己ノ持合ナキトキハ暫[時立替スルコトトナシトセス此際ハ必ス利子ヲ附スヘキ旨ヲ規定セハ敢テ不可ナカルヘシ
○本條ハ「時限內」トアルヲ「時日內」ト改ム
○第五十二條ノ二項
（本尾委員）
原案ニ爭論ノアル場合ハ裁判所ニ於テ判決スヘシトノ規定アリシモ盡ク削除シタリ然ルニ本條ニ至リ此場合ハ是非加ヘサルヘカラス何トナレハ佛國民法ニ勞力ノ價額ノ定マラサルトキハ供資ノ價格ノ最下等ヲ以テ標準トスルノ不可ナルコトヲ改メンカ爲メニ之ヲ設ケサルヘカラスト又定式ヲ受ケテ判決ヲ受クルニアラス裁判官ノ仲裁ヲ以テ判定スルノ精神ナリト
（箕作委員）
第二項ハ佛法ヲ排除センカ爲メ設ケタルトハ何分解スルコト能ハサルナリ
（本尾委員）
本條ハ第二項ハ若シ原案ノ意味ヲ明知スルニ至ラサレハ折角ノ主意モ亦裁判官ニ於テ推知スルコト能ハサルヘシ付テハ第二項ヲ其意味ニ解シ得ラルヘキ樣修正ノコトヲ質議スヘキヤ
（委員長）
是ヨリ修正案ヲ提出シテ質議スヘシ本文ノ如クセハ裁判官ハ必ス佛法ニ依テ決スルコトトナルヘシ
（本尾委員）
諾如此意味ニテ質議セハ如何
勞力ノ價額ヲ契約ニ定メサルトキハ裁判所ハ處分ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
（箕作委員）
爭論ヲ入レサレハ裁判所ニ提出スルノ甲斐ナシ又原案モ亦權利上ニ關係スルヲ以テ之ヲ判決スルノ意ナルヘシ
（本尾委員）
然ラハ「爭論ノ生シタルトキハ」ノ文字ヲ入ルヘシ
（細川委員）
其文意ナルモ佛國法ヲ排除セントスルノ精神ハ知ル能ハサルナリ
（長森委員）
然リ
（箕作委員）
到底佛法ニ從フヘカラサルコトヲ明記セサレハ不可ナリ
第二項ハ本條ニ加フルヨリ寧ロ第三十六條ノ二項トセハ或ハ可ナルカ如シ
○本條第二項ハ質議ニ決ス
于時三時退散