○第二讀會第六十五回
明治十九年三月廿三日
欠席 渡邊委員
仝 周布委員
午前第 時開會
○第五章罰則
○第百九十九條 原案第二百六十條
業務擔當ノ任アル社員又ハ取締役左ノ場合ニ於テハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ受クルモ本法ニ規定シタル登記公吿ヲ受クルコトヲ怠リタルトキ（第二十一條第二十二條第六十四條第七十二條第八十一條第百八條第百九條第百三十條第百五十一條第百七十六條）
二 登記公吿前ニ開業シタルトキ（第二十四條第百十條）
（鶴田委員）
本條以下終尾ノ「トキ」トアルハ「時」ト改ム可シ（之ニ決ス）
（本尾委員）
取締役ノ責任ハ各自ナルヤ又一體ナルヤノ疑問アレトモ一應質問ノ上決スヘキコトニ前回ニ於テ定メラレタレハ本案ノ儘ニナシ置キタリ
○本條ハ質問ニ決ス而シテトキヲ時ト改メシノミ
○第二百條 原案第二百六十二條
株式會社ノ取締役左ノ場合ニ於テハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處ス
一 株主名簿ヲ製セス又ハ之ニ不整ノ記載ヲ爲シタルトキ（第百十四條）
二 會社解散ノ場合ニ於テ總會ノ招集株主ヘノ報知ヲ怠リタルトキ（第百七十四條第百七十六條）
○本條ハ「トキ」ヲ「時」ト改メ「不整」ヲ「不正」ト改正セラレタリ
○第二百一條 原案第二百六十三條
株式會社ノ取締役左ノ場合ニ於テハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第百六十六條ノ場合ニ於テ會社ノ財產及帳簿其他書類ノ檢閱ヲ拒ミ又ハ推問ニ應セサルトキ
二 第百五十八條ノ規定ニ背キ會社自己ノ株劵ヲ其所有者ト爲シ又ハ抵當ニ取リ又ハ之ヲ公賣セサルトキ
三 第百五十七條ノ規定ニ背キ株金ノ全部又ハ一部ヲ株主ニ拂戾シタルトキ
四 第百五十九條第百六十條ノ規定ニ背キ利息又ハ分配金ヲ株主ニ拂渡シタルトキ
本條ノ罰則ハ合資會社ノ取締役第九十三條ノ規定ニ背キタル時モ亦之ヲ適用ス可シ
（箕作委員）
項ノ順序ハ條ノ順序ニ從テ別載セシムル方可ナルカ如シ（之ニ決ス）
○本條ハ「トキ」ヲ「時」トシ「第三項」ヲ「第二項」トシ「第二項」ハ元ノ儘ニ据置キ「第四項」ヲ「第三項」トシ「第一項」ヲ「第四項」ト改ム
○第二百二條 原案第二百六十四條
株式會社ノ結算人左ノ場合ニ於テハ二十圓以上百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第百八十六條ノ規定ニ背キ廣吿ヲ爲サシムルトキ
二 會社ノ財產ヲ以テ負債ヲ完償スルコト能ハサル場合ニ於テ破產處分ノ手續ヲ怠リタルトキ（第百九十六條）
（箕作委員）
本條ニ合資會社ノ結算人ヲ加フルノ可否ハ前回ニ議論セラレタル所ナルヘシト雖トモ先ツロエスレル氏ニ質議シテ後修正スルトセハ如何（之ニ決ス）
（本尾委員）
本條ノミ二十圓以上百圓以下トアリ他ハ皆十分一ノ割合ト定メタレハ本條モ二十圓以上二百圓以下トスルカ十圓百圓トスルカ何レニカ改ムル方可ナリ
（鶴田委員）
十圓ト改ムヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ「二十圓以上百圓以下」トアルヲ「十圓以上百圓以下」ト改メ第一項ノ「第百八十六條ノ規定ニ背キ」トアルヲ「第百八十六條ニ規定シタル」ト改ム而シテ「トキ」ハ例ニ依テ「時」ト改ム
○第二百三條新設
株式會社ノ結算人左ノ場合ニ於テハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第百八十七條ノ規定ニ背キ債主ヘ支拂ヲ爲シタルトキ
二 第百九十二條ノ規定ニ背キ株主ニ配當ヲ爲シタルトキ
○本條ハ「債主ヘ」トアルヲ「債主ニ」トシ「トキ」ヲ「時」ト改ム
○第二百四條 原案第二百六十五條
業務擔當ノ任アル社員取締役檢査役結算人左ノ場合ニ於テハ百圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處ス但事情ノ重キ時ハ一年以內ノ輕禁錮ヲ併科スルコトヲ得
一 官廳若クハ總會ニ對シ書面又ハ口演ヲ以テ會社ノ財產若クハ業務ノ實況ヲ詐稱シ又ハ之ヲ隱蔽シタルトキ
二 登記公吿ノ届出又ハ廣吿中ニ事實ヲ詐稱シ又ハ之ヲ隱蔽シタルトキ
（鶴田委員）
百圓以上トアルヲ五十圓以上ト改ムヘシ
○本條ハ「百圓」ヲ「五十圓」ト改メ「重キ時ハ」トアルヲ「重キトキハ」トシ「以內」ヲ「以下」トシ一二項ノ「トキ」ヲ「時」ニ改ム
○第二百五條 原案第二百六十六條
發起人株式申込簿中ニ詐僞ノ記載ヲ爲シタルトキハ二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
異議ナシ
○第二百六條 原案第二百六十七條
前諸條ニ於テ特ニ設ケタル罰則ノ外第四章中ノ規定ヲ犯ス者ハニ圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
（委員長）
取締役ニ於テ株主名簿ニ詐僞ノ記載ヲ爲シタルトキノ罰ハ如何
（本尾委員）
其罰ハ第二百條ニ不正ノ記載トアル中ニ包含スルナリ而シテ會社設立ノ際發起人ノ詐僞ヲ爲スハ最モ重大ナル犯罪故二十圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處ス
于時十二時中止
午後一時開會
（岸本委員）
本條ハ實ニ樞要缺ク可ラサル條トハ認ムルコトヲ得ス就テハ之ヲ削除スルノ可否ヲロエスレル氏ニ質議シ强テ差支ナケレハ削除セハ如何
（本尾委員）
本條ハ先ツ削除スルコトトシロエスレル氏ニ質問セハ如何
（箕作委員）
餘リ必要トモ認メサレハ削除ニ決定シテ其由ヲ質議セハ可ラン
○本條ハ削除ニ決シ而シテロエスレル氏ニ質議スルコトトナレリ
○第二百七條 原案第二百六十八條
業務擔當ノ任アル社員取締役檢査役結算人及發起人犯則ノ罰ヲ受クルノ外他ノ役員及使用人ニ於テ其犯則ヲ助成シ又ハ自己ノ失錯ニ由テ犯則ヲ生セシメタルトキハ當該役員ト同條ノ罰ニ處ス
（委員長）
三人ノ取締役アランニ其中一人ノ失錯ニ出タルトキト雖モ矢張三人ヲ罰スルノ精神ナルヤ
（箕作委員）
失錯者一人ヲ罰スルノミニシテ他ノ二人ハ關係ナカルヘシ
（委員長）
一體前回ニ削除シタル罰金ヲ會社ヨリ拂出スコトノ意味未タ充分ナラスト雖モ全ク第二百七條ノ精神ヲシテ充分明瞭ナラシムルコト能ハサルカ故ニ該條ニ於テモ分明ナラサルナリ故ニ第二百七條ノ精神ハ一應質問スルコトトセン
（本尾委員）
然リ就テハ本章ノ質問ノ條々ハ左ノ如クナリ
第二百二條
第二百六條
第二百七條
原案第二百六十九條罰金ヲ金庫ヨリ拂出スノ件
（委員長）
然リ
○本條ハ質問ニ決ス
（委員長）
明日ヨリ土曜日ヲ除クノ外連日商法編纂ニ着手スヘシ而シテ該法ハ多分ハ原案ニ從テ編纂スルモノトシ何分ニモ我邦ニ適セサルヘシト認ムル條々ヲ除クノ外ハ成ルヘク修正セサルコトトセソ尤モ原案ノ主意ニ反セサルモノハ隨意修正スルモ不可ナシ諸君ノ意如何
（委員諸氏）
皆之ヲ諾ス
右ノ趣意ニ依リ商法ハ可成原案ニ依リ編纂スルコトニ決ス
于時四時退散