○第二讀會第六十四回
明治十九年三月廿日
欠席 細川委員
仝 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
仝 岸本委員
午前開會
（本尾委員）
先回ノ決議ニ從ヒ修正委員ニ於テ左ノ諸條ヲ追加及ヒ改正セリ
合名會社
○第七十七條
結算人結算中會社ノ財產ヲ以テ負債ヲ完償スル能ハサルトキハ破產處分ノ手續ヲ爲シ其旨ヲ廣吿シ且會社ノ取引先ニ通知スヘシ此場合ニ於テハ既ニ社員ニ支拂タル分配金ハ之ヲ返還セシム可シ
合資會社
○第九十四條
第七十七條ノ場合ニ於テ結算人會社財產ヲ以テ其負債ヲ完償スル能ハサルコトヲ知リタル後有限社員ニ支拂タル分配金ニ付テハ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負ハサル可カラス
株式會社
○第百九十六條
第七十七條ノ規定ハ又株式會社ニ適用ス可シ然レトモ結算人會社財產ヲ以テ其負債ヲ完償スル能ハサルコトヲ知リタル後株主ニ支拂タル分配金ニ付テハ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負ハサル可カラス
○第百九十二條第一項改正
結算人前條ノ認定ヲ受タルトキハ會社ノ負債ヲ完償シタル殘餘ノ財產ヲ各株ニ應シ金圓ヲ以テ平等ニ配當ス可シ但此配當ハ負債ヲ完償シタル日ヨリ三ケ月ノ後ニ非サレハ之ヲ爲スコトヲ得ス
○第二百六十四條
株式會社ノ結算人ハ左ノ場合ニ於テ貳拾圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一 第百八十六條ノ規定ニ背キ廣吿ヲ爲サヽルトキ
二 會社ノ財產ヲ以テ負債ヲ完償スルコト能ハサル場合ニ於テ破產處分ノ手續ヲ怠リタルトキ（第百九十六條）
本條ノ罰則ハ合名會社合資會社ノ結算人第二項ニ揭ケタル破產處分ノ手續ヲ怠リタルトキモ亦之ヲ適用ス
○第 條
株式會社ノ結算人ハ左ノ場合ニ於テ貳拾圓以上貳百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一 第百八十七條ノ期限前ニ債主ヘ支拂ヲ爲シタルトキ
二 第百九十二條ノ配當ヲ總會ノ認定ヲ受ケス又ハ三ケ月以內ニ爲シタルトキ
○第二百六十五條
業務擔當ノ任アル社員取締役檢査役結算人左ノ場合ニ於テハ百圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ但事情ノ重キ時ハ一年以內ノ輕禁錮ヲ併科スルコトヲ得
一 官廳若クハ總會ニ對シ又ハ廣吿中書面又ハ口演ヲ以テ會社ノ財產若クハ業務ノ實況ヲ僞リ又ハ之ヲ隱蔽シタル時
二 登記公吿ノ届出又ハ廣吿中ニ事實ヲ僞リ又ハ之ヲ隱蔽シタル時
（鶴田委員）
負債ヲ完償スルコト能ハサルヲ知リタルト否トヲ論セス元來支拂フヘキモノニアラサルモノナレハ總テ之ヲ返還セシムルコトヽ爲スヲ可トス
（長森委員）
負債ヲ完償スルコト能ハサルヲ知リタル後ト否トヲ區別スルハ敢テ不當ニアラサルナリ何トナレハ知リタルノ後支拂フタルハ結算人ノ過失ナレハ其過失ノ制裁トシテ自己ノ全財產ヲ以テ責任ヲ負ハシムルハ當ヲ得タルモノトス
（本尾委員）
合名及ヒ合資會社ヘ追加ノ事ヲ止メ株式會社ノ條モ舊ニ復シ合名合資ハ之ヲ罰セサルコトト爲セハ如何
（委員長）
可ナリ
（本尾委員）
追加第七十七條及第九十四條ハ本法ニ記セサルモ普通破產法ニ依リテ該條ノ如ク取扱フヘキハ自然ナリ
（委員長）
第百九十六條二項ノ然レトモ以下ヲ削リ追加案ハ總テ之ヲ廢セハ可ナリ
（鶴田委員）
然レトモ合名會社ノ追加案第七十七條ハ存スルモ敢テ不都合ナカルヘシ
（本尾委員）
第百九十二條第一項ハ委員長ノ說ニ從ヒ之ヲ改正シタルナリ
（委員長）
夫レハ改正案ニ決スヘシ
○追加案第七十七條第九十四條第百九十六條及ヒ第百九十二條第二項然レトモ以下ハ削除セラレタリ
第百九十二條第一項ハ改正案ハ可決セラル
○改正案二百六十四條
（本尾委員）
合名會社及ヒ合資會社ノ追加案ヲ廢シタルニ依リ「本條ノ罰則ハ云々」ヲ削除スヘシ
○本條ハ末項ヲ削除シタルノミ
○第 條
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第 條 株式會社ノ結算人左ノ場合ニ於テハ貳拾圓以上貳百圓以下ノ罰金ニ處ス
一 第百八十七條ノ規定ニ背キ債主ヘ支拂ヲ爲シタルトキ
二 第百九十二條ノ規定ニ背キ株主ニ配當ヲ爲シタルトキ
○第二百六十五條
本條ハ第一中「又ハ廣吿中」ヲ削リ第一及第二中「僞リ」トアルヲ「詐稱シ」ニ改ム
○第二百六十六條
發起人ニ於テ株式記名ノ數又ハ株金拂込高ニ就キ（第百六條第百八條）虛僞ヲ吿ルトキハ貳拾圓以上貳百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
（本尾委員）
本條ハ「發起人株式申込簿中ニ詐僞ノ記載ヲ爲シタルトキハ貳拾圓以上貳百圓以下ノ罰金ニ處ス」トセハ如何（之ニ決ス）
○第二百六十七條
前諸條ニ於テ特ニ設ケタル罰則ノ外第五款中ノ規定ヲ犯ス者ハ五圓以上五百圓以下ノ罰金ニ處スルコトヲ得
（委員長）
本條ハ舊法ニ所謂不應爲ノ罰ナルカ如シ甚タ不都合ナリ
（鶴田委員）
不應爲ノ罰ハ輕キヲ可トス故ニ貳圓以上貳拾圓以下ノ罰ト爲セハ如何
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十七條 前諸條ニ於テ特ニ設ケタル罰則ノ外第四章中ノ規定ヲ犯ス者ハニ圓以上二十圓以下ノ罰金ニ處ス
○第二百六十八條
商所ノ業務擔當人取締役又ハ淸算人ノ外他ノ役員及ヒ使用人當該役員ノ犯則ヲ助成シ又ハ自己ノ失錯ニ由テ犯則ヲ生シタルトキハ當該役員ト同一ノ罰ニ處セラルヘシ
（本尾委員）
本條ヲ一見スルトキハ兩人共ニ罰セラルヽカ如ク見ユルナリ
（長森委員）
助成者ハ卽チ從犯ナレハ之ヲ同一ニ罰スルハ可ナリ然レトモ失錯ニ由テ犯則ヲ生シタルトキハ其生セシメタル者ノミヲ罰シテ可ナリ案スルニ本條ハ生セシメタル者モ亦役員ト同一ノ罰ニ處スト云フ精神ナルカ如シ
（本尾委員）
本條ハ兩人ヲ共ニ罰スルヤ否ヲ決定セサレハ修正スルコトヲ得サルナリ
（委員長）
共犯者トシテ罰スル方取締上ハ便宜ナルカ如シ
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十八條 業務擔當ノ任アル社員取締役檢査役結算人及ヒ發起人犯則ノ罰ヲ受クルノ外他ノ役員及ヒ使用人ニ於テ其犯則ヲ助成シ又ハ自己ノ失錯ニ由テ犯則ヲ生セシメタルトキハ當該役員ト同條ノ罰ニ處ス
○第二百六十九條
合資會社及株式會社ノ業務擔當人取締役又ハ淸算人ニ科スヘキ罰金ハ該員ノ失錯ニアラサルモノニ限リ會社ノ財產ヨリ徵收ス可シ
（長森委員）
罰金ハ會社ヨリ之ヲ徵收スヘシ但シ役員ノ失錯ニ出タルモノハ此限ニアラスト云フ精神ナルカ如シ
（本尾委員）
本條ニ合名會社ノ事ヲ云ハサルハ之ヲ會社ヨリ徵收スルモ元來無限責任者トナレハ本人ヨリ徵收スルト異ナラサルヲ以テナリ
（鶴田委員）
總テ罰金ハ犯則者ノ失錯ニアラサル時ニ限リ會社ヨリ徵收スルコトヽセハ如何
（委員長）
本條ヲ削除シ犯則者ヨリ出スカ又ハ會社財產ヨリ出スカハ會社決議ノ隨意ニ任スルコトトセハ最モ簡便ナリ
（本尾委員）
然リ本條ヲ削除シテ會社ノ隨意決議ニ任スルハ最モ可ナリ否ラサレハ本法ニハ禁錮ノ刑アルニ依リ時ニ依リテハ會社ヲ禁錮スルナトノ論出ルコトナキヲ保セサレハナリ
（委員長）
施體刑ト罰金ノ刑ト之レカ言渡ヲ受クル者ハ何人ナルヤ又ハ其方法ハ如何スルヤヲ質問シ尙ホ追加スヘキハ之ヲ追加スヘシ
（本尾委員）
諾
（鶴田委員）
本條ニ依レハ連帶シテ罰ヲ受クルモノニ如シ若シ連帶シテ罰ヲ受クルノ精神ナルトキハ之レ變例ナルヲ以テ特ニ之ヲ明揭セサルヘカラサルナリ假令ハ罰金ハ連帶シテ受クルヤ又ハ禁錮ハ連帶シテ受クヘキモノニアラスト力ヲ示サヽルヘカラス又裁判言渡ノ式ハ如何ナルヤ質問ノ上尙ホ之ヲ追加スルヲ可トス是等ヲ確定セサル以上ハ修正スルコトヲ得サルナリ
○本條ハ途ニ削除スルコトニ決ス但シ罰金ハ會社財產ヨリ出スカ又ハ犯則者ヨリ出サシムルカハ會社內輪ノ論ト爲シ會社ノ隨意ニ任スルコトト爲ス