○第二讀會第六十二回
明治十九年三月十六日
欠席 渡邊委員
仝 周布委員
午前開會
○第六款 罰則
○第二百六十條
合名會社又ハ合資會社ノ業務擔當社員若クハ取締役又ハ株式會社ノ取締役ハ左ノ場合ニ於テ五圓以上百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一 裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ受クルモ本條例ニ規定シタル登錄簿ノ登記ヲ怠リタルトキ（第二十一條第二十三條第六十四條第七十二條第百八條第百九條第百三十條第百五十一條第二項第百五十一條第一項第百七十六條第百九十五條）
二 本條例中社名及社印ノ使用ニ關スル規定並ニ印鑑ヲ裁判所ニ差出ス可キ規定ヲ犯シタルトキ（第五條第六條第七條）
三 登記公吿前ニ開業シタルトキ（第二十四條第百十條）
（本尾委員）
第六款ハ第五章ト改ムヘシ（之ニ決ス）
本條第一ハ登記公吿ニ關シ下ニ適用ノ諸條ヲ記載シアレトモ玆二一ノ追加スルヤ否ノモノアリ則チ株式會社ノ結算人卸責ヲ得タルトキ之ヲ登記公吿スルノ規定ナシ尤モ卸任ノ登記公吿ヲ受ケサルトキハ結算ニ就キ尙ホ責任ヲ脫スルヲ得サルノ制裁アルニ依リ特ニ之ニ罰金ヲ科スルニモ及ハサルカ如シ
（細川委員）
第一ハ登記トアリ公吿ヲ加フヘシ
（本尾委員）
第一ハ不都合ナリト信ス何トナレハ裁判所ヨリ一回ノ督促トアレトモ之ヲ爲スハ容易ナラサルノミナラス督促ノ責任ヲ裁判所二負擔セシムルコトニ至リ且ツ官許ヲ得サル會社ニ於テハ之ヲ知ルニ由ナシ故ニ本員ハ裁判所ノ督促ヲ加フルハ不可ナリト信スレトモロエスレル氏ハ是非之ヲ入ルヘツトノコトニテアリシ
（鶴田委員）
裁判所ヨリ督促トアレトモ定款ノ變更等ニ至テハ裁判所ノ之ヲ知得スル容易ナラサルナリ何トナレハ是レ皆會社內輪ニテ變更スルモノナレハナリ
（岸本委員）
裁判所ニ於テ登記公吿ヲ受クヘキ事項ヲ會社ニ於テ生シタルコトヲ預メ知ルヘキノ理由ナシ又一回督促トアルニ依リ本法中登記公吿ヲ受クヘシト命令シタル効力ナシト云フモ可ナリ故ニ會社ニ在テハ自己ノ不利トナルヘキ事項ハ裁判所ノ督促アルニ至ル迄登記公吿セサルノ弊害ヲ生スルナリ
（委員長）
此ニ取締役トアルトキハ假令ハ三人ニテ俱ニ怠リタルトキハ三人ニテ拾五圓ノ罰金ヲ言渡サルヽニ至ルナリ然レトモ如斯處罰法ハナカルヘキ筈ナレハ單ニ會社ト爲シテ可ナル如シ
（本尾委員）
取締役ハ會社ノ代表者ナレハ會社ト云フモ亦同一ノ精神ナリ
（岸本委員）
會社三言渡シタル罰金ハ會社財產ヨリ徵收スルモノト爲シ社內ニ在テハ其犯則者ヨリ償金ヲ取リ計算スルコトト爲スヘシ然ルトキハ裁判所ノ手數モ亦省略スルヲ得ルナリ
（箕作委員）
第二百六十九條ノ原文ヲ案スルニ會社ヨリ徵收スルハ取締役又ハ擔當者ノ責ニ任セサル場合ニ限ルモノトスルカ如シ然ルトキハ會社財產ヨリ徵收スル場合ハ實ニ稀少ナリトス平常ハ取締役自己ニテ擔當セサルヲ得サルニ至ルナリ
（本尾委員）
第二百六十九條ニ於テ假令取締役ノ失錯ニアラサルモ罰金ノ言渡ハ取締役ニ於テ之ヲ受ケサルヲ得サルナリ
（鶴田委員）
第二百六十八條ニ同一ノ罰金トアルヲ以テ假令ハ取締役ト書記ト犯則スルトキハ各自同一ノ罰ニ處セラルヘシ然ルニ其宣吿ニ至テハ取締役獨リ之ヲ受ク少シク不都合ナルカ如シ
（細川委員）
菓子稅酒廢稅ノ如ク雇人ノ所爲ト雖モ主人ニ責ヲ歸スルニ依リ之ニ準シテ總テ會社ニ於テ擔當スルモノトセハ如何
（本尾委員）
自己ノ失錯云々ハ下役ノ失錯ニ依テ取締役迄モ罰則ニ陷ル場合ナリ此時ハ取締役自己ノ失錯ナキヲ以テ下役ト共ニ罰金ヲ科セラルヽコトナシ
（細川委員）
使用人カ失錯ニテ取締役ニ犯則ヲ生セシメタルトキハ取締役ヲ罰シ又其使用人モ同罰ニ處セラルヽナルヘシ
（本尾委員）
假令ハ取締役裁判所ヨリ督促ヲ受クルニ依リ登記ヲ受クル爲メ使用人ヲ以テ書面ヲ送付セソニ其使用人登記役所ニ至ラス督促ノ日數ヲ經過シタルカ爲メ裁判所ハ取締役ニ罰金ヲ科シ其罰金ハ第二百六十九條ニテ會社財產ヨリ之ヲ徵收ス此場合ニ在テハ裁判所ハ其使用人ニ對シテモ亦取締役ニ科シタルト同一ノ罰金ヲ言渡スコトヲ云フ
（箕作委員）
諸役員使用人ニモ一モ失錯ナキ時ニ限リ會社ヨリ徵收スルモノニシテ若シ取締役ニ於テ失錯アレハ各自ヨリ之ヲ徵收ス而シテ二人三人ニテモ失錯アルモノハ盡ク其罰ヲ受クヘシ然レトモ其申渡ヲ受クルハ無形人ノ代表者卽チ取締役其宣吿ヲ受クルナルヘシ要スル一二人ノ失錆ナキトキニ限サ會社ス財產ヨリ徵收スヘキモノニシテ其內失錯アルモノハ其者ニ限リ徵收セラルヽモノナルヘシ
午後開會
（岸本委員）
百圓ヲ五十圓ト改ムヘシ（之ニ決ス）
（本尾委員）
第二ノ規定ハ社名及ヒ社印ニ關スル此規定ヲ設ケタル理由ハ第五、六、七條ノ三ケ條ニ基ク然ルニ第五、六條ハ罰ヲ受クルノ必要ナク又第七條ノ官廳ニ屆出テタル書面ニ押印セサルヲ以テ生シタルモノヲ五十圓以下ノ科罰ニ處スルハ實ニ苛酷ナリト云フヘシ而シテ株劵ニ押印セサルモノハ其株劵ノ効ヲ失ヒ會社ニ於テ損害ヲ受クルニ至ルモノニシテ社印ヲ押用セサルトテ罰金ニ處セサルモ不可ナカルヘシ故ニ本員ハ第二全部ヲ削除スルヲ可ト思料ス
（鶴田委員）
第二ハ削除スヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十條 業務擔當ノ任アル社員又ハ取締役左ノ場合ニ於テハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處セラルヘシ
一 裁判所ヨリ一回ノ督促ヲ受クルモ本法ニ規定シタル登記公吿ヲ受クルコトヲ怠リタルトキ（第二十一條第二十二條第六十四條第七十二條第八十二條第百八條第百九條第百三十條第百五十一條第百七十六條）
二 登記公吿前ニ開業シタルトキ（第二十四條第百十條）
○第二百六十一條
合資會社ノ業務擔當社員若クハ取締役又ハ株式會社ノ取締役登記公吿前ニ於テ會社ノ事務又ハ職務上ノ事務ヲ執リタルトキハ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ（第八十一條第百三十條）
（本尾委員）
會社ノ事務又ハ職務上ノ事務トアルハ要スルニ職務ヲ執行シタルトキト云フ精神ナリ
登記公吿前ニ於テ職務ヲ執行スルハ無効タリ其無効ノ上ニ罰ヲ受クヘキナリ然ルトキハ初メテ選定シタルトキハ單ニ無効ニシテ其更迭ノトキハ無効ノ上ニ罰ヲ科セラル不權衡ト云ハサルヲ得ス
（岸本委員）
否初メハ未タ會社ノ成立セサル以前ナレハ其害タル少ニシテ又迷惑ヲ蒙ムルモノモナカルヘシト雖モ更迭ノ際ハ營業ナルヲ以テ其害ヲ及ホスコト少々ナラス故ニ更迭ノトキト設立ノトキト其異別アル所却テ權衡ヲ得タルカ如シ
（箕作委員）
前條第二ヲ削除シタルニ依リ本條ハ削リ前條第二ヲ登記公吿前ニ開業シ及ヒ會社ノ事務ヲ執リタルトキトセハ充分ナルヘシ
（本尾委員）
其修正案ニテハ第百六十條ニ於テ合名會社モ亦登記公吿前ニ事務ヲ取扱フコトヲ得サルカ如クナルヲ以テ甚タ不都合ナリ何トナレハ原案ノ意味ハ合名合資ハ無限ナルヲ以テ實際マ事務ヲ取扱フハ之ヲ許スモ差支ナキモノトセルニ因ルナリ
（岸本委員）
本員ハ第二百六十條ノ三項ト爲シ新任ノ取締役登記公吿以前ニ於テ會社ノ事務ヲ執行シタルトキハ云々ト爲シ度シ何トナレハ初メ設立スルニ就テハ敢テ社外ニ害ヲ及スコトナケレハナリ故ニ更迭ノミニシテ充分ナリト信スルナリ
（箕作委員）
本條ハ削除セハ如何
（本尾委員）
然ルトキハ第百三十條ノ場合ニ於テハ只タ無効ニ歸スル迄ナルヘシ就テハ同條ノ其登記以下ヲ削除スヘシ何トナレハ登記以前ニ於テ爲シタル事務ハ都テ無効タルハ普通ノ原則ナレハナリ
（箕作委員）
若シ登記公吿前ニ事務ヲ執行スレハ登記ヲ爲サヽルノ㸃ヲ以テ前條ノ罰ニ處セラルヘシ若シ又開業シタルトキモ亦同シ然ルトキハ本條ナキモ前條ニテ總テ罰スルコトヲ得ルナリ
○本條ハ削除ニ決ス
○第二百六十二條
株式會社ノ取締役ハ左ノ場合ニ於テ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一 株主名簿ヲ製セス又ハ之ニ不正ノ記載ヲ爲シ又ハ之ヲ裁判所ニ呈示セサルトキ（第百十四條）
二 會社解散ノ場合ニ於テ總會ノ招集株主ヘノ報知又ハ裁判所ヘノ屆出ヲ怠リタルトキ（第百七十四條第百七十二條）
（本尾委員）
第一ノ裁判所ニ呈示云々ハ其條削除セラレタルニ依リ自ラ消滅スヘシ
（細川委員）
第二ニ農商務大臣ヘノ屆出ヲ爲サルトキヲ加フヘシ
（本尾委員）
然リ其他定款ノ變更アリタルトキニモ農商務大臣ヘ屆出ツヘキノ規定アルニ依リ之ヲモ加フヘシ
（箕作委員）
本條ハ拾圓以上百圓以下ト爲スヘシ
（岸本委員）
株主ヘノ報吿ヲ爲サヽルトキハ其株主ノ吿訴ヲ待テ受理スルヤ
（本尾委員）
何人ト雖モ之ヲ吿發スルコトヲ得ヘシ
（長森委員）
不正ハ不正ト爲スヘシ何トナレハ記載スヘキ事柄ヲ記セサルコトヲモ包含セシメサルヲ得サレハナリ
（本尾委員）
結算人登記公吿ヲ爲サヽルモノモ亦罰シテ可ナルヘシ
（岸本委員）
結算人ニ罰金ヲ科スルハ穩當ナラサルナリ
（本尾委員）
裁判所ヘノ屆出モ少シク酷ナリ故ニ裁判所ノ屆出及ヒ農商務大臣ヘノ屆出ヲ怠リタルトキハ第二百六十七條ニテ罰スルヲ以テ充分ナリトス
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第二百六十二條 株式會社ノ取締役ハ左ノ場合ニ於テ五圓以上五十圓以下ノ罰金ニ處セラルヘシ
一 株主名簿ヲ製セス又ハ之ニ不整ノ記載ヲ爲シタルトキ（第百十四條）
二 會社解散ノ場合ニ於テ總會ノ招集株主ヘノ報知ヲ怠リタルトキ（第百七十四條第百七十六條）
○第二百六十三條
株式會社ノ取締役ハ左ノ場合ニ於テ二拾圓以上二百圓以下ノ罰金ニ處セラル可シ
一 會社ノ資本減少ノ場合ニ於テ會社ノ債主ヲ隱匿シ又ハ債主ノ事ニ關シテ不正ノ申立ヲ爲シタルトキ
二 會社檢査ノ場合（第百六十六條）ニ於テ會社ノ帳簿及書類ノ呈示又ハ供述ヲ肯セサルトキ
三 第百五十八條ノ規定ニ背キ會社ノ株劵ヲ其會社ノ所有ト爲シ若クハ其會社ニ質ニ取リ又ハ成規ニ從テ之ヲ賣却セサルトキ
四 第百五十七條ノ規定ニ背キ株金ヲ株主ニ拂戾シタルトキ
五 第百五十九條第百六十條ノ規定ニ背キ利足又ハ配當金ヲ株主ニ拂渡シタルトキ
六 準備金蓄積ノ規則ヲ犯シタルトキ（第百六十條）
第五項ノ罰則ハ合資會社ノ取締役ニモ適用ス（第百九十三條）
（本尾委員）
第一ハ修正案ニ於テ生スルコトナキニ依リ削除スヘシ對照ノ諸條ハ之ヲ本文中ニ記載スルヤ又ハ原案ノ如ク發布ノトキハ之ヲ除クモノト爲スヤ
（委員長）
對照ノ諸條ハ總テ本文中ニ揭クルコトト爲ス方便宜ナリ本條ハ第五、六ノ關係ニテ一ケ條ヲ犯シ貳罰ヲ受クルニ至ルトノ議ト第六ヲ削ルモ第五ニテ自ラ包含スヘシトノ論アリテ途ニ決議ニ至ラスシテ散會ス
于時第四時三十五分閉會