○第三讀會第二回
明治十九年三月四日
欠席 委員長
仝 細川委員
仝 箕作委員
仝 周布委員
午前開會
○第二章 合名會社
○第一節 會社設立
○第十八條 原案第三十五條
二人以上七人以下金圓其他有價件或ハ勞力ヲ集合シテ共有資本ト爲シ各連帶無限ノ責任ヲ負フテ商業ヲ營ムモノヲ合名會社ト爲ス
（鶴田委員）
「各」ノ字ヲ削ルヘシ
○本條ハ各ノ字ヲ削除シ他ハ修正案ニ決ス
○第十九條 原案第三十六條
社名ハ社員ノ一人或ハ數人ノ氏又ハ名ニ會社ノ字ヲ付ス可シ社名ハ登記ヲ受ク可キ裁判所管轄內ニ於テ他ノ會社ノ社名ト區別セサル可ラス
（本尾委員）
「人」トアルハ名ト改ムヘシ如此場合ハ多クハ名ノ字ヲ用ユルコトヽナレリ
（岸本委員）
會社ノ字トアレトモ實際上ヲ考察スルトキハ原案ノ如ク會社タルヲ表スヘキ附號ヲ加ヘタルモノタル可シト改ムル方可ナルカ如シ何トナレハ現在商會又ハ私立銀行ノ如キ會社ト改メサルヘカラサルノ不便アルヲ以テナリ
（本尾委員）
從來ノモノハ更ニ本法ニ依テ改ムルニ及ハサル旨ヲ達スルモ不可ナカルヘシ
（鶴田委員）
明カニ會社トナスト否ラサルトハ委員長ノ決ヲ取ルコトトスヘシ
○本條ハ第一項ノミヲ存シ第二項ハ削除シ會社ノ文字ハ委員長ノ決ヲ取ルコトニ決シ第一項ハ左ノ如ク改ム
第十九條 社名ハ社員一名又ハ數名ノ氏名ニ會社ノ字ヲ付ス可シ
○第二十條 原案第三十七條
會社ハ契約書ヲ作リ初メテ設立スルモノトス契約書ハ總社員之ニ連署シ各員ニ其一通ヲ交付ス可シ
前項ノ規定ハ會社契約變更ノトキニ於テモ亦之ヲ遵守ス可シ
（本尾委員）
第一項ハ先ニ修正委員ノ修正シタル如ク改ムルヲ可トス（之ニ決ス）
○本條第一項ハ左ノ如ク改ム第二項ハ原案ニ決ス
第二十條 會社ハ契約書ヲ作ルニ非サレハ設立セサルモノトス契約書ハ總社員連署シ各員其一通ヲ所持ス可シ
○第二十一條 原案第三十八條
會社ハ設立後速ニ本店及支店ノ地ニ於テ其登記公吿ヲ受ク可シ
異議ナシ
○第二十二條 原案第三十九條
登記及公吿ス可キ事項左ノ如シ
一 合名會社ナル事
二 會社ノ業体
三 社名、所在地
四 各社員ノ氏名、住所
五 設立ノ年月日
六 存立期限ノ有無
七 業務擔當社員ヲ定メタルトキハ其氏名
（本尾委員）
第三十三條ニ代務者任免ノコトヲ規定セリ然ルニ其代務者ナルモノハ恰モ業務擔當者ト同シクシテ其代務者ノ所爲ニ依テ會社ハ權利義務ヲ得ヘキモノナレハ之ヲ登記公吿スルハ必要ナルヘシト信スルナリ
（岸本委員）
第三十三條ニ至テ之ヲ記入スヘキヤ否ヤヲ質問スヘシ若シ質問ノ上該條モ必要ナラストセハ之ヲ削除スルニ依リ本條ニモ亦之ヲ加ヘサルモ可ナリ或ハ代務者ノ規定ハ必要ナリトセハ其時ニ至リテ本條ニ加フルモ遲シトセス
（本尾委員）
該條ニ至リ質問ノ上決スルコトトスヘシ
本條ハ異議ナシ
○第二十三條 原案第四十條
前條ノ事項變更シタルトキハ亦其登記公吿ヲ受ク可シ
異議ナシ
○第二十四條 原案第四十一條
會社ハ登記公吿以前ニ開業スルコトヲ得ス違背スルトキハ裁判所ニ於テ其營業ヲ差止ム可シ
（本尾委員）
本法ニ裁判上ト記載スル所ハ總テ本條ノ如ク裁判所ト改ムヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク改ム
會社ハ登記公吿以前ニ開業スルコトヲ得ス之レニ違フトキハ裁判所ノ處分ヲ以テ其營業ヲ差止ムヘシ
○第二十五條 原案第四十二條
會社其登記ノ日ヨリ六ケ月間ニ開業セサルトキハ其登記公吿ハ無効ト爲ス
（鶴田委員）
「爲」ノ字ハ削ルヘシ（之ニ決ス）
本條ハ爲ノ字ヲ削リタルノミ
○第二節 社員間ノ權利義務
○第二十六條 原案第五十條
社員間ノ權利義務ハ本法及會社契約ニ依テ定マルモノトス
異議ナシ
于時第十二時中止
午後第一時開會
○第二十七條 原案第四十三條
會社契約ハ總社員同意ノ決議ニ非サレハ變更スルコトヲ得ス其同意ヲ得サルトキハ從前ノ契約ニ循フ可シ
（長森委員）
同意ノ決議ト第二十九條ノ承諾トハ別段異ナル所ナキカ如シ就テハ之ヲ同一ノ文例トセハ如何
（本尾委員）
目的上ニ付少シク異ナル所アリ故ニ其文字ヲ變シテ一ハ決議ヲ以テナスヘキナリト一ハ否ラサルモ差支ナキヲ示サンカ爲メニ前後ヲ異別セシモノナリ
本條ハ同意ノ決議トアルヲ「ノ承諾アルニ」ト改メ其同意ヲ得サルトキハトアルヲ「其承諾ナキトキハ」ト改ム
○第二十八條 原案第五十一條
會社契約ノ施行ニ關スル事項ハ社員ノ多數ニ依テ決ス可シ業務擔當社員ヲ定メタルトキハ其多數ニ依ル可シ
本條ハ多數ニ依テ決ス可シトアルヲ「決スルモノトス」ト改メ其多數ニ依ル可シトアルヲ「其擔當社員ノ多數ニ依テ決ス可シ」ト改ム
○第二十九條 原案第五十二條
會社ノ事業ヲ擴張シ其他會社契約ニ豫定セサル義務ヲ負擔ス可キ事項ハ總社員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ之レヲ爲スコトヲ得ス
異議ナシ
○第三十條 原案第五十三條
會社ノ業務ヲ施行シ其利益ヲ保衞スルニ就テハ各社員同等ノ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス但業務擔當社員ヲ定メタルトキハ此限ニ在ラス
本條ハ「就テハ」ノ下ニ「特約アルニアラサレハ」ノ數字ヲ加ヘ但書ヲ削除ス
○第三十一條 原案第五十三條
社員ノ議決權ハ其出資額ニ因テ等差ヲ立ルコトヲ得ス
異議ナシ
○第三十二條 原案第五十四條
業務ニ與カラサル社員ハ業務ノ實况ヲ監視シ會社ノ帳簿得其他ノ書類ヲ撿閱シ意見ヲ陳述スルコトヲ得
本條ハ「業務ニ與カラサル」トアルヲ「業務ヲ擔當セサル」ト改ム
○第三十三條 原案第五十五條
代務者ヲ任免スルノ權利ハ業務擔當社員ニ屬スルモノトス
（長森委員）
本條ハ社員中ハ勿論擔當社員ト雖モ任免スルノ權利アル旨ヲ定ムルモノナレ共原案少シク不明ナル廉ナシトセス一應質問セハ如何
（岸本委員）
然リ先ツ夫マテハ「擔當ノ任アル社員」トナシ置クヘシ（之ニ決ス）
○第三十四條 原案第五十六條
各社員ハ會社ノ業務ニ對シ正當ナル商人其業務ニ於ケルト齋シキ勉勵注意ヲ爲スノ義務アルモノトス其義務ヲ怠リ會社ニ損害ヲ生シタルトキハ之ヲ賠償セサル可ラス
○第三十五條 原案第五十五條
社員出資ヲ差入レタルトキハ契約ニ定メタル價格ヲ附シ之ヲ財產目錄ニ記入シ會社ノ所有ニ歸スルモノトス但單ニ利益配當標準ノ爲メ價格ヲ定メタルモノハ此限ニ在ラス
○第三十六條 原案第五十八條
收實權又ハ使用權ヲ出資ト爲シタルトキハ權權利ノミ會社ニ移轉スルモノトス
○第三十七條 原案第五十九條
前條ノ場合ニ於テ物件損亡シタルトキハ其所有權ノ損失ハ所有主ニ歸シ收實權又ハ使用權ノ損失ハ會社ニ歸スルモノトス
○第三十八條 原案第六十三條
社員契約ニ定メタル出資ヲ差入ルヽコト能ハサルトキハ總社員ノ承諾ヲ得テ他ノ出資ヲ差入ルニ非サレハ社員ノ資格ヲ失フモノトス
○第三十九條 原案第六十二條
社員契約ニ定メタル出資ヲ差入レサルトキハ會社ハ之ヲ除名シ又ハ相當ノ利息ヲ拂ハシメ尙ホ何レノ場合ニ於テモ損害ヲ賠償セシムルコトヲ得
○第四十條 原案第四十四條
社員ハ契約外ニ出資ヲ增加シ又ハ損失ニ由テ減少シタル出資ヲ補充スルノ義務ナキモノトス
○第四十一條 原案第四十五條
社員ハ總社員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ其出資又ハ會社資產中ノ持分ヲ減少スルコトヲ得ス
俱ニ異議ナシ
○第四十二條 原案第四十六條
社員ハ總社員ノ承諾ヲ得ルニ非サレハ新タニ他人ヲ入社セシメ又ハ其地位ヲ他人ニ移スコトヲ得ス然レトモ亡社員ノ相續人ハ反對ノ契約アルニ非サレハ其地位ヲ繼續スルコトヲ得
本條然レトモ以下ヲ左ノ如ク改ム
然レトモ反對ノ契約ナキトキハ相續人亡社員ノ地位ヲ繼續スルコトヲ得
○第四十三條 原案第四十七條仝 第四十八條
社員其持分ノミヲ他人ニ賣渡讓渡シ又ハ他人ト組合ヒ之ヲ共有スルモ會社ニ對シ其効ナキモノトス
○第四十四條 原案第六十四條
社員會社ノ爲メニ金圓ヲ立替タルトキハ相當ノ利息ヲ要求スルコトヲ得
社員業務取扱ノ爲メ直接ニ損害ヲ受ケタルトキハ會社ニ對シ其賠償ヲ要求スルコトヲ得
異議ナシ
○第四十五條 原案第六十五條
社員業務取扱上ノ勤勞ニ付キ特約アルニ非サレハ其報酬ヲ要求スルコトヲ得ス但勞力ヲ出資ト爲シタル者契約外ニ勞力ヲ供シタルトキハ之ヲ要求スルコトヲ得
本條ハ勞力ヲ供シタルトキハ之ヲ要求スルコトヲ得トアルヲ勞力ヲ供シタルトキハ其報酬ヲ要求スルコトヲ得ト改ム
○第四十六條 原案第六十六條
社員會社ノ爲ニ領收シタル金圓ヲ相當ノ時限內ニ會社ニ引渡サヽルトキハ會社ハ相當ノ利息ヲ拂ハシメ且損害ヲ賠償セシムルコトヲ得
○第四十七條 原案第六十七條
社員ハ總社員ノ承諾ヲ得スシテ別ニ會社ノ營業ト同種ノ取引ヲ爲シ又ハ之レニ參與スルコトヲ得ス
前項ノ規定ニ背キタルトキハ會社ハ其社員ヲ除名シ又ハ其取引ヲ會社ニ引受ケ尙ホ何レノ場合ニ於テモ損害ヲ賠償セシムルコトヲ得
○第四十八條 原案第六十八條
會社ノ損益ヲ共分スル割合ハ特約アルニ非レハ各社員出資ノ價額ニ準ス可シ
異議ナシ
○第四十九條 原案第七十一條
社員會社ニ對シ詐僞ヲ行ヒ或ハ業務ニ與カラサル者ニシテ業務擔當ノ所爲ヲ行ヒ其他甚シク主要ノ義務ヲ欠キタルトキハ會社ハ之ヲ除名シ且損害ヲ賠償セシムルコトヲ得
本條ハ業務ニ與カラサル者トアルヲ業務ヲ擔當セサル者ト改メ「甚シク」ノ三字ヲ削除ス
○第五十條 原案第七十二條
社員本法ノ規定又ハ會社契約ニ據リ會社ノ爲メニ執行シタル事件ハ各社員ニ於テ之ヲ承認セサル可ラス
異議ナシ
○第三節 社外ニ對スル權利義務
○第五十一條 原案第七十五條
會社ハ業務施行ノ權アル社員會社ノ爲ニ爲シタル事件ニ付直接ニ權利ヲ有シ義務ヲ負フモノトス
本條施行ノ權トアルヲ擔當ノ任ト改ム以下數條ニ施行ノ權アルト記スルモノハ總テ擔當ノ任アル社員ト改ム
○第五十二條 原案第七十三條
會社ノ權利ハ業務施行ノ權アル社員之ヲ執行スルコトヲ得
施行ノ權トアルヲ擔當ノ任ト改ム
○第五十三條 原案第七十四條
會社ノ義務ハ權利者ヨリ業務施行ノ權アル社員ニ對シ之ヲ履行セシムルコトヲ得
前條ト同シク施行ノ權ヲ擔當ノ任ト改ム
○第五十四條 原案第七十六條
業務擔當ノ任アル社員ノ權ニ制限ヲ立ルモ其制限ハ社外人ニ對シ無効トス
本條モ前條ト同シク之ヲ改ム且權ノ下ニ利ノ字ヲ加フ
○第五十五條 原案第七十七條
會社ノ負債ニ對シテハ先ツ會社ノ財產ヲ以テ之ニ充テ次テ社員ノ財產ヲ以テ之ニ充ルモノトス
異議ナシ
○第五十六條 原案第七十八條
社員ニアラスシテ其氏名ヲ社名ニ表シ又ハ事實社員タルノ權利義務ヲ有スル者ハ社員ト均シク連帶無限ノ責任ヲ負フモノトス
本條權利義務ヲ有スルモノトアルヲ事實アル者ト改ム
○第五十七條 原案第八十條
新ニ加入スル社員ハ特約アルニ非サレハ其加入前ニ生シタル會社ノ負債ニ對シ責任ヲ負ハサルヘカラス
本條ハ責任ヲ負ハサルヘカラストアルヲ責任ヲ負フモノトスト改ム
○第五十八條 原案第八十二條
會社財產ニ屬スル物件ハ社員ノ債主ノ要求ニ充ルコトヲ得ス但差入前ニ於テ其物件ニ付既得ノ權利アル者ニ對シテハ此限ニアラス
○第五十九條 原案第八十三條
社員ノ受取ル可キ利息又ハ利益配當高ハ社員ノ債主ヨリ會社ニ對シ之ヲ要求スルコトヲ得其持分ヲ要求スルヲ得ルハ社員ノ退社若クハ會社解散ノ場合ニ限ル可シ
○第六十條 原案第八十四條
會社ニ對スル借分ト社員ニ對スル貸分ト又會社ニ對スル貸分ト社員ニ對スル借分ト差引ヲ爲スコトヲ得ス
○第六十一條 原案第八十五條
社員ノ持分ヲ減少シタル爲メ會社ノ債主ニ於テ會社ノ財產ヨリ其要求ヲ完フスル能ハサルトキハ減少ノ日ヨリ一年以內ハ之ニ對シ異議ヲ申述フルコトヲ得
異議ナシ
于時第四時閉會