○第三讀會第一回
明治十九年三月二日
午後第一時開會
商社法
第一章 總則
○第一條 原案第一條
商事會社ハ共同シテ商業ヲ營ム爲メ設立スルモノトス
異議ナシ
○第二條 原案第一條
法律規則ニ背戾スル事業ヲ目的トスル會社ハ初メヨリ無效トス
公安又ハ風俗ヲ害スヘキ營業ヲ爲ス會社ハ裁判所ノ處分ヲ以テ解散セシムルコトヲ得
（鶴田委員）
「效」ハ總テ「効」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
○第三條 原案第十一條
法律規則ニ依リ官許ヲ受ク可キ營業ヲ爲サソトスル會社ハ其官許ヲ得ルニ非レハ之ヲ設立スルコトヲ得ス
（細川委員）
「非レハ」ハ總テ「非サレハ」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
（岸本委員）
「株式會社及ヒ官許ヲ受クヘキ營業ヲ爲サントスル會社ハ」トセハ如何
○第四條 新設
會社ハ登記公吿ヲ受クルニ非サレハ社外ニ對シ法律上ノ效ナキモノトス
異議ナシ
○第五條 原案第十二條
會社ハ社名ヲ設ケ社印ヲ製シ住所ヲ定ム可シ
社名ハ社店ノ前面ニ揭示ス可シ
（長森委員）
第二項ハ削除セハ如何
（本尾委員）
本條ノ原案ニハ社名ハ一地方內ニ於テ同一ナルコトヲ得ストアリシヲ修正案ニハ株式會社ノ社名ハ全國同名ナルヲ得ストセシカロエスレル氏ハ之ヲ原案ノ如ク爲シ度シト述ヘタリ否ラサレハ每ニ農商務省ニ願出ルカ如キ實ニ煩雜ヲ免レサレハナリト
○第一項ハ「住所」ヲ「所在地」ニ改ム
第二項左ノ如ク新設ス
「社名ハ登記ヲ受クヘキ裁判所管轄內ニ於テ他ノ會社ノ社名ト同一ナル可ラス」
第三項（原案第二項）
第十九條ノ第二項ヲ削除ス
○第六條 原案第十三條
社印ニハ社名ヲ彫刻シ其印鑑一枚ヲ第十一條ニ揭ケタル登記官吏ニ差出ス可シ社印ヲ改正又ハ改刻スルトキモ亦此手續ヲ爲ス可シ
（鶴田委員）
「一枚」ヲ削リ「改正」ヲ「變更」ニ改ムヘシ（之ニ決ス）
○第七條 原案第十四條
社名及社印ハ總テ官廳ニ宛テタル文書並ニ報吿、株劵、手形、其他總テ會社ニ於テ權利ヲ有シ義務ヲ負フ可キ各種ノ書類ニ用ユ可シ
（岸本委員）
最初ニ在ル「總テ」ノ二字ヲ削ルヘシ（之ニ決ス）
○第八條 原案第十五條
會社ハ獨立シテ自己ノ財產ヲ所有シ其名義ヲ以テ權利ヲ有シ義務ヲ負ヒ又原吿被吿ト爲ルモノトス
會社通常ノ裁判管轄ハ其住所ヲ管轄スル裁判所ニ屬スルモノトス
（長森委員）
「通常」ノ二字ヲ削リ「住所」ヲ「所在地」ト爲スヘシ（之ニ決ス）
○第九條 原案第二十五條
會社ハ帳簿ヲ備ヘ其商業及財產ノ現狀ヲ明知シ得ヘキ記載ヲ爲スノ義務アルモノトス又開業ノ時及每年度初ノ三ケ月內ニ總財產ノ目錄並ニ貸方借方ノ對照表ヲ製シ共ニ之ヲ別册ノ帳簿ニ記入ス可シ
四季又ハ每半年ニ利足又ハ益金ヲ社員ニ配當スル會社ハ每半年ニ財產目錄及貸借對照表ヲ製シ前項ノ規定ヲ履行ス可シ
（本尾委員）
三ケ月內トアルハ不都合ナリ何トナレハ株式會社ハ通常總會ハ定款ニ定メタル期限ニ開クヘシトアルニ依リ本條ヲ適用スルトキハ爲メニ總會ヲ開クノ期ヲ遲延セシムルコトナシトセサレハナリ
（長森委員）
本條ノ適用ハ合名會社ノミナリ何トナレハ合資會社ハ第九十一條株式會社ハ第百五十九條ニ各々規定アレハナリ故ニ之ヲ合名會社ニ規定シ玆ニハ之ヲ削除セハ如何
○「初ノ三ケ月內ニ」ヲ「ノ終リニ於テ」ニ「之ヲ別册ノ」ヲ「之レカ爲メニ設タル」ニ改ム
○第十條 原案第二十六條
帳簿ハ其記載ノ終尾ヨリ十年間保存シ亡失毀損セサル爲メ注意ヲ加フ可シ
異議ナシ
○第十一條 原案第二十七條
本法ニ規定シタル登錄簿ノ登記ハ會社ハ管轄スル始審裁判所ノ登記官吏ニ於テ取扱フモノトス
異議ナシ
○第十二條 原案第二十八條
登記ヲ受ク可キ事項ハ會社ノ當務者又ハ其代理人書面ヲ以テ之ヲ屆出且之ニ必要ノ證據書類ヲ添フ可シ
異論ナシ
○第十三條 原案第三十條仝 第三十一條
登記官吏前條ノ屆出ヲ適法ト認ムルトキハ速ニ之ヲ登錄簿ニ登記シ且其要旨ヲ拔萃シテ屆出ノ日ヨリ五日內ニ公吿ス可シ
（本尾委員）
要旨ヲ拔萃トアレトモ各會社ノ部ニ其要旨ヲ規定シアリテ登記官吏ノ隨意ニ拔萃スヘキモノニアラサレハ拔萃シテノ四字ヲ削ルヲ可トス
○登記シ以下左ノ如ク修正ス
登記シ且屆出ノ日ヨリ五日內ニ其要旨ヲ公吿ス可シ
○第十四條 原案第三十二條
公吿ノ方法及登記公吿ノ費用ハ布達ヲ以テ定ムルモノトス
○「布達」ヲ「省令」ニ改ム
○第十五條 原案第三十四條
登錄簿ハ何人ニテモ之ヲ展閱スルコトヲ得謄寫ヲ請フ者ハ手數料ヲ納ム可シ
（岸本委員）
謄寫以下ヲ削リ閱者ノ自ラ謄寫スルハ差支ナキコトト爲スヘシ否ラサレハ前條ト同シク手數料ノ額ヲ定メサルヘカラサレハナリ
○「謄寫云々納ム」ヲ削ル
○第十六條 原案第三十四條
登記及公吿シタル事項ハ之ヲ知ラサルヲ以テ其義務ヲ免ルヽコトヲ得ス
（本尾委員）
本條ニ依レハ自己ノ過失ニアラスシテ之ヲ知ルニ由シナカリシ者ト雖モ義務ヲ免ルヽコトヲ得サルカ如ク見ユルノ恐レアリ就テハ之ヲ追補セハ如何
○事項ハノ下ニ「己レノ過失ナキコトヲ證明スルニ非サレハ」ヲ追加ス
○第十七條 原案第二十九條
登記事件ニ付登記官吏ニ對スル爭訟ハ始審裁判所ノ判決ヲ以テ終審トス
○「付登記官吏ニ對スル」ヲ「係ル」ニ改ム
于時午後第四時三十分散會