○第二讀會第五十四回
明治十九年二月十六日
欠席 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
午前開會
（委員長）
再修正ハ如何
（長森委員）
前回ニ於テ修正ニ決シタレトモ尙修正委員ニ於テ討議セシニ再ヒ修正スルモ差テ好案モナク又修正セサルモ差支ナキヲ見レハ再議ヲ請フコトニ決議シ本日尙先案ヲ呈出セリ
（本尾委員）
解散ノ節決議ノ件ニ付先回決議セラレタル亷アリシ由ナレトモ一體原案ニ記スル所ノ決議トハ我邦ニ於テ用ユル所ノ決議ノ性質トハ大ニ其趣ヲ異ニシ敢テ可否ヲ決議スルノ旨趣ニアラス故ニ之ヲ決議ト譯スルハ少シク其當ヲ得サレトモ他ニ好文字ナキヲ以テ此文字ヲ用ヒシナリ或ハ又第百七十四條ノ一項ヨリ四項迄ハ決議ノ法ヲ用ユルモ强テ不都合モナカルヘシト雖モ第五六項ニ至リテハ若シ決議法ヲ用ヒテ否ト決セハ如何スル實ニ不都合ノ次第ナラスヤ已ニ第五項第六項ノ件ハ決議ニ換ハルヘキモノニシテ更ニ又決議スルト云フニアラス且原案ノ精神モ定式ニ基キテ設ケタルニ過キスシテ必スシモ可否決ヲ取ルト云フノ意ニハアラサルヘシ又第百七十四條ノ初項ニ解散スルモノトストアリテ斷然本條ノ諸項ニ當ルトキハ解散セサルヘカラサルモノナルニ依リ强テ決議ノ文字ヲ用ヒサルモ不可ナカランカ
（長森委員）
創業總會ニ於テモ之ヲ決議トハ云ヘ實ハ之カ認定ヲ受クルニ過キサルナリ然ラハ解散ノ決議ヲ受クヘシト原案ニアルモ矢張精神ハ認定ヲ受クルニ過キサルヘシ然ラハ之ヲ報吿ト爲スモ原案ノ精神ハ毫モ損セサルナリ
（委員長）
解散ハ會社ニ在テハ尤モ重大ナル事件ニシテ役員ノ一己ノ意見ヲ以テ爲スヘキノ事ニアラス假令ハ一國ヲ覆沒スルト等シク其關係スル所獨リ役員ノミナランヤ必ス之レカ爲メニ利害ヲ直接ニ蒙ムル株主ノ議ヲ取リテ後解散スルモノトス如何トナレハ重大事件ニシテ役員ノ委託セラレタル事件外ノモノナレハナリ
（本尾委員）
解散ノ場合ニ至テハ一應ハ株主ニ報吿スヘシト雖モ如此場合ニ際シテハ解散シテ結算ヲ了スヘキヤ否ノ決議アルヘシトハ取締役ニ於テ求メサルヘシ之ヲ一國ニ例フルニ若シ憲法ニ定メタル解散ノ事由生シタルトキハ大統領之ヲ國會ニ報吿スルハ勿論ナリト雖モ其國會ハ之ヲ否ト決議スルモ詮ナキモノトス
（鶴田委員）
先回ニ於テハ解散スヘキモノト解釋シタルニ依リ恰モ人ノ死去シタルヤ否ヤヲ詳カニセサルニ依リ更ニ總會ノ決議ニ依テ醫者ノ診斷ヲ受ケ而シテ後生死ヲ判ルモノト思意シタリ然ルニ當然解散スルモノト解スル方實ニ穩當ナリトス如何トナレハ既ニ死去シタルモノト爲シタルモノナレハ總會ノ決議卽チ醫者ノ診斷ヲ受クルモ亦詮ナキ道理ナレハナリ
（細川委員）
本員ハ鶴田委員ノ解釋トハ少シク相違セリ此場合ハ已ニ會社ハ死シタルニ相違ナキモ一應醫者ヲ迎ヘテ診察ヲ受ケ始メテ死去ノコトヲ確定スヘキモノニシテ止タ其手續ヲ盡スニ過キサレトモ又始メ決議ニ依テ成立タルモノナレハ終リモ亦之ニ倣ヒ其手續ヲ盡シテ後止ムノ精神ナラスヤ然レトモ之ヲ要スルニ原案ト云ヒ修正案ト云ヒ皆相當ノ理由ヲ在スルナリ當然解散シタルモノ卽チ死去シタルモノト爲スニ依リ會社ノ親族ナル總會ニ報吿シ其親族ト葬式ノ相談卽結算ヲ爲スノ手續ヲ爲スヲ以テ充分ナリト思意スレハ其意味ヲ以テ修正セハ如何
（委員長）
第百七十六條ニ事情ヲ報吿セシトアレトモ報吿ノミニテハ充分ナラス然レトモ又之ヲ決議セシムルニモ及ハス止タ之ヲ株主ニ納得セシムルノ方法ヲ設クルヲ以テ可トス
（岸本委員）
第百七十四條ノ事項ハ恰モ天災ト等シク救フヘカラサルモノニシテ已ニ發生シタル以上ハ決議スルモ詮ナキモノトス元來會社ハ法律上ノ定メニ依リテ無形人トナリタルモノナレハ亦法律ノ定メニ因リ當然消滅ニ至ル何ソ怪ムニ足ランヤ然ルニ消滅ノ場合ニ限リ株主ノ決議ヲ要スルトスルハ前後理由ノ相照應セサルモノト云ハサルヘカラス
（委員長）
然リト雖モ第五項ノ場合ニテ裁判上ノ處分ヲ受ケタルモノハ取締役ニシテ株主タルモノハ未タ毫モ之ヲ知ラサルナリ會社ニ對スル權利ハ役員モ株主モ同一ナレハ獨リ役員ノ意見ニ之ヲ任セ株主ノ意見ヲ徵セサルハ甚タ不可ナリ已ニ精神ナキ場合ト雖モ手續上ナレハ致方ナカルヘシ
（本尾委員）
一體解散ノ場合ハ隨分困難ナル所ナキニアラス就中決議ノ精神ニ至テ意味ノ解釋上二種々アレハ一應ロエスレル氏ニ質疑シテ決定スルトセハ如何
（鶴田委員）
一應質疑ノ上決議ノ文字ヲ換ユルカ或ハ其主義ヲ改メハ如何或ハ第百七十六條ノ場合ハ（解散處分ヲ議決スヘシ）トノ意味ヲ以テスルモ不可ナカルヘシ
（本尾委員）
「解散處分」トセハ如何ナル意味ト爲スノ意ナリヤ或ハ解散事務ナルヤ又ハ解散ノ仕方ヲ極ムルノ意ナリヤ
（委員長）
解散ヲ極ムルノ仕方ト爲セハ可ナリ事情ヲ報吿シ又ハ決議スルコトハ獨法ニナキヲ以テ寧ロ之ヲ削リタレハ如何
第百七十四條第百七十五條第百七十六條ハ質議ノ上修正ニ決ス
○第十二節 取締役及檢査役ニ對スル訴訟
○第百七十一條 原案第二百三十條
總會ハ特ニ選任シタル代理委員ヲ以テ取締役又ハ檢査役ニ係ル訴訟ニ付原吿又ハ被吿ト爲ルコトヲ得
○第百七十二條 原案第二百三十一條
會社資本ノ少クトモ二十分一ニ當ル株主ハ亦特ニ選任シタル代理委員ヲ以テ取締役又ハ檢査役ニ係ル訴訟ノ原吿又ハ被吿ト爲ルコトヲ得
○第百七十三條 原案第二百三十一條
株主各自ノ名ヲ以テ原吿被吿ト爲リ又ハ間吿ト爲ルノ權利ハ前二條ノ爲メニ妨ケラルヽコトナシ
（本尾委員）
第百七十三條ノ精神ハ役員ト株主トノ間ニ間吿人トナリ又ハ役員ト社外人トノ爭論ニ間吿人トナルモ差支ナシ故ニ第百七十一條ニモ關係スルモノトス併シ實際ニ於テハ一方ニハ代理委員ヲ任スルトキハ一方ニ間吿人トナリ訴ヲ起スカ如キハ先稀少ナリト云フモ不可ナシ
午前第十二時中止
午後開會
（岸本委員）
第百七十五條ノ法則ハ必用ナリトセス如何トナレハ二十分一ニ當ル株主連合シテ訴訟ヲ爲ストアリ然ラハ二十分一以下ノ株主ニ在テハ連合シテ訴ヲ爲スヲ得サルカ否決シテ然ラス訴訟法ノ原則ヨリ論スルトキハ二名以上連合シテ訴ヲ爲スコトヲ得テ二十分一以上以下ヲ論セサレハナリ佛法ニ於テハ共通ノ利益トアリ然ルニ本條ニハ此精神アリト見ルヲ得ス要スルニ本條ナキモ當然爲シ得ヘキモノナレハ削除スルヲ可トス
（細川委員）
普通法ヨリ論スルトキハ二人三人ノ組合中其內ノ壹人ヲ以テ訴ヘヲ爲スニ於テハ毫モ差支ナキモノナレトモ本案故ラニ二十分一トセシハ是等ノ場合ヲ禁スルノ意味ナルヤ
（本尾委員）
一兩人ニテ取締役ヲ相手取リ訴フルヲ得ルハ無論ナレトモ其際ハ株主銘々ノ名ヲ以テセサルヘカラス然レトモ二十分一ノ株主ナルトキハ代理ヲ以テ訴フルコトヲ得ヘシ尤モ委任狀ニハ一々自己ノ名ヲ記セサルヘカラス要スルニ本條ノ主旨トスル所ハ一人ニテモ二十人ニテモ訴ヲ爲スハ同一ナレトモ銘々委任狀ヲ渡スト一紙ニ之ヲ列記シテ渡ストノ意ナルアルノミ
（細川委員）
第百七十三條ノ第百七十一條ニ關係スル場合ハ如何
（本尾委員）
假令ハ總會ノトキ決議ノ不服ナリシトキ又ハ役員ノ處爲ヲ是トシ之ヲ助クルノ亷ヲ以テ間吿人トナルコトナシトセス是等ノ場合アルヲ以テ第百七十一條モ關係スルナリ
○第百七十一條ヨリ三條迄質問スルコトニ決ス
○第百七十七條 原案第二百三十四條同第二百三十九條同第二百四十二條
決算人ノ定マリタルトキハ會社ハ速ニ解散ノ事由、年月日及其氏名住所ノ登記公吿ヲ受ク可ク又其事項ヲ始審裁判所ニ届出可シ
○本條ハ及ノ下「其」ノ字ヲ削リ「結算人ノ」ノ四字ヲ加フ
○第百七十八條 原案第二百四十二條
始審裁判所ハ會社ノ解散及決算ノ實況ヲ監視スルノ權アルモノトス
（本尾委員）
原案ニハ本條ノ場合ハ結算ニモ別揭アレトモ同一ノ事件ナレハ本條ニ結算ノ文字ヲ加ヘテ結算ノ條中ニハ之ヲ削除スルノ見込ナリ
○呈案ニ決ス
○第百七十九條 原案第二百四十條
第百七十七條ノ登記公吿ヲ受タルトキハ取締役ノ代表權ハ結算人ニ移ルモノトス然レトモ結算人ノ請求アルトキハ取締役ハ結算事務ヲ補助スルノ義務アルモノトス
（本尾委員）
原案ニ異ナラス
○呈案ニ決ス
○第百八十條 原案第二百四十三條
登記公吿ノ後ニ於テハ株式ノ移轉及結算ノ爲ニ非スシテ爲シタル財產ノ處分ハ總テ無効ト爲ス但特別ノ理由アリテ始審裁勤所ノ許可ヲ得タルモノハ此限ニ在ラス
（本尾委員）
原案ニ異ナラス
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百八十條 登記公吿ノ後ニ於テハ株式ノ賣買讓與、及結算ノ爲ニ非ル財產ノ處分ハ總テ無効トス但特別ノ理由アリテ始審裁判所ノ許可ヲ得タルモノハ此限ニ在ラス
○第百八十一條 原案第二百三十五條
取締役總會ノ招集又ハ登記公吿ヲ怠リ之カ爲メ會社又ハ社外人ニ蒙ラシメタル損害ニ對シ自己ノ全財產ヲ以テ其責任ヲ負フモノトス
（本尾委員）
原案ニ異ナラス
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百八十一條 取締役總會ノ招集又ハ登記公吿ヲ怠リ之レカ爲メ會社又ハ社外人ニ損害ヲ蒙ラシメタルトキハ之ニ對シ自己ノ全財產ヲ以テ其責任ヲ負フモノトス
○第百八十二條 原案第二百四十一條
解散及結算ノ費用ハ他ノ支拂ニ先チ現在ノ會社財產ヨリ支出ス可シ
（本尾委員）
原案ニ異ナラス
（岸本委員）
國稅及都テノ稅金ハ如何
（本尾委員）
第一ニ支拂フノ精神ナリ
○本條ハ「現在ノ」三字ヲ削除シタルノミ
○第百四十三條 原案第百九十二條
定款ノ變更及期限前其他任意ノ會社ノ解散ハ第百五條ノ決議ノ方法ニ依ル可シ
○本條ハ左ノ如ク改メラレタリ
第百四十三條 定款ノ變更及任意ノ解散ハ第百五條ノ決議ノ方法ニ依ル可シ
于時四時退散