○第二讀會第四十八回
明治十九年一月廿六日
欠席 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
午前
○第七節 總會
○第百三十八條 原案第百八十七條
總會ハ取締役檢査役其他本法ニ於テ其權利ヲ有スル者之ヲ招集ス可シ
（本尾委員）
本條ノ精神ハ原案ニ異ナルコトナシ尤本案ニハ招集ノ權利ヲ有スルモノトセシハ文字ノ穩カナラサル所アレトモ發起人精算人等一々其權利アルモノヲ揭クルモ亦不可ナキニアラサレハ矢張原案ニ從テ其權利ヲ有スルモノト爲シタリ
又本條ニ招集トナストキハ第百四條ト文字上ニ付少シク矛盾セリ何トナレハ第百四條ニハ總會ヲ開クヘシトアリ同一ノ事柄ニシテ文字ヲ異ニスルハ聊カ不都合アルノミナラス亦彼レニ於テハ招集ノ上總會ヲ開クヘキノ惑ヲ生スルナシトセス故ニ本條ト同一ノ文體ヲ用ユルヲ可トスルカ如シ
○第百四條ノ修正ハ一應呈出アレトモ後ニ至リ更ニ修正委員ニ於テ修正呈出ノコトニ決ス故ニ此ニ略ス
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百三十八條 總會ハ取締役檢査役其他本法ニ於テ招集ノ權利ヲ有スル者之ヲ招集ス可シ
退席岸本委員
○第百三十九條 原案第百八十八條
總會ヲ開クニハ開會ヨリ少クトモ十四日以前ニ定款ニ定メタル方法ニ從ヒ其議事ノ要旨ヲ各株主ニ通知ス可シ
第百四條ノ創業總會ヲ開クトキニ於テモ亦本條ノ規定ヲ適用ス可シ
（本尾委員）
本條ハ合名會社ノ部則第八十九條ノ文例ニ倣ヒ之ヲ修正シタリ
合資會社ニ於テハ開會ノ前ニ當テ議案ヲ送付スルコトニ定メタリ然レトモ株式會社ハ議案ヲ一々送付スルハ事繁雜ニ屬シ容易ニ言フヘクシテ行フニ困難ナル次第ナレハ止タ其議案ノ要旨ヲ通知シ總會ノ席ニ於テ議事ノ總體ヲ陳辯スルコトトセリ併シ原案ノ精神ニハ毫モ異ナルコトナシ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百三十九條 總會ヲ招集スルニハ開會ヨリ少ナクトモ十四日以前ニ定款ニ定メタル方法ニ從ヒ其議事ノ要旨ヲ各株主ニ通知ス可シ
創業總會ヲ招集スルトキニ於テモ亦本條ノ規定ヲ適用ス可シ
○第百四十條 原案第百八十九條
通常總會ハ每年一回以上定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ開キ前期ノ計算書、對照表、事務報吿書及分配金配當案ヲ株主ニ呈示シ其認定ノ決ヲ取ルモノトス
檢査役ノ意見書ハ取締役ノ提出スル書類ト共ニ之ヲ各株主ニ呈示ス可シ
（本尾委員）
本條モ亦原案ニ異ナルナシ文例〉合會資社ノ規定ニ倣ヒ比較ヲ對照トシ業務ノ結果ヲ事業報吿トシ總會ノ決議トアルヲ認定ノ決ヲ取ルモノトスト爲セリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百四十條 通常總會ハ每年少ナクトモ一回定款ニ定メタル時期ニ於テ之ヲ開キ取締役前期ノ計算書、貸借對照表事業報吿書及分配金配當案ヲ株主ニ呈示シ其認定ヲ受ク可シ
第二項ハ「各」ノ字ヲ削リタルノ外呈案ノ通リ
○第八十八條及第八十九條ニ左ノ修正ヲ加ヘタリ
兩條俱ニ抽總會ヲ開クヘシトアルヲ「招集ス可シ」ト改ム
于時十二時ナルヲ以テ中止
午後零時三十分開會
○第百四十一條 原案第百九十條
臨時總會ハ臨時ノ事件ヲ議スル爲メ何時ニテモ之ヲ招集スルコトヲ得
總株金五分一以上ニ當ル株主ノ請求アルトキハ亦臨時總會ヲ招集セサル可カラス
出席岸本委員
（本尾委員）
本條 原案ヲ第百八十七條ニ記載シタル者トハ修正案ノ第百三十八條ニ當ル第一項ハ臨時總會ノ性質ヲ說明シタルナリ而シテ何人ノ之ヲ招集スルヤヲ云ハサルモ第百三十八條ニ記載スル所ノ者之ヲ招集スルハ勿論ナリトス
第二項ニハ原案記載スル所ノ事由云々ヲ揭ケサルモ實際ニ至テハ其招集ヲ乞フノ理由ヲ陳述スルハ言ヲ竢タス然レトモ此ニ事由ヲ擧テト記載スルトキハ取締役ニ於テ其事由タル招集スルノ理由ナシトスルトキハ必ス其請求ニ應シテ開會スルコトナカルヘシ斯ル場合ニ至ルトキハ株主ト取締役ノ間ハ勿論實際上常ニ不都合アルヲ免カレサレハ修正案ニ於テハ此文字ヲ削除シ株主ノ請求アルトキハ理由ノ如何ヲ問ハス開會セサルヘカラサルコトトナセリ
（岸本委員）
一方ヨリ考察ヲ下タストキハ株主ト取締役ト意見ヲ異ニスルトキハ屢々臨時總會ヲ請求スルニ至ルヘシ故ニ充分ノ理由アルモノニ限リ開會スルコトトシ事由ヲ擧ケ申立ツヘキ旨ヲ明記スルコト實際上甚タ至當ナルカ如シ
（本尾委員）
事由ヲ擧クヘシトスルトキハ取締役ニ於テ其事由ヲ充分ナラスト認ムルトキハ之ヲ開カサルヘシ又此ニ事由云々ヲ記載セサルモ取締役ニ於テ株主ニ發スル招集狀ニハ議事ノ要旨ヲ記入セサルヘカラサレハ實際其要旨ハ陳述スヘシ若シ其要旨ヲモ陳述セサルトキハ招集狀ハ之ヲ發スルコトヲ得ス故ニ法文ニ事由云々ヲ揭ケサルモ實際ニ至テハ甚シキ不都合アルヲ見ス
（岸本委員）
原案事由ヲ擧ケテトアルノ精神タルヤ株主ノ申立ニ對シ取締役ニ於テ其申立ハ理由ナキモノト認メ之ヲ拒ムトキハ總會ヲ開カシムルコトヲ得ス然レトモ株主ハ總會ヲ開クノ理由アリトシ其事由ノ正當ナルヤ否ヤニ就キ必ス雙方ノ間ニ議論ノ相合ハサル所アルヘシ此際ニ當テハ裁判所ニ訴ヘ其事由ノ正當ナルヤ否ニ就キ判決ヲ受ケシムルモノナルヘシ敢テ株主ノ請求每ニ取締役ハ之ヲ開クノ精神ニハアラサルヘシ否ラサレハ無益ノ事由ヲ以テ開會ヲ請求スルモ亦應セサルヘカラサレハナリ
（本尾委員）
裁判所ニ訴ヘ事由ノ正否ヲ爭フノ精神ニハアラサルナリ
（鶴田委員）
然リ裁判所ニ正否ヲ爭フノ精神ニハアラサルヘシ若シ其精神ナリトセハ其事ヲ示サヽルヘカラス
本條ノ精神ハ取締役ニ於テ不當ナリトスルトキハ此事ニ關シ總會ヲ開キテ其是非曲直ヲ衆議ニ間フノ主意ナラン
（本尾委員）
否總會ヲ開クノ權利ニ係ハルモノナレハ之レカ爲メニ總會ヲ開クノ精神ニハアラサルナリ
（委員長）
事由ヲ擧ケテトハロエスレル氏ノ意見ニテハ重キ意味ヲ以テ記セシヤ或ハ極メテ輕キ意味ヲ以テ記セシヤ一應之ヲ質問シテ後チニ決スルコトトセン
○本條ハ質問ノ上ニ修正スルコトニ決ス
○第百四十二條 原案第百九十一條
總會決議ノ方法ハ本法ニ於テ規定アルモノニ外定款ノ定ムル所ニ從フ可シ定款ニ其定メナキトキハ總株金四分一以上ニ當ル株主ノ出席シタル過半數ノ決議ニ依ル可シ
（本尾委員）
本條ハ原案ニ異ナラス併シ決議ノ過半數ニ依ルトセシハ原集第石九十三條ノ文意ヲ取リシナワ故ニ本條ハ原案第百九十一條ト第百九十三條トヲ合併シテ一ケ條トナセリ
（細川委員）
議長モ元來株主ナレハ決議ノ數ニ入ルモノナルヤ又ハ半數ニ分カレタルトキ之ヲ決スルノ權アルノミナルヤ
（本尾委員）
定款ニ於テ之ヲ定ムヘシ
（委員長）
原案ニ依レハ代理者ヲ出スモ差支ナキカ如シ
（本尾委員）
然リ修正案ニハ之ヲ記セサルモ代理者ヲ出スヲ得ルハ勿論ナリトス何トナレハ法律ニ禁セサル以上ハ代理ヲ出スコトヲ得ヘシトハ普通ノ原則ナレハナリ
（鶴田委員）
本條ニ過半數トアリ然ラハ出席人員ノ過半數ト總株金四分一以上ニ當ルモノトヲ要スルヤ
（本尾委員）
否金額ニ關セス人員ノミニ關スルノ意ナリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百四十二條 總會決議ノ方法ハ本法ニ於テ規定アルモノヽ外定款ノ定ムル所ニ從フ可シ定款ニ其定メナキトキハ總株金四分一以上ニ當ル株主出席ノ上其議決權ノ過半數ノ決議ニ依ル可シ
○第百四十三條 原案第百九十二條
定款ノ變更及期限前ノ會社ノ解散ハ第百五條ノ決議ノ方法ニ依ル可シ
（本尾委員）
本條ハ原案ト異ニセリ其理由ニアリ
第一決議ノ方法
決議ノ方法ハ原案ニ於テハ四種アリ則第百九十二條第百九十一條及頭取取締役ノ撰擧方法等是レナリ實ニ雜煩ヲ極ムルニ依リ本案ニ於テハ之ヲ二種ト改メタシ故ニ第百四條ノ場合ノ議事ハ第百五條ノ總株主ニ分一以上ニシテ株金ニ分一以上ニ當ル者過半數ノ決議ヲ以テ之ヲ決定シ第百九十一二條ノ如キハ四分三以上ニシテ決議スルコトヲ得ルモノトナス然レトモ四分三トスルトキハ假令ハ百人ノ出席ニシテ七十五名以上ノ同意ヲ得サレハ之ヲ可決スルコトヲ得ス付テハ或ハ一回ヲ以テ議了スルコト能ハスシテ瘻々之ヲ開キ畤日ヲ遷延スルノ恐レナシトセス故ニ主義ヲ變シテ過半數ヲ以テ議決スルコトトナシ本條定款變更ノ如キモ亦之ニ依テ決スルトセハ如何トノ說モアリシ
第百四條ニテ定款ヲ確定スルトハ議事ニアラス而シテ本條ニ至テ「ハ定款ノ確定ニアラスシテ變更スルニ係ル故ニ定款確定ノ決議ト變更ノ決議トハ之ヲ同一ノ方法ニ附スルコトトナシタリ蓋シ前後相照應スルヲ以テ充分ナリトス依テ第百五條ヲ過半數ヲ以テ決スルコトトシ左案ノ如ク修正セハ決議方法モ大ニ簡略トナリ事實ニ大ニ都合宜カルヘシ其修正ハ左ノ如シ
第百五條 創業總會ノ議事ハ株主總員二分ノ一以上ニシテ資本總額二分ノ一以上ヲ引受クル者ノ出席シタル過半數ニ決ス可シ第二原案數項ノ列記ヲ變更シタルコト
第一二三四項ノ如キハ定款中ノ重ナル部分ヲ揭ケタルモノニシテ第五項ハ其他定款ノ變更トスルノ意味ナルヲ以テ定款ノ變更トスルモ不可ナカルヘシ依テ修正委員ニ於テハ之ヲ改メテ定款ト爲セリ蓋シ精神ニ於テハ異ナルコトナシ
○本條ハ修正案ニ決ス
○第百四十四條 原案第百九十五條
株主ノ議決權ハ一株每一ニ個トス但十株以上ヲ有スル株主ノ議決權ハ定款ニ於テ制限ヲ立ルコトヲ得
（本尾委員）
本條ハ原案ト異ナルコトナシ
原案第百九十三條ハ先ニ合併シタルヲ以テ之ヲ削除ツタリ
原案第百九十四條ハ適則ニ招集シタル定款及本法ニ背キ決議シタル場合ヲ云フ委員ニ於テハ此等ノ如キハ決議ヲ爲スコトヲ得セシムルノ見込ナリ故ニ適則ノ規定ニ從テ決議スルニ至ラサルトキハ再三開會ヲ爲サシムルノ精神ナリ假令本條ヲ置クモ不參者多クシテ開會セサルトキハ再ヒ開會ヲ爲サヽルヲ得ス故ニ實際此規定ヲ置クモ亦無益ナルヘシ修正委員ハ之ヲ以テ便宜正當ナリト信シテ削除シタリ
○此時第百五條第百四十二條ト同一ノ文例ニ爲スヘキコトヲ修正委員ニ命セラレタリ
（岸本委員）
第百九十四條ヲ削除スルハ不可ナリ之レヲ本案ニ組入ルムヲ至當ナリトス彼ノ英獨佛等モ亦之ヲ條例中ニ組入レ實際ニ不都合ナケレハ本案ニ之ヲ入ルヽ何ノ不可アラン
（細川委員）
否削除スルヲ可トス若當然決議スルコトヲ得サル者決議ハ何回タルヲ問ハス再ヒ開會セシムルヲ可トス
（長森委員）
第百九十四條ヲ存スルトキハ本法ニ定メタル決議方法ハ其詮ナカルヘシ
○第八節 定款ノ變更
○第百四十五條 原案第百九十六條
社名ヲ變更シ本店ヲ移轉シ及支店ヲ廢置スルトキハ其願書ヲ地方廳ヲ經由シテ農商務大臣ニ差出シ其許可ヲ乞フ可シ
（本尾委員）
原案ニ於テハ本節ニハ社名ノ變更及住所移轉ノミヲ示シ第百九十二條ニ列記スル所ノ三以下ノモノハ節ヲ分テ記載スレトモ本案ニ於テハ本節ヲ定款ノ變更トシ第百九十二條ノ三以下モ亦本節中ニ操入レタリ
原案ニテハ社名ノ變更等ハ裁判所ニ於テ許可スルノ規定ナレトモ我邦未タ裁判所ニ於テ許可スルノ慣例ナキヲ以テ之ヲ行政區域ニ屬セシメ地方廳ヲ經廻シテ農商務大臣ノ許可ヲ受クルコトトセリ
大臣ノ許可ヲ受ケシムル所以ノモノハ株式會社ハ其設立ノ際大臣ノ許可ヲ得タルヲ以テナリ
又原案ニハ裁判所ヨリ公吿シテ債主ノ異議アルヤ否ヲ見テ許否スルノ組立ナレトモ是ハ前顯述フル如ク本邦ソ慣例ニアラサルヲ以テナリ又許否ヲ調査スルハ地方廳ニ於テ取扱ヒ其意見ヲ農商務大臣ニ上申スルヲ今日ノ慣例ニ適スルモノヽ如シ故ニ之ヲ削除シタリ
（委員長）
地方廳ヨリ農商務大臣ニ上申スル時ハ見込ヲ附シテ上申スヘシ其見込ヲ附スルニハ必ス實際ヲ取調ヘサルヲ得ス然ルトキハ原案第百九十六條ノ如キハ或ハ存スル方可ナルカ如シ
（鶴田委員）
一己人ナレハ住所ヲ轉スルニ官ノ許可ヲ受クルコトナシ又之ヲ受クルノ理由アルコトナシ然ルニ株式會社ニ限リ大臣ノ許可ヲ得セシムルトハ餘リ便宜ナリトハ云フヲ得ス一己人ノ場合ト比スルトキハ移轉ノ届ヲナス位ニテ充分ナルヘシ
（本尾委員）
「支店ヲ廢置スルトキハ」トアル文字ハ削除シテ可ナルヘシ何トナレハ本店ハ嚴然社會ノ信用ヲ得テ營業ヲ爲スニ當テハ支店ノ廢置ヲモ大臣ノ許可ヲ受ケシムルハ少シク鄭重ニ失スルカ如シ然レトモ本店ノ移轉ニ至テハ社外人ニ對シ大ナル關係アレハ必ス大臣ノ許可ヲ受ケシムヘシ若シ轉住ヲ届ノミトスルトキハ商標等ノ如キニ至テ大ナル關係ヲ來スヘシ
（鶴田委員）
商標ノ例ノ如キハ法律ノ爲メニ許可スヘカラサル場合ニ至ルモノナレハ届出ノ場合トハ大ニ其趣ヲ異ニス
（委員長）
許可ヲ受クル願書ノ經過スル所ト登記ヲ受クル役所トハ同一ト爲サヽレハ不可ナルヘシ何トナレハ一ハ裁判所一ハ地方廳トスルトキハ互ニ不便アルヘシ何レカ一ニ決セサレハ不可ナリトス
（細川委員）
然ラハ登記役所ハ府縣廳トナスヘシ府縣廳ニ於テ之ヲ取扱ハシムルハ今日ノ慣習ニモ敢テ違反スル所ノモノニアラス且實際裁判所ヨリ便宜ナルカ如シ
（鶴田委員）
併シ登記スル事柄ノ法ニ適スルヤ否ヲ調査スルニハ裁判官ノ方遙ニ優レルモノトス
（本尾委員）
一ノ便法ヲ案出セリ則社名ヲ變更シ又ハ本店ヲ移スニハ總會ノ決議ヲ受ケタル上此旨ヲ公吿シテ異議ナキコトヲ待テ之ヲ地方廳ニ移シ農商務省ニ届出サシムルコトトセハ如何然ルトキハ大ニ便宜ヲ得ルカ如シ
（委員長）
本條ハ尙一應委員ニテ修正ノ上呈出スヘシ
于時四時三十分閉會