○第二讀會第四十二回
明治十八年十二月十四日
欠席 細川委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
午前第十時開會
○第九十七條 原案第百三十二條同第百三十三條
株式會社ハ七人以上ニ非レハ發起スルコトヲ得ス
發起人ハ起業目論見書及假定款ヲ作リ之ニ署名捺印スヘシ
假定款ノ箇條ハ本法ノ規定ト矛盾スルコトヲ得ス
(本尾委員)
本條ハ原案第百三十二條第百三十三條ヲ合併シタリ原案ニハ四人、ヨリ少カサル人員トアルヲ七人ト改メ而シテ署名ハ裁判所又ハ公證人ノ公證ヲ受クヘシトアルラ削除シタリ人員ヲ增加セシハ合名會社ヲ七人トセルニ依リ株式會社モ亦之ニ倣ヒテ七人トシ公證人ヲ削除シタルハ我邦未タ此制ナキヲ以テ之ヲ揭クルモ亦其益ナキヲ以テ之ヲ削除シタリ
(委員長)
獨法ニテハ發起人ヲ何名トスルヤ
(本尾委員)
五名トセリ本案之ヲ增加セシハ合名會社ト權衡ヲ同フシ且少人數ナルトキハ詐僞ノ行レ易キモノナレハ此弊ヲ防クカ爲メ特二七名トナシタリ
(鶴田委員)
發起人ヲ七名トスルハ少シク多カルヘシ就テハ之ヲ減シテ五名トスヘシ而シテ株式會社ヲ設立シ得ルノ人員ハ之ヲ七名以上トシ其發起人員ト設立シ得ヘキ人員トヲ格別ニ揭載セハ如何
(本尾委員)
七人以上ニアラサシハ設立シ得ヘカラサルコトハ後條ニ於テ七人以下ニ減シタルトキハ會社ヲ持續スルコトヲ得サル旨ヲ定メタレハ本節ニ於テ特ニ之ヲ示サヽルモ亦不可ナカルヘシ
(箕作委員)
本員ハ左ノ如ク修正センコトヲ望ム
「第九十七條株式會社ハ七人以上ニシテ官許ヲ得ルニ非レハ創立スルヲ得ス」
(委員長)
獨逸ニテハ認可ト許可トヲ受クルノ規則ナキヤ
(本尾委員)
獨逸ニハ其制ナシ本條ハ英法ノ或種ノ法則ヨリ採用シタルカ如シ
(本尾委員)
第九十七條ヲ五人以上トシ第九十六條中二七人以上ニ限ルヘキヲ示スコトヽナスヘキヤ
(委員長)
然リ修正スルヲ可トス
○第九十六條ハ再ヒ左ノ如ク修正シタリ
第九十七條 株式會社ハ七人以上ニ限ルモノニシテ官許ヲ得ルニ非サレハ創設スルコトヲ得ス
○第九十七條ハ左ノ如ク修正シタリ
第二節 會社ノ發起及設立
第九十八條 株式會社ハ五人以上ニ非レハ發起スルコトヲ得ス發起人ハ起業目論見書及假定款ヲ作リ之ニ署名捺印スヘシ
假定款ノ箇條ハ本法ノ規定ニ牴觸スルコトヲ得ス
○第九十八條 原案第百三十四條
起業目論見書ニ起載ス可キ事項左ノ如シ
一 株式會社ナル事
二 起業ノ目的及營業ノ方法
三 社名、住所
四 資本ノ總額及總株數幷ニ株ノ金額
五 資本使用ノ槪算
六 發起人ノ氏名住所及各發起人ノ引受ク可キ株數
七 各株ニ付拂ハシム可キ創業費用アルトキハ其金額
八 存立期限ヲ定メタルトキハ其期限
(本尾委員)
本條ハ原案ト異ナルコトナシ止タ原案第三項ノ起業ノ目的及セ理由トアルヲ起業ノ目的及營業ノ方法ト改メ第八項ハ新ニ之ヲ加ヘ第九ハ前條ニ於テ辨明シタル如ク我邦ニハ未タ其制ナキヲ以テ削除シタリ而シテ修正案ニ於テ順序ヲ原案ト異ニセシハ合名會社ノ規定ニ倣ヒタルニ過キサルナリ
(箕作委員)
此ニ目論見書ニ記載スヘキ件々ヲ列記スルモ豫メ官ヨリ其雛形ヲ示サコルニ於テハ實際甚タ困難ナルヘシ
(本尾委員)
然リ雛形ハ頒布スルヲ便宜トス
(長森委員)
營業ノ方法ヲ記載セシムルハ尤必用ナルヘシ何トナレハ起業ノ目的ヲ云フタルノミニテハ當事者ニ於テ充分後來ノ營業有樣ヲ想像シ得ルコト能ハサレハナリ
于時正午第十二時ナルヲ以テ中止
午後第一時開會
出席細川委員
午前ノ引續キ
(箕作委員)
各人ノ住所ナレハ可ナレトモ會社ニ之ヲ住所ト云フハ充分ナラサルカ如シ
(細川委員)
所在地トセハ如何(之ニ決ス)
(鶴田委員)
第七ハ熟考スルニ裁判所ニ預リ置キタル後會社設立ノ手續ヲ終ラサレハ裁判所ヨリ之ヲ取戾スコトヲ得ス然ラハ預メ此金額ヲ拂込マシムハ保證ノ爲メニハ充分ナル方法ナルヘシト雖モ記名ノ時之ヲ拂込マシムルモ敢テ此金員ヲ使用シ得ヘカラサルモノナレハ本條ヲ特ニ揭クルモ其益アルヲ見ス故ニ本條ハ削除スルニ若カサルナリ
(岸本委員)
故ニ金額トノミ云フナキハ發起人之ヲ四分一ニ均シキ金額ヲ徵收スルノ弊アルヲ以テ原案ノ如ク創業費用トセハ幾分カ發起人ノ專橫ヲ防制スルニ足ルヘシ
(箕作委員)
然リ就テハ創業費用トシテ徵收スルコトヲ止メ四分ノ一ノ保證ヲ以テスレハ充分ナルヘシト思惟ス
(委員長)
獨逸ニハ如何
(本尾委員)
獨逸ニハ創業費用ノ項目ナシ
(箕作委員)
後條ニ確定ノ文字アリ是ハ太政官ノ許可ヲ受クルノ前ニ總會ニ於テ決議スルノ場合ヲ云フヤ
(本尾委員)
然リ
(委員長)
第七ハ削除スルヲ贊成ス
(委員長)
削除スルモ可ナリ(之ニ決ス)
(本尾委員)
第八項ヲ加ヘタルハ目論見書中ニハ尤モ要用ナル事件ナルヲ以テ特ニ之ヲ揭ケタリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第九十九條起業目論見書ニ記載スヘキ事項左ノ如シ
一 株式會社ナル事
二 起業ノ目的及事由
三 社名及所在地
四 資本ノ總額及總株數幷ニ株ノ金額
五 資本使用ノ槪算
六 發起人ノ氏名住所及發起人各自ノ引受ク可キ株數
七 在立期限ヲ定メタルトキハ其期限
○第九十九條 原案第百二十五條
發起人ハ設立地ノ地方官ヲ經由シテ起業目論見書及假定款ヲ主務ノ省ニ差出シ發起ノ認可ヲ請フ可シ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百條 發起人ハ會社設立地ノ地方廳ヲ經由シテ起業目論見書及假定款ヲ農商務卿ニ差出シ發起ノ認可ヲ請フ可シ
○第百條 原案第百三十六條
前條ノ認可ヲ得タルトキハ發起人ハ起業目論見書ヲ廣吿シテ株主ヲ募集スルコトヲ得
(本尾委員)
原案ニハ公吿書中ニハ云々ト詳細ニ記載アレトモ餘リ冗長ニ涉ルヲ以テ之ヲ省略シタリ
本條ニ付テハ本員ニハ一ノ見込アリ左ニ陳述セン
本員ハ此修正案ハ不同意ナリ本員ノ見込タルヤ發起人ニ於テハ株主ヲ募集スルコトヲノミ示シ置カハ充分ナリト信ス彼ノ目論見書ヲ廣吿スル如キ詳細ナル事柄迄法律ヲ以テ規定スルハ實ニ體裁ヲ得タルモノト言フヘカラス又其目論見書ナルモノハ募集ニ應スルモノニ限リ必要ナルモノニシテ之ヲ望マサルモノニ迄廣吿スルハ實ニ不用ナルノミナラス甚タ法律ノ體裁上ニ付不可ナリトス
(岸本委員)
若シ目論見書ヲ廣吿スヘシト命セサルトキハ官廳ニ對シテハ正當ナルコトヲ陳述シ置キ廣吿又ハ株主ニハ詐僞ヲ以テ損害ヲ蒙ラシムルカ如キコトナキヲ保セサレハ之ヲ存セハ幾分カ「カランチー」ニハ其益アルヘシ然レトモ之ヲ削除スルモ强テ異議スル所ナシ
(委員長)
如何ナル嚴法ヲ用ユルモ詐僞ヲ行フコトナシトセス然レトモ廣吿ノコトヲ載スルトテ不可アル所ヲ見ス
(箕作委員)
ロエスレル氏ノ意見モ會社ノ利益ノ爲メニ設ケタルモノナレハ之ヲ削除シテ其明文ナキモ會社ニ於テ必要ト見ルトキハ之ヲ廣吿スヘシ故ニ削除スルモ亦可ナラン
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百一條 發起人ハ前條ノ認可ヲ得タル後起業目論見書ヲ廣吿シテ株主ヲ募集スルコトヲ得
○第百一條 原案第百二十七條
株式申込人ハ其引受ク可キ株數ヲ會社ノ帳簿ニ記入シ署名捺印ス可シ
代理者ヲ以テ申込ムトキハ委任者ノ氏名ニ代理者ノ氏名ヲ附記シテ捺印スヘシ
(本尾委員)
原案ト異ナルコトナシ止タ末項ノ各記名者云々ヲ削除シタリ其理由タル原第百六十一條ニ株式ハ分割スルコトヲ得サル旨ヲ規定スルニ依リ本條ニ其明文ヲ設ケサルモ亦差支ナキヲ以テナリ
(細川委員)
代理者ハ委任狀ヲ所持スルヤ
(本尾委員)
普通法ニ依リ當然委任狀ヲ所持スルナリ
(箕作委員)
若シ第三項ヲ削ルトキハ如何ナル結果ヲ生スルヤ
(岸本委員)
實際第一項ニ於テ充分第二項ノ働キハナシ得ルモノナレハ之ヲ削ルモ亦差支ナシ
(本尾委員)
然リ之ヲ削ルモ結果ハ明條ヲ揭クルニ同一ナリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第二項ノ「委任者」ヲ「本人」トシ其下ノ代理者ノ「ノ」ヲ「其」ニ改ム其他ハ修正案ノ如シ
○第百二條 原案第百二十八條
株式申込人ハ會社設立ノ時ニ至リ定款ニ從ヒ株劵ニ對スル拂込ノ義務ヲ負フモノトス
第九十八條七項ノ金額ハ會社ノ登記公吿マテ會社設立地ノ裁判所ニ差出シ預ケ置ク可シ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第百三條株式申込人ハ會社設立ノ時ニ至リ定款ニ從ヒ株金拂込ノ義務ヲ負フモノトス
于時午後第三時閉會