○第三十八回
明治十八年十二月一日
欠席 渡邊委員
仝 周布委員
午前
第三章 合資會社
○第七十九條
二人以上金圓其他有價物件ヲ集合シテ會社ノ資本ト爲シ特約アルニ非レハ社員ノ責任其出資ノ額ニ限ルモノヲ合資會社ト爲ス
(本尾委員)
本條ハ原案ニ於テハ合資會社ノ義解トナサスシテ合名會社ト責任ノ異ナル㸃ヲ揭ケタレトモ實際上ニ不都合ナレハ矢張義解トナシ而シテ尙責任ノ異ナル所ヲ示スコトヽセリ
(委員長)
特約トハ如何ナルコトナルヤ
(本尾委員)
特約トハ合名會社員ノコトヲ云フ
(箕作委員)
如何ナル理由ニ依テ原案ノ第二項ハ削除シタルヤ
(本尾委員)
此制限ヲ削除シタルハ合資ノ性質ニ悖ルノ恐レアルヲ以テナリ如何トナレハ若シ制限ヲ立ツルトキハ目的ヲ達スル能ハサルニ至リ又十五名ニアラサレハ取締ヲ爲スヲ得サルノ理ナク敢テ本項ヲ設クルモ其實ナキニ至ルヲ以テ之ヲ削リタリ
(箕作委員)
人員ノ制限ヲ設クル所アリヤ
(本尾委員)
各國ニハナシ
(岸本委員)
若シ本條ヲ會社ノ義解ト爲ハ次二八十條ノコトハ之ヲ記セサルヘカラスト雖モ原案ノ意義ニ本條ヲ設クルトキハ八十條ハ本章ノ終尾ニ置クヲ以テ至當トス
(鶴田委員)
格別二八十條ヲ設クルトセハ本章ノ終尾ニ置クヲ以テ至當トスヘシ然レトモ特ニ別條トナスノ必要ナキト信スレハ八十條ハ本條ノ第二項トナシテ可ナルヘシ
(委員長)
第八十條ハ章末ニ記載スル方可ナルカ如シ
(岸本委員)
第八十條ヲ本條ノ二項トスルハ不可ナリ如何トナレハ八十條ハ全體關係ノ重大ナルモノニシテ則チ合名會社ノ規定中多分ハ本章ニ適用セラルヽモノナレハ獨立條トシ別ニ一條ヲ設置スルヲ可トス
(本尾委員)
第八十條ハ本條ニ移シ七十九條ハ原案ノ如ク記載スルトセハ如何
(細川委員)
最モ可ナリ
(本尾委員)
左ノ如ク修正セハ如何
社員中ノ一名又ハ數名ノ責任ニ付特約アルニアラサレハ總社員ノ責任出資ト爲シタル金圓又ハ有價物件ノ額ニ限ル會社ヲ合資會社ト爲ス(之ニ決ス)
右ノ如ク修正スルトキハ保證有限例之ハ出資ノ二倍又ハ三倍ヲ擔當スルノ契約モ亦爲スコトヲ得レハナリ
(委員長)
本文ハ當然合資會社ノ性質ヲ示スニ止メ無限社員トナルコトヲ得ヘキハ但書ヲ以テ之ヲ示ス方至當ナラン
(箕作委員)
本員ハ一體コンチネント主義トナス方可ナリト信ス
(本尾委員)
若コンチネント主義トナストキハ全ク有限責任者ノミヲ以テ合資會社ヲ設立スルコトヲ得サルニ至ラン
(岸本委員)
合資ノ文字ハ何分適當ナラサル所アルヲ以テ限資會社トセハ如何
(長森委員)
資限會社ト爲ス方可ナリ
(委員長)
先ツ合資會社トシテ存シ置クヘシ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
社員中ノ一名又ハ數名ノ責任ニ付特約アルニアラサレハ總社員ノ責任出資ト爲シタル金圓又ハ有價物件ノ額ニ限ル會社ヲ合資會社ト爲ス
午後一時開會
退席長森委員
○第八十條
合資會社ハ本章ニ定メタル規則ノ外總テ合名會社ノ規則ニ從フモノトス
(箕作委員)
本條ハ「合名會社ノ規則ニ從フモノトス但本條ニ記載シタルモノハ此限ニアラス」ト改メ其取締ヲ示ス方可ナルカ如シ
(本尾委員)
小委員ニ於テモ其論アリタリ併シ本條ノ如ク修正スルニモ餘程困難ヲ覺ヘタリ
(鶴田委員)
本條ハ前條ヲ議スル時ニ當テ辯シタルカ如ク章末ニ記入スルコトヽセハ如何
(本尾委員)
人員ノ制限ニ關スルコトニ付テハ一項ヲ設クルコトトシ七十九條ノ第二項ニ於テ其規定ヲ示サハ如何其文案左ノ如シ
○合資會社ハ社員ノ數ニ制限ナキモノトス
(鶴田委員)
然リ
○第七十九條ニ右ノ一項ヲ加フルコトニ決ス
(委員長)
合名會社ノ規則中適用スヘキ條々ヲ逐一揭載スルトセハ如何否ラサレハ大ニ閱査スルニ不便アレハナリ
○本條ハ呈案ノ如ク決ス
○第八十一條
合資會社ノ登記公吿中ニハ第二十一條ニ列記シタルモノヽ外尙ホ左ノ事項ヲ揭ク可シ
一 會社資本ノ總額
二 各社員ノ出資額
三 無限責任社員アルトキハ其氏名
四 業務擔當社員又ハ取締役責任ノ有限若クハ無限及其氏名
(本尾委員)
原案ト異ナル㸃ハ第三項第四項トス原案ニハ第三項業務擔當者又ハ取締役アルトキハ其氏名住所トアルヲ本案ニテハ第四項ニ合記シ本案ノ第三項ニハ無限責任社員ノ氏名ノコトヲ加ヘタリ之レ極メテ要用ナルカ爲メナリ
(箕作委員)
原案ニ本條ノ第三項ヲ缺キシハ如何
(本尾委員)
第一草案ニハ其事記載アレトモ第二案則原案ニ於テ削除シタリ其理由ハ契約書ニ記載アルヲ以テ此ニ其明文ヲ揭ケサルモ不可ナシトノ旨意ニテアリシ併シ委員ノ意見ハ登記公吿ナルモノハ契約書ノ全部ヲ登記スルニアラサレハ或ハ其氏名ヲ登記公吿ナサヽルコトアルモ計ラレサルヲ以テ此ニ注意ノ爲メ一項ヲ設ケタルナリ
○本條ハ呈案ノ通リ
○第八十二條
社名ニハ有限責任社員ノ氏名ヲ用フルコトヲ得ス且何レノ場合ニ於テモ合資會社ノ字ヲ付ス可シ
社名ニ氏名ヲ加ヘタルトキハ其社員ハ會社ノ負債ニ對シ無限責任ヲ負フモノトス
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
社名ニハ社員ノ氏名ヲ用ユルコトヲ得スト雖モ無限責任社員アルトキハ其氏名ヲ用ユルコトヲ得
社名ニハ必ス合資會社ノ字ヲ付スヘシ
社名ニ氏名ヲ用ヒタルトキハ其社員ハ會社ノ負債ニ對シ無限責任ヲ負フモノトス
○第八十三條
社員ハ會社ノ營業ト同種ノ取引ヲ爲シ又ハ之ニ興カルコトヲ得
(本尾委員)
本條ハ第四十六條ノ反對トス故ニ爾後若シ本條ノ如キ合名會社ノ規定ト反對ナル條項ヲ見出ストキハ「第何條ハ之ヲ合資會社ニ適用スルコトヲ得ス」ト云フ一條ヲ設ケテ明カニ合名會社ト反對ノ規定ナルコトヲ示サソト欲スルナリ
(細川委員)
至極可ナリ
(本尾委員)
本條ノ次ニ原案ニハ第百十四條ノ一項アレトモ其事タル第二十九條ト同一意義ナルヲ以テ故ラニ揭クルノ必要ナキヲ以テ削除シタリ
○本條ハ呈案ノ如ク決ス
○第八十四條
社員七名以上ナルトキハ會社契約又ハ會社ノ決議ヲ以テ社員中ヨリ一名又ハ數名ノ取締役ヲ撰定ス可シ
(本尾委員)
本條ハ原案ト異ナルコトナシ只タ人員ヲ增加シタルノ此增加ノコトタル始メロエスレル氏ノ草案ニ於テモ亦七名ナリシカ合資社員ヲ十五名ト制限シタルニ依リ本條ハ之ヲ減シテ三名トシタルナリ然ルニ本案ニ於テハ又十五名ノ制限ヲ解キシヲ以テ第一草案ノ如ク七名トナシタルナリ
第二項ヲ削除シタルハ不用ナルカ故ナリ何トナレハ取締役ヲ設ケタル以上ハ會社內ニ於テ分課スト雖トモ社外人ハ等シク取締役ト看做スカ故ニ其分課シタルモ責任上毫モ其異別アルヲ見ス故ニ之ヲ削除シタリ
○本條ハ呈案ノ如ク決ス
于時三時退散