○第三十七回
明治十八年十一月廿四日
欠席 細川委員
仝 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
午前
先回ノ續
○第七十條
（鶴田委員）
第二條ノ全文ヲ削除シテ原案第一條ノ二項ヲ第二條トセハ如何然ルトキハ本條ニ於テハ該條ニ記載外ノ理由ニ於テ解散セシムル場合ヲ示シ前後相照應スルニ至ルヘケレハナリ
（本尾委員）
然リ第二條ヲ改正セハ本條ハ相照應シテ不都合ナカラン就テハ左案ノ如ク第二條ヲ修正セハ如何
法律ニ背戾スル目的ノ會社ハ成立セサルモノトス
（岸本委員）
第二條ハ左ノ如ク修正セハ如何
會社ノ目的法律規則ニ背戾スルトキハ其會社ハ成立セサルモノトス
（長森委員）
左ノ如ク修正セハ如何
法律規則ニ背戾スル事ヲ目的トスル會社ハ初ヨリ無効トス
（本尾委員）
「公益又ハ風敎ヲ妨害スヘキ營業ヲ爲ス會社ハ裁判上ノ處分ヲ以テ解散セシムルコトヲ得」トノ一項ハヲ第二條ニ加フルトセハ如何
（鶴田委員）
公安又ハ風俗ヲ害スヘキ營業云々トセハ如何
（岸本委員）
原案ノ旨意ニ依レハ裁判上ノ處分トハ判事カ訟庭ヲ開キ公ケノ順序ヲ以テ判決ヲ下タスカ如シ第二條修正案ノ裁判上ノ處分トアルハ之レト同一ノ精神ナルヤ
（本尾委員）
然リ裁判手續ヲ履行シテ申立ルノ精神ナリ
○第二條ハ更ニ左ノ如ク修正スルニ決ス
第二條 法律規則ニ背戾スル事業ヲ目的トスル會社ハ初メヨリ無効トス
公安又ハ風俗ヲ害スヘキ營業ヲ爲ス會社ハ裁判上ノ處分ヲ以テ解散セシムルコトヲ得
（鶴田委員）
第七十條ニ於テ解散ノ理由ヲ申立ルニハ總員ニアラスシテ一名又ハ數名ヨリ之ヲ爲スモノナレハ其旨意ヲ明瞭ナラシムル爲メ維持スル能ハサルノ下ニ「ニ至リ一名又ハ數名ノ」ノ十字ヲ加ヘテ之ヲ示スヲ以テ至當ナリトスルカ如シ
○第七十條ハ左ノ如ク修正セリ
第七十條 會社其目的ヲ達スル能ハス若クハ其地位ヲ維持スル能ハサルニ至リ一名又ハ數名ノ社員ヨリ其理由ヲ以テ解散ヲ申立ルトキハ亦裁判上ノ處分ヲ以テ之ヲ解散セシムルコトヲ得
○第七十一條
第六十九條第一項ヨリ第三項ノ場合ニ於テハ總社員又ハ一部社員ニ於テ會社ヲ保續スルコトヲ得但之ニ加ハラサル社員ハ退社社員ト看做ス可シ
（鶴田委員）
第六十九條ノ第三項ハ前回ニ於テ「四分三同意」トアル五字ヲ削除シタルニ依リ本條ニ第三項ヲ加フルハ不可ナルヘシ故ニ第一項第二項トナスヘシ（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第七十一條第六十九條第一項第二項ノ場合ニ於テハ總社員又ハ一部社員ニ於テ會社ヲ保續スルコトヲ得但之ニ加ハラサル社員ハ退社シタルモノトス
○第 條
會社解散スルトキハ總社員ノ多數決ヲ以テ結算人ヲ撰定ス可シ但破產ニ依リ解散スル場合ハ此限ニ在ラス
○第七十二條
會社解散ノ事由、年月日及結算人ノ氏名ハ速ニ登記公吿ヲ受ク可シ
（本尾委員）
本條ハ原案ノ順序ニ從フトキハ結算人ノ登記公吿ノコトヲ示スモノナレトモ此ニ結算人選擧ノ事ヲ示サスシテ突然撰擧ノ結果ヲ顯ハスハ少シク順序ヲ失スルカ如シ故ニ第百一條ヲ本條ニ移入シテ先ツ結算人ノ撰擧ヲ示シ然ル後登記公吿ノ手續ヲ記スルヲ以テ相當ノ順序トナスニ依リ原案トハ其順序ヲ異ニセリ
（委員長）
結算人ハ何人ヲ選フヤ
（本尾委員）
獨逸ニ於テハ實際ハ社員ヲ以テ結算人トナサスシテ多クハ結算依賴ノ業ヲ營ム所ノ人ヲ雇入ルヽモノナリ
（長森委員）
第七十二條ニ於テノ公吿ハ破產ノ時モ亦登記公吿スルトセハ實際ニ重ノ手續トナルニ依リ破產ノ場合ハ此限ニアラストナサエルヘカラス就テハ前條ト合併シテ「結算人ヲ選定シ會社解散ノ事由年月日及結算人ノ氏名ハ速ニ登記公吿ヲ受クヘシ但破產ニ依リ解散スル場合ハ此限ニアラス」トセハ如何
（本尾委員）
實際ニ於テハ二重ノ登記公吿タルモ毫モ差支ナカラン
何トナレ破產ノ時ノ公吿ハ裁判所ヨリ公衆ニ示スモノニシテ會社ニ於テ公吿スルトハ少シク其趣ヲ異ニスルモノナレハナリ
（岸本委員）
一名又ハ數名ノ語ハ只タ疑ヒアル場合ニノミ記入スルトセハ如何
（委員長）
然リ
○本條ハ次條ノ第七十二條ト合併シ一ケ條トナスニ決シ左ノ如ク修正セリ
○第七十二條 會社解散スルトキハ總社員ノ多數決ヲ以テ結算人一名又ハ數名ヲ選定シ其解散ノ事由年月日及結算人氏名ノ登記公吿ヲ受ク可シ但シ破產ニ依リ解散スル場合ハ此限ニ在ラス
于時十二時ナルヲ以テ中止
午後一時開會
○第七十三條
結算人ハ會社ノ借方ヲ償却シ貸方ヲ取立テ物件ヲ賣却シ其他殘務ヲ結了スルノ任アルモノトス
結算人ハ此目的ヲ超ヘテ營業ヲ保續シ又ハ新ニ取引ヲ爲スコトヲ得ス
（本尾委員）
原案第百條ヲ修正案ニ加ヘサルモノハ不用ナリト信シタルヲ以テナリ如何トナレハ會社ノ解散ニ終ルコトヽ其營業ハ之レト共ニ停止スルコトヽ會社財產分配ノコト等ノ如キハ故ラニ明條ヲ設ケサルモ瞭カナレハナリ若シ又之ヲ强テ設クルニ至ラハ却テ世人ノ疑ヒヲ引起スニ過サルヲ以テナリ依テ第百條ハ之ヲ削除シ本案ニハ加ヘサリシ
（鶴田委員）
然リ別ニ有用トナサス
（本尾委員）
本條ハ文字ヲ改メタル迄ニシテ精神ハ毫モ原案ト異ナラス
（岸本委員）
第二項ノ「結算人ハ此目的ヲ超ヘ」トアルヲ「結算ノ爲メニアラサレハ」トセハ如何（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第七十三條 結算人ハ會社ノ借方ヲ償却シ貸方ヲ取立テ物件ヲ賣却シ其他殘務ヲ結了スヘキモノトス
結算人ハ結算ノ爲メニアラサレハ營業ヲ保續シ又ハ新ニ取引ヲ爲スコトヲ得ス
○第七十四條
結算人ノ擔任事務ハ社員之ヲ制限スルコトヲ得ス
○第七十五條
結算人ハ社員隨意ニ之ヲ解任スルコトヲ得ス但重要ノ事由ヲ以テ社員ヨリ申立ルトキハ裁判所ニ於テ之ヲ解任スルコトヲ得
（本尾委員）
此兩條ハ原案ノ一ケ條ヲ分離シタルモノナリ其然ル所以ハ原案ノ本文ト但書以下トハ全ク其趣ヲ異ニスルモノヲ纏メタルモノナレハ之ヲ解釋スルニ甚タ困難ナルヲ免カレサレハナリ
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第七十四條 結算人ノ擔任事務ハ社員之ヲ制限スルコトヲ得ス第七十五條結算人ハ社員隨意ニ之ヲ解任スルコトヲ得ス但重要ノ事由アリテ社員ヨリ申立ルトキハ裁判上ノ處分ヲ以テ之ヲ解任スルコトヲ得
○第七十六條
結算人擔任ノ事務ヲ結了シタルトキハ各社員ニ其計算書ヲ報吿シ且剩餘ノ財產ヲ第四十七條及ヒ第六十六條ニ照シテ分配ス可シ但結算中ト雖モ支障ナキ財產アルトキハ之ヲ社員ニ分配スルコトヲ得
（本尾委員）
原案ノ文意ニ於テハ充分ロエスレル氏ノ精神ヲ知得スルコトヲ得ス如何トナレハ表面上ヨリ讀下スルトキハ一回ヒ結算事務ニ着手スルトキハ之ヲ結了スル迄ハ其精算書ヲ示サスシテ財產分配ヲ爲サヽルカ如ク見ユレトモ其精神タルヤ結算ヲ了シタル時ハ其時々之ヲ報吿シ敢テ全局ヲ終了スルニ至ル迄其淸算ヲ示サスト爲スニハアラサルナリ故ニ修正案ニハ但書ヲ設ケテ其意味ヲ明瞭ナラシメタリ
（委員長）
剩餘トハ如何
（本尾委員）
剩餘トハ原案第百四條ノ文意ヲ以テ斯ク名付ケタルナリ而シテ第百五條モ亦第六十五條ニ於テ其旨趣ヲ示シアレハ此ニ之ヲ揭ルニ及ハサルヲ以テ共ニ兩條ハ削除シタリ
○本條ハ左ノ如ク修正セリ
第七十六條結算人擔任ノ事務ヲ結了シタルトキハ各社員ニ其計算書ヲ報吿シ第四十七條及第六十六條ニ照シテ其財產ヲ分配ス可シ但支障ナキ財產ハ結算中ト雖モ之ヲ分配スルコトヲ得
○第七十七條
會社ノ帳簿及其他ノ書類ハ第九條ニ從ヒ會社ノ決議ヲ以テ之ヲ保存ス可シ
（本尾委員）
本條ハ原案ノ精神ト毫モ異ナルコトナシ
（岸本委員）
會社ノ決議ヲ以テ之ヲ保存スヘシトアルヲ社員ニ於テ之ヲ保存スヘシトセハ如何
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第七十七條會社帳簿其他書類ノ保存ハ第九條ニ從ヒ社員ニ於テ之ヲ擔任ス可シ
○第七十八條
會社ノ負債ニ對スル社員責任ノ期滿免除ハ其解散後五ケ年トス但他ノ法律ニ於テ五年以下ノ期滿免除ヲ定メタル場合ハ此限ニアラス
會社ノ債主ハ未タ分配セサル會社財產ニ對シテハ前項ノ期限ニ拘ハラス其要求ヲ爲スコトヲ得
（本尾委員）
原案第百七條ハ之ヲ削除シタリ其理由タルヤ故ラ一二條ヲ設クルノ必要ナシト信シタレハナリ如何トナレハ社員相互ノ問又ハ社員ト淸算人トノ間ニ於テ云々ト關係人ヲ揭クルトキハ此他ニ於テハ假令爭論ノ起ルアルモ裁判所ニ訴フルコトヲ得サルカ如ク解スルノ恐レアルヲ以テ實際ニ至テハ却テ不便アルヲ信スレハナリ故ニ該條ハ之ヲ削除シ直ニ期滿免除ニ就テ規定シタリ然レトモ本條モ亦原案ニ依ルトキハ文意ノ不明ナル所アルヲ以テ止タ精神ヲ取テ文字上ハ大ニ修正ヲ加ヘタリ
（長森委員）
他ノ法律上期滿免除ノ年限五ケ年以下ナルトキハ其法律ニ依テ免除ヲ得ルモノトセハ若六年以上ナルトキハ則チ本條ニ依テ免除ノ利益ヲ得ルモノナラン
（本尾委員）
然リ
（委員長）
期限ヲ立ルニ其會社ノ業體ニ依テ其期ニ自カラ長短アラン
（本尾委員）
否本條ノ場合ハ會社ノ業體如何ヲ云フニアラス社外人ヨリ會社ニ向テ貸付ケタル場合ノ期滿免除ヲ示スモノナリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第七十八條社員會社ノ負債ニ對スル無限責任ノ期滿免除ハ其解放後五ケ年トス但他ノ法律ニ定メタル五年以內ノ期滿免除ニ係ルモノハ此限ニアラス
未タ分配セサル會社財產ニ對シテハ前項ノ期限ニ拘ハラス會社ノ債主其要求ヲ爲スコトヲ得
于時午後三時閉會