○第三十六回
明治十八年十一月廿一日
欠席 渡邊委員
仝 周布委員
午前第九時開會
（本尾委員）
委員長ノ命ニ從ヒ第七十條ヲ再修正スルコト左ノ如シ
○第七十條
會社其目的ヲ達スル能ハス若クハ其地位ヲ維持スル能ハサルノ理由ヲ以テ社員ヨリ解散ヲ申立ルトキハ裁判所ハ事實審査ノ上之ヲ解散セシムルコトヲ得
（委員長）
可ナリ
（鶴田委員）
裁判所云々トアレハ第六十九條ノ第五項ノ一部分ト見サルヘカラス或ハ第五項ノ以外ナルヤ
（本尾委員）
ロエスレル氏ノ精神ハ第五項ノミニテハ如何ナル事ナルヤ分明ナラサルヲ以テ原案ノ如ク立案セシナレトモ再修正案ニ於テハ第五項ノ一部分トハ見ヘサルナリ
（鶴田委員）
第六十九條ノ第三項ニハ第七十條ノ理由ヲ要スルヤ
（本尾委員）
其理由ヲ要セス第三項ハ總員ノ承諾上ナレハ更ニ出願ノ手續ヲ爲サスシテ止タ登記公吿ヲ受クレハナリ
（岸本委員）
第五項ヲ削リテ「其他會社云々ヨリ裁判所」マテヲ別條ニ設ケレハ如何
（長森委員）
若シ會社營業ヲ停止スル上ハ其社員ハ依然團結スルコトヲ得ルニアラス則會社解散シテ淸算人ヲ撰擧シ結算セシムルナラン
（本尾委員）
然リ
（岸本委員）
會社反法ノ事業ヲ爲スモ之ヲ解散セシムルニ及ハサルヘシ何トナレハ其事業ヲ改正セシムル以上ハ會社ニ害ナケレハナリ而シテ其事業ヲ更改セン爲メ營業ノ目的ヲ失フトキハ社員ハ第七十條ヲ適用シ解散ヲ申立ルコトヽナルヘシ
（箕作委員）
第六十九條第五ハ裁判所ヨリ解散ヲ申付ラルヽ場合ト爲シ第七十條ハ第六十九條第五ノ場合ヲ示シタルニアラスシテ社員ニ訴權アルコトヲ揭クルモノト爲シ原案トノ精神ヲ變更セハ如何
（本尾委員）
第六十九條第五ヲ削リ別一ニケ條ヲ設ケ裁判上ノ處分ヲ以テ解散セシムル場合ヲ示セハ如何卽チ其文案左ノ如シ
第七十條 裁判所ハ左ノ場合ニ於テ會社ヲ解散セシムル事ヲ得
一 會社不法又ハ公益ヲ妨害スヘキ事業ヲ營ムトキ
二 會社其目的ヲ達スルコト能ハス又ハ會社ヲ維持スルコト能ハサルニ至リ社員ヨリ解散ノ申立ヲ爲ストキ
三 會社契約無期ナルトキ社員ヨリ正當ノ理由ヲ以テ解散ヲ申立タルトキ
（箕作委員）
然リ而シテ第六十九條第五裁判上ノ處分トアル一項ヲ削除シテ其事柄ハ第七十條ニ於テ說明ストセハ或ハ可ナルヘシ
（岸本委員）
反法云々ヲ加ヘサレハ取締ヲ爲スコトヲ得ストナラハ不得已追加スルモ可ナリ然レトモ營業上反法ノ場合ハ警察法ニ屬スルモノニシテ私法上ニ記スヘキ事柄ニアラサルナリ
（本尾委員）
若ツ反法云々ヲ本條ニ揭サルトキハ實際行政警察上ノ處分ヲ似テ一己人ト同一ノ處置ヲ爲スニ至ルヘシ故ニ原案ハ此場合ニ於テハ會社ヲ保護シ裁判上ノ處分卽チ原被兩造ヲシテ充分ニ辯讓ヲ爲サシメタル上解散セシメントスルノ精神ナリ
（長森委員）
實際ハ孰モ皆表面ハ正當ナル事業ヲ名トスレトモ其事業中ニ會々不正ノ事業ヲ爲スモノナレハロエスレル氏ノ說明スル如キ場合ハ實際生スルコトナシト云フモ可ナリ若シ其事業中二三ノ不正ナル所爲アルトキハ一己人ト同シク營業停止又ハ禁止ヲ命スルヲ以テ足レリ敢テ之ヲ解散セシムルニ及ハサルナリ
（本尾委員）
反法ノ所業ナル語ハ實際場合ニ依リ決定セシムルコトナレハ預メ法律上ニ於テ反法ノ場合ヲ示スコトヲ得ス
（岸本委員）
此ニ反法云々ヲ記入センニハ合名會社ハ二人以上ナレハ不法ノ事業ヲ爲ストキハ直ニ解散セラレ一己人ハ之ニ反シ單ニ營業停止又ハ禁止セラルニヲ以テ足レリトスルハ二人以上ナルト一人ナルトニ就キ此不權衡ヲ爲スハ不都合ナラスヤ
（長森委員）
會社モ亦一己人ト同シク法律ニ從フモノナレハ第六十九條第五ノ外ニ營業禁止ヲ受タルトキノ一項ヲ追加セハ如何然ルトキハ別ニ反法云々ヲ揭ケサルモ充分ナルヘシ
（箕作委員）
今日ノ現狀ニテハ會社ノ成立スルハ却テ立法官ノ望マサル所ナレハ可成丈解散セシムル方法ニ規定スルヲ可トス
（細川委員）
然リ
（長森委員）
第六十九條第五ヲ削除シ之ヲ代フルニ「營業ヲ禁止セラレタル時」トセハ如何
（本尾委員）
第六十九條第五ヲ削除シ本條ヲ左ノ如ク修正セハ如何第七十條「前條ノ外裁判所ハ左ノ場合ニ於テ會社ヲ解散セシムルコトヲ得、
一、ニ、（先案ノ儘ニシテ第三ヲ削リタルノミ）
（岸本委員）
佛、獨、伊太利、白耳義、和蘭法ニハ反法云々ニ關スル規定ナシ但英法ハ如何ナルヤ之ヲ知ラスト雖トモ長森委員ノ說ノ如ク「營業ヲ禁止セラレタル時」ヲ以テ解散ノ一事項ト爲ス可ナレトモ原案ノ如ク反法云々ヲ記入スルハ各委員ニ於テ尙ホ熟考アランコトヲ希望ス
（箕作委員）
獨逸ニテハ不法ノ所業ヲ爲ストキハ如何スルヤ
（本尾委員）
法律ニ明文ナシト雖モ勿論解散セシムルナリ
○第七十條修正ハ尙ホ次回ニ於テ議スルコトニ決ス
于時正午第十二時ナルヲ以テ散會ス