○第三十五回
明治十八年十月十九日
欠席 細川委員
仝 箕作委員
仝 渡邊委員
仝 周布委員
仝 長森委員
午前第十時開會
先回ノ續キ
（委員長）
先回ニ於テ削除セシ第六十四條ハ本節ヲシテ先ツロエスレル氏ノ精神ニ從フモノトセハ之ニ復シ文章ヲ更正シテ採用スヘシ
（本尾委員）
修正委員ニ於テ第六十四條ヲ削除セシ理由ヲ述ヘンニ該條ニ義務ニ關係ナシトアレトモ後條ニ至リ尙ホ義務ニ關係スルコトアリ卽チ退社後}年間ノ責任ヲ負フモノ是レナリ又タ該條但書ノ場合ハ第六十五條ニ規定スルト毫モ異ナルコトナシ又委員長ハ該條ヲ獨法ノ如ク記載セヨトノ命ナレトモ元來本法ノ組織獨法ト異ナルヲ以テ獨法ノ精神ニ依テ之ヲ記載スルコトヲ得サルナリ右ノ理由アルカ爲メ修正委員ハ之ヲ不用ト認定シテ削除シタリ然レトモ今日强テ該條ヲ記載スヘシトノ事ナランニハ左案ノ如ク爲スヲ可トス
「退社員ハ第六十四條二項ノ未結ノ取引ニ付會社ト關係ヲ有スルノ外會社及ヒ社外ニ對シ社員タルノ權利義務ナキモノトス然レトモ會社ノ負債ニ付社外ニ對スル無限責任ハ退社後五年間尙ホ之ヲ免ルヽコトヲ得ス
（鶴田委員）
然リ
（本尾委員）
五年ノ期限ハ酷ニ失スル如シ故ニ三年トセハ如何
（鶴田委員）
普通解散後五年ノ責任アリ然ラハ退社員一名ニハ解散ノ生シタルモノト看做シ五年ト爲スモ差支ナカルヘシ
（委員長）
退社スルトキハ負擔高ヲ會社ニ仕拂フヲ以テ其他ニ負擔スヘキ義務ナカルヘシ然ルトキハ退社員ノ責任ヲ一年ナリ五年ナリト爲スモ實益ナキカ如シ
（岸本委員）
退社ノ節ハ假定案ト爲シ後節ヲ議セハ如何何トナレハ退社ノ主義未タ確定セサルヲ以テ修正ヲ爲スコトヲ得サレハナリ
（委員長）
然ラハ總テ原案ノ儘ニ差置クヘシ
（鶴田委員）
併シ退社ノ節ヲ置クヤ否ヲ先ツ確定シ居クヘシ其各社員ニ關スル修正ハ未定ニ付スルモ可ナリ
（委員長）
然ラハ本節ハ假定案ト爲シ是迄修正案ヲ保存シ更ニロエスレル氏歸朝ノ上質問シテ確定スヘシ
○退社ノ節ハ總テ假定案ト爲スコトニ決ス
○第五節 會社ノ解散
○第六十九條 原第九十二條
會社ハ左ノ場合ニ於テ解散スルモノトス
一 會社契約ノ滿期
二 會社契約ニ定メタル解散ノ場合
三 總社員四分ノ三以上ノ同意
四 會社ノ破產
五 裁判上ノ處分
（本尾委員）
本條ハ原案ト異ナル所ナシ
（鶴田委員）
第一ハ「會社存立期限ノ滿期」ト爲スヘシ
（岸本委員）
「契約ニ定メタル解散ノ場合」トハ會社存立期限ノ事モ亦包含スルカ故ニ第一項ハ削除スルモ可ナリ
（鶴田委員）
然レトモ第二ハ期限ニ拘ハラサル解散ノ場合ヲ示スモノナレハ第一トハ其性質ヲ異ニセリ
（本尾委員）
四分三以上ノ同意ノ事ニ付說明ヲ觀ルニ會社設立ノ場合ニ在テハ總員ノ同意ヲ要スルハ至當ナレトモ解散ニ於テハ一分ノ不同意ノトキハ多數ニ制セラレサルヘカラストアリ然レトモ之ヲ理論上ヨリ云フトキハ始終共ニ總員ノ同意ト爲スヲ至當トス
（委員長）
三人組合ナルトキハ四分ノ三ノ數ヲ生スルコトナシ
（本尾委員）
然リ三人、五人、六人、七人ノ場合モ亦同シ
（岸本委員）
總員ノ同意ト爲ストキハ可ナレトモ重モニ本項ハ合資會社ニ適用スルノ精神ナルヘシ
（鶴田委員）
退社スルモ總員ノ承諾トアリ然ラハ解散モ亦總員ノ同意ト爲サヽレハ權衡ヲ得サルヘシ
（本尾委員）
獨法モ亦本項ノ場合ハ總員ノ同意トセリ故ニ之ヲ總員ノ同意ト爲シ合資會社ニ至リ更二四分三ノ事ヲ揭クルトセハ如何（之ニ決ス）
○本條ハ左ノ如ク修正セラレタリ
第六十九條 會社ハ左ノ場合ニ於テ解散スルモノトス
一 會社存立期限ノ終リタル時
二 會社契約ニ定メタル解散事由ノ生シタル時
三 總社員同意ノ決議
四 會社ノ破產
五 裁判上ノ處分
于時正午十二時中止
午後第時開會
（本尾委員）
第七十條ノ議事ニ取係ル前ニ原案第九十六條ヲ修正委員ニ於テ削除シタル可否ヲ決セラレタシ該條ノ精神ハ普通法ト異ナリ會社ハ支拂ヲ停止シタルトキハ破產宣吿ヲ待タスシテ破產シタルモノト看做シ嚴酷ナル認定法ヲ設ケ專ラ債主ヲ保護セントスルニ出タルナリ然レトモ本法ハ會社ヲ以テ類似無形人ト看傚シテ處分シ來リタル所ヨリ論スルトキハ會社ト云フモ一己人ト同一ノ規則ヲ適用スルノ精神ナレハ更ニ其精神ヲ確定シ猶ホ一己人ト同一ニ普通破產法ニ從ハシムルヲ可ト認定シテ之ヲ削除シタリ
（委員長）
獨法ニ此規定アルヤ
（本尾委員）
ナシ
（委員長）
佛法如何
（岸本委員）
規定ナシ
（委員長）
有限會社ナルトキハ會社ノ破產アリト雖モ合名會社ノ如キハ各社員ニ於テ皆仕拂ヲ停止セサレハ破產スルコトナカルヘシ
（岸本委員）
本條ハ記載スルモ可ナリ何トナレハ本法ハ會社財產ト社員ノ私財產トヲ區別シタルニ依リ會社ヲシテ先ツ破產シタルモノト看做シテ處分シ其財產辨償スルニ足ラサルトキニ至リ始メテ社員ノ財產ニ及ホスノ順序トナルナリ若シ此條ナキトキハ會社仕拂停止前ニ社員ノ私財ヲ以テ辨償セサルヘカラサル煩雜ナル手續ヲ盡サヽルヲ得ス尤モ實際本條ヲ適用スルノ手續ハ如何ナルヤ本法ハ勿論破產法ニモ亦其規定ナキハ少シク不都合ナキニアラサルナリ
（本尾委員）
本條ヲ存スルトキハ破產法第一條ト牴觸スルノ恐レアリ
（鶴田委員）
原案第九十六條ハ削除スルヲ可トス
○第七十條 原案第九十七條
會社其目的ヲ達スルコト能ハス若クハ其地位ヲ維持スル能ハサルトキ又ハ會社契約ノ無期ナルトキハ社員ノ申立ニ依リ裁判所ハ之ヲ解散セシムルコトヲ得
（本尾委員）
原案ニ「會社反法ノ事業又ハ公ケノ秩序及ヒ風敎ヲ紊領亂スヘキ事業ヲ營ムトキ」迷及ヒ除名ノ事トヲ削除シ先回ニ於テ退社員ヨリ申立ノ場合ヲ本條ニ記スルコトニ決セシヲ以テ又ハ會社契約無期ナルトキハ云々ヲ加ヘタリ
然レトモ今日ニ至リテハ有期無期ヲ問ハス總社員ノ同意決議ヲ以テ解散スルコトヽナリ且ツ退社ノ節ハロエスレル氏ノ精神ニ基クコトニ決議ナリタルヲ以テ無期ノ場合ヲ揭クルハ不用ニ屬スルヲ以テ削除スルヲ可トス
（岸本委員）
若シ之ヲ削除スルトキハ人ノ身體ヲ終身束縛スルニ至リ甚タ不都合ナリトス
（鶴田委員）
地位ヲ維持スルコト能ハサル云々ハ目的ヲ達スルコト能ハサルノ語中ニ包含スルナリ
（本尾委員）
第一條ニ反法ノ事業ナルトキハ會社ハ成立セストアリシヲ削リタルニ依リ反法云々ノ數語ハ更ニ記入スルヲ可トス
（岸本委員）
否反法ノ事業ヲ爲ストキハ警察官之ヲ停止又ハ禁止スルコト猶ホ一己人ト異ナルコトナシ强テ原案ノ如ク解散セシムルニ及ハサルナリ
（本尾委員）
若シ本條ニ記載スルヲ不可トスルトキハ第一條ニ之ヲ記載アランコトヲ望ム
先ノ本條中ニ記入スルノ精神ヲ以テ文案ヲ起草スルニ凡ソ左ノ如シ
「會社不法ノ事業又ハ公益ヲ妨害スヘキ事業ヲ營ムトキ又ハ會社其目的ヲ達スルコト能ハス或ハ會社ヲ維持スルコト能ハサルニ至リ社員ノ申立アルトキハ裁判所ハ之ヲ解散セシムルコトヲ得」
又左ノ如クセハ如何
「裁判所ハ左ノ場合ニ於テ會社ヲ解散セシムル事ヲ得
一 會社不法又ハ公益ヲ妨害スヘキ事業ヲ營ムトキ
二 會社其目的ヲ達スルコト能ハス又ハ會社ヲ維持スルコト能ハサルニ至リ社員ヨリ解散ノ申立ヲ爲ストキ
三 會社契約無期ナルトキ社員ヨリ正當ノ理由ヲ以テ解散ヲ申立タルトキ
（委員長）
無期云々ノ事ハ退社ノ節確定迄先ツ未定ト爲シ而シテ今少シク詳細ニ修正ヲ加フヘシ其修正ハ修正委員ニ於テ調査スヘシ
于時午後第二時五分散會