○第三十三回
明治十八年十一月十二日
欠席 渡邊委員
仝 周布委員
午前第時開會
○第六十五條 原案第九十一條第九十二條
會社ハ退社員ノ爲メ特ニ精算書ヲ製シ之ニ基キ其持分ヲ拂渡ス可シ但未結ノ取引ニ就テハ其結了ヲ竢テ精算スルコトヲ得退社員ニ拂渡ス可キ持分ノ額ハ會社ノ負債ヲ除キタル餘分ニ限ルモノトス
（本尾委員）
本條ハ字句ノ修正ノミニシテ精神ニ於テハ毫モ原案ト異ナルコトナシ原案ノ內別離ノ時ノ額トアルヲ削リタルハ焙}算圭日ヲ作ルニハ必ス退社ノ時ノ現額ヲ以テ計算スルニ依リ此ニ明言セサルモ亦差支ナカルヘキヲ以テナリ第二項ハ原案ニ於テハ一ケ條羨ナシタレトモ別ニ獨立條トナスニ及ハサレハ本條ノ二項トナシタリ
（長森委員）
第二項ハ第一項ニ接續セシメテハ如何則チ左ノ如ク修正セハ不可ナカルヘシ
「之ニ依リ其持分ヲ拂渡ス可シ其額ハ會社ノ負債ヲ除キタル餘分ニ限ルモノトス但未結云々」
（箕作委員）
精算書トハ如何ナルモノナルヤ
（本尾委員）
貸借惣體ノ對照表ヲ作リテ財產ノ惣高ヲ顯ハシ其內ヨリ退社員ノ持分ヲ引去ルナリ尤モ其持分ハ負債ヲ除キタル餘分ヲ與フルモノトス則チ精算書トハ一體貸借ノ惣高ヲ見出スカ爲メ作ルモノナリ
（箕作委員）
退社員ノ爲メニ故ラニ調製スルモノナルヤ
（本尾委員）
之ヲ製スルニハ隨意退社ノ外ニ於テ記スルモノトス若シ隨意退社ナルトキハ年度ノ末トナルヲ以テ特ニ精算書ヲ作ルニ及ハサルナリ
（長森委員）
若シ未結ノ取引ニシテ一兩年間ニ涉ルトキハ一年間則チ期滿免除ノ後ハ如何スルヤ
（本尾委員）
責任ハ一ケ年ヲ以テ終ルモノトス併シロエスレル氏ノ精神ハ商業ハ都テ迅速ヲ主トスルニ依リ未結ノ取引ナルモ多クハ六ケ月位ニシテ結了ヲ吿ルモノニテ一年ニ跨ル如キハ殆ント絕無ト云フヘキ程ナリ故ニ一年ノ期限ヲ以テ充分ナリトセシモノナリ敢テ其後ニ付テノ規定ニハ頓着セサルモノト信ス
（岸本委員）
第二項ハ退社スルトキノ持分ニシテ負債ノ辨償ヲ爲スニ足ラサルトキハ尙之ニ相當スル丈ノ金員ヲ其退社員ヨリ提供シテ後退社スルコトヲ得ルノ精肺ナリ各員ニ於テ今本員カ說明セシ如ク解シ得ラル丶ヤ或ハ此文章ヲ以テ見ルトキハ退社ノ時負漬辨償ノ爲メ持分ヲ引去ルトキハ其社員ニ於テ持歸ルヘキ餘分ナキニ於テハ止タ會社ヨリ其名ヲ除クニ止マリ尙不足アル金額ヲ提供スルニハ及ハサルカ如ク解セ得ルノ嫌大キニアラス故ニ本項ハ之レアルカ爲メ却テ疑ヲ生スルヲ以テ寧ロ之ヲ削除シ其處分方ハ會社自然ニ任スル方可ナリト信ス
（箕作委員）
第二項ノ文面ノミニテハ持分ノ會社負債ヲ償フニ足ラサルトキハ尙金額ヲ提供シテ後ニ退社スルトハ見解スルコトヲ得ス
（本尾委員）
文面上ヨリ見ルトキハ或ハ箕作委員ノ如ク解カラルルナラン然レトモ社員ハ損益ヲ共ニスルモノナレハ會社ニシテ負倍叭ヲ償フニ足ラサルトキハ之レカ割合ヲ出シテ退社スルニアラサレハ之ヲ爲スヲ得サルコトハ此ニ明言セサルモ甚タ分明ナリ
尤モ如斯場合ニ至ルトキハ會社ハ既ニ債負債ノ平均ヲ得サルニ依リ自カラ解散ニ至ルモノトス蓋シロエスレル氏モ亦此精神ヲ以テシ說明中ニモ全ク負債ノミノ場合ヲ記載セサリシモノナルヘシト信スルナリ
（箕作委員）
退社ノ時不足分ヲ會社ニ提供スルハ出資ヲ補充スルニハアラスヤ
（本尾委員）
否先解散ヲ以テ譬ヘンニ若負債ニシテ持分ヲ以テノミ辨償スルニ足ラサルトキハ必ス各社員ハ全財產ヲ以テ之ヲ補充スルナラン此ト同シク則其社員ニ在テハ全ク解散ト看做スヘキモノナリ
（箕作委員）
第六十四條ノ退社前ノ取引ニ付テハ關係ヲ存スルトアリ然ラハ退社後モ尙損益分配ヲ受クルコトヽナルヘシ第六十五條ノ一項トノ關係ハ如何
（本尾委員）
前條ハ會社ト退社員トノ關係ニシテ第六十五條ハ第三者ニモ關係ヲ有スルモノナレハ敢テ衝突ヲ生スルコトナシ
（箕作委員）
然ラハ第六十四條ノ但書ハ未結ノ取引ナルヤ
（本尾委員）
然リ若シ既決ナルトキハ其事生スルコトナシ
（岸本委員）
第六十四條ニハ會社ト退社員トノ關係ハトアリ故ニ義務ニ付テハ一年間責任ヲ負フトキハ其以後會社トノ取引ニ付テハ全ク責任ヲ免カルヘシト雖モ利益ハ一年ニ係ハラス永遠ニ繼續シテ配當ヲ受クルニ至ルヘシ此㸃ニ付テハ敢テ疑ヒナシトスルヲ得サルナリ
但書ニハ期限ナキヤ
（本尾委員）
期限ナシ
（岸本委員）
果シテ然ルトキハ甚タ不都合ナリ如何トナレハ第六十七條ハ期限ヲ一年ト定メテ其以後ニ至テハ義務ヲ負擔スルノ責ナキヲ示シ六十四條ノ但書ニハ期限ヲ設ケストハ前後相矛盾スルモノト云ハサルヲ得ス
（本尾委員）
敢テ矛盾セサルナリ如何トナレハ第六十七條ハ會社大體ニ付テノ規定ニシテ如何ナルコトアルモ一年間ハ其義務負擔ノ責アルコトヲ表示スルモノナリ然レトモ其期限後ニシテ退社員ノ關係アル第三者ハ之ニ對シ訴ヲ起スコトヲ得スト雖モ會社ニ於テハ退社員ノ持分ニモ關係アルトキハ其期滿後ト雖モ退社員ノ持分ニ對スル部分丈ハ其社員ニ負擔セシムル當然ナルヲ以テ敢テ第六十四條ノ但書トハ矛盾ヲ生セサルナリ
（長森委員）
社員ノ退社一年後ニシテ債主ヨリ訴ヲ起スモ其社員ニ係リテ請求スルコトヲ得スト雖モ其取引タルヤ退社前ノコトナルヲ以テ其退社前ノ關係ニ付キテハ退社員モ亦責任ヲ有セサルヘカラサルナリ
（本尾委員）
然リ
（岸本委員）
第六十四條ノ但書ハ「退社前ノ未結ノ取引ニ付」云々トセハ或ハ第六十五條トノ疑ヲ解クニ至ランカ否ラサレハ未結既結ヲ問ハサルコト」ナリテ途ニハ第六十七條ノ一年間ノ責任モ無効ニ屬シテ永遠ニ關係ヲ有スルカ如キ場合ニ至ルヘケレハナリ
（本尾委員）
第六十四條ノ本文ハ普通ノ事ニ付テ云ヒ但書ハ會社ト退社員トノ關係ヲ云フモノナレハ第二項ト爲スヲ可トス然ラサレハ本文ト連續シテ疑ヲ生スルノ恐レアレハナリ
（鶴田委員）
第六十四條但書ノコトタル未結中ハ債主モ故障ヲ述フル勿論ナルヲ以テ之ヲ削ルモ差支ナカルヘシ又本文ノコトハ此ニ明示セサルモ當然ナル事柄ニシテ則「知レ切ツタル」コトナレハ寧ロ全條ヲ削除スル方可ナラン
（長森委員）（岸本委員）
贊成
（本尾委員）
若シ第六十四條ヲ設クルトセハ「退社ノ時ヨリ」トノ文字甚タ不明ナリ如何トナレハ登記公吿ヲナスニハ退社ノ時ヨリ多クノ時限ヲ隔ツルモノナレハ其退社ト登記公吿トノ間ニ生シタル事件ハ如何スルヤノ論ナキニアラス故ニ本條ハ全ク削除スル方可ナルヘシト信ス
（箕作委員）
本員モ削除說ニ同意ス
（本尾委員）
第六十四條ハ削除スル可ナリト雖モ退社員ト社外人トノ關係ニ付テハ他一ニモ其規定ヲ示サヽレハ或ハ疑ヒヲ生スルコトナシトセス故ニ第五十七條ニ其事ヲ示シテハ如何全ク削ルトキハ或ハ不完備ノ誚リヲ免カレサランカ
（箕作委員）
若シ社外人ノ關係ヲ記載スルトキハ退社ノ部ニ記載スルヲ可トス
于時第十二時中止
午後第一時開會
退席箕作委員
（委員長）
第六十四條ハ小委員ニテ今一應ノ修正ヲナシ次會ニ提出スヘシ若シ其時ニ至リ不都合アルヲ免カレサレハ削除スルコトヽセン
（本尾委員）
然ラハ第六十四條ノミナラス六十五條モ亦俱ニ修正ノ上提出スヘシ
○第六十四條第六十五條ハ尙修正ノ上提出スルコトニ決ス
○第六十六條 原案第九十三條
退社員ノ持分ハ特約アルニ非レハ其出資ノ種類ヲ問ハス金圓ヲ以テ拂渡ス可シ
勞力ヲ出資ト爲シタルトキハ會社ハ其價格ヲ償フノ義務ナキモノトス
（本尾委員）
本條ハ原案ト精神ニ異ナルコトナシ原案第二項ヲ此ノ如ク簡短ニナシタル所以ハ原案ノ第六十條ヲ削除シタルニ依リ本條使用權云々亦不用ニ屬シ止タ勞力ノ場合ヲノミ規定スルニ過キサレハ斯ク簡短トナリシナリ
○本條ハ左ノ如ク修正シタリ
第六十六條 退社員ノ持分ハ特約アルニ非レハ其出資ノ種類ヲ問ハス金圓ヲ以テ拂渡ス可シ但出資勞力ナルトキハ其價格ヲ償フノ義務ナキモノトス
○第六十七條 原案第九十四條
退社員ハ會社ノ義務ニ對シ退社後一年間責任ヲ負フモノトス
（鶴田委員）
義務ヲ負擔トセハ如何（之ニ決ス）
○本條ハ義務ヲ負擔ト改メタルノ外修正案ノ通
○第六十八條 原案第八十九條
社員ノ退社ノ爲メ會社ハ解散セサルモノトス
○本條ハ修正案ノ通
于時第三時退散